連載 初見良昭「人生、無刀捕」 第九回「無の中の真実」

| 初見良昭

人生、無刀捕

第九回「無の中の真実」

お答え初見良昭
取材・構成藤田竜太

 

「人生無刀捕」題字・初見良昭先生
題字・初見良昭先生

 

虚実転換、変幻自在、行雲流水、奇想天外、千変万化、円転滑脱……。
 発想法、考え方こそが、最大の武器と言われる武神館の初見良昭先生。そんな初見先生に、人生の切所を切る抜けるための、さまざまな知恵を授けていただくというのが、本連載の狙い。
 ときに脱線、煙に巻かれたり、はぐらかされてしまうこともあるかもしれないが、それこそまさに、初見先生の口伝、心伝。
 姿勢を正して、初見先生の幽玄の世界に足を踏み入れてみようではないか。

赤字の部分は初見先生独特の言葉“初見語”です。

 

「文化を伝えていくには」

「技が財産だと思っているといざというとき、何に役にも立たない」、

「免状や段位のコレクターで終わっている人が多い」

と、警鐘を鳴らす初見先生。

今回は、コレクターでとどまらず、武道の本質を掴むためのアドバイスを、初見先生にリクエストさせていただいた。

 

初見先生のお答え

武道の修行を全うしたいというなら、やはり修行目的を明確にするのが肝心でしょう。

本気で武道を追求するのなら、やはり無刀捕を目指してほしいですね。

繰り返しになりますが、無刀捕というのは、私の動きを見て、やってみないことには何にもわかりません。

文章でも、写真でも、動画でも伝わらない、まさに不立文字・教外別伝というヤツです。

無刀捕=相手の刀を徒手で捌く、と思っている人も多いかもしれませんが、本当の無刀捕は、手では捌きません。

空勘(くうかん)で捌くんです。刀だけでなく、空勘まで無くしてしまうんですよ。

言うなれば、「武空捕り」ですな。

弟子たちにも、日々指導はしていますが、まだ無刀捕と宇宙の相対性原理を把握しているところまでいってませんな……。

もっとも、無刀捕は教えてできるものでもないんでね。

だから、私を真似るのではなく、参考にしてもらいたいんですよ。細かく教えたりしない代わりに、すべてを参考にして、自分で体得体解していく。

その方が、親切というものです。

だってできない人に「やれ」というのも酷なだけでしょ。

武道の場合、できないのに「できた」なんて言うと、死んじゃうことだってあるわけだから。そんな失礼なことはできないし。

以前、アメリカのある特殊機関の秘密基地に、指導要請があって出かけたとき、施設内で急に彼らに銃を突きつけられて、私がどう対応するか試されたって話をしたでしょ。

あとときも、構えたり、ジタバタせずに、手を上げただけで、彼らに感心されたって語ったけれど、あれもじつは無刀捕なんだよ。そういうことが、何気なくできるのがホンモノ。

直近で、銃を突きつけられたら、技なんて無価値だというのはわかるでしょ?

FBIの方々も、「日本の現代武道なんてやらないよ。あんなことやっていたら、現場では殺されちゃうよ」って言っていたからね。

その彼が、私の動きを見て「これなら実戦で使える」と喜んで、それ以来、ずっと親しくさせてもらっている。

アメリカの場合、実勘する実要化するものを厚く遇するところがあるので、素晴らしいよ。武神館の大会をアメリカで開催したときも、文部大臣クラスの人がわざわざ一人で見に来るからね。ラフな格好で、一般人に紛れながら、我々のやっていることをじっと見ているんだよ。

それで一人も怪我させないで、参加者がみんな喜んでいるのを見て、すぐに賞状を出してくれたりしてね。

価値があるものに対して、すぐに評価し、大事にしてくれる。アメリカってそういう国だよ。

私はね、ここで還虚と相対性に生じてくる観成を求めよと言いたいね。

世界中、いろいろな国を渡り歩いてきたけれど、どこか特定の国がということでなし、人間は同一ということだね。

もっと言うと、国の性格が、価値のあるものを見落としているということだね。

「国」という枠組みは、窮屈で束縛があるでしょ。法律もあるし。

縦の線で終わってしまい、十の字が出来にくいでしょう。文化的に価値があるものでも、日本の体質では先入観で盲目になってしまい低空ですれすれ。こんな国ないよ。

やっぱり、旦那(篤志家)を多く作ることよ。お金持ちも増やしていかないと。

中国なんかも、華僑が若者や国を支えているし、ユダヤも大金持ちが独自のネットワークを持っていて、客観的に国をサポートしている。それが彼らの強味なんですよ。

日本だって、ひと昔前には、「旦那」いたんだけど……。今の国は旦那を作ろうとしていない。

私の弟子の、インドにいる父親は、ダイヤや宝石をちりばめた、200億円の眼鏡を作ったという旦那様がいるよ。

アフリカの弟子のところに招待されたときも、大きな湖を掘って水をためて、そこにバンガローが8つぐらい建ててくれて、そこに泊めてくれましたよ。それはね、私たちに「ライオンなんかが、朝、水を飲みに来るところを見せてあげたい」ってね。それがお接待なんだな。日本のお接待はそれに比べれば箱庭だよね。

その人の持っている自然動物公園なんて、250キロのスピードでクルマで3日間走りつづけないと、全部まわりきれないほどの広さなんだから。でも密猟が多いので、職員が毎日クルマでパトロールに回っていてね。

とにかく、お金持ちのスケールが違うんだよ。

初見先生

 

武神館の最高師範が500人超

そう言う意味で、武道だって日本だけのスケールで考えていたら、どんどん消えちまう。

私の弟子の数ですか? はっきりした数はわかりませんが、おそらく世界中に40~50万人はいるでしょう。

今、世界に私の大師範が活躍しているので、日本の武神館はこれから後、消えることはないでしょう。

いま武神館の大師範と呼べる弟子が、500人を超しましたから。

これだけ弟子が育っていれば、高松先生の教え、武神館の技術は途切れることなく、次世代に伝わり生き残るでしょう。

中東なんかも相変わらずゴタゴタが続いているけど、イランにも熱心な弟子も多いしね。そのイランからはペルシャ絨毯で、私の肖像画を作って送って来てくれたりしてね。最高級のペルシャ絨毯なので、買ったら400~500万円はするんじゃないかな? イランには今くの一が何千人もいますよ。

 

無の中の真実

「武神館には、なぜこれだけ世界中から人が集まるのか」ってよく聞かれますけど、それは魅力があるからですよ。伝統からの生命力があるからでしょ。

それから真実があるからです。無の中に真実がある。それを私が教えていて、そこに共感する人が多いんでしょうね。
あとは縁としか言いようがありません。

もちろん、忍者・忍術に惹かれてくる人も大勢います。けっきょくひとつの時代なんですよ。ちょうど、いま忍者が好かれる時代なんじゃないですか。

忍者が好かれる時代というのは、どういう時代だかわかりますか?

忍者が好かれる時代は、戦国時代なんです。つまり、世界全体が、ある種の戦国時代を迎えているということです。

社会の背景がそのようになっているのに加え、情報化社会ですからね。

というより生き続けるには忍者のコントロール力を潜在的に感じるのでしょう。

忍者に憧れて、私のところに学びに来る人も少なからずいるのは事実ですが、一方で実際に必要だという軍人や、政府関係の特殊機関のメンバーも、万里波濤を超えて、私のところに集まってきて、みんな熱心に修行に取り組んでいます。

また、南米のチリなどは、国家として武神館を認めて、奨励していますからね。アルゼンチンもそうです。アルゼンチンのシークレットサービスは、みんな武神館の武道を学ばせています。

もういちいちこうしたことはアピールなんかしませんが、海外の方が安全保障に真剣に取り組んでいますし、武道・マーシャルアーツに対しても非常にシビアな目で見ています。

おかげで私も弟子たちの動きを見ているだけで、世界情勢がある程度わかるので、日本の将来が心配でなりません。
そうした一方で、最近は女性の入門者も増えていますよ。

女性の弟子たちも、外国の女性の方がすばらしい傾向がありますけどね。彼女たちも単なる護身術として、武神館の武道を習いに来ているわけではないんでね。それぞれ、国が背景にあって、環境もあって、そのうえで私との縁があったということで、入門してくれたんでしょう。

だから、本当に強い女性が集まってきますよ、武神館には。

いまの日本の女性は忍耐に対して弱いでしょ。しかも贅沢で。わがままで……。海外の女性で、本当に修行している人たちは、なにより忍耐力がありますよ。日本の昔の武士の妻のような、芯の強くて暖かい女性がたくさんいますよ。やはり国の体質の違いなんでしょうかね、大学の学力も低いでしょう。

初見先生

 

いまの日本は、武士の時代ではありませんから。いうなれば士農工商の位では一番低い国。万変不驚、私は例によって何にも考えないようにしています。考える必要もないでしょ。

「無の中の真実」、そういったことがいろいろわかるために、修行というのがあるんです。武道の修行だけでなく、宗教や、何かの道といったものは、そうしたことに気付くために必要なんです。

ただ、私の場合は「道」は必要だけど、土の上に作られた道だけが道でないことを知っているんですよ。土はすべて道と思うことが始めにあるから。

個人的には、「芸」なのかなと。武芸、つまりアーツだと思うので。

「芸」というのは、まともじゃないのもあるし、気ちがいみたいのも多いでしょ。「道」だとまともじゃなければいけないからね。「外道」や「邪道」なんて言うのもあるけれど。木火土金水空、六道もあるんですぞ。

モラルなんて、けっきょく人間の考えていることじゃないですか。私に言わせれば、モラルなんて逆にいえばエゴですから。モラルは、ある意味で一番の危険物でもあるんだよな。

闘いには昔から軍資金といって最重要視されていたでしょう。金遁金道も武道では大切な一つです。

(次回につづく)

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–Profile–

初見先生

初見良昭(Masaaki Hatsumi
1931年、千葉県野田市生まれ。武神館(ぶじんかん)を主宰(武神館九流派宗家)、柔道五段、空手八段、抜刀道十段。ペンタゴンやFBI、イギリス特殊部隊、オランダ王室海軍などでも指導。テネシー州親善大使、ロンドン警視庁名誉顧問、テキサス州名誉市民、アトランタ、ロサンゼルス市名誉市民など。騎士(ドイツ国立歴史文化連盟より)。世界各国の指導者(レーガン大統領、メジャー首相、ミッテラン大統領、ローマ法王、マンデラ大統領ほか)や軍隊、警察、情報局や各種団体から感謝状、賞状、友好証などを受けている。国際警察会員、インターポール。英国王立医学協会名誉会員、トリニティ大学名誉教授、モアパーク大学犯罪学名誉教授、科学博士、哲学博士、芸術学博士。「日本よりも海外で有名な日本人」として、しばしばテレビ、雑誌、新聞などで紹介される。

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