リッキーガット症候群解消法 第四回 肥満や糖尿病に関わる知られざる話

| 松原秀樹

“腸漏れ”が病気をつくる

リッキーガット症候群解消法

第四回 肥満や糖尿病に関わる知られざる話

体質研究所主宰 松原秀樹
構成近藤友暁

 

連載第4回は、肥満や糖尿病と、リーキーガットの関係について説明します。

肥満や糖尿病といえば、一般に「カロリーの摂りすぎが原因」と言われ、その対策としては糖質や脂肪の制限が挙げられます。しかし、実際には単に「カロリーの摂りすぎが原因」では説明できない統計データがあります。

今回は、そのデータを一般に思われている肥満と糖尿病に関する「常識」について疑問を提起し、次回(第5回)ゆるんだ腸壁=リーキーガットとの関係性という視点を加えて説明したいと思います。

 

肥満の原因は、カロリーの摂り過ぎではない!?

一般的に「太るのはカロリーの摂りすぎが原因」と言われています。しかし、いくら食べても太らない人もいます。大食い選手権に出場するフードファイターたちの中にも太っていない人がいますし、むしろ痩せ型の人が多い印象です。なぜでしょうか?

100年前の日本人は、カロリーの総摂取量の80%を炭水化物で摂っていました。50年前に比べて、現在の日本のお米の消費量は半分ほどに減っています。それにも関わらず、肥満や糖尿病は増え続けています

北欧やオーストラリアの一部、およびイギリスでも、第二次世界大戦以降、糖と脂肪の摂取量は減っています。

オーストラリアでは1980年代以降、糖の摂取量は減っています。1980年に1日小さじ30杯の砂糖を消費していましたが、2003年には25杯に減りました。ところがこの期間に、オーストラリア人の肥満者は3倍に増えています(1)

 

リッキーガット
オーストラリアにおける調査結果をイメージにした。「砂糖の摂取量が増えれば、肥満者が増える」という常識から考えると、論文タイトルにあるように、「パラドックス」が起きている。

 

イギリス人の食生活における平均的な脂肪摂取量は、1945年に1日あたり92グラムでした。肥満人口が少なかった1960年には、1日115グラムでした。ところが2000年には、1日74グラムに減っていました。また動物性脂肪を減らして、植物性脂肪や魚の摂取が増えました。それにもかかわらず、イギリス人は体重を増やし続けています。(2)

肥満大国のアメリカでさえ、国民の体重が増えている時期にカロリー摂取量が減っていることを示した調査報告がいくつもあります。米国国務省の全国食品消費調査によれば、1977年から1987年にかけて国民1人が1日に摂取するエネルギーは、1854キロカロリーから1785キロカロリーに減っています。脂肪摂取の比率も、41%から37%に減っています。それにも関わらず、肥満者の人口比率は、4分の1から3分の1へと増えています(3)

つまり、肥満は総カロリーや糖質、脂肪などの摂取量と比例しないのです。

アメリカにおけるパラドックス。カロリー摂取量が減っても、肥満者は減ることなく、むしろ増加している。「太るのはカロリーの摂りすぎ」とは違った観点から考え直さなければならないだろう。

 

糖尿病の原因は、糖の摂り過ぎではない!?

糖尿病は、「糖の摂りすぎが原因」だと言われています。しかし、いくら糖分を摂っても糖尿病にならない人もいます。

糖尿病になると病院から指導されるのが、徹底したカロリー制限です。しかし患者の本音は「こんな食事してられるか!」といったところでしょう。

しかも、もしカロリー制限を続けたとしても、完全に糖尿病が治るわけではありません。一度、糖尿病と診断されたら決して治ることはなく、できるのは進行を防ぐことのみです。

しかし、進行を抑えることはできます。進行を抑えて、合併症を防ぐことが重要なのです。

糖尿病で本当に怖いのは、合併症です。例えば、脚の壊疽がおきれば、切断せざるをえなくなることがあります。また、網膜症や緑内障による失明の恐れがあります。腎機能低下によって一生、透析を続けなければならなくなります。このような重篤な状態に至ることこそ、糖尿病の怖いところなのです。

戦後の1945年の日本の糖尿病患者数は3万人ほどでしたが、2010年にはその300倍近くにも増えています。そして、2016年に1000万人に達しました

しかし、厚生労働省の国民栄養調査によれば、日本人のカロリー摂取量は、1946年に1903キロカロリーで、経済成長とともに増えて1970年代には2200キロカロリーに増えましたが、その後減りはじめて、2010年には1849キロカロリーほどになっています。つまり、現在の摂取カロリーが、終戦直後の食糧難の時期よりも減っているにもかかわらず、糖尿病患者は300倍以上にも増えているのです。

実は医者たちも、まだ糖尿病の原因を特定できていないのです。ですから、多くの医者も糖尿病になっています。

元国立がんセンター研究所疫学部長の渡邊昌医師も、患者さんには生活習慣の改善を呼びかけていながら、自分自身が糖尿病になってしまったと、「文藝春秋」(2017年5月号)で告白しています。その記事によると、学会でメインテーブルに座っている偉い先生方でも、12人中11人は糖尿病か糖尿病予備軍だそうです。大半の医者は、食生活や生活習慣と病気の関係について関心がないからだといいます。

リッキーガット
日本におけるカロリー摂取量の推移と、糖尿病患者数の変化をイメージにした。日本でもカロリー摂取量は減少傾向にあるにも関わらず、糖尿病患者は増え続けている。

 

糖質制限も逆効果になることも?

肥満や糖尿病と、糖質の関係性について、ショックな事実もわかっています

近年、「糖質制限」が流行しています。糖質さえ控えれば、肥満を解消して糖尿病の進行も防げると言われています。しかし、この糖質制限も問題がないわけではありません。

糖質制限で不足したブドウ糖は、筋肉から作られます。これを「糖新生」といいます。つまり、ブドウ糖が足りなくなると、筋肉を分解して補われるのです。

したがって糖質制限を続けると、まず筋肉が減ります。筋肉が減ることで、身体の水分量が減ります。すると肌にハリと潤いがなくなり、シワが増えます。また体温の多くを産生しているのは筋肉ですから、筋肉量が減れば体温が低下して、基礎代謝も低下します。そのため免疫力が低下して、風邪やインフルエンザや肺炎などに罹りやすくなります。また、傷も治りにくくなります。

不足したブドウ糖を補うために筋肉が分解されるというお話をしましたが、最初に分解されるのは脚の筋肉です。ですから、糖質を制限した食生活を続けると足腰が弱くなって、腰痛や膝痛が悪化してしまうのです。

たとえ脚の太さが変わらなくても、筋肉が減って脂肪が増える「サルコペニア肥満」になっているかもしれません。そして結局、老化を早めてしまい、病気にもなりやすくなるのです。

実際、糖質制限をした人たちの多くが、「疲れやすくなった、だるい、風邪を引きやすくなって治りにくい」などと証言しています。

糖質制限食を推奨している医師は、「糖質制限食で体調が悪くなるのは、糖質を制限した分だけ、タンパク質と脂肪を増やさないからだ」と説明しています。糖質不足ではなく、カロリー不足で体調が悪くなるというわけです。また、糖質もまったく摂らないのではなく、適度な量は摂ってよいことになっています

ところが現実に糖質制限を行う人の中には、「悪いのは糖だけで、タンパク質と脂肪はいくら摂っても問題ない」といった解釈をしている人が少なくありません。

 「糖質は良いのか悪いのか?」

といった二極の考え方をする人たちは、糖質が悪いのであればまったく摂らないようにする傾向があります。糖質をまったく摂らないで、タンパク質と脂肪だけから必要なカロリーを摂ろうとするのです。実際にそうした食生活を行ったプロの総合格闘技の選手が、筋肉の張りがなくなり、「だるくて身体を動かすのもつらい」と訴えてきたことがあります。彼は、ハードなトレーニングをしているのにご飯をまったく食べず、毎日500グラムも肉を食べていました。

「タンパク質ならいくら食べても問題ない」という考え方も、危険でしょう。

同じ肉といっても、脂肪が少ない赤身肉もあれば、脂肪が多い霜降りもあり、また添加物がたくさん入った加工肉もあります。なかには安価な加工肉ばかり食べている人もいます。

良質なタンパク源である赤身の肉にも、まったく問題がないわけではありません。

赤身肉に含まれるホスファチジルコリン(レシチン)は、腸内環境が悪いと、腸内細菌によってトリメチルアミン‐N‐オキサイド(TMAO)という物質を生み出します。そして、TMAOの値が高くなると動脈硬化を引きおこし、心臓病の原因となります。(4)

レシチンは脳の機能を高める脂質として重要ですから、決してレシチンを摂らないほうがよいというわけではありません。問題は腸内環境にあるわけで、バランスが崩れた腸内細菌によって生成されるTMAOが、動脈硬化を引きおこすのです。

健康維持に必要なレシチンでさえ腸内環境によっては弊害をもたらすのですから、「脂肪ならいくら摂っても問題ない」とはいえないでしょう。

魚に含まれるEPAやDHAも有益な脂肪酸ですが、魚の脂肪には水銀などの重金属も含まれています。ですから、「魚ならばいくら大量に食べても問題ない」ともいえません。

さらに高脂肪食は、大腸ポリープを大きくさせて大腸ガンを誘発することがわかっています。(5)

したがって、「タンパク質や脂肪ならいくら摂っても問題ない」という考えは改めたほうがよいでしょう。

また、いくらタンパク質を摂っても、糖質が足りないと筋肉が作られません。タンパク質から筋肉を作るには、インスリンが必要だからです。インスリンには「筋肉を合成する」という働きもあるのです。インスリンを分泌させるには、糖質が必要です。

ですから、糖質制限をしながら筋トレをすると、筋肉の減少を加速させてしまいます。「筋肉は鍛えれば強くなる」というものではないのです。筋トレは、筋肉を破壊する行為です。負荷をかけて筋肉を鍛えると、筋繊維が破壊されます。運動後少しずつ筋肉が修復されていって、数日後に筋肉はもとの太さより少しだけ太くなります。これを「超回復」といいます。超回復したタイミングで、前回より少しだけ強い負荷をかけてトレーニングすると、また数日後に超回復します。こうして筋破壊と超回復をくり返すことで、徐々に筋肉が増強していくのです。

ところが糖質が足りないと、筋肉が破壊されたままいつまでも修復されず、超回復どころか筋肉がどんどん痩せ細ってしまうのです。筋肉量が減ればカロリーの消費量が減りますから、高血糖になりやすくなってしまいます。

 

急激なダイエットで太りやすくなる!

「1ヶ月で5キロ痩せる!」などといったダイエット法に、飛びつきたくなる気持ちは分かります。そのダイエット法が、摂取カロリーを極度に減らすことによって減量するというものの場合は注意が必要です。短期間で急激に体重を減らすと、必ずリバウンドして、もとの体重よりも増えてしまうのがオチです。

なぜ、リバウンドするのでしょうか?

一番の理由は、筋肉が減ることです。食べないダイエットで減るのは、脂肪ではなく筋肉なのです。そして、また食べ始めると、増えるのは筋肉ではなく脂肪です。ですから食べないダイエットをくり返すほど、筋肉が減って、脂肪が増えてしまうのです。

しかも、足腰の筋肉が脂肪に入れ替わっていくだけでなく、内臓にも脂肪が溜まっていきます。

慶應義塾大学特任教授の栗原毅医師が、かつて「太った女性が痩せてきれいになる」という美人コンテストの前後で出場者の肝機能を調べたところ、「入賞者の全員が脂肪肝になっていた」といいます。1ヶ月に3キロ以上も体重を減らすと、肝臓に脂肪が蓄積して、脂肪肝になってしまうのです。これは「低栄養性脂肪肝」、通称「ダイエット脂肪肝」と呼ばれています。

脂肪肝というと、脂肪の摂りすぎが原因のように思われていますが、実は栄養が足りないことが大きな原因になるのです。

連載第4回では、肥満や糖尿病に関して、今まで常識的に考えていたことに対して、考え直す機会となってもらえればと思います。

次回(第5回)は、ゆるんだ腸壁=リーキーガットとの関係性という視点を加えることで、肥満や糖尿病についての新たな知見が得られる、というお話しをしたいと思います

[(1)参考文献:Barclay, A.W. and Brand-Miller, J. (2011). The Australian paradox: A substantial decline in sugars intake over the same timeframe that overweight and obesity have increased. Nutrients 3: 491-504.]

[(2)参考文献:Lissner, L. and Heitmann, B.L. (1995). Dietary fat and obesity: evidence from epidemiology. European Journal of Clinical Nutrition 49: 79-90.]

[(3)参考文献:Heini, A.F. and Weinsier, R.L. (1997). Divergent trends in obesity and fat intake patterns: The American paradox. American Journal of Medicine 102: 259-264.]

[(4) 参考文献:Ming-Liang Chen, Xiao-Hui Zhu, Li Ran, He-Dong Lang, Long Yi, Man-Tian Mi “Trimethylamine-N-Oxide Induces Vascular Inflammation by Activating the NLRP3 Inflammasome Through the SIRT3-SOD2-mtROS Signaling Pathway.” Journal of the American Heart Association. 2017 Sep 04;6(9); pii:e006347.]

[(5)参考文献:Mirian Brink, Matty P Weijenberg, et al. “Fat and K-ras mutations in sporadic colorectal cancer in The Netherlands Cohort Study.” Carcinogenesis. 2004 Sep; 25(9); 1619-28. ]

〈第四回 了〉

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–Profile–

松原秀樹先生

松原秀樹(Hideki Matsubara
アレルギー体質を改善するために、高校時代から様々な療法を試みる。48歳のとき自然免疫学応用食材で、40年間治らなかったアレルギー症状がわずか2ヶ月でほぼ消失した。さらに腸管免疫について調べていき、『リーキーガットが万病の根源』と知るに至る。

 合気術を活用した独自の施術を行なう傍ら、体質改善の食事指導、サプリメントやボディケア用品の開発も行なっている。

 体質研究所主宰。桜ヶ丘整体院院長。整体師。体質改善コンサルタント。米国ISNF認定サプリメントアドバイザー。合気道四段。

 著書に「7つの秘訣で膝痛解消!」「肩甲骨をゆるめる!」(BABジャパン)「アレルギーは、皮膚と腸のバリアを強化すれば治る」(あかつき身体文学舎)「お腹のぜい肉をなくす食事」(文芸社)など。「腰痛解消!神の手を持つ17人」(現代書林)に掲載。

Web site:体質改善コンサルタントの体質研究所

(当院のご案内の他、体質改善や健康情報についてクイズ形式で学べる「体質改善検定Ⓡ」も掲載しております。)