コ2【kotsu】特別インタビュー 松家かおり氏「死別による深い悲しみの癒やしかた」前編

| コ2【kotsu】編集部

相次いで失った、母と父

コ2 立ち入った質問になって恐縮ですが、先ほどグリーフカウンセラーになったきっかけとして、ご両親との死別を挙げていらっしゃいました。よろしければ、ご自身の死別体験、つまりグリーフについて伺ってもよろしいでしょうか?

松家 先に亡くなったのは、母でした。私の母は脳梗塞を患い、大腿骨骨折をしたことにより寝たきりの生活を送っていました。私は両親と離れて生活をしていたので、介護をしていたのは主に父でした。

私にとって母は、定年退職まで仕事を続けていたことから、ひとりの女性としてとても尊敬できる人でした。私も「仕事をがんばる!」と子ども心に思っていましたから、母の影響はとてもあったと思います。

ですから、母を亡くした時、何もしていないのに涙があふれてきて止まらなくなったり、いつも息苦しいような感じでした。日常生活はちょっとしづらかったですね。

コ2 松家さんもお母様を亡くしてグリーフを受けられたのですね。では、伴侶を亡くしたお父様のご様子はいかがでしたか?

松家 父は、寝たきりの母の面倒をとてもよく見ていました。自分の生活を犠牲にして、本当によくやっていたと思います。母が亡くなった時にも、私には落ち込んだ姿を見せませんでした。もちろん、父の泣く姿も見ませんでした。

そんな父ですが、元気が無くなり、声をかけてもあまり応えてくれなかったり、イライラした口調で返されたりしていたので声をかけづらい雰囲気でした。

当時の私は、「どうして毎日イライラしているの?」と思うだけで、父の行動に理解を示そうとしませんでした。イライラしている父を見て、私もイライラしていましたから。父との会話には笑顔が無くなってしまいました。

母の納骨が終わった頃、「疲れているんだ」とよく私に言っていました。今から思うと悲しみのピークだったのかもしれません。

母が亡くなったことで、それまで仲が良かった父との関係がこじれてしまったこともあり、母の死が悔しくてたまりませんでした。

 

男性の方が悲しみを溜め込みやすい

コ2 日本人の男性は、女性と比べて口数が少なかったり、感情表現が苦手だったりする傾向があると思うのですが、その傾向がグリーフに影響することはありますか?

松家 そうでうね。男性は、感情を表出するのが苦手ですから、グリーフが長引いたり、複雑化してしまうことがあります。特に中高年の男性は、死別の悲しみについて家族や友人に相談することができない傾向があります。心の中にため込んで、ひとりで耐えてしまうのです。そうすると、心と身体の健康は保たれなくなってしまうんですね。

人間関係がこじれやすくなったり、外出を控えて引きこもってしまったり、周りからのサポートを受けないでいたりすることで、社会的にも孤立化・孤独化してしまいます。愛する人を亡くしてしまったショックは計り知れませんが、周りの人も男性のグリーフを知ると、対応の仕方がわかるのではないでしょうか。

コ2 強いグリーフとは、ご本人の心を混乱させるだけでなく、周りの人間関係も変えてしまうのですね。
そのお父様も、お母様の後で亡くされたということですが、その時の松家さんの心情はどんなだったでしょうか?

 

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–Profile–

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松家かおり(Kaori Matsuya)

グリーフカウンセラー。1971年東京生まれ。2007年(平成19年)カウンセリングルーム『青山フラワーキュア』を開設。プリザーブドフラワーを使ったセラピーやカウンセリングを中心に活動。2008年(平成20年)自ら死別経験をしたことで、グリーフカウンセリングに出合い、資格取得後、グリーフカンセラーとして活動中。カウンセリングルームでは個人を対象にしたカウンセリングやセラピーを中心に行っているが、講演会やワークショップ、ボランティアにも力を入れている。ブログ、メルマガにてグリーフに関する情報や役に立つ情報を随時配信中。 HP:青山フラワーキュア http://www.cure246.com

著書:『グリーフケアに学ぶ、深い悲しみの癒やし方 愛する人を失ったとき あなたに起こること』(日貿出版社)