連載 本気でトラウマを解消したいあなたへ 第五回 回復のために最も大切なことその3: 逃げる

| 藤原ちえこ

「トラウマ」という言葉からは、何を連想されるでしょうか。震災や戦争といった“大きな出来事”の当事者が受けた“心の傷”、またはそれにともなう症状(フラッシュバック、うつなど)を思い起こす方が多いのではないでしょうか。

ですがトラウマセラピストの藤原ちえこさんは、

「トラウマ反応は、心ではなく、まずは身体で起こるもの。そして出来事の大小にも、それを直接体験したかどうかにも、必ずしも関係がないのです」

とおっしゃいます。ここでは、

  • 本当のところ、トラウマとは一体何なのか
  • トラウマからはどうすれば回復可能なのか

を、お伝えしていきます。トラウマからの回復をのぞむ、“あなた”のための連載です。

トラウマイメージ

ココロの傷は、カラダで治す

本気でトラウマを解消したいあなたへ

第五回 回復のために最も大切なことその3:逃げる

文・写真藤原ちえこ(写真提供は☆のみ)

こんにちは、トラウマセラピストの藤原ちえこです。

前回までの連載で、トラウマからの回復には「助けを求めること」「リソースを増やすこと」の二つが絶対に必要だという話をしました。

もうひとつ、私がトラウマ回復に必要不可欠と考えていることを今回はお話したいと思います。

それは「逃げること」です。

特にあなたが、現在進行形でトラウマ的ストレスにさらされている場合は、これが最優先です。

 

逃げることは、トラウマ予防の絶対条件

連載第2回で、トラウマが起こるのは、

危険な状況にさらされた時、

身体の自然な反応として“逃げるか・戦うか”の衝動が生まれ、

それを行動に移すための膨大なエネルギーが瞬時に体内に発生し、

なのに実際には行動できなかったがために、エネルギーの行き場がなくなって体内にとどまることで、さまざまな症状を作り出す

という説明をしました。

つまり、「逃げること」は、トラウマを防ぐための絶対条件といっても過言ではありません。

逆に言うと、トラウマに苦しむ人は、例外なくそのストレスフルな状況から逃れられなかったがために、必然的にトラウマ症状を発達させてしまったのです。

でも、逃げることは、本当に難しいです。

連載初回でもお伝えしたように、交通事故や列車事故のように、物理的に逃げるという選択肢がない状況で心身にダメージを負うことが、この高度に発達した文明社会ではよくありますし、そもそも小さな子どもに、逃げるという選択肢はありません。

どんなに虐待する親でも、子どもにとっては親以外に養育者はいないし、どんなに暴力的な家庭環境でも、魚が水の存在に気づかないのと同じで、その中で育った子どもには、その異常さは分からないからです。

仮に逃げるというオプションがあった場合でも、人はさまざまな理由から逃げることを選択できません。

それはなぜでしょうか。

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–Profile–


Photo by Takashi Noguchi

藤原 ちえこ(Chieko Fujiwara

大阪大学人間科学部卒業。新聞記者を経て渡英、Emerson Collegeにてシュタイナー教育を学ぶ。その後サンフランシスコに移り、カリフォルニア統合学研究所(California Institute of Integral Studies, CIIS)にてカウンセリング心理学修士号取得。サンフランシスコの日系カウンセリングセンターや小学校、近郊のホームレス支援の非営利団体などで心理セラピストとして勤務。サンフランシスコ、ハコミ研究所(Hakomi Institute of San Francisco)にて2年間のハコミセラピーのトレーニングを修了するとともに、トラウマへの身体的アプローチであるソマティック・エクスペリエンス(Somatic Experiencing, SE)の3年間のトレーニングを修了。禅、瞑想、ヨガ、気功、ムーブメント、ボディワークなど、ベイエリアで当時アクセス可能だった数多くの癒しやスピリチュアリティのメソッドを探求したのちに、身体と心のつながりという最も基本的な真理にたどり着く。
05年2月に帰国、札幌にカウンセリングルームを開く。私立女子校のスクールカウンセラーとしても活動中。
訳書に『心と身体をつなぐトラウマ・セラピー』(雲母書房)、共著に『「ソマティック心理学への招待—身体と心のリベラルアーツを求めて』(コスモス・ライブラリー)、『トラウマセラピー・ケースブック』(星和書店)。特別養子縁組で迎えた3歳の娘の子育てを楽しむ毎日。


website:プレマカウンセリングルーム(http://premamft.com)
blog:明るい鏡~本当のわたし、そしてあなたを映し出す