【新連載】ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング

| 大久保圭祐

 

トレーニングの中で見失われる「自分」

そもそも私がパーソナルトレーナーに興味を持ったのは、運動そのものが好きというのもありますが、それ以上に運動や施術で生まれる「身体の変化」に興味があったからです。

特に大学の時にやっていたキックボクシングを通して、運動や食事制限(減量)をすることで身体が変わり、競技のパフォーマンスやコンディションにダイレクトに影響することを経験しました。その魅力と面白さに惹かれ、パーソナルトレーナーとして活動する道を選びました。

パーソナルトレーナーとは、運動生理学や機能解剖学を中心とした科学的に証明された情報を元に、クライアントの要望に沿って適切なトレーニングを提供し、トレーニングのサポートを行います

十数年くらい前は、アスリートの競技パフォーマンスアップだったり、モデルや身体で表現する方の体つくりだったり、いわゆる「プロフェッショナル」な人たちが主なクライアントでした。しかし、多くのパーソナルトレーナーの努力やニーズの高まりもあり、現在は一般の方にも浸透し、それにともないクライアントからの健康維持や肩こりや腰痛などの不調の改善や日常動作のパフォーマンスアップなどの要望にも応えるようになりました。

そんなパーソナルトレーニングですが、トレーニングを提案する時にいくつか大切な概念があります。それが、

  • 目的に合わせた運動を選択する「特異性の法則」
  • 体に適した負荷をかける「過負荷の法則」

です。つまり目的と自分の体に合わせた特定の動作を負荷の強さ、取り組む時間、頻度、期間などを調節してトレーニングに取り組むことです。

例えば、短距離走と長距離走のトレーニングでは同じ走る種目のトレーニングでも、トレーニングに用いる動作、鍛える部位、負荷の課し方も異なります。

目的に合った特定の動作に負荷を掛け、それを繰り返すことで身体が順応し、効果が現れます。だからこそ、正しい方向性の下、継続することが求められます。

その一方で、僅かな方向性のズレが、がんばってトレーニングに取り組めば取り組むほど、大きな結果のズレとなって現れてきます。その結果、目的の達成を遅らせてしまったり、遠ざけてしまったりすることもあります。

さらには「効果が出ないから」といって、回数を増やしたり、取り組む時間を増やしたりすることで、余計にゴールから離れていき、ついにはムダな頑張りから体にさまざまな不調が現れ、モチベーションも落ちてきてしまいます。

そうならないように適切な方向性を示してくれるのがパーソナルトレーナーの役割のひとつです。

ところが、この「本則」に基づいた「正しい方向」というのが意外に難しく、私自身、パーソナルトレーナーとして現場で活動している中で、また、一人のトレーニー(トレーニングに取り組む者)として活動する中で、少しずつ違和感を感じていました。

それは、

科学的に証明された結果に自分を当てはめようとするあまり、取り組みや一つひとつの動作から運動をする本人の主体性が失われ、環境や身体の内側からの視線を欠如してしまう。

ということでした。

具体的には、ウェイトの重さや定められた回数をクリアーすること自体が目的になり、“その動作を行えば効果に結びつく”と過度にトレーニングの理論に頼ってしまいがちなのです。

その結果、トレーニングを行う自分=主体が“どう感じているのか”、今、自分の身体に起こっていることや気持ちを感じたり、考えることを忘れてしまっていることが多々あるのです。

こうした状態でトレーニングを続けると、次第にココロとカラダの解離が生まれ、身体感覚が低下して、パフォーマンスはもちろん、ココロとカラダを痛めてしまうことになります。いわゆる「スランプ」と呼ばれる状態の多くは、このココロとカラダの解離に原因があります

自分という主体性が失われたままトレーニングを続けて、体が感じる力を向上させる機会が損なわれてしまうのは、とても勿体なく、また怪我や不調を生み出す原因にもなります。

 

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–Profile–

大久保さん

大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト