連載 ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング05「空間を感じて自分を知ろう」

| 大久保圭祐

巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?

この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります

 

ココロとカラダを繋げる

ボディコンシャストレーニング

第5回 「空間を感じて自分を知ろう」

大久保圭祐

 

大久保さんイメージ
Photo/ManNg (改変 gatag.net)

 

体から得られた感覚をどのように受け止めるかによって、私たちの体の反応や表現は大きく変わります。

5回目の今回は「感覚」について、重力と同様に絶対的な存在である地面と空間からどのような影響を受けているのかについて書いていきたいと思います

 

一口で感覚と言っても様々で、意識しやすい感覚もあれば意識しにくい感覚もあります。中でも一番馴染みのあるのが、目、耳、舌、鼻、皮膚を通して得られる五感でしょう。

目で見て得られる視覚、音を聞き取る聴覚、匂いを感じる臭覚、舌から得られる味覚、皮膚から得られる触覚ですが、人の感覚は様々で、体を動かす時に対応するための平衡・加速感覚だったり、他にも痛み空腹や満腹感口渇感歐気便意尿意などの感覚も得ることができます。

同じ動作を行っても、意識の向け方によってこういった感覚の受け止め方も変わってきます

一番身近でわかりやすい例は、食べるという動作です。同じ食べるという動作でも味覚に意識を向ければ、味わうことで心を満たすことが出来ます。

また、もしお腹が減っていれば、食べるという行為そのものに意識が向き、それ自体に満足感を得ます。「お腹が空いている時は、どんな物を食べても美味しく感じる」なんて言いますが、同じ物を食べてても、意識の向け方次第で感覚の受け止め方は異なるわけです。

もう一つ、意識の向け方によって知覚する感覚が変わることを体感する方法をご紹介しましょう。

手で自分の体のどこかに触れると、触れている手から「体に触れている」という感覚を得られます。このとき少し強く触れると、肌の感触や質感を感じることができるでしょう。

逆に手で触れられている箇所に意識を移すと「手に触れられている」という感覚があることに気がつくでしょう。その手が温かいのか冷たいのか、場合によってはくすぐったさも感じるかも知れません。

大久保さんイメージ

 

ここで面白いのは、腕に触れた時、手からは(腕が温かい)と感じる一方で、腕からは(手が冷たい)と感じることができることです。同じ体でありながら、手と腕のどちらに意識を向けるかによって情報の認識が異なるのです

個人差はありますが、たくさんの情報や刺激が飛び交う現代では「よりたくさんの情報を得よう」「もっと強い刺激が欲しい」と、積極的に情報を得ようとします。先ほどの例で言えば「体に触れている」感覚に意識が向く傾向があり、些細な情報に対しても敏感に強く「なんだろう?」「探ろう」という意識が働くわけです。

例えば、静かな部屋で換気扇を回すと、それ程大きな音でなくても気になり、気にしないようにしていても、つい意識を向けてしまいます。

その一方で、慣れてしまうのも人間です。

あれ程気になっていた音もしばらくすると、音の存在に慣れ、やがて順応し、実際は耳に入っているのに意識の上では消してしまいます。

こうしたより強い刺激やより新しい情報に意識を向けたり、刺激や情報に順応するのは私たち人間が持っている防衛反応の一つです。

一つの情報や刺激ばかりにずっと意識を向けてしまったり、集中してしまったりすると、身の危険を知らせる情報や体に良くない刺激を瞬時に受け止めて、しっかりと認識することができないため、自動的に敏感さと鈍感さの調節をしているわけです。

ただ、現代人に限って言えば、日々触れる情報や刺激があまりに多く、そうした強い刺激を追うなかで、先ほどの例で言えば「触れられている腕」の感覚が見失われがちと言えるでしょう。

ボディコンシャストレーニングでは、このつい忘れられてしまっている、僅かな感覚や繊細な刺激に意識を向けてみることによって、そこにある「体の声」とも言える、たくさんの情報や有益な刺激に気づくことを大事にしています

第3回目でご紹介したロルフィング®︎のお話では、当たり前過ぎて忘れられている重力と体の関係について触れました。

この重力と同様に、重要なのが私たちが生きる環境、特に地面や空間と感覚の関係です。なにか新しい刺激を求める前に、普段気にすることのない私たちの周囲に「あって当たり前」のものを再認識することが、より深くカラダとココロを変えることができるのです。

 

連載を含む記事の更新情報は、メルマガFacebookでお知らせしています。
更新情報やイベント情報などのお知らせもありますので、
ぜひご登録または「いいね!」をお願いします。

–Profile–

大久保さん

大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト