連載 タッチの力10 岩吉新・前編「神経系からみる“タッチング”」

| 岩吉新

 

“快/不快で聞き分ける”不思議

操体法」は、橋本敬三先生(1897-1993年)という、整形外科の医師が創始された施術法です。手技のみならず、橋本先生の身体観や思想哲学を含めて操体法と呼ぶこともあります。

橋本先生は当初、医師として病院を開業されたのですが……せっかく処方してもはかばかしい結果がでないとなると、患者さんがカイロとか整体といった民間療法にうつってしまわれることも多かったそうです。そこで橋本先生は「西洋医学にとどまらない視点を」とお考えになり、伝統的に行われていた東洋医学や治療法から示唆を得て、操体法を創始されたといいます。

僕が操体法を「面白いな」と感じたきっかけは、「気持ちよさを味わうと、からだがよくなる」と聞いたことから。最初は「なんじゃ、そりゃ?」って。

それまで、痛いのを我慢して耐えるほどに「効いてる」とか「よくなりそう」と思っていたんです。
ですが後で話しますけれど、操体法には“皮膚へのアプローチ”があるとわかったとき、がぜん“皮膚の役割”が気になりはじめました。

操体法は、

施術者に抵抗を与えられるなどして

クライアント側がその圧に抵抗して動いたのち

瞬間的に脱力して筋肉を緩める

やり方が基本です。その時に気持ちのいい方向に動くことで、からだが緩みやすくなる、というんですね。

クライアントにとって気持ちのいい方向を「快適感覚で聞き分けさせる」といっています。

講義中の岩吉さん(☆)
講義中の岩吉さん(☆)

 

僕自身も、橋本先生の流れを汲む先生に皮膚へのアプローチを習ったのですが、

皮膚の方向(=触れる部位や、触れる強さの方向)が、快適がどうかが大切だ

といわれました。そして不快なことはやらない、とも。

実際、施術を受けると「皮膚に触れるだけで、からだは本当に変わる。痛みがなくなったりするんだ!」ということが驚きでした。

そして“神経系”というキーワードで、からだを観られるようになった今、施術によりなぜ痛みがなくなるか? とは、物理的にからだが変わるだけでなく、脳の認識が変わる影響も大きいのではないかと考えています。

つまり操体法は「快・不快という感覚を通して、“触れることで、中枢神経(脳)に働きかける”手技」。
ただし気持ちよさという、“曖昧な雰囲気”ではなくて、実際に脳の認識が変わることで、痛みが減ったり、からだが動きやすくなる。

神経による錯覚もありますけれども、その錯覚すらも上手に利用しているのが、操体法の原理だと考えています。

☆動画1:操体法のデモンストレーション

 

操体法→「ニューロリラックス(Neurorelax)」へ

操体法を学ぶうち、クライアントの体感や体験を重視して効果を出せる一方、これに理論的に説明がつけられないだろうか? と考え始めました。

いろいろ調べるなかで、カナダの女性理学療法士であるダイアン・ジェイコブスさんという女性理学療法士の方が、「デルモニューロモジュレーティング(Dermo Neuro Modulating)」という療法を開発されていることを、教えてもらいました。

  • Dermo=皮膚(真皮)
  • Neuro=神経系(ニューロン)
  • Modulating=調整、変調

という意味です。

皮膚の神経である“皮神経(ひしんけい)”を調節することで、疼痛(とうつう)が減少したりする療法です。その手法としては、クライアントにとって快適な方へと皮膚を伸ばすとか、伸ばして2分くらい待つとか……。

おもに皮膚を伸展させるやり方をとるので「あ、操体法と同じだ」と思いました。

僕は、操体法では、

  • 皮膚の伸展などをすることでその場所の神経の循環を促し
  • 神経の緊張=テンションや、滑走(神経周囲の組織をスライドさせる)を変化させる

ことで良い状態に戻していると考えています。

神経ってもちろん、皮膚以外にもありますよね? 脊髄もそうですし、脳もそうです。

そういった神経系全体に、皮膚の伸展をすることで働きかけ、その結果、脳が気持ちよさを感じること(快適感覚に至ること)で、痛みの抑制が起きるのではと考えています。

 

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–Profile–

岩吉新
岩吉 新(Shin Iwayoshi
フィットネス業界のマネージャー職や、趣味で行なっていた合気道などの武道を通して、人の身体を健康にする仕事を行いたいと思い、様々な手技療法を受ける。気持ちよさで身体のバランスが整うという操体法に出会い、創始者の内弟子の先生から、身体や皮膚の感覚と技術を基礎から応用まで学ぶ。東京田園調布に「neuro relax」を開業。その後、カナダの女性理学療法士が開発したデルモニューロモジューレティングを知り、開発者とコンタクトを取り最新の神経科学を学ぶ。その後、2017年に「デルモニューロモジュレーティング日本語版」の制作&翻訳を担当し出版。また2018年には「操体法を神経科学から読み解く」を執筆し出版する。

著者『デルモニューロモジュレーティング日本語版

操体法を神経科学から読み解く

Web site 岩吉新公式サイト「ニューロリラックス」