連載 ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング08「理想は活力が生まれるトレーニング」

| 大久保圭祐

巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?

この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります

 

ココロとカラダを繋げる

ボディコンシャストレーニング

第8回 「理想は活力が生まれるトレーニング」

大久保圭祐

 

大久保さん連載イメージ

 

筋トレで養うのは”活力”!

前回は「体を動かす」というごく当たり前のことが、当たり前だからこそ私たちが生きることに直結していることを書いてみましたがいかがだったでしょうか?

そんな運動を生み出す筋肉は成長します。

普段使っていなかった筋肉を使ったり、いつもより長い時間筋肉を使ったり、力強い動きや速い動きをすると、筋肉は成長します。そういった環境を意図的に作り上げて取り組むのが私が指導する「筋力トレーニング=筋トレ」です。

筋トレに取り組むことで、体が動かしやすくなったり、重たいものが持てるようになったり、体力がついたりするだけではありません。

筋肉がしっかりしたり増えたりすれば当然見た目も変わります。スポーツ選手やボディビルダーの方の体は、筋肉が大きくはっきりしているため筋肉の形や位置が目で見て分かります。同じ体重60kgの人でも、筋肉が多い人はシャープな体つきに見えますし、脂肪が多い人ですとふくよかな印象になり、見た目が全く異なります。

この筋肉は年齢を重ねるとともに落ちてきます。

「階段の登り降りがキツくなった」とか「体にハリがなくなった」「フタが開けにくくなった」「自分では足を持ち上げているつもりなのに、小さな段差に引っかかってしまう」……など、こうした年齢と共に低下してくる筋肉の機能を保持したり予防したりできるのも筋トレです。

使っていなかった筋肉を使うようになったり、筋肉が増えれば、その分、エネルギーが必要になり代謝が行われます。皆さんご存じのダイエットや体をシェイプするためには、摂取した栄養をエネルギーに代謝する筋肉を増やしてあげることが有効です。

太りにくい体を作ることも魅力的ですが、筋トレによって活力に満ちてくることもポイントです。これは気持ちの問題ではなく、筋肉が増えて体力が付くことで、それまでに比べて疲れにくくなるので、物事に長く取り組めるようになったり、新しいことに取り組む体力、活力が湧いてきます

 

食べることに主体性を持つ

実はこの「活力が湧いてくる」ことが、トレーニングやダイエットを成功させる大切な要因です。

特にダイエットを目標に運動をする際に、職業柄私も陥りがちなのが、「頭でダイエットをしてしまう」ことです。

つまり方法や手段(トレーニング理論や食事法、サプリメントなど)に注目するあまり体の声を無視してしまうことです。

確かに理論や方法論に従って取り組むことは大切ですが、「この運動をこれだけやっておけば大丈夫」「これを食べておけば大丈夫」といった取り組み方では、いつしかそれだけしかやらない理由になってしまい上手く行かないケースが多いのです。

また、こういったケースに陥るのは、1度ダイエットに成功して、その成功体験を手放せずに長期間ダイエットに取り組み続けていたり、2度3度と間を置かず次から次へとさまざまなダイエット方法に取り組んでいたりする方にも多いです。

(食べたい)(運動止めたい)(休みたい)という抑えている欲求の処理が出来ないまま、だけど取り組んでいないと不安だったり、結果ではなく取り組んでいる自分に満足して起こっていたりすることが多いです。

感情と上手く付き合うこともダイエットにおいて大事です。本能的にお腹が空いて食べているのか、摂取カロリーや血糖値の上昇を抑えた食べ方(GI値)、栄養バランスなどを頭で考えながらで食べているのか、ただただ感情的に食べたいから食べているのか、ふと食べている今を振り返ることも大切です。

「食べる」ということにも主体を持ってもらうと、「何でこんなにたくさん食べているんだろう?」とか「今、口にしているのは、何でだろう?」とか、お腹が減っているでもなく、好きな食べ物を味わっているのでもなく、ただ惰性で無意識に、あるいは感情的に食べていることに気がつくはずです。

食べるという行為に、ストレスの解消を感じているかも知れませんが、ただ感情的になって食べているということは避けたいところです。

どのケースもこの連載でのキーワードで言えば「ダイエットにおける主体が奪われている状態」と言えるでしょう。
この主体性を失わないために大事なのが、前回までに紹介してきたボディワーク的な視点です。

いま居る空間を自分がどんな風に感じて存在しているのか。こうした視点で自分に主体を置くことで、運動やダイエットが体重を落とすための「作業」ではなく、それ自体が自分の存在を再確認する「楽しみ」に変わるそれが私の考えるボディコンシャストレーニングです

大事なのは、

「今日はこのトレーニングをこれぐらいやらないといけない」「食事はこれだけしか食べられない」といったネガティブな取り組みになっている時にはそれにしっかりと気づき、受け入れ、立ち止まって見直してみることです。

止めてしまうのではなく、一旦ネガティブになったルーティンから抜け出す必要があります。決してサボることとは違います。

そこで無理して取り組んでも、抑えた感情は、後にドカ食いやイライラ、ストレスとなって積もっていき、何かを犠牲にして処理をしなくてはならなくなります。

心と体の関係性が上手くいっていると

  • 「なんか体が変わってきた気がするから目標よりも10回多くやってみよう」
  • 「今日は体が軽いからもう1周走ってみよう」
  • 「前の食事でしっかり制限したから好きなものを食べても平気だけど、気分がいいからこの次の食事でも量を控えてみよう」

とポジティブな取り組みになります。

どんな方法に限らず1度ダイエットや体を変えることに成功したことがある方は、このような状態を経験したことがあるのではないでしょうか? みるみる体が変わって、楽しくてたまらない状態です。

トレーニングは体に負荷を掛けることが必要なので、心と体の両方でしっかりと負荷を受け止め、それを負荷としてそのままダメージとして残してしまうのではなく、成長の糧にできる状態でいることが重要です。
そこの微妙な線引きこそ、しっかり自分の体に向き合い、自分の体の声に傾け、自信を持って受け入れる必要があります。

そういった塩梅のサポートをするのも我々パーソナルトレーナーの仕事でしょう。

体を主体にすることを忘れなければ、食事制限をしていても「やらされている感」がなく、自分のいまの状態を楽しむことができるため、逆に運動量を増やしてみたり、もっと取り組みを増やしてみたりと、どんどんクリエイティブなエネルギーが湧き、よいスパイラルが生まれ、ダイエットを成功に導いてくれます。また、逆に極端なダイエットに走るリスクも少なく、その人なりの体とのつき合い方を見つけることができます。

ダイエットに限らず、日常生活でも活力に漲ることはとてもステキなことです。以前は仕事が終わればクタクタで家に帰るだけだったのが、筋トレで体力がついたお陰で、仕事を終えてから習い事や遊びに行きたくなったり、それまで電車では疲れて何もやる気が起こらなかったのが、その時間を利用してちょっとした仕事を片付けたり、本を読んだりする余裕が生まれます。

ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、限られた人生の時間を有効に、有意義にしてくれる元が筋肉であり、そんな筋肉を育ててくれるのが筋トレであり、そのトレーニングの主体を自分に据えておくためにボディワーク的な視点が大事になるのです。

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筋肉を成長させる「機械的ストレス」と「化学的ストレス」

では具体的にはどんな筋トレを行うのが良いのでしょう?

この連載をお読みの方には既にご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、復習の意味でお付き合いいただければと思います。

ここまで書いてきたように筋トレで効果を得るには、使っていなかった筋肉を使ったり、筋肉が少しずつ長い時間や強い力や速い力を発揮出来るよう、適切に順応させていく必要があります。簡単に言えば筋肉を故意に疲れさせたり、出来ない動きにチャレンジしたり、今以上に力発揮をしようとすることです。つまりストレスを掛けてあげると筋肉は成長します。

筋肉を成長させるストレスは大きく二つあります

一つは「機械的ストレス」です。筋肉の中にある筋繊維が傷つけられ、タンパク質で修復されて筋肉が成長していきます。いわゆる「超回復」と言われるものでご存じの方も多いでしょう。

もう一つは「化学的ストレス」と言われるもので、筋肉を動かすことで血管が圧迫され疲労物質が蓄積することを利用したものです。前回ご紹介したものですね。疲労物質が蓄積すると、それを受けて脳の方では成長を促す「成長ホルモン」を分泌して、筋肉を強化しようとします。加圧トレーニングを思い浮かべてもらうと分かりやすいでしょう。

「機械的ストレス」を得るには、それなりに強い負荷が必要で、重たいウェイトや速い動きを用いたトレーニングに取り組みます。その結果、育つ筋肉は外から見ると太くて大きい印象を与えます。

一方「化学的ストレス」では、筋肉を何度も伸び縮みさせて血管を圧迫する必要があるので、反復回数を増やしたり、緊張させたままゆっくり取り組んだりします。成長ホルモンの分泌が手伝ってか、筋肉のみならず肌にも張りが生まれる印象を与えます。

一回一回の運動やトレーニングで、ストレスに打ち勝ち、それを積み重ねて筋肉は強くなっていきます。ある日突然、朝起きたら目に見えて筋肉が発達することはなく、少しずつ発達していきます。

適切にトレーニングに取り組めば、始めて3週間前後に「体が動くようになってきた」とか「ちょっと引き締まった気がする」といった、ちょっとした変化を感じます。これは使っていなかった筋肉に情報を送る神経が目覚め、筋肉が使えるようになって起こる変化です。

やがて、一ヶ月くらい経つと、過去に運動経験があったり、普段から体を動かすことが多い方ですと、筋肉が大きくなってきたり、張りを感じたりします。筋トレは継続して体に刺激を入れることで、徐々に体が変わっていくのを実感出来ます。

そして三ヶ月くらい経つと、取り組んで来た運動に合わせて、

  • 階段の登り降りが楽になった
  • 汗が出るようになって体に熱を感じるようになった
  • 前よりも疲れなくなった
  • 着ていた服や指にはめていた指輪が少しゆるくなってきた
  • フェイスラインがハッキリしてきた

などの効果が明確になって来ます。

もちろん個人はあり、実際には三ヶ月も経たずに、効果を感じたり、見た目に現れてくることが多いです。

筋トレで取り組む運動によって、筋肉の質が変わって、出来上がる筋肉が異なります。

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遅筋と速筋、目的に合わせて鍛えるのが大事

私たちの筋肉は主に二種類の繊維が集まって出来ています。

一つは、強い収縮力を持った太い繊維が多い速筋線維です。たくさんの糖質を蓄えられると言われています。
もう一つは、酸化系のエネルギープロセスを行うミトコンドリアを多く持ち、たくさんの毛細血管と繋がっていて、細い繊維が多く集まった遅筋線維です。

速筋線維の多い筋肉は見た目に白く「白筋」と呼ばれ、瞬発的な動きや強い力発揮を得意としています。

一方でゆっくりだけど疲れにくい遅筋線維の多い筋肉は、酸素を取り込む赤いミオグロビンが多いため「赤筋」と呼ばれています。まさに一瞬の素早い動きで獲物を捕らえる鯛や平目などの白身魚と、黒潮に乗って永遠と泳ぐ鮪などの赤身の魚と同じですね。

魚の例と同様に、筋肉の種類は刺激の与え方、つまり環境によって変化すると言われています。

つまり、先ほど確認したプロセスの異なる運動のどちらに多く取り組むかによって出来上がる筋肉は異なるのです。

瞬発的、強い力発揮を含んだトレーニングをすれば、そのトレーニングで使われる速筋繊維が多くなったり、肥大したりします。

持久的なトレーニングをすれば遅筋繊維が発達したり増えたりして筋肉が成長していきます。

見た目で言えば、同じ走るアスリートでも短距離の選手と長距離を走るマラソンランナーの体を比較すれば一目瞭然です。瞬発的、強い力発揮をする筋肉を構成する速筋繊維は大きく肥大する傾向があります。それに対し、遅筋繊維を多く含む持久系の筋肉は細くてしなやかになる傾向があります。

このように筋肉は環境から刺激を与えてあげることで成長します。目的に合わせた刺激を与えていくのが筋力トレーニングなのです。

前回と今回は、これから具体的に紹介していく「ボディコンシャストレーニング」に関連して、筋力トレーニングの大前提となる筋肉の成長に関して触れてきました。

次回からは、連載第一回目にも触れましたが、時々聞く「”筋トレ”で鍛えた筋肉は使えない」なんて誤解や「一生懸命に”筋トレ”に取り組んだのに、効果を感じない」「パフォーマンスも上がらず、却って体に不調を感じている」という方のためにいよいよその方法論をご紹介していきたいと思います

具体的には、これから新たにトレーニングを始める方はもちろん、いま既にトレーニングを行っている方にも役立つボディワークの智慧を採り入れて方、そのルールについてです。

ボディコンシャストレーニングの核心に迫っていきたいと思っています。

参考図書:
NSCA決定版ストレングストレーニング&コンディショニング』(Thomas R. Baechle、Roger W. Earle 編著 日本語版総監修 石井直方 ブックハウスHD刊)
新訂 運動生理学概論』(宮下充正、石井喜八 編 大修館書店刊)
よくわかる生理学の基本としくみ』(當瀬規嗣 著 秀和システム)

(第8回 了)


【イベント告知】

2018年08月25日(土)・26(日)に、渋谷のベルサールガーデンにて「第1回 ボディケアジャパン」が開催されます。

世界のボディケアを学び、体験できるフェスティバル。国内随一の規模を誇り 、カラダのこと、こころのことをより深く知ることができる、いままでにない祭典です。

コ2でもおなじみの講師の方々がほかにも多数参加され、ワークショップが行われます。ふるってご参加ください!

詳しくはこちらをご覧ください!

「第1回 ボディケアジャパン」公式サイト

「ボディワーク・ロルフィング®︎から学ぶ「ボディケア」 講師・大久保圭祐」

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–Profile–

大久保さん

大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト