連載 ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング09-01「カラダの中にスペースを作る!」

| 大久保圭祐

巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?

この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります

 

ココロとカラダを繋げる

ボディコンシャストレーニング

第9回-01 「カラダの中にスペースを作る!」

大久保圭祐

 

 

余裕=スペースを作る

ここまで自己紹介を踏まえコンセプトの確認から始まり、ボディワーク、ロルフィング®︎、筋膜、感覚、方向性、運動による体の変化、活力の取得と続けて来ました。

今回は具体的なトレーニングに結びつけていくために、身体の内側に意識を向けるためのスペースを作ることに触れます。スペースという言葉が分かりにくい方は「余裕」と言い換えても良いでしょう

運動を一心不乱、無我夢中で行うのではなく、動きながらも「ああ、いま自分は肩が緊張しているな」と感じられる余裕のことをボディワークでは「スペース」と呼んでいます

私自身、もっと前からこのスペースを持っていれば、若い頃に夢中に取り組んでいたことやスポーツがもっと上達したり、良い結果が残せたんじゃないかな、なんて思っています。

だからこそ今まで体の内側に意識を向けることに気を掛けたことのない方や、体の内側からの声に意識を傾けることが苦手と感じていたり、億劫と思っている方にこそ取り組んで頂いて、気付きを得てもらえるといいなと思っています。

とはいえ唐突に「体の内側にスペースを作る」と言われても難しいので、ワークを通しステップを踏んでスペースを作っていきます

体を動かしたり触れたりすることによって、生まれてくる様々な感覚や感情などをしっかりと味わうように受け止め、そうした感覚を感じられる余裕=スペースを体に残したまま動くことが目標です。

 

大事なのはプロセス!

ボディワークでは、体を動かしたり触れたりすることを「ワークする」と表現しますが、ワークのプロセスで新しい感覚や新しい体の使い方に「気付く」ことがポイントです。ワークはやり方を覚えてもらったり、練習してワークを上手く出来るようになるのが目的ではありません。

ですから一気にワークに取り組んで、「はい、終了! これで身体が変わるぞ!」と、回数やノルマをこなすように行うのではなく、一回一回の過程と動き、それによって起こる体の変化を吟味したり、しっかりと感覚を味わったりすることが大切です。そこに身体感覚や使い方を向上させる旨味が潜んでいます。だからこそ先に登場したスペースが必要になるわけです。

結果だけを期待するのではなく、プロセスを大切にして取り組んでみてください

 

肩甲骨と骨盤の動きを感じる

一番はじめに、実際に体の内部にあって動いているのを感じやすい肩甲骨と骨盤に意識を向けます。

先ずは肩甲骨に触って確認します

この時に大事なのは「手が肩甲骨に“触れて”確認」するのではなく、「肩甲骨が手に“触れられる”感覚」で肩甲骨を確認することです。

このアイデアはこの連載中に何度か登場していますので、分かりにくい方はバックナンバー(第五回)を読み返して頂いても良いでしょう。

 

肩甲骨からカラダを知る!

それでは肩甲骨の輪郭を確認してみましょう。自分で肩の後ろの辺りを触れて確認しても良いですが、誰かとペアになって確認すると一番分かりやすいです。動画と合わせてご覧ください

 

肩甲骨は背中の上の方にある三角形の形をした骨です。背骨(体の中心)を挟んで二つあり、背骨側の縁を上下にたどるとそれぞれに角を確認できます。

 

上の角(上角)は、少し強く触れてもらったり、押されたりすると「痛気持ち良い」かもしれません。下の角(下角)は人によっては、目で見るだけで出っ張っているのがわかり比較的見つけやすいでしょう。

下の角をそのまま骨に沿ってたどっていくと外側に向かって続いています(外側縁)。この辺は筋肉が覆っていて、分かりづらいかも知れません。

次に、上の角の少し下に肩甲骨を横断していく突起(肩甲棘)があります。この突起をたどっていくと肩の横の出っ張り(肩峰)に繋がります。こうして触ってもらっていると肩甲骨の位置や形、大きさが明確になるでしょう。

また触れられている方に意識を向けていることで体の内側に意識が向き、体が弛んだり、中にはこれだけでも体に対する感覚や見方、動かし方が変わった方もいるかも知れませんね。

 

肩甲骨を動かそう!

では次に肩甲骨に意識を向けて作ったスペースを維持したまま、実際に肩甲骨の動きを確認したいと思います。

肩甲骨は腕や肩の動きに合わせて上方向、下方向、内方向、外方向など体内を比較的自由に動きます。その反面、ここがあまり動かせていないと、腕の動きを制限して肩や首などに負担が掛かってしまいます。

一般的には「肩を持ち上げる」「肩を引き下げる」「肩を後ろに引く」といった動きをする時に肩甲骨が動いています。こうした動きをする時に、分かりやすい肩の動きではなく、先ほど確認した肩甲骨が動いている感覚に意識を向けてみましょう

まず、肩を上下に動かしてみてください。急いで動かすのではなく、ゆっくり体の中で、肩甲骨が上下に移動しているのを感じます

同様に、今度は肩を前、後ろと動かしてみてください。この時も肩甲骨が外側・内側へと動いているのをしっかりと感じます。

慣れてきたら、指を肩の上に置いて、肘で円を描くように腕をゆっくり回してみてください。動いている肘や肩に意識を向けるのではなく、肘と一緒に肩甲骨が背中の上で大きく回っているのを感じてみてください。“カラダの内側”で肩甲骨が動いているのを感じられますか?

(腕を動かせば肩甲骨が動く)と思って動かすのではなく、(腕と肩甲骨は別々でなく一緒に動いているんだ)とイメージすると、肩甲骨が動いているのを感じやすくなります

こうして肩甲骨へ意識を向けたまま取り組むことで(腕と肩甲骨って繋がっているんだな)(肩甲骨から腕が動いているんだな)など、腕の認識が変わったり、(肩甲骨がしっかりと動くと肩や首が軽くなった)といった気づきが生まれたりするかと思います。

これはトレーニングをする時に、腕を動かすポイントとなる肩甲骨の意識です

スペースから肩甲骨と骨盤を感じるだけでも、自然と身体にあった無駄な緊張が取れたり、繋がりの強い腕や脚を動かしやすくなったりしますこのスペースをキープしたまま動くことがボディコンシャストレーニングなのです

 

水平性の要「骨盤」

肩甲骨の次は骨盤です。骨盤はお腹の下の方にあるボウルみたいな骨です。肩甲骨同様、骨盤の輪郭に触れて、触れられている部位から感覚を通して確認します。

 

比較的座面の固い場所に座ると、お尻と脚の境目辺りに坐骨があります。おへその下を辿っていくと恥骨があります。骨盤を後ろ側から触れると中心には仙骨という骨があります。それをずっとお尻の中心を通って下へと辿っていくと、先端には尾骨という骨が確認出来ます。

左右の坐骨、前方の恥骨、後方にある尾骨、この4つを結ぶとダイヤの形になります。これでボウル型をした骨盤の底面の意識の出来上がりです。

 

そして、仁王立ちのように少し強気で立った時に腰に手をあてる位置の前方には一般に”腰骨“(上前腸骨棘)とも言われる骨の出っ張りがあります。

この腰骨から上に骨を辿っていくと後方へのアーチ(腸骨稜)を確認できます。後方の出っ張り(上後腸骨棘)は見つけにくいかも知れませんが、左右両方にあるので、これを比較することによって骨盤の歪みを判断することもあります。その出っ張りの内側には、先ほど確認した仙骨があります。

これで骨盤の形や大きさを確認できたかと思います。

今度は今作ったスペースを維持したまま、骨盤を動かします。

いま確認した左右の坐骨と座面との接点に意識を向けて、左右の坐骨へ均等に体重が掛かっているのを感じます。そのまま、ゆっくり腰を反らせるように骨盤を前に倒したり、お腹を丸めるように骨盤を後ろに倒したりを繰り返します。

すると腰骨や骨盤のアーチが前後に動いているのを確認できます。丸いボウルが揺れているような感じですね。

この動きをすること自体が目的ではありません。動作を繰り返すうちに骨盤が前後に動いている様子が座骨から伝わってくるでしょう。わずかに動かすだけでも、それに合わせて上半身も動くのを感じ、自分にとって楽な位置が認識できたり、自然に上半身の緊張が解けていく方もいらっしゃるかもしれません

慣れてきたら、敢えて一方の坐骨に体重を乗せても良いです。骨盤が傾くのを感じ、同時に背骨もそれに合わせて一緒に動いているのを感じることができます。肩甲骨の時と同じように、目で見て動いているのを確認するのではなく、体の内側に意識を向けて骨盤が動いているのを感じてくださいね

これもボディコンシャストレーニングで体を動かす時に使う意識・感覚です

この骨盤の意識は、体の水平性を保つのにとても大切です

ボディワーク・ロルフィング®︎では、骨盤の一定の箇所をどこかと平行にして水平を作るのではなく、骨盤を取り囲む筋肉や筋膜などが、前後、左右とバランス良くほどよく緊張している位置を水平が保たれていると考えます

例えば、骨盤を前に倒せば腰部に緊張が生まれ、後ろに倒せばお腹に緊張が生まれます。前後程よく緊張し、無駄の緊張の無い位置が水平性が保たれている位置となります。こうして骨盤を前後や左右に傾けることによって水平性を認識でき、それは丁度骨盤というボウルの中(スペース)に沢山入ったもの(内臓などですね)がこぼれないように動くような意識ができてきます。

骨盤の上にはお腹や頭、腕、下には脚があるため、この骨盤の水平性を保つことは、全身のバランスを整えることに直接関係しています

こうしたワークを繰り返すことで、私達が普段意識することが少なくなってしまった重要な要素「地面」と「平行」の関係性を改めて築くことができます

(参考図書:『身体能力を高める「和の所作」』(安田登著 ちくま文庫))

(第9回-01 了)

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–Profile–

大久保さん

大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト