連載 ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング09-02「カラダの中にスペースを作る!(脊柱)」

| 大久保圭祐

巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?

この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります

 

ココロとカラダを繋げる

ボディコンシャストレーニング

第9回-02 「脊柱を感じる!」

大久保圭祐

 

 

脊柱を感じる

さあ次は脊柱、一般的に背骨と呼ばれる私達の体のなかでも大事な部分にアプローチしてみましょう。

脊柱は皮膚に近い表層にあって触って確認しやすい骨です。ですが、体の後ろ側にあるために自分では意外と意識しずらく、普段はあまり自分の背骨がどうなっているのか気にされている方は少ないかもしれません。

また、脊柱は体の「軸」を連想させることが多く、真っ直ぐなイメージをお持ちの方が多いかも知れません。ですが実際には首、胸、腰、骨盤と4つのエリア毎に前後にカーブをしています

ここではそのカーブを実際に自分の体で感じることで脊柱を感じられるスペースを作りたいと思います

骨盤と同じく、左右の坐骨に体重が均等になるよう座ります。正座やあぐらよりも椅子に座ると取り組みやすくなります。

先ずは骨盤の中心にある仙骨に手で触れてみてください。その仙骨の下方の延長線上には、先ほど確認した尾っぽの骨と言われる尾骨があります。ここが脊柱の一番下の位置です。

この仙骨と尾骨は若干後ろにカーブして、丸みを持った形をしています。手で触ることができるので、実際に触って確認できるかと思います。

今度は仙骨から骨を上の方へと辿っていきます。その時の姿勢にもよりますが、腰は体のシルエットの印象通り前方にカーブしているエリアです。このカーブが強いことを「反り腰」なんて言いますね。

両腕を体側に付けた時の肘の高さぐらいまでが「腰のエリア」と言われています。さらに上へと辿っていき、左右の肩を結んだ高さまでが胸のエリアです

このエリアは背骨と肋骨が繋がっていて、後ろに膨らむようにカーブしていて丸みが感じられます。地面に仰向けになったり、壁に寄りかかると、首や腰のエリアは隙間ができたり接点が薄かったりしますが、胸のエリアは地面や壁との接点が濃くなりますね。猫背になると一層丸みが強調されるエリアです。

そして、肩の高さよりも上が首のエリアです。ちょうど耳の後ろの左右出っ張った骨を結んだ高さ、脊柱の一番上までが首、それより上が頭です。首のエリアは手で触ると前に湾曲しているのを確認できます。

ここまで辿ってきたのが脊柱です

改めて今確認してきた脊柱を感じてみてください。それだけでも脊柱が自然と整って、姿勢が整うのを感じられるでしょう。いわゆる「気をつけ!」で背筋を伸ばそうと頑張るのとは違う、脊柱を中心に周りにスペースを感じられ楽でキレイな姿勢が出来上がります。

 

脊柱のスペースを感じる簡単な方法として、仰向けになるのもお勧めです

仰向けで脊柱と地面との接点に意識を向けます。

まず仙骨と尾骨が地面に着いているのを感じます。

腰のエリアは反っているため、比較的地面との関係性が薄れているのを確認できるでしょう。

逆に胸のエリアは地面に対して出っ張っているため、地面と触れている部分が感じやすいでしょう。

そして、首のエリアになると、また地面との関係性が少し薄れるのを感じます。こうして地面に触れてもらうことで(?!)脊柱を身体の内側から確認することができます。

 

また仰向けで行うと、地面と脊柱との距離や感じ方の強弱を確認することで、普段どれだけ体を緊張させているかが分かります。

 

脊柱を動かして軸を感じる

次に体を前後や左右に倒し、それに合わせて脊柱も前後や左右に曲がるのを感じてみてください。私たちが日常動作で様々な動きに合わせて、脊柱もこうやって動いているのです。

こうしたワークを行うことで、スペースに「軸」という大事な意識が生まれます。この軸感覚が明確になると、歩いたり上体を横に倒したりねじったりする動きの時に一層身体がブレなくなり、運動はもちろん体を動かすことがやりやすくなります。

脊柱は体内に実存するものですが、「軸」というのは意識で作り上げるものです。この「軸」を脊柱に重ねる、または前・後にずらすなど、どこに意識をするか、あるいは無意識にどこに軸を取っているのかが、動きの質や精度に大きく影響しています。

この感覚は、日本人と西洋人など民族性の違いや、日本人でも農耕を主としていた頃と現代では異なっていると言われています。(参考図書:『たたずまいの美学「日本人の身体技法」』(矢田部英正著 中公文庫))

特にロルフィング®︎では繊細な動きを大切にするため、このスペースに重なる脊柱の前側(プリバーテブラと呼びます)を意識します。

最初にも触れましたが、実際に背骨は体の中心よりも後ろ側にあるため、先ほど確認した背骨の前側を意識してもらうと丁度身体の中心を通る「軸」に近い意識になります

 

「背骨の前側を意識する?」

なんて驚く方もいらっしゃるかも知れませんが、脊柱そのものを意識して体を前後や左右に倒すのと、プリバーテブラを意識して体を前後左右に動かすのとでは、体を動かして得られる感覚が異なります


脊柱そのものの場合は、動作が大きくなり、よく言えば「動きに力強さ」
を、プリバーテブラを意識すると、より安定して滑らかに動くのを感じます。

ボディワークでは、正解があるのではなくワークを通して得られた感覚や経験そのものを受け入れることが大切です。何回やった、何時間取り組んだといった量的な要素も技術や知識、感覚の習得の参考にはなりますが、何か新しい動作や感覚に気づいてパターンを増やしたり、今の自分にとってどのパターンが適しているかなど探求していくことが大切です。

そのためにはここでお話ししている「スペース」が必要です

特にトレーニングの様に負荷を掛け、限界を引き上げる時にこそ、体と心を切り離さずに、結び付けるスペースを感じて欲しいのです

ですので、このワークでは、普段なかなか意識しない脊柱の前側に軸を意識することを紹介しましたが、それを正解とするのではなく、感じたままを受け入れて、先ずは(動作が変わってくるんだな)といった簡単な受け止め方から、心地よい体の使い方をご自身に取り入れてみてください

 

呼吸によって生まれる動きで、体のサイズを確認する。

次のステップでは体内にあるものからスペースを確認するのではなく、呼吸をすることで体のサイズを意識してスペースを作ります

まずは何も考えずに深く大きな呼吸をしてみてください。特に意識して深く呼吸しなくてもOKです。ただ自然に呼吸をして、それに合わせて吸った時と吐いた時に体で起こっていることをそのまま受け入れてください。

 

酸素を取り込もうと息を吸うと、体が膨らんでくるのを感じます。逆に吸い込んだ息をゆっくり吐いていくと、体が縮むのを感じます。その時に体の大きさが変化しているのを感じることで、体のサイズに意識を向けることができますね

この時に、体を前後や左右から挟むように触れたり、誰かに触れてもらうと、体の内側から自分の体の輪郭を意識でき、呼吸に伴って生まれてくる動きを感じやすくなります

特に、呼吸に伴って風船のように膨らんだり縮んだりしている肺や、輪郭そのものの形を作っている肋骨をイメージすると意識がしやすいでしょう。(参考図書:『理系ボディワーカーが教える“安心”システム感情片付け術』(小笠原和葉著 日貿出版社))

肺は鎖骨のすぐ下から肋骨が八の字のように広がっている胸とお腹の境目の位置くらいまであります。それを囲うようにあるのが肋骨です。

体の輪郭というのは普段意識することのない感覚です。この感覚が身につくと、自分の体と外部との境目がはっきりとして、身の回りの環境との付き合い方が上手になったり、体の内側に意識を向けやすくなったりします

いつも同じ場所をぶつける、怪我することが多い方は、自分の感覚と実際の体のサイズとに違いがあるのかもしれません。また、(少し気持ちを整えたいな)なんて思った時は、輪郭を意識したり、実際に手で体を触れて輪郭を確認すると、環境と切り離された感覚が生まれて気持ちが落ち着きます。

◯肋骨

肋骨の動きも体のサイズを意識するのに役立ってくれます。最初のうちは息を吸うと膨らんで、吐くと縮むのを確認するのでも構いませんが、慣れてきたら、三次元的に、縦横、奥行きの三つの方向性を意識して、そこにあるスペースを確認してみましょう

・前後の方向性

肋骨は構造上、上の方が前後によく動くと言われています。そこでまず、肋骨の上側を手で前後から挟んでみましょう。体の緊張で動きが制限されやすい後ろ側にしっかりと動きが生まれるのを感じることが大切です。パートナーがいれば胸と背中を挟むようにして触れてもらうと良いでしょう。一人の場合は壁に寄り掛かったり、仰向けに寝て床や地面を背にして行っても良いでしょう。

 

この時も、触れている手に意識を向けるのではなく、触れられている部分に意識を向けます。呼吸とともに肋骨が動き、体の内側から膨らみ、また縮むことを感じて、その動きを「許す」ことで体から緊張が抜けてゆき、深く緩んでくるのを実感できるでしょう。またそれとともに、より前後の動きが強調されるのが分かります。

ここで言う「許す」とは、体が自然に行おうとする動きを「見守る」という感じです。「何かしよう」というコントロールを手放して、「ああ、こんな風に動くのか」静かに眺めてあげる。慣れてくると自分でも思わなかったような動きに気が付いたり、深いリラックスを感じられるので、是非トライしてください。

・左右の方向性

肋骨の下の方は、上とは異なり、左右によく動くと言われています。そこで今度は肋骨の下端を左右から挟むように手を当ててみましょう。先ほどと同様に、触れている手に意識を向けるのではなく、手を触れられた部分に意識を向けます。

 

あまり動きを感じられない時は、たくさん空気を届けるような意識を持って呼吸をしてみてください。繰り返すうちに、呼吸に伴って横方向への動きが大きくなるのを感じられるでしょう。

この時に大事なのは、何か(新しい動きをしよう)と意識するのではなく、体の緊張によって堰き止められていた動きの広がりを(許してあげる)感じです。新しい動きをしようとすると、新たに緊張が生まれてしまうからです。

・上下の方向性

肋骨周辺は普段無駄に緊張させていて、自覚がなくても持ち上げてしまっていることが多い部分です

首の付け根に近い肩の上に手を置き、呼吸に伴う肋骨の上下の動きに意識を向けます。特に肋骨が降りていく動きに意識を向けてみてください。この時にリラックスを意識しすぎて、無理に肩を下げようとすると、かえって体に緊張を増やしてしまうことになります。ですから、緊張に気づいた部位の重さを感じようとしてみてください。そうすることで、スッと緊張を取り除くことができます。

 

最後に呼吸に伴って、肋骨が前後、左右、上下の方向性を持って動くのを感じてみます。深く大きな呼吸ができたかと思います。何度か続けてみてください。

慣れてきたら、呼吸に伴って肋骨、先ほど確認した肩甲骨や骨盤、あるいは脊柱が動いているのを感じてみてください。

いかがですか? それぞれの部位が、呼吸に伴って、動きに関係性が生まれたことに気づくことができます

また、呼吸で動きを感じやすい胸やお腹だけでなく、肩やお尻を横から挟むように触れて、そこにも呼吸に伴って動きがあるのを感じてみてください。

それが感じられるようなら、今度は少し発展させて、腕や脚などにも酸素を届けるような意識を持って深い呼吸をしてみてください

呼吸に伴って動きを感じやすい体幹部だけでなく、普段気づきにくい腕や脚にも呼吸に伴う動きを感じたり、わずかな捻じれや、緊張に気付いたりすることができます。その時は、先ほどの肋骨のワークと同じように、動きを感じて(許して)みてください。普段意識することのない、体にこびりついているような緊張も次第に解けていくはずです。

こうしたワークを行うことで、呼吸というシンプルなワークから、全身の繋がりを確認することができ、改めて(体は一つなんだな)なんて感じることができます

ここまでの取り組みだけでも、いつも気にしていなかったような身体の緊張や、意識を向けていなかった体の部位や動きに気づくことがあったのではないでしょうか? その一つひとつが普段気にすることのない体の情報なのです。

(第9回-02 了)

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–Profile–

大久保さん

大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト