連載 ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング09-03「カラダの中にスペースを作る!(水平面)」

| 大久保圭祐

巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?

この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります

 

ココロとカラダを繋げる

ボディコンシャストレーニング

第9回-03 「水平面を感じる!」

大久保圭祐

 

 

水平面を感じて、体のスペースを確認する

最後は少し難しくなりますが、トレーニングを紹介していく上で大切な意識です。じっくりと取り組んでみてください。

どの体勢でも構わないのですが、取り組みやすい立位のポーズで進めます。

足裏と地面との接点に意識を向けます。そして、体の下のパーツが上のパーツの重さを支えていて、足裏全体で地面にしっかり触れているのを感じます。

連載第三回目で紹介した「体の重さを感じる(緊張を手放して作る)ワーク」です。体の重さがしっかりと地面に預けられて、グラウンディングしている状態で、重力という環境からの力と効率の良い関係性を築いたことになります。

これは同時に、自分と地面との間に「垂直」の関係性を築いたことでもあります。

 

隔膜構造を意識して水平の意識を作る

1 膝

次に膝を囲うようにタッチして、膝の水平面の意識を作ります

先ずは片脚の膝を前後から囲うようにタッチしてみてください。

そして、その膝の水平面と地面との間に生まれた「平行」という関係性を受け入れ意識します。

では、左右の脚の感じを比較してみてください。タッチをした方は、自然と足の上に膝が位置して、それが土台となって自然とその上に太ももがあるのを感じられるでしょう。また脚から余計な力が抜け、自然と膝がしっかりと伸びている感じが生まれます。

左右差をしっかり味わったら、反対側も同じように取り組んでみてください。

こうしたワークの際には、外部の環境にこだわる必要はありません。もちろん静かな環境で目を瞑るなど外部からの情報を遮断することはサポートになりますが、必ずしもそうでなくても、しっかり体の内側に強く意識を向けられればあまり関係はありません。これは今回のワークに限らず、これから紹介するトレーニングをするときも一緒です。

むしろ、そうした環境下で行うことで、実用的で主体性を持ったワークになります。慣れてくると、むしろ雑多な環境の方が、その環境に属してはいるけど、環境に飲み込まれていない自分がいるような感じで、自分の内側とのギャップがあり効果を感じやすくなったりもします。

 

2 骨盤

お話を戻して骨盤の底面に水平面の意識を作っていきましょう

先ほど確認したおへその下にある恥骨、座面との接点となる左右の坐骨、尾っぽの骨の尾骨を結ぶとダイヤの形になります。それを水平面として意識します。

実際にその内側には骨盤底筋群というハンモックのような筋群があり、尿を我慢したり、お尻の穴を閉めようとすると反応します。これをイメージしてもらうと意識しやすくなるかも知れません。

 

3 横隔膜

続いて、肋骨のちょうどみぞおちの高さを左右から囲うようにタッチして、水平面を意識します。この位置にはちょうど体幹を上下に分けるドームのような横隔膜があるので、意識できる方はそれを意識してもOKです。

 

4 胸郭出口

次も同じように首の付け根の高さにタッチして、水平面を意識します。実際には胸郭出口と呼ばれる場所です。

 

5 頭

次に耳の後ろの突起を結んだ線の高さと同じ頬の骨の高さにタッチして水平面を意識します。蝶形骨と呼ばれる骨がある高さです。

最後に地面を含めたそれぞれの水平面が、平行の関係性を持っていることを受け入れてみてください。無理に全部を揃えようとする必要はなく、中でも印象が強かった水平面同士の関係性に意識を向けます。また、厳密に揃える必要はなく、各水平面を揃えるように意識します。

 

体の中の水平を感じる

実はここで感じていただいたそれぞれの水平面は、隔膜構造といって構造的にも水平性が見られる部位です。

ボディワーク・ロルフィング®︎では、この隔膜構造の関係性をとても大切にします。

重力という絶対的な力によって、全ての物体に重さが発生して垂直方向の力が生まれます。そして、この垂直性と地面の関係から姿勢や表現、動きの間に水平性も見出すことができます。

大事なことは良い意味でアバウトに、それぞれの膜を◯度、◯㎝などと厳密に揃えようとするのではなく、関係性を意識できればそれでOKです。

実際に私たちの動きに大事なのは、意識の中で持つ関係性であり、それが姿勢や表現、動きに繋がりを生んでくれるからです。

こういった感覚による関係性は、意識さえしていれば消えてしまうことはありません。良くも悪くも半永久的に残すことができ、それによって体を大きく変えることができます

「カウンセリングで姿勢を正したその時はいいけれど、ちょっと動くと意識することができない」とか「セッションを受けた後は良いんだけど、家に帰ると姿勢が崩れちゃう」と仰るクライアントの方に、ここで紹介したような意識をお土産として持たせてあげると、効果が長続きしたり、次にお会いした時に身体が変化したりします。

実際に行うときには「ヨシッ!」と頑張って取り組もうとするとムダに緊張してしてしまうので、サラッと集中することを大切にしてみてください。

意識ができた、できないにあまりこだわり過ぎず、(正しくやろう!)と無駄に緊張したり、「こうだ!」と無理に当てはめようとしせず、自然に体の中で起きていることを“許してあげる”ことで(なんかいつもの体の感覚とは違うな)と気づくことを大切にしてみてください。

サラッと集中する鍵は、体の水平性。

 

ボディコンシャストレーニングでは、新しい感覚や意識、体の使い方を得たり、気付いたりすることで、筋力アップ(カラダのパワーアップ)だけでなく感覚アップ(ココロの感度アップ)も大切なのです

この先の連載、具体的なトレーニング方法を紹介していきすが、さまざまな意識を使ってスペースを保ったままフォームを作ったり動作に取り組んだりします。

 

優しく触れる

このスペースを作るワークは、ペアで取り組んでも一層効果的です。行うにあたってはなるべく親しい人や心が許せる方と一緒に取り組むことをオススメします。

受け手は立ったまま、与え手が足、膝、下腹部、肋骨、首の付け根、頬骨と耳の後ろの骨を前後や左右から挟むようにタッチしていきます

この時に「膝の〇㎝横の位置」など触れる詳細な位置にこだわるよりも、優しく触れてあげることが大切です。

(ただ触れるだけ?)と思うかもしれませんが、触れられることで、その部分に意識が向けやすくなることが大切です。

また、触れる方も、触れられる方も、タッチそのものに体にとってとても優しい効果があると言われています。(参考図書『脳からストレスが消える肌セラピー(青春出版社)』

人は癒すときや痛みを和らげるとき、落ち着きを取り戻すときなどに、無意識にというより本能的に触れることをしています。

ボディコンシャストレーニングでは、体の内側と外側の両方に意識を向けていることが大切になりまが、その際にもタッチ=触れる・触れられることはとても大事です

トレーニング時には、内側に意識が向き過ぎてしまうと、それはそれで「細かいことを気にし過ぎて本来の力が発揮できない」「そちらにエネルギーを費やしすぎて疲労ばかり感じてしまう」など、ちょっとした心の状態が反映されてしまって、トレーニングのパフォーマンスを下げてしまうことがあります。

理想的には自分に意識のメーターのようなものが存在したら「外側に50%、内側に50%」と振り分けるのではなく、「外側にも内側にも100%」と、両方に意識を向けるような感じです

失われやすい内側の意識を保ちつつ、外側の環境にも適しているバランスの取れた状態です。

体を外側の環境から離れてしまったり、心の状態と無関係なまま動かすのではなく、体と環境、体と心が、どんな体勢であろうとどんな動きをしていようと、繋げる意識が満ちた状態が理想的なのです

 

体から自分を解放する

これは、日常で質の高い生活をおくる上でもとても大切です。

この連載で登場するスペースは、環境と心と体を意識で結びつけるための要素と言えるでしょう。錆びたり古くなって固まってしまった歯車をスムーズに動かすために位置を調節することでスペースを作り、そこに潤滑油となる意識が流れ込む。そんなイメージとも言えます。

そうすることで、次第に自分のニュートラルを確認することができるようになります。

嫌なことで気分が落ちている時も、飛び切り良いことが起こって浮き足立っている時も、ちょっとナーバスになり過ぎて居着いてしまっている時も、スペースがあることでニュートラルな状態を認識できて、いつでもそこに戻れるわけです。(参考図書『身体のホームポジション(BABジャパン)』

私たちの多くはトレーニングのシーンに限らず、日常生活でも体の声に耳を傾けているのが難しくなっています。

そこで生まれるココロとカラダのギャップをそのままにしておくことは、自分で自分に嘘をつくことと言えるでしょう。特に現代は強い刺激や、たくさんの情報が体に与えられて、緊張状態がずっと続いていることから、自分がストレスを受けていることについても気が付かないことが多く、それが体の不調に現れている方も少なくありません

私のクライアントさんでこんなケースがありました。

その方はムダな贅肉もなくとても細身の方でしたが、「体重を落としたい。体を引き締めたい」といったご要望を受けました。

トレーニングやケアを通して、実際に要望に沿いつつムダな緊張や体の活性が落ち着いていくうちに、当初に挙げた目標に到達する前に「なんであんなに体重や体を引き締めたいと思っていたのだろう」と言って満足されてしまったことがありました

その方は別に目標を諦めたわけでも、嫌になったわけでもなく、体からムダな緊張が取り除かれ、落ち着いて自分の体と向かい合ってみると、それまで自分が固執していたことや執着から解放されたようです

体が変わることで心が満たされることもあるのです。恐らくその方の中で乖離していたココロとカラダが近づいたのでしょう。

ただ変化するのを待つのではなく、ココロもカラダも含めて変化する方法を探し、気付くことも大切なのです。

体が満たされると、心も満たされる。

 

次回からは具体的な筋力トレーニングを紹介します

どれもシンプルな動きの反復が多く、普段あまり運動をしない方はもちろん、そもそも運動やスポーツをする機会があまりなかった方にも取り組みやすいものばかりです。

いずれも、その動作の中で鍛えようとしている筋肉をしっかり使うことが一番大切です。筋肉が伸びている、縮んでいる、動かしている辺りが熱を持っている、ジリジリする、乳酸溜まって筋肉が動かない、などなど。こういった感覚は筋肉を使っているサインでもあります。

それをしっかりと得られるようにフォームを習得(外側からの視点)することも大切ですが、ボディコンシャストレーニングでは、そのフォームに主体性を奪われてしまわないよう身体の内側のスペースをつぶさずに取り組むことを大切にしていきます。

筋力トレーニングから始める動的マインドフルネスとして、スクワット、シットアップ、プッシュアップ、ウォーキングを紹介していきたいと思います

(第9回-03 了)

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–Profile–

大久保さん

大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト