連載 ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング10-01「スクワットを見直そう!」(前編)

| 大久保圭祐

巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?

この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります

 

ココロとカラダを繋げる

ボディコンシャストレーニング

第10回-01 「スクワットを見直そう!」(前編)

大久保圭祐

 

Image: iStock

 

トレーニングにもダイエットにも効く「スクワット」

体の内側に作ったスペースを潰さないようにトレーニングを行うことが、この連載の一番のポイント。それを踏まえて、

今回は「スクワット」を紹介したいと思います

最近改めて注目されているスクワットは、主に太もも、お尻、ももの裏、ふくらはぎなど一度にたくさんの筋肉を鍛えられるトレーニングです

特に太ももやお尻の筋肉は体の中でも大きい筋肉であるため、効率よく体の筋肉量を増やして一気に代謝を上げることが出来ます。

そのため忙しくてあまりトレーニングに来られない方、短期間で体重を落としたい方や引き締めたい方などのメニューに取り入れることが多いです

では、まずはスクワットのやり方を紹介します。

 

【スクワットのやり方】

  1. 脚を腰幅よりやや広めに開いて立ちます。より開くと内ももの筋肉が鍛えられます。
  2. 腕は胸の前で組み、胸を軽く立てます。視線を上に向けると、胸が立てやすくなります。この体勢からスタートします。
  3. お尻を後ろに引くように上体を下ろしていきます。椅子に座るような感じですね。
  4. 太ももが地面と平行の高さまで降りたら元の位置に戻ります。降ろす高さを変えることで、負荷を調節出来ます。深く降ろすほど脚部への負荷が高まります。必ず無理のない範囲で取り組んでください。

※この動作を繰り返します。

注意するのは、上体を下ろしていく時につま先よりも膝が前に出ないようにします。ここがただの屈伸運動とは違う大事なポイントです。

膝を前に出さないことで、体の中心線から股関節が離れ、股関節周辺の大きな筋肉がしっかりと働いて鍛えることが出来ます

実際に、つま先よりも膝を前に出して行うと、膝関節が中心線から離れてしまい、すぐに疲れてしまいます。

筋肉が硬かったり、関節が滑らかに動かず、上体を降ろそうとするとバランスを崩して後ろに倒れそうになる方もいらっしゃるかも知れません。取り組んでいるうちに少しずつ上手になるので、くれぐれも無理のない範囲で行ってください。

ここからはボディコンシャストレーニング的に、スクワットに取り組む時に大事なスペースの作り方と意識のしかたをステップ順に紹介していきます

 

◯ステップ1、骨盤を意識して股関節の動きを感じる

スクワットは体の中でも大きな筋肉を鍛えるトレーニングですので、股関節をしっかりと動かしてあげる必要があります。漠然と股関節を動かすと言っても難しいので、第9ー01回で確認した「骨盤」の意識を使いながらスクワットに取り組みます。

① 骨盤のボウルの上の縁に沿う様に、腰に手をあてます。

② 骨盤に意識を向けたまま上体を下ろしていきます。

骨盤が前に倒れた瞬間に(はい、骨盤を前に倒しました!)と、意識を切ってしまったり、(骨盤を前に倒す!)と意気込んで腰を反りすぎない様にします。自然と骨盤が前に倒れているのを探す様に、骨盤が継続的に動いているのを感じます

③ 下まで降りたら、元の高さに戻ってきます。その時に、今度は骨盤が少しずつ後ろに倒れていき、最初の位置に戻ってくると骨盤が元の傾きに戻り、骨盤が立っているのを感じます。

④ 骨盤に意識を向けて、骨盤が前後に動いているのを感じながら、繰り返します。

 

実際に行ってみると股関節がよく動くのを感じられて、太ももでも比較的脚の付け根の方の太い箇所に疲労を感じたり、お尻の筋肉が動いているのを感じられるかと思います

なかには上体を降ろしていく時に、ある一定の高さから骨盤が前ではなく後ろに傾くのを感じたり、上体を下ろしていく時に背中や腰が丸まってしまい、適切なフォームではないことに気づいた方もいるかも知れません。これは年齢が高い方や男性によく見られるケースで、このフォームのままトレーニングを継続しても、鍛えたい部位に効果がなかったり、腰に余計な負荷が掛っていたりします。

こうした場合は、目標回数を終えようと急がず、回数よりも正しく意識して行うことを優先してください。不必要な緊張が生まれてきたと感じたら、そこで無理に続けずストップしてOKです。そうした僅かな感覚を観察することが大事です。

こうした意識を持つことで、自然とフォームも修正されていきます

今回スクワットをテーマに幾つかのワークを紹介していきますが、一度に全てのワークを消化してしまうのではなく、一つ取り組んでみて「気づき」が生まれたら、それを味わって日常を送ったり、しばらくはその意識を使ってトレーニングに取り組んで頂くと、自然と身体に定着します

また、そこからまた新しい気づきを得ることも多いです。

ボディワーク・ロルフィング®︎のセッションを受けている時も、セッションの内容や状況にもよりますが、大体1週間くらい開けることを勧めています。

あまり一度にたくさん行っても、どれも気づくだけ、知るだけでお終いになって定着しないことがあるからです。

私もクライアントさんに一度のセッションで一つ(一つ気づきを得てもらうのも難しいです)、多くて二つの気づきを得てもらい、帰り際に再度その日の得た気づきを意識することを伝えて、お帰りになってもらうことが多いです。

 

◯ステップ2ー01、カカトを意識して、お尻を感じる

スクワットをすると「脚に余計な筋肉がついてしまう」と心配する女性にこそ、しっかりとお尻の筋肉を使って取り組むことをオススメします。お尻は筋肉でボリュームを出すことでヒップアップに繋がるからです

その上、お尻の筋肉は大きいので、鍛えるほどに効率良く代謝を上げることができるのでダイエットに有効です

ここで大事になるのが、漠然と行わず、スクワットの時にカカトを意識することで、鍛えることが難しいお尻の筋肉を上手く使うことが出来ます

だからと言って、「カカトで地面を踏めばお尻の筋肉を使えているんだ」と体を感じることを忘れてしまったり、つま先を持ち上げてカカトだけ地面に着けて取り組むのはNGです。

足裏で地面をしっかり押して力を発揮する時に、カカトをしっかりと意識することがポイントです

そのためにはスクワットを行う前に実際にカカトに触れて、そしてカカトから「触れられている」感覚にも意識を向けて確認していきます

① ワークは片足ずつ行います。先ずは両サイドからカカトを摘んでみてください。すると、外側はすぐに骨を感じることができ、内側は比較的柔らかく、奥に骨感があるのを確認できます。

カカトの骨は足の真ん中よりも、若干外寄りにあります。(これを知ることだけでも地面への足の着き方が変わり、姿勢や動作が変わる人もいます)そのためカカトが内側に傾いていることがあります。土台である足部が傾くと、その上の膝の向きや骨盤の傾きなど全身に大きく影響してきます

② まだワークしていない方の脚はカカトを地面から持ち上げて、ワークを行った脚がバランスを崩したり無駄に緊張させない程度に、軽くつま先立ちにします。壁につかまってもOKです。

③ そのままカカトと地面との接点に意識を向けて、カカトの骨を感じてみてください。無理にカカトに体重を乗せる必要はありません。

④ カカトが内側に倒れるのを少しずつ許してみてください。出来る限り少しずつ倒していきます。

カカトだけが傾くのではなく、膝の位置も変わって膝の周辺に緊張が生まれるのに気づいたり、その上の太ももの前面や外太ももにも緊張が生まれるのを感じたりしませんか?

日常生活でこんな僅かな緊張に気が付くことは難しいですが、カカトが傾いたまま生活をしていれば、常にこうした緊張を持ったまま体を動かしているわけです。これが、足部はもちろん、膝や股関節、腰などのトラブルの原因の一つになるわけです。

⑤ ではゆっくりとカカトを元の位置に戻して、今度は少しずつ、カカトを外向きに倒していきます。先ほどのカカトを内側に傾ける時と一緒で、身体に緊張が生まれるのを感じます。

⑥ ④、⑤を繰り返すなかで1番緊張が発生しない位置を探してみてください。

 

行っているうちに少しずつ地面との接点に骨感が明確になってきます。また、しっかりカカトに体重を載せることができる位置になると、脚の付け根や太ももの外側の緊張が解けるのを感じることができます。

見直した部位はカカトですが、膝や股関節まで変化を感じることができませんか?

ワークを何度か繰り返してみると、徐々に緊張が抜けて、カカトの傾きが明確になり、全身に一番緊張がない状態を感じることができます

このワークは、カカトの内側が地面から離れてしまうほどに、カカトを外側に傾けるとか、カカトの外側に体重を乗せるという動作とは異なります。また、「今回見付けた傾きが正しい位置だ」という訳ではありません。

ここで知っていただきたいのは、「カカトの僅かな傾きによって体に緊張が生まれるんだな」「緊張が少ない感覚って、こんな感じなんだ」ということで、今確認した動きや感覚を一つのパターンとして頭に入れておくだけで十分です。

体に緊張が生まれない傾きを知るのではなく、緊張が生まれない感覚をしっかりと感じることを大切にしましょう。

その感覚を大切にしてスクワットに取り組んでみてください。

 

◯ステップ2ー02、スネを意識して、力を上に伝える

今確認したカカトの意識をしっかりと足場にして、今度はスネの垂直を意識してスクワットに取り組みます

カカトと地面の接点を感じて土台は意識できているけど、その土台の上にあるスネや膝など上にあるパーツがカカトにしっかり乗らず、膝周りの筋肉を緊張させていたり、靭帯に寄りかかっていたりすることがあるからです。

そのままスクワットに取り組んでも、上手く力が発揮できないだけでなく、膝や足首に負担がかかってしまいます。せっかく土台であるカカトの意識がしっかりしてくれたのですから、これに頼ってもらいたいですよね。そこでここでは、

①  膝がカカトの上にあるのを感じ、膝の重さをカカトにしっかりと預けます。

カカトに意識を向けて膝を支えていること、膝に意識を向けてカカトに支えてもらっていること、両方をしっかりと感じます。こうしてパーツとパーツに役割を設けて「支え合っている」関係性を持たせてあげます。

「支え合い」の関係性を大事にしながら、スネに意識を向けます

③ スネの垂直(正面から見て、カカトと膝が一直線上)を意識しながら、スクワットに取り組みます。

④ 上体を下ろしていくときは、スネが前に倒れていくのを感じます。

⑤ カカトで地面を踏んで上体を持ち上げていく時はスネが起き上がっていくのを感じます。

 

何度も言うようですが、厳密に垂直に拘るのではなく、スネの垂直を意識しながら、感じようとしながらスクワットするだけで大丈夫です

漠然と(カカトで地面を押す)としてスクワットを行うのと、スネを意識してスクワットを行うことで違いはありましたか?

同じ動きをするにしても、何を意識するかによって生まれてくる動きは異なります

ボディワーク・ロルフィング®︎ではプリムーブメントと言って、メインとなる動作の準備の動きを大切にします。これについては私の先輩ロルファーである扇谷孝太郎さんの連載「筋共鳴ストレッチ」で詳しく触れています。

準備の動きと聞くと、筋肉が動き出す前に起こる予備動作だと思われますが、それとは異なります。ここまで触れてきた重力との関係やその時にいる空間や地面との関係など、動作を行う前に得られた感覚入力によって生まれる無意識に近い運動です

何を感じて、何を意識して動くかによって、同じ動きをするにしても、生まれてくる動きは変わります

ここで行っているスクワットも、地面を押すことで動作が生まれますが、動きの質は地面との接点や、動く時、動いている時に何を意識しているなどのプリムーブメントが決めていると言っても過言ではありません

(第10回-01 了)

連載を含む記事の更新情報は、メルマガFacebookでお知らせしています。
更新情報やイベント情報などのお知らせもありますので、
ぜひご登録または「いいね!」をお願いします。

–Profile–

大久保さん

大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト