連載 ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング11-01「シットアップを見直そう!」(前編)

| 大久保圭祐

巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?

この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります

 

ココロとカラダを繋げる

ボディコンシャストレーニング

第11回-01 「シットアップを見直そう!」(前編)

大久保圭祐

 

Image: iStock

シットアップ(腹筋)を見直そう!

体の内側に作ったスペースを潰さないようにトレーニングを行うことが、この連載の一番のポイント。

それを踏まえて、11回目の「シットアップ(腹筋)」も、ステップを踏んで紹介していきたいと思います。

お腹の筋肉を使っている感覚を味わおう

お腹の筋肉を鍛えることは様々なシーンで注目されています。

体の中心部を鍛える体幹トレーニングやその深部を鍛えるコアトレーニングに始まり、お腹の引き締めや、腰痛の際にも腹筋を鍛えることが勧められています。

そのお腹の筋肉は、体幹部の上にある肋骨と下にある骨盤の間にあり、主に4つの層状の筋肉があります。これらの筋肉が縮むことによって体を前や左右に倒したり捻ったりすることができるわけです。

また動かすだけではなく、反対に体幹部を安定させる役割もしています。他の筋肉が縮んで様々に動く時に、お腹の筋肉が固定されることによって、腕や脚、頭などに安定した動きが生まれるわけです。(体幹トレーニングの目的の一つですね)

今回は一番王道のお腹のトレーニング「シットアップ」を紹介します。

ですが、その前にお腹の筋肉を使っている感覚をしっかりと確認したいと思います。

腹筋のトレーニングをしているつもりでも、動きや回数に意識が向いてしまい、肝心なお腹の筋肉が使えていないことがあります。

それどころかトレーニングを続けた結果、腰を痛めたり、肩こりや首のこりがひどくなったりといった、体の不調につながってしまいます。

実は私自身、お腹の筋肉を鍛えていて腰痛になってしまったことがあります。その時は“腰のサポートをする腹筋を鍛えていたはずなのに何でだろう?”なんて思いました。

お腹の筋肉でも表層が動作を担当するのに比べて、深部の方はお腹周りを圧迫して腰回りをサポートしてくれます。

慢性的に腰痛を持っている方に腹筋を薦められるのは、腰部のサポートとなるお腹の深部の筋肉をしっかりと鍛える事が大切だからです。

そんなたくさんの役割を持つお腹の筋肉を意識するワークから始めていきたいと思います。

◯ステップ1、体幹部の厚み(前後の幅)を意識して深部を活性させる

まず体幹部の厚みを感じます。お腹の筋肉を使う感覚がわからない方はもちろん、腹筋をすると腰が痛くなる方に取り組んで頂きたい意識です。

お腹の深部には、肋骨と骨盤の間を筋線維が横に走行している筋肉があります。

この筋肉だけを使うことは難しいのですが、この腹横筋という筋肉があることを意識してお腹に緊張を感じていきます。

  1. お腹の前後に手をあててみてください。一方の手でお腹、そのお腹を挟むようにもう一方の手を背中にあてます。触れている手に意識を向けるのではなく、それぞれ体の方から手を感じて、体幹部の前後の輪郭と、お腹の奥行きに意識を向けます。

  2. 息を吸うと前後に広がり、吐いた時に狭まるのを感じ、手と手の間のお腹のサイズに意識を向けます。何度か繰り返します。

  3. 息を吐いた時にお腹が少し緊張して、前後から挟むようにお腹が固くなっているのを感じます。
    呼吸は止めずに、そのままお腹の筋肉がほどよく硬く、深部の方の緊張を感じながらお腹を凹ませた形をキープしたまま呼吸を続けます。


  4. 呼吸を止めないように気をつけ、慣れてきたら手を離します。

この時に気をつけたいことが二点あります。

一つはお腹を凹まそうとするあまり、前かがみになってしまわないことです。それでは背中側に緊張が無くなり、お腹周り全体に程よい緊張が維持できません。イメージとしては「お腹が凹んでくるのを、背中で受け止める」感じです。

また、肩が持ち上がってしまう程に思い切りお腹を凹ませたりしないことです。お腹を凹ますことが目的ではなく、お腹の筋肉をしっかりと反応させて使うことが目的ですので、胸部はリラックスしたまま、腹部の緊張を高めることが大切です。

前後から手をあてていると、緊張が解けた時にお腹のサイズが変わるので、ほどよく緊張させ続けることができるでしょう。

一人で行う時にずっと手をあてていることが難しい時は、一度タッチしてお腹のサイズを確認するだけでも、お腹への意識がしやすくなります。

ちょうどウエイトリフティングや高重量を扱うトレーニングをされる方が装着しているベルトを意識で作るような感じです。

まずこのお腹への意識を維持したまま動くことに慣れるための運動から始めましょう。

  1. 立った状態のまま腕を前から挙げてみてください。この時、お腹の力が抜けないように気をつけます。手を挙げた時に、お腹と腕の間に繋がりがあるのを確認します。確認ができたら手を下ろします。

  2. そのまま10回繰り返してみてください。最初のうちは、ちょっと気を緩めると、お腹の力が抜けて、腕をあげる時に腰が反ってしまったり、お腹が膨らんでしまったりするかもしれないので注意しましょう。

  3. 次に、お腹の前後の輪郭を崩さずに歩きます。お腹に程よい緊張を維持することが出来て、上体を安定させて歩けるかと思います。

いまひとつ違いを感じられない方は、先ずはお腹を意識した時と意識しない時とで(何かが違う)と感じるだけで十分です。

それが感じられる様でしたら(どう違う)か感じてみてください。

こうした取り組みを重ねて、感じて得られる情報も増えてきます。

ステップ2、お腹の水平面の関係性を意識して体幹を安定させる

お腹の水平面の関係を意識することで、動作の時に体幹部がブレないように、スポーツシーンや日常にも応用出来ます。

今度は身体の内側にスペースを作る時に触れた「隔膜構造」の意識を使って、お腹の意識を明確にして取り組みます。第9-03回を見直してみてください

  1. お腹の上部である横隔膜が位置する平面と、お腹の底面にある骨盤底が位置する平面、この2つの平面を意識します。(第9-03回のように、それぞれの部位を触れて/触れられて確認すると分かりやすいです。)
    実際にここにある横隔膜と骨盤底筋と呼ばれる2つの筋肉は、呼吸の時には上下で同じように働くと言われ、体幹部を安定させる時、程よく緊張し合っていると言われています。


  2. 2つの平面に「平行」の関係性を持たせます。それだけでもお腹に軽い緊張感が生まれます。上に挙げた働きそのものを一生懸命に感じようとしたり、解剖学的に考えたりする必要はなく、横隔膜と骨盤底筋の2つを平行にしようと意識します。この平行の関係性が薄れていると、姿勢が崩れていることが多く、背中が丸まっていたり、腰を反りすぎていたりします。
    ここではいきなりシットアップではなく、お腹の上部の筋肉を鍛えるクランチに取り組んで確認します。


  3. 膝を立てて仰向けに寝ます。腕は「体の前に伸ばす」「胸の前で交差する」「頭の後ろに手をあてる」の順に強度が上がります。無理のないフォームで取り組みます。

  4. 先程確認した平行の関係性を意識したまま、アゴを引いて、息を吐きながらおへそを覗き込むように頭を地面から浮かせます。イメージとしては、それぞれの平面の前側(お腹側)が近づき、後ろ側(背中側)が遠ざかるような感じです。

  5. 降ろす時に息を吸って、呼吸は止めず何度か繰り返してみてください。

クランチ、シットアップは、お腹の筋肉を使わずに反動を付けて起き上がってしまったり、起き上がるという目的達成に意識が向き過ぎてスペースがなかったり(=余裕がない)すると、お腹に効かず、他の部位が疲れてしまいます。

クランチで首の筋肉が疲れてしまう方は、第9-03回で作った頭蓋の平面に意識を向けて、その平面を傾けるように頭を前に倒し、傾けた角度の関係性を崩さないように取り組んでみると効果的です。

こうすることでクランチやこの後紹介するシットアップしている時に(頭を動かしていたんだな)と気付くことができ、首を無駄に緊張させずに取り組むことが出来ます。また平面を意識することで体と気持ちにスペースが生まれます。

(第11回(前編) 了)

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–Profile–

大久保さん

大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト