連載 ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング12-02「プッシュアップを見直そう!」(中編)

| 大久保圭祐

巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?

この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります

 

ココロとカラダを繋げる

ボディコンシャストレーニング

第12回-02 「プッシュアップを見直そう!」(中編)

大久保圭祐

Image: iStock

○ステップ3、肩甲骨を意識して、腕を支えにする

プッシュアップやプランクの様に「腕」で体を支える時に、(腕で体を支えよう!)と漠然と手や腕に力を入れてしまうと、やはり腕や手に力がこもり、肩や首に緊張が生まれてしまいます。

そこで解剖学の通り、肩甲骨も含めて腕を意識して、肩甲骨を安定させて腕で支えると、上体も安定し、効率よく地面を押すことができます
だからといって、漠然と肩甲骨を意識するとムダに肩や首回りが緊張するので、第9-01回で確認した肩甲骨の意識を使って、肩甲骨をしっかりと安定、固定させます

1.横向きに寝た状態で、下の腕を真っ直ぐ前に伸ばし、股関節と膝を軽く曲げます。頭の下に枕となる物を置き、頭と肩と股関節が一直線になるように、キレイな横向きの姿勢を作ります。


2.真っ直ぐ伸ばした下の腕に重ねるように上の腕を置きます。両肩を結んだ線が地面と垂直にして、肩が前にズレてしまわないように気をつけます。


3.その姿勢のまま、上の腕を前に滑らす動きを繰り返します。この時に体幹を捻らないように気をつけます。


4.腕を前に滑らせた後、戻ってくる時は肘が曲がらないように気をつけます。


5.次に「肩甲骨」に意識を向けて、肩甲骨を背骨から離すように、4と同じ腕を前に滑らす動きを繰り返します。まるで肩甲骨と肋骨の間が剥がれて、肩甲骨が滑っているようなイメージです。


6.同じように肩甲骨に意識を向けて、背骨に近づけるように腕を戻します。4と6とで同じ動作をしても、生まれた動きの違いに気づくでしょう。


7.片方だけワークを終えたら、一度プランクに取り組んでみてください。行っていない方の腕との違いを確認します。

プッシュアップやプランクの時に、腕で体を支えるには(腕で地面を押そう)として「前方」へと意識を向けるのではなく、肩甲骨に意識を向けて背骨から離すように、体の中心から「外側」への方向性を意識します

それによって手や腕、肩や首に無駄な緊張が生まれず、腕は体を支えることに徹することができます。

また、背骨から遠ざける動きと近づける動きを交互にしましたが、それを同時に行うよう意識すると、綱引のように引っ張り合って肩甲骨を固定できます

これを意識してプランクをすると、肩や首など無駄な緊張がなく体幹を安定させられます

 

○ステップ4、上腕を意識して、胸の筋肉を意識する。

ここで、胸の筋肉を鍛えるプッシュアップで1番大切な胸の筋肉を使っている感覚を確認しましょう。

1番シンプルなのは、腕を前に出して肘を曲げ、手、肘、肩を同一平面状になるように手と手を合わせ、押し合います。脇の下の前側や胸の中央が緊張しているのを確認できますか? それが胸の筋肉を使っている感覚です。

次に意識を使って、胸の筋肉を使っている感覚を確認します。


1.手、肘、肩を同一平面状になるように腕を前に出し、手と手を合わせます。


2.次に肘から肩までの「上腕部」と呼ばれるエリアに意識を向けます。実際に肘と肩にタッチしたり、なぞってもよいでしょう。


3.先ほどのように力を入れて手を押し合うことはせず、手と手は軽く合わせたまま、左右の上腕を近づけるように意識します。


4.胸の筋肉が緊張しているか、確認してみてください。

胸の筋肉が緊張しているのを感じられていますか? 先ほどの様に「手と手を押し合う」という目に見える動作をせず、意識するだけでも胸の筋肉に緊張が生まれたのを感じられていますか?

5.慣れてきたら今度は腕を前に出さずに取り組みます。腕が前にあるとイメージしたまま上腕を体に近づけ、脇を締めるように意識してみてください。動作をせずに胸の筋肉を緊張させることができましたか?

胸の筋肉を動かそうとしなくても、上腕を体の中心に近づけると意識すると、胸の筋肉をピクピクと動かせる方もいますね。そこまでとは言いませんが、胸の筋肉を緊張させられるのを感じますね?

プッシュアップを行う直前に、意識したい上腕をさすったり、上腕の両先端の肘と肩を触れてから取り組むと、上腕が一層意識しやすくなり、胸の筋肉を使っている感覚が得やすくなります

ボディビルダーの方々のように日々修練していないと、胸の筋肉それ自体を意識するのは難しいのです。私は胸の筋肉の位置や解剖学的な胸の筋肉の働きが頭に入っていますが、それでも意識だけで胸の筋肉を使うことは難しいです。この「上腕」から意識して、胸へと感覚を届ける方法はとても効果的なのです。

「上腕」の意識を確認出来たところで、いよいよプッシュアップに取り組みます。

プッシュアップの実際

プッシュアップは自分の体の重さを腕で支えるため、とても負荷の高いトレーニングです。今までプッシュアップをやったことのない方や筋力に自信のない女性の方は、初めは「膝を地面に着く」または「四つん這い」あるいは「立った状態で壁を押す」など、決して無理をせず、体と気持ちのスペース(=余裕)を潰さないように取り組んでください

1.肩幅くらいに両手を地面に着きます。もしプランクの時に体を支えるのが大変だった方は、立った状態で、壁に両手を着いて体重を預けてもOKです。この時に、先ほど確認した「柔らかい手」を意識します。


2.頭からカカトまでを一直線にするように、腕で体を支えます。これがプランクと呼ばれる体勢です。立位の場合も頭からカカトを結ぶようにフォームを作ります。この時、「プリバーテブラ(背骨の前側)」または「体幹の隔膜構造」を意識します。


3.肘を曲げてゆっくりと上体を下ろしていきます。立位の場合は、壁に体の重さを預けていきます。


4.理想は胸が地面に着くまで降ろしますが、無理のない範囲で行ってください。


5.折り返す時に地面(立位の場合は壁)を押して体を持ち上げます。


6.この動作を繰り返します。

どのトレーニングの時も大切ですが、呼吸を止めてしまわないように気をつけます。理想は力を入れる時(地面を押す場面)に息を吐きます

特にプッシュアップは、血圧を上昇させやすく、終わると顔が赤くなることが多いので、5番目の行程で地面を押してスタートの高さに戻ってくる時にしっかりと息を吐きます。リズムが合わせにくい方は、息を吐くことに囚われず、呼吸を止めないことに気をつけてみてください

手と手の間の幅を変えることによって、プッシュアップをする時に参加する筋肉の割合が変わり、鍛える部位を変えることができます。

脇を締めるように手の幅を狭めると、腕裏の筋肉を使う割合が増えて、上体を持ち上げられるようになります。男性であれば逞しい腕作り、女性であれば二の腕の引き締めに有効です

手の幅を広げていく程、腕よりも胸の筋肉を使う割合が増えて、上体を持ち上げることになります。厚い胸板作り、バストの土台をしっかりさせるバストアップに適したトレーニングになります。目的に合わせたフォームで取り組むといいでしょう。

少し慣れてきたら先ほど確認した「上腕の動き」の意識をして取り組みます

 

1.先ずはプッシュアップのスタートの体勢(プランク)で、(胸で挟む)意識を試してみましょう。


2.動作としては体を「持ち上げる」のですが、胸の筋肉をしっかりと鍛えるには(上腕で左右から挟む)意識です。「胸」で地面を押す感じを得られましたか?


3.それができたら、「上腕」に意識を向けながら、先ほど確認したプッシュアップを繰り返します。上体を下ろして行く時は「上腕」が地面に対して平行になるように動き、上体を持ち上げて行く時は地面に対して垂直方向に「上腕」が立っていくのを感じます。


4.「上腕の動き」に意識を向けたまま繰り返します。

いかがですか? 胸の筋肉に疲労感や心地の良い筋肉痛がありますか?

手の幅を狭めて脇を締めて行うことで腕裏の筋肉を鍛える時も、同じように「上腕」を意識して取り組んで頂くと、しっかりと効いてきます。

ここからは一層胸の筋肉を使う感覚を得たり、パフォーマンスをあげるために、探求をしていきたいと思います。

(第12回02 了)

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–Profile–

大久保さん

大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト