連載 ココロとカラダを繋げる ボディコンシャストレーニング13-02「ウォーキングを見直す」

| 大久保圭祐

巷に溢れる様々なトレーニング理論。それぞれに新しい知見やグッズ、時には有名選手のお薦めもあり、どれも魅力的ですよね。だけど本当に大事なことはトレーニングを行うあなた自身。誰かが「正しい」と言われる方法や理論を「正しく」実践しようと思うあまり、自分のココロやカラダがどう感じているかを忘れていませんか?

この連載ではトレーナーでありロルファー™️である大久保圭祐さんが、ボディワーク・ロルフィングⓇの視点を取り入れた「カラダを意識したトレーニング法“ボディコンシャストレーニング”をご紹介します。意識を変えてカラダの声を聞くことで、いつものトレーニングが「あなた専用のトレーニング」に変わります

 

ココロとカラダを繋げる

ボディコンシャストレーニング

第13回-02 「ウォーキング(歩き)を見直す」

大久保圭祐

Image: iStock

○骨盤の傾きとウォーキング

前回までは怪我が原因で、左脚へ意識が向かず体のバランスを崩していたクライアントさんへ行った実際のワークを紹介しました。

今回は骨盤にアプローチしていきます

骨盤が体の要と言える存在であることは言うまでもありませんが、骨盤のコントロール次第でウォーキングやランニングで使う筋肉が変わってきます。

例えば骨盤が後傾した状態で歩こうとすると、脚を持ち上げるために前太ももの筋肉を使い過ぎてしまい、すぐに疲れてしまいます。

またこの状態では後ろに脚を蹴り出づらく推進力に欠けます。特により脚を持ち上げなくてはならない坂道は一苦労です。

クライアントさんの場合も骨盤が後傾気味でしたので、まず傾斜のあるフレックスクッションやバランスボールに座ってもらい「骨盤を前に倒す」意識を作りました。(第10回目のスクワットの時に使った意識です)

こうした場合、いきなりウォーキングの動作の中に骨盤を前傾させる動作を組み込むのではなく、まずは止まった状態で、骨盤が前に倒れるタイミングと感覚を探してもらうことが大切です

理由は日常動作の中で骨盤を前に倒すことが少ないため、そもそも骨盤を前傾させる感覚がわからない人が多いのです。

ですからまず止まった状態で骨盤前傾の感覚を味わってもらうことで、自然と骨盤の前傾の動きを体に馴染ませます。そうすることでウォーキング中に”後ろ脚を置いてくる”ような感覚が生まれます。

【大腰筋の活性とウォーキング】

この「後ろ脚を置いてくる感覚」を得るために大切なのが、体幹と下半身を繋いでいる「大腰筋」という脚の付け根の深部にある、太くて大きい筋肉の伸びをしっかり感じることです。

ただ大腰筋は体の奥の方にある筋肉なので、トレーニングやストレッチをしても「どこを使っているかわからない」と言われてしまうことが多い筋肉です。

Image: iStock

普段あまり意識することはありませんが、太ももがお腹に触れるくらい脚を持ち上げる時や、しっかりと骨盤を前に倒す時などに働くのがこの大腰筋で、この筋肉が衰えると脚を上げにくくなり転倒の原因になります。

また、緊張が続いて硬くなると骨盤を強く前に倒し、反り腰を生んでしまいます。

・大腰筋に触ってみよう

体の奥にある大腰筋ですが、以下に紹介するワークを通じて位置や感覚を確かめることができます。ただしお腹に深くに手を入れていくので、無理のない範囲で行ってください。

  1. 仰向けになり両膝を立ててお腹に手をあてます。おへそと腰骨(上前腸骨棘)の間に置きましょう。
  2. 置いてある手で呼吸を感じ、息を吐いたタイミングで少しずつ手を深く入れていきます。ここで強い拍動を感じる場合は、太い血管に触れています。その場合は一度ゆるめて位置をずらして行ってください。
  3. 手が深く入り、指先が弾力のあるものに触れる感じがしたら、触っているお腹側の足裏を地面から浮かします。
  4. 指先を弾くように硬くなる筋肉があるのを感じたら、それが大腰筋です。
  5. 1度足裏を地面に戻し、その動作を何度か繰り返して、大腰筋を緊張させる感覚を味わってみてください。
  6. 大腰筋は(脚を持ち上げよう)として動かすのではなく、(骨盤から脚を振る)感じで動かすとうまく反応させることができます。もっと言えば、動かしてから緊張が生まれるのではなく(動かそう)と思った瞬間に緊張します。足をつけたまま動かしてその感覚を触れて味わってみてください。
  7. 慣れたら実際に足を浮かせることなく、意識を向けるだけで大腰筋が緊張するのを確認します。足裏を地面につけたまま、膝のお皿を顔に近づけようとする意識だけで大腰筋が緊張するのを感じ、繰り返すことで意識付けを行います。

このワークが上手にできるようになると、大腰筋が関係する動作の時に使っていることを意識しやすくなります。

ウォーキングのなかで感じられたら、それはしっかりと脚で地面を蹴れるだけでなく、大腰筋が伸びることで生まれる弾性力が推進力となっている時です。きっと心地良く歩けていることでしょう。

実際このワークをした後に、クライアントさんから「今までの歩き方を忘れてしまっていた。」という言葉を聞くことができました。

 

【呼吸とウォーキング】

最初は脚からバランスを整えれば、それが体幹や上半身に伝わり、あとは体全体が自然に整ってくると思っていたのですが、このクライアントさんの場合は、土台の調整だけでは上半身の捻れを整えることはできませんでした。

理由は腹部の奥の方にある緊張が動きのつながりを堰き止めてしまっていたからです。歩く時もこの緊張が原因で下半身と上半身のつながりが失われていたのです。

さてどうするか? ここで解決の糸口となったのが呼吸でした

具体的には連載第9−02回でご紹介した体の実際のスペースを感じてもらうワークです。

呼吸は一般的に緊張をとるのに有効な方法ですが、クライアントさんのように無意識にずっと緊張させているような場合は、ただ「ゆっくり呼吸してリラックスしましょう」と言ってもあまり効果的ではありません。

この時大事になるのは新しいことをするのではなく、いま行っている呼吸にフォーカスして、そこから生まれる体の内側の動きを観察して、体全体が繋がっていることを受け入れるのをただただ待つ方法です。

緊張の原因が何であれ、いまある緊張を作っているのは本人です。

ですからこうした時にボディワーク・ロルフィング®︎では無理に体に働き掛けて、クライアントさんから起こる自然な反応を邪魔しないことが大事にされています。

また、クライアントさん自身もただ自分のカラダの中で起きる反応を意識するだけで「コントロールしようとしないこと」が大事です。

ほとんどの場合、私たちは自分のカラダをコントロールして日常を過ごしています。

それは当然で大事なことなのですが、ボディワークでは一旦このコントロールを手放して、自分のカラダ本来の自然な反応を感じることを大事にします

この時のカラダに起こる反応は、そのままココロの状態と言えます

自分のカラダの内側を見ているうちに、どこかに緊張があることに気がつくことがあるでしょう。それを無理にほぐそうとする必要はありません、ただ見ているだけで、自然に緊張は解けていくからです

私たちのカラダは本来整おうとする力が備わっています

ボディワークはそうした本来持っているカラダの力を導き、クライアントさんに意識してもらうことで、眠っている本来のパフォーマンスに気がついてもらうことと言えます

今回のクライアントさんのケースも、少しずつではありますが全身から緊張が解け、歩行時にも上半身と下半身のつながりが生まれ、日常の歩く動作が変わり体も大きく変わってきます。

日常生活はもちろんですが、スポーツでも下半身を主に使うスポーツは上半身の使い方、上半身を主に使うスポーツは下半身の使い方がポイントになると言われています。それには身体に“つながり”の意識をしっかりと見出しておく必要があります。

(第13回02 了)

連載を含む記事の更新情報は、メルマガFacebookTwitter(しもあつ@コ2編集部)でお知らせしています。
更新情報やイベント情報などのお知らせもありますので、
ぜひご登録または「いいね!」、フォローをお願いします。

–Profile–

大久保さん

大久保圭祐(Keisuke Okubo)
パーソナルトレーナー、ロルファー™️。大学在学中にキックボクシング部の主将として活躍、プロライセンスも取得する。卒業後はいったん食品系専門商社に勤務するが身体への関心を捨てきれず、パーソナルトレーナーの道を選ぶ。過去の運動や減量経験などを活かしたボディメイクの指導者をするなかで、ボディワークの“Rolfing®”に興味を持ち、渡米してRolf Institute®を卒業する。現在は、各種メディアや店舗にてエクササイズの監修、セミナー講師、コラムの執筆など幅広く活躍中。
著者『筋膜ボディセラピー(三栄書房)』

Web site 大久保圭祐公式サイト