やさしい韓氏意拳入門 第四回 「試力」(後編)

| 駒井雅和

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武道、武術好きなら一度は名前を聞いたことがある、韓氏意拳。興味はあるものの、どこか敷居の高さを感じて二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか? そこでここでは駒井雅和教練にお願いして、できるだけ分かりやすく韓氏意拳について書いて頂きました。第四日目の今回は、「試力」(後編)です。

やさしい韓氏意拳入門

第四回 「試力(しりょく・シーリー)」(後編)

駒井雅和

 

教学において

前回は、標準行為と典型行為というお話をしました。
ちょっと耳慣れない言葉だと思いますので、もう一度説明しておきましょう。

ここで言う“標準行為”とは、同じことを繰り返し行うことで熟練し、精度を上げる方法論のことを言います。

一方、韓氏意拳でとられる“典型行為”は、

「すべての運動は一度限りであり、くり返しはない」

と捉え、だからこそその一度限りの運動を味わい動く。その結果、“ゆっくり動いている”というわけです。
そして“この何を味わうのか?”という興味の対象が、韓氏意拳でお馴染みのキーワード“状態”というのが前回までです。

このような問答は韓氏意拳の教学ではよくあります。
「なんだよ、ちっとも“やさしく”ないじゃねぇか!」

とお怒りの声が聞こえてきそうですが、ここはちょっと我慢してお付き合いください。なぜならこの部分こそが韓氏意拳を理解するうえでとても大切なところだからです。

どこが大切かというと、

「どう行うか」ではなく、
「わたしたちはなにを行っているのか」

を理解するところです。

そうしたことがあり、韓氏意拳の講座では、実際に身体を動かすのと同じくらいの時間を講義にかけます。
この連載はその講義の代わり、というより、その講義を私流にかみ砕いたものです。ですので、読んで実際に講座に来ていただければ、基本的な内容は解説しなくて済むので是非、読んで実際に教室に足を運んで頂ければと思います。
もちろん実際に教室に足を運んだ後に呼んでいいただいてもOKですよ!

站椿の更に先へ「常に」

さて、ここまで“状態”の重要性をしつこいほどくり返し語っていますが、“試力”ではさらに動きのなかで“状態”があり続けているかを見ていきます。
韓氏意拳ではこの“状態”があり続けることを“常態”と呼びます。

この“常”を語るときに韓競辰老師は野生動物を例にだして、

「彼らは常に危険と隣り合わせの環境に生まれ、危険への警戒心から状態に自然に進入します。そして以後、環境が変わらないのならば、行站(住)坐臥※、死ぬまで状態から離れません。それが本来の“常”です」

※中国では行住坐臥を行站坐臥とも書くようです。意味は同じで、歩いても、立っても、座っても、寝ても、いつでもの意

とおっしゃいます。

個々の動作をどのように行うか?

ではなく、

どのような動作を行っても状態が“常”にあるかどうか?

に関心を注ぎ、そのとき自分の体はどのようになっているのかを観察します。
(さらに言えば、それが非常事態における状態“非常態”につながってくるのですが、それはまた先のところで触れたいと思います)

連載第二回の站椿篇で、

「状態があると音階があるように体が変化し味わえる」

と書いたことと関連してくるのがこのあたりです。状態があると運動中の上下、前後、左右など手の向かう方向によって体全体、特に手の運動と関係ないと思っていたような場所に変化が起こります。
これを観察し、味わうのはとても楽しいことです。

運動自体を楽しむと言っていいかも知れません。
ほとんどの場合、私たちは、

「この運動をすると、試合に役立つから」
「この運動をすると、やせるから」
「この運動をすると、先生に褒められるから」

と、なにか運動以外の目的のために身体を動かしています。
ですが、運動自体を楽しむことを覚えると、こうした運動そのものから離れた考えが、運動を苦行にさせていたということに気づかされます。

実際に韓老師が運動をしている姿を見ると、とても楽しそうなのです。
わたしはそれが羨ましくて、苦虫を噛み潰した様な表情で練習したものです(笑)。

 

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–Profile–

駒井雅和(Masakazu Komai
こまい・まさかず/本名同じ。1975年、東京都府中市に生まれる。現在も東京在住。2003年より訪中を繰り返し韓競辰師の指導を受け、2005年入室弟子となる。現在は中級教練となり東京を中心に各地で講習活動を行っている。2014年K-STUDIOカンフーパンツをインターネット起業。2017年日本摔跤協会を発足。座右の銘は「為せば成る」。

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