『中井祐樹の新バイタル柔術』出版記念
対談 中井祐樹(JBJJF会長)×浜島邦明(JBJJF事務局長)
第八回(最終回)「質疑応答」
去る2018年10月31日、東京神保町・書泉グランデで、『中井祐樹の新バイタル柔術』出版記念対談が行われた。
今回、著者・中井祐樹の対談相手を務めていただいたのは、JBJJF(日本ブラジリアン柔術連盟)の事務局長・浜島邦明氏。奇しくも同連盟の会長である著者と事務局長の対談となった本イベントは、「発禁にならないことを願うのみ!」という中井氏の言葉から始まった。果たしてその真意は? 会長でありながら「自分は半分アンオフィシャル」と言う中井祐樹氏が本書と柔術の未来にに賭けた思いを連載でお届けしてきた。最終回の今回は質疑応答の模様をお届けしたい。
取材・文:コ2編集部
協力:書泉グランデ
「現時点の集大成。今後はわからない」
中井 なにかご質問等ありますか?
Q これから方向転換をされるそうですが、具体的に何が変わるのでしょう?
中井 教え方にもやもやした部分があったんですが、これができたことでスッキリしたんです。
Q では1年後には本に書かかれたものと全く違うものになっていると。
中井 それは分からないです。ただ本はあくまでも現時点での集大成なので、今後どうなるのかはわからない。
新明 そこは「そんなことないです」と言ってくれるのかと思ったら(笑)。
中井 はい。自分自身でも分からないから(笑)。前に『希望の格闘技』(イーストプレス刊)という本を出させてもらったのですが、そこですっかり吐き出したら出すことなくなっちゃいまして(笑)。すると逆にすっきりして動きやすくなった。いっぱい練習しようって改めて思ったりして。伝えたいことで頭いっぱいだったのが、出し切れたんですよね。だからやることも変わってきます。
また新しい本を書くとなったら、違う内容になるでしょう。
新明 ロックンロールですね。
中井 まさにそう(笑)。ニューアルバム出したら一応、レコ発ツアーやるけれども、そのあとアルバムの収録曲をやるかどうかはわからない。
浜島 そういえば中井祐樹LINEスタンプが最近出ましたが、あれは誰が作ったんですか?
中井 あれは会員さんが関わる会社です。そこがやらしてくれと言ってきて、私もよく分からないで「別に良いですけど」って返事したんです。そんなの作っても、使い道ないんじゃないですかって。
新明 みんな買ってますし、めちゃめちゃ使ってますよ。
中井 本当ですか?(笑) 他に質問は?
「BJJはやる側のやり甲斐に寄り添ったルール」
Q 近年の大会では、ポイント重視のポイント柔術が主流になってきていますが、それについての中井先生のご意見は。
浜島 つまんないですよねー。見てる側は。
一同 (爆笑)
中井 言っちゃった(笑)。確かにそういう意見はあります。アドバンテージ狙いの試合だとかね。でも私が言うことは決まってるんです。「では、あなた出てみなさいよ」と。出てる人には敵わないんだから。
黒帯の最前線なんて、普通の黒帯が出ても30秒で一本取られますからね。そういう人たち同士の戦いなんですよ。確かに「つまんない」と言いたい気持ちもわかります。本にも書きましたがBJJってやる側のやり甲斐に寄り添ったルールですから。見る側のことを想定していない。これはギもノーギも。だから面白くないという意見は当然出てくる。
そこを変えたのがQUINTETなんです。QUINTETってつまらない試合がほぼないじゃないですか。「ブレイクのタイミングがおかしい」という声もありますが、それは攻めを促すため。攻めないとすぐペナルティを取られるから、みんな積極的に攻めて一本が生まれやすくなっている。
団体戦だと「ここは引き分ければ良いや」という場面が必ず出てきます。そこで守りに入っちゃうと、つまらなくなる。
今後、BJJのルールがどうなるかは分かりません。そこは私達の領分ではないから。ただ言いたいことがあるなら、まずは出てもらいたいですね。繰り返しになりますが、出る側を優先したルールなんですから。
浜島 僕も勘違いしがちなんですけど、BJJの大会ってアマチュア大会なんですよね。プロ興行でもないのに「つまらない」という意見が出てくるようになった。これってすごいことだと思うんです。
出てる選手たちは高い参加費を払ってるんです。それで何が何でも勝ってやろうという気持ちで戦っている。それに対して「つまんないよ」とか「もっと動けよ」とか言っている。昔からしたら考えられない光景ですよね。すごいことだと思います。
だから「つまらない」って声が出てくること自体、期待が高いってことですなので、ある意味称賛として受け止めて良いのではないかと。
「いまやっている人が30年後もできるようにしたい」
中井 他に質問は?
Q これから柔術を始めようという人は、『新バイタル柔術』をどのように読んだら良いのでしょうか?
中井 あるがままに受け止めて頂ければ良いのではないですかね。「この技はこういう状況だと反則ですよ」ということも書いてありますんで。ただ細かなルールについては、試合に出るようになったら確認したら良いのではないかと。みんながみんな試合に出るわけではないですからね。試合に出る人の割合ってだいたい10人に一人くらい?
新明 だいたいそのくらいですね。
浜島 うちはもっと少ないです。20人に一人くらい。
中井 まあそのくらいなんですよ。だから試合に出ない人に、試合のルールで練習させていいのか、という問題が出てくる。別にしなくていいと思いますし、3秒以内に返さないといけない、5分以内で極めないといけないとなると、腰とか肩とか痛めますから。
だから自分の練習では時間無制限にしてるんです。時間無制限というとみんなひいちゃうけど、実際は逆、楽なんです。それが分かってもらえるのは20年後でしょうね。
そもそもスパーリングだってしなくて良いと思いますし。打ち込みだけでも良いんだけど、がっつり汗をかかないと練習した気がしない。そういうヘビーユーザー養成システムになってしまっている現状が嬉しくもあり、不安でもある。できれば子どもからお年寄りでもできるものにしていきたい。いまやっている人たちが、30年後もできるようにしていきたいんですよね。
試合に出る人、世界に挑む人、そういう人たちを生み出すためにも、より多くの人ができるようにしていきたい。
浜島 本の帯にも書いてありますね。同じ人間は一人としていない。「自分の柔術」を創り出すって。
中井 そうですね。『新バイタル柔術』は連盟とかルールとか、そういうのを超えて楽しんで頂ければと思って作りました。ボロボロになるまで読んで頂ければ嬉しいです。本日はお忙しい中、お越しいただき本当に有難うございました!
(第8回(最終回) 了)
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