2019年5月の刊行以来、ご好評いただいている『本当に大事なものを護りたい人が知っておくべきこと 間接護身入門』。元刑事の立場から、自分や家族の身を護るためであっても、「対処を誤れば被害者である自分が罪に問われる」という現実を改めて突きつけた内容は、よりリアルな護身を求める多くの方の注目を集めました。
この連載では、前著『間接護身入門』をさらに進めた内容を目指し、より具体的に危機を回避する方法として、著者・葛西真彦氏が現役刑事時代に実際に使っていた人相術、読心術、筆跡術を中心に、その具体的な使い方を紹介していきます。
元刑事の武術家が教える、本当に役に立つ術
間接護身アドバンス
第一回 アドバンス編開始にあたって
文●葛西眞彦
アドバンス編開始にあたって
前著『間接護身入門』が発売されてから約一年。今回、「間接護身アドバンス編」を書く機会が得られたので、再び筆をとった次第です。気持ちを新たに精力的に書いていきたいと思っています。
世の中にはわかっているのに説明がつかないこともたくさんあります。
例えば電話やメールなどはいい例です。相手の表情がわからなくても、その声や文章の行間から、相手が何を考え、自分に対してどういう感情を持っているのかがわかることはありませんか?
見えない相手の情報がわかる。
この感覚を上手く説明できる人はいないでしょう。その一方で、なんとなく察知できることは世の中にたくさんあります。
この感覚が身につくとメール一通でもある程度相手の様子がわかってきます。電話でわかりメールでわかれば、目の前に人間がいるなら容易なものです。
ではなぜわかるのでしょう? そこには隠しようのない「サイン」が必ずあるからです。
メールという無機質なものでも返信の間、タイミング、趣旨のずれ、小さな皮肉、文章の変化、語尾等々、そこには小さなサインがうごめいています。
電話の場合は声なので、より一層わかりやすいでしょう。
この「サイン」を見つける感覚がわかってくると、それまで見えなかったものが見えてきます。
このアドバンス編では、前著では触れられなかったより高度な応用的なもの、また諸事情からカットせざるを得なかったようなテーマ等々について触れていきます。
なかでも私が培ってきた技術のうち人相術、筆跡術、読心術等を中心に、これまで私が経験してきたものの中から、より実践的なものをまとめていくつもりです。
現場での試行錯誤のなかで見つけた技術
まず、なぜわたしが人相術、読心術、読心術に拘り、スキルを磨いていったか、そのきっかけからお話ししていったほうがいいでしょう。
私は警察官になった際に、名刑事・平塚八兵衛の偉業を知り、自分もそんな伝説の警察官になりたいと思っていました。そのため警察官になってからは必死で職務に励みました。ですが、残念なことに私の赴任した現場で聞く話しは自分の経験則的な話ばかりで、あまり参考になりませんでした。
今考えればこれは当然で、事件は生物であるのに、過去の経験則を無理やり当てはめようとしてもうまくいかないのは当たり前です。
そこで私がまず徹底的におこなったのが職務質問です。前著で書いた通り、私は交番勤務時代、少しでも経験を積もうと職務質問をしまくりました。お陰で苦情が殺到し、私は「問題ばかり起こす飛んでもない奴」と見られました。内に外に風当たりは厳しく、ややもすると心が折れそうにもなったのですが、その中でも徐々にコツというか、鍵になるものを見つけました。
それが相手の人相や行動、そして文字であり、私が人相術、読心術、筆跡術の道に入った切っ掛けでした。
ただとてもマニアックなジャンルであるため、一部の専門書を除けば模範的な教科書がないのが実情です。ほとんどはエンタメ的な内容のもので、話題になった『FBIの読心術』や『ヤクザの掌握術』といったものにも手を出しましたが、やはり現場で使うにはかなり無理がありました。
ただ、読み解くうちにこうしたもののなかにも、そのまま使うことはできなくても、ヒントになることはあり、そこに実際の経験を合わせることで徐々に自分なりの形ができてきました。
今回の連載で紹介するのは、実際に私自身が作り上げた方法論を一般の人が使えるようにアレンジしたものと言えるでしょう。
嘘をつく少年たち
人相学、読心術、筆跡心理学。こんなマイナーなものになぜ私が目を向けたのか。それは卒配した交番の管轄区域が、少年事件を多く扱う場所だったことに関係しています。
少年たちが犯罪を犯すとまず嘘をつきます。どんなに嘘とばれていても嘘をつき続けます。これに時間を割かれることに辟易していたことが最初のきっかけでした。
対処しているうちに嘘のサインを見抜くこともそうですが、彼らがなぜ犯罪を犯したのか、生活環境は、親を含めた境遇、友人関係等、そこに至るまでの背景や影響を与えているものに関心を持つようになりました。心を開いて本当の事を話してくれるためには何が必要か、更生させることはできるのか、その為に様々なものを研究した結果、最後まで残り私のスキルアップに影響を与えたものが、人相学、読心術、筆跡心理学でした。
この三つに絞るまで様々なことをしました。手品に挑戦したり、社会心理学、犯罪心理学など警察学校はもちろん外部で行われる特別講座を受けたりもしましたが、現場で即使えるものを求めていた私には遠すぎて、あまり実用的には思えませんでした。
相手の心理や行動を読むプロファイリングもそうです。生活習慣や捜査方法の違いもあり海外の事例を日本で当てはめるには難しく、テキストのような少しの断片から犯人像を特定することは非常に難易度が高かったのです(もちろん私が未熟だったこともありますが)。
この当時は本当に様々なことに挑戦していました。洞察力や観察力を高める為に絵を描く練習もしましたし、占いも修行しました。こちらはお陰で今ではお金をいただいて占いをするレベルになっています。家相から開運方位命卜相までなんでもござれです(笑)。
人相は顔に刻まれた年輪
嫌な人は嫌な顔をしています。その嫌な顔の根拠や原因について、知りたくなったのが人相学を研究するきっかけでした。
悪い性格の見本みたいな上司、犯罪者、「この人なんとなく嫌だな」と感じる人、こうした感覚を学問的に分析して活用したいと思い学び始めた人相の世界は奥深いものでした。人の感情、言動、態度振る舞い、習慣等がまるで木の年輪のごとく顔に刻まれていきます。昔から「自分の顔に責任を持つ」と言いますが、文字通り自分の行っていることがどんどん顔に刻まれていくのです。
笑顔で人を騙す人間もたくさんいます。泣き落す人もたくさんいます。怒りでごまかす人もたくさんいます。
しかしそうした表層的な態度の裏に隠した罪の年輪は隠しきれないのです。私が人相学に興味を持ち、没頭して習得していった経緯はそういうことでした。
(第一回 了)
『本当に大事なものを護りたい人が知っておくべきこと 間接護身入門』
本連載の基本編にあたる『本当に大事なものを護りたい人が知っておくべきこと 間接護身入門』は現在、全国書店、アマゾンで発売中です。
自分が被害者であっても対処を誤ったばかりに加害者になることがある。コミックやドラマ、映画のようにいかない「護身のリアル」を元刑事である著者がわかりやすく解き明かします。被害者にも加害者にもならないための現代人が知っておくべき知恵がここにあります。
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