対談/北川貴英&山上亮 第三回「親子体育」をかんがえる

| 北川貴英 山上亮

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システマ東京の北川貴英さん、整体ボディワーカーの山上亮さんの対談3回目は、場作りをする時に気をつけなければいけないことについて。お互いのからだが感応することで作られる「場」は、時として危険と隣り合わせになる場合もあります。その時にお互いを守る器となる「型」はどのように機能するのか。“パターン化された動き”という以上の意味をもつ、型の役割を明らかにしていきます。

北川貴英×山上亮 「親子体育」をかんがえる

第三回  「場作りの作法と型」

語り北川貴英、山上亮
構成阿久津若菜

 

場のバランスをくずす人

コ2編集部(以下、コ2) 前回は「場」の空気感とその作り方について、お二人の実体験も交えてお話しいただきました。わけてもお金の問題、「本気で学ぶなら身銭を切らないと」というのは、自分に照らし合わせても真剣度が違ってきますから(笑)、納得です。
北川さんは、場の空気を探求する中でシステマらしさの指標を見つけていったというお話でしたが、山上さんにとっての「場とは何か?」についてお聞かせいただけますか。

山上 場ということであれば、以前私も「場のワーク」というのをいろいろ考えてやっていた時期があって、いろいろなオモチャを用意して、それを大きな画用紙の上に一人一人置いていくというワークをやったことがあります。置き方についてはその都度テーマを決めて、たとえば「バランス」とか、その逆に「不安定」とかテーマを決めて、それを作り出せるようにみんなでオモチャを置いていくんです。

その時、面白かったのが、誰かが「ここかな~?」と言ってオモチャを置くと、「えーっ、そこじゃないでしょ!?」と一斉にみんなの声があがる場所があるんです。でも「じゃあなぜ?」と問いかけても、みんな言葉にできない。今度は「どこに置く?」と問いかけると、みんなの答えがバラバラ。でも“違う”という感覚だけはなぜか、その場にいるみんなが感じているんですよね。

北川 違うところに置くからこそ、面白いんじゃないですか?

山上 たしかにそうなんです。その一手でみんなが「えー!」って受けているんですから。みんなが一斉に反応するんだから、そこには何かある。面白いことに、そういうことする人はだいたい、ほかの場面でも同じことをするんですよ。言ってみれば“バランスをくずす人”。人には役目というか、役割みたいなものがありますよね。動くって不安定を作ることだから、それを作る役目の人はみんなにわざわざ「えー!」と言われながらも、そこに置く人。僕は、そういう役割の人なのだなと思っています。

バランスって大事ですけど、安定が取れすぎてしまうと動きがなくなっていきますから、だんだん硬直していってそのうち死んでしまいますよね。だからときにバランスを崩すようなことって必要なんだと思うんです。動きが硬直してきたときには、アンバランスな要素を入れなくちゃいけない。だから安定がとれてくると、みんなが「えー!」というような一手を思わず打ってしまいたくなる要求が場に現われてくる。その役目を誰かが引き受けて、そこからまたみんなで安定を目指して動き出すことで、全体が活性化される。そしてまたバランスが取れてくると「えー!」という一手を置いてみたくなって……という感じでくり返される。
個人レベルで考えると、ときに困った奴だということにもなりますが、場というレベルで考えると、役割に良いも悪いもないですよね。

北川 なるほど。私のクラスでは、ケガ人を出さないための場作りをしますが、場って “結界”みたいな役割を持っていたりしますよね。
でもそうすると、結界からはじき出されるというか、どうにも入ってこられない人が出てきてしまいます。先ほど紹介してくれた山上さんのワークでいうと、妙なところにおもちゃを置くような人を、参加する以前に未然に排除してしまう。そういう異分子が入る方が、場が面白くなるはずなんですけど。

山上 たしかに場を主宰している側からすると、そういう役目の人は取扱注意の劇薬みたいなところがありますよね。使いようによっては毒にも薬にもなるような。その一挙手一投足が場のバランスに大きなインパクトを与えますから。たしかにうまくいったときには非常に面白い場が生まれてくるでしょうけれども、怖い面がありますよね。私もそれは非常によくわかります。

北川 ですね。ただそういう異分子を受け入れられるかどうかはひとえに、場を作る人の力量や懐の深さにかかってくると思うんです。でもケガはやっぱり怖いから、あまり妙な人も受け入れられないという。その点、私は本当にまだまだなので、今後の課題ですね。

山上 やっぱり怖いですよね。

北川 怖いですよ。ケガ人がでそうで。

山上 整体の実技は静かなものが多いですけど、システマは特に動きが激しいですからね。でもまあ整体でも骨を折ってしまうことはあるから、やっぱり気を付けないといけませんね。手首の調整の稽古をしていて脱臼してしまった話は聞いたことがあります。

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–Profile–

北川貴英(Takahide Kitagawa写真左
08年、モスクワにて創始者ミカエル・リャブコより日本人2人目の公式システマインストラクターとして認可。システマ東京クラスや各地のカルチャーセンターなどを中心に年間400コマ以上を担当している。クラスには幼児から高齢者まで幅広く参加。防衛大学課外授業、公立小学校など公的機関での指導実績も有るほか、テレビや雑誌などを通じて広くシステマを紹介している。

著書
「システマ入門(BABジャパン)」、「最強の呼吸法(マガジンハウス)」
「最強のリラックス(マガジンハウス)」
「逆境に強い心のつくり方ーシステマ超入門ー(PHP文庫)」
「人はなぜ突然怒りだすのか?(イースト新書)」
「システマ・ストライク(日貿出版社)」

DVD
「システマ入門Vol.1,2(BABジャパン)」
「システマブリージング超入門(BABジャパン)」

web site 「システマ東京公式サイト

山上亮(Ryo Yamakami写真右
整体ボディワーカー。野口整体とシュタイナー教育の観点から、人が元気に暮らしていける「身体技法」と「生活様式」を研究。整体個人指導、子育て講座、精神障碍者のボディワークなど、はばひろく活躍中。月刊「クーヨン」にて整体エッセイを好評連載中。

著書
「子どものこころに触れる整体的子育て(クレヨンハウス)」
「整体的子育て2 わが子にできる手当て編(クレヨンハウス)」
「子どものしぐさはメッセージ(クレヨンハウス)」
「じぶんの学びの見つけ方(共著、フィルムアート社)」

山上 亮ブログ:http://zatsunen-karada.seesaa.net/