コ2運営開始初期よりの連載「書の身体、書は身体」が、10年以上の歳月をかけて書籍化、本年(2025)7月7日に『自分の書を創る 身文字入門』(小熊廣美著)として出版されました。

この出版を記念して、第0回身文字コンクールが開催され、著者の小熊先生を始め、関係者により審査が行われ、映えある入賞者が決定しました!
第0回 身文字コンクール結果発表
プレ開催ということで、今後の身文字コンクールの基礎をつくる試験的な開催の場とさせていただきました。
告知いきわたらぬ中、応募期間も短く、たくさんのご応募とはいきませんでしたが、内容は納得の10点があつまりました。ご応募いただいたみなさま、ほんとうにありがとうございました。
決まりきったお手本のような書でなくても、プロの上手さでもなく、筆文字の魅力を、それぞれの書のなかに観ていこうというこのコンクールは、真剣に遊ぶ。遊びに真剣です。
今回、絵画的、デザイン的な作品もありました。イマドキと思いきや、昔から筆文字で絵的にした“葦手”とよばれるものや、図案的書体がたくさんありました。そんな風に、想像をかき立てられるのも筆文字の魅力の一つです。
いつか、この場から、とてつもない名作が現れることがあるかもしれませんので、これからもみなさま、このコンクールを見守っていただきたいと願います。
なんちゃって雅号もつけてくれたようで、“なんちゃって”なので、飽きたら変えてくれて結構、いつか自分に合う雅号に行きつくことを願います。
今回は、感謝の意をこめて出品者全員に、賞品を贈ります。
各賞入賞者
- 身文字大賞 さすがにこれは次回から。いい!という作品がでたら。
- 身文字金賞 喜蘭、智子
- 身文字特選 海風、律子、紫夕
- 身文字秀作 艸田、艸田
- 身文字番外賞 夜明(金の猫賞)、智子、紫夕
講評
金賞☆「満月」 喜蘭さん
脳裏に観月が浮かんだ
丁寧に筆を運んで、丸い線条を感じさせながら、全体に画と画の間の余白が統一され、明るい。一見した時、まず、夜空に浮かぶ満月が脳裏に浮かんだ。
お習字のような作品なのだが、ここには上手いとか下手とか、賞狙いとか、そんな人間の業も感じさせない。ただ、無心で筆を丁寧に運んでなった作品がある。
それにしても、「中秋の名月」をテーマにして、“満月”というストライクな課題が浮かばなかった選者なのだが、その辺もやけに新鮮に感じた。
金賞☆「月」楷書 智子さん
意志を感じる「月」
「月」の二画目の右の縦画のえぐれた楷書。これが表情を作った。編集氏はそこを女性のくびれとみてぞっこん。ま、昔のコーラの瓶も男はそうみるのでる。そのえぐれた部分がかすれたのも、その時その場で刻々と変わる筆文字の表情の一つだ。書き手の呼吸感がでたところだが、ほかの部分の地味ながら、ハネや払いの的確なこと見事。

特選☆「秋月夜」 海風さん
秋の月はやはりいい、と思わせる
「月」だけで秋の季語だ。強調して「秋の月」でもいい。「月夜」で、月明りで明るい夜もいい。それを合わせた「秋月夜」。言葉がダブり気味とも思ったが、「あきづきよ」という言葉ならではの感覚がある。
ほんの少しの丸みを帯びて、「秋」「月」「夜」とそれぞれ少しゆるい。墨も少し薄い。そんなことがあいまって、個々の感情に淡く入り込んでくるような作品。
ネットで調べたら、「秋月夜」というおいしそうな和菓子がでてきた。

特選☆「つき」 律子さん
凛としたカタチ
平がなというのは、曲線美で、漢字の直線美と比較できますが、平がなと合わせようとすると、漢字が曲線化して行書や草書となったりする。この平がなの「つき」は、平がなの曲線で成り立っていつつも、凛とした線条で、澄み切った世界を表してくれました。

特選☆「月と兎」 紫夕さん
テクニシャン
「月」の線の変化と動き、「兎」は特徴の耳をデザインし、薄く満月を先に描いてもいました。これを一つひとつ洗練させていけば、一つの世界ができそうです。
秀作☆「月」 艸田さん
表情を一画で作る
月がすこし前のめりにみえるという表情ができました。一画目の縦画をずーと曲線で持って行って、二画目の入りが右斜め上に強くなったせいでそうなりました。
そこから右の縦画がまっすぐ下に伸びましたが、これを一画目とそろえるように曲線にしたら、少し絵的な「月」になって、全く違った表情になったでしょうね。

秀作☆「月」 艸田さん
これは一つの挑戦です
一画目のカーブが特徴的。意識的に細めの「月」ながら、細い作品を成し遂げるには、筆がねじれ線条が勁くないと難しい。ただ、今の段階では、筆文字の表情を知る、という点では挑戦的作品ともいえる。

番外賞(金の猫賞)☆「月」“おつきみ”と文字絵に 夜明さん
柔らかいタッチで楽しく、世界をやさしくするような作品
今回のテーマ「中秋の名月」は、“おつきみ”と書いたと本人コメントがありましたが、選者は“おたのしみ”と読んでいましたが、円形に文字絵的に書いて、なかに兎など描いて、昔、丸い月を見上げながら、その月の模様に兎をみていたことを思いださせてくれました。右上の墨のにじみがおぼろ感をだしているようにも思えます。“おぼろ月”とは主に春で春の季語ともなりますが、お月見という人間の感性っていいな、とこの作からも伝わってきますね。

番外賞☆「月」 智子さん
絵文字「月」の満月の教科書
「月」の字源は三日月の形からきている。だから半分以上かけている月だ。この「月」は、満月であり、中の横画二つが、ほんの少しゆれて、たなびく雲にも見える。
東の空から大きな満月が上がりはじめ、そこにたなびく雲が少しかかっている。
こんなふうに、時には字で遊ぶのも悪くない。

番外賞☆「兎うさぎ」 紫夕さん
センスの先をめざせ
言葉に躍動感がでて、歌を唄っているようです。“なにミて”とそこだけ変体仮名も、なんか気の利いた使い方に思えました。これもセンスを感じる一作でした。雰囲気で終わることなく、追求を期待します。
次回予告
第1回 身文字コンクール
自分の字を創ろう。自分らしい字を書こう。
テーマ 「昭和」
例:国鉄、黒電話、百恵、赤羽、あずさ、スト、巨人、等々、あなたが思う「昭和」な言葉を選んでみてください。
「作品コメント」になぜこの言葉を選んだのか、ご自身の昭和の思い出や昭和感を是非つけてください。昭和を知らない世代の方が思う昭和のイメージでもOKです。
作品に、雅号その他落款を入れても入れなくても自由。
締め切り:1月7日 発表2月3日予定
- 作品サイズ 半紙(約33×24㎝)
※応募の仕方 自撮りで半紙撮影で応募(正面全体、なるべく均等に)。加工禁止ながら、明るさやコントラスト、角度ズレ程度は許可。1人2点までOK!
〝なんちゃって雅号〟推奨!
※なんちゃって雅号=とりあえず自分でそれらしい雅号をつけてみる。書家としての精神や美意識をどこかに含んでいるようなものが多いようです。雅号のつけ方は、古典から。故郷の名から。思い出の地から等々。ハンドルネーム、ペンネームよりも、伝統的雅号で、まず気分だけは書道家を装ってみるのもよし。
例、
- 愛知県の出身の書家は、昔、三河国。三角州の場所だった。「三」を「参」とし、「参州」。
- もっと小さな単位で、〇〇市梅山出身なので、「梅山」。
- 中国の蘭州に旅して思い離れがたく、「蘭州」。
- 本名が条一を反対にして、「一条」。
- 仮面ライダー響鬼を子どもが見ていて?「日々軌」。「雲」「水」「龍」も典型的。色も「翠」「白」「青」。「山」「川」などなど。
- 昭和の書家に「杉雨(さんう)」「信山」「鷗亭」「春敬」などなど。
- 苗字は変えずにここではいきましょう。例 小熊廣美→小熊日々軌
審査:『身文字入門』著者・小熊廣美 「身文字 発案者」下村敦夫
賞:賞状(まず、ミニ賞状から) 文房具等
※入賞者は送付先の氏名・住所・電話等を主催者に伝えられることが条件となります。
申し込み先:XやインスタなどのSNSは「#身文字コンクール0」またはko2.editor@gmail.comまで。
主催:墨アカデミア+猫均堂
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