「お能ののの字〜 舞台から観る能楽散歩」 第二回 緊張の正体

| 柏崎真由子

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金春流のシテ方である柏崎さんが、演者として身ひとつで舞台に立つ側から観た、お能のあれこれを綴ります。
連載の第二回目は「緊張について」です。緊張は誰もが経験し、誰もがその対処に苦慮するもの。観るー見られるの関係性から生じる緊張を、能楽師はどのように処しているのか。緊迫感あふれる描写が続きます。

「お能ののの字〜舞台から観る能楽散歩」

第二回  緊張の正体

柏崎真由子

 

緊張は前夜から始まる

私がはじめて「能楽師」として舞台に立ったのは、2012年の「円満井会定例(※1)」であった。能楽師として能を舞うということは、玄人として能を舞うということである。

(※1)金春流の中堅能楽師を主軸とした定期演能会。年に4〜5回、矢来能楽堂にて開催。

 

私の肩に「玄人」の二文字が重くのしかかる。素人と違うのは、チケットをご購入頂く、すなわちお金を払って私の能をわざわざ観に来てくださるということである。本当に恐れ多いことだ。
神楽坂の住宅街に静かに溶け込む矢来能楽堂は、厳しい表情で私を迎えた。前夜は全く眠れなかった。楽屋に入り、先生方にご挨拶をする。紋付き袴に着替えると、演能(えんのう)の準備に当たる。

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–Profile–

 

柏崎 真由子(Mayuko Kashiwazaki
北海道函館市出身。シテ方金春流能楽師、(公社)能楽協会会員。東京造形大学(絵画専攻領域)在学中に能と出逢い、能楽師の道を志す。卒業後、八十世宗家金春安明、高橋万紗に師事し、2016年『乱』を披演する。2016年に金春流女性能楽師の会「み絲之會」を旗揚げ、第1回公演を11月18日に行う。

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