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日本各地で行われている武術イベント。今回は本州最北の地・青森県で行われた、「全日本古流武術フォーラム2015 林崎甚助の居合を探る」へ参加された五十嵐剛さんから、貴重なレポートを頂きましたので、ご紹介します。
コ2【kotsu】寄稿レポート
全国古流武術フォーラム2015 in 弘前
~林崎甚助の居合を探る~ 参加レポート
文●五十嵐 剛
取材協力・写真・動画提供●修武堂
本州最北の地で行われた武術イベント
去る、2015年9月19日(土)~20日(日)の二日間にわたり、青森県弘前市で「全国古流武術フォーラム2015 〜林崎甚介の居合を探る〜」と題するイベントが開催されました。
この催しは青森で伝統武術を稽古している武術稽古研究会・修武堂が主催し、居合のルーツとも言われる林崎甚助の居合、なかでも津軽の武士達が流派の違いを越えて稽古したと言う「林崎新夢想流居合」を題材として、青森に息づく武芸の伝統を伝えるため、全国の武術家を始め、広く一般とも交流を図ったもので、今回が初めての開催となります。
初日はフォーラムとして、青森県武道館柔道場にて座学と交流稽古会が行われました。
冒頭は禅について『臨在録』の一説を題材に中国思想研究の先生より講義を頂戴し、武と禅との関わりを考察しました。
次に武道文化の調査・研究を行う居合文化研究会の方々による全国の林崎系居合流派の比較や成立に関する研究発表、貴重資料の展示などがあり、その後の稽古への布石となる座学となりました。
そこから座学を汲み取る形で、林崎新夢想流居合の合同研究稽古を参加者全員で行いました。
林崎新夢想流居合の特徴は何と言っても「三尺三寸(約1メートル)の刀を以て九寸五分(短刀)の突く前を切り止める」という技術にあります。
また趺踞(ふきょ)と呼ばれる特殊な座り方から抜刀するというのも特徴です。
実際にこの長さの刀や姿勢を体験すると、長刀を扱う身体操作の難しさには驚き、これを残した古人への畏敬の念が改めて湧く次第でした。
最後には、ゲストとして招かれた、武術研究家・甲野善紀師範による棒手裏剣の演武を拝見し、身体の持つ可能性と、それを伝える伝統を受け継ぐという大事を学んだ、大変意義のある初日のフォーラムでした。
夜には会場近くの温泉宿に宿泊し、近くの会場で打ち上げが催され、御馳走が振舞われました。弘前の郷土料理「けの汁」や地酒など、嬉しいおもてなしを頂戴しました。
会も盛況なところで、修武堂の外崎氏主宰で、扇子斬り大会が開かれました。
これは三尺三寸の鞘つき木刀を帯刀し、趺踞(ふきょ)の姿勢で構え、柄で地面に立てた扇子を押さえ、そこから扇子が倒れる前に抜刀して扇子を打つというものでした。優勝者には模造の脇差しが贈られました。
貴重流派が共演した奉納演武
二日目は岩木山神社への奉納演武会が行われました。
参加者一行は境内の神聖な空気に包まれながら参拝し、玉串奉献を厳粛に執り行い、岩木山を仰ぎながら各々の流派の演武を奉納しました。
青森県無形文化財 音笹派大音笹流錦風流尺八(青森県技芸保持者 山田史生)の奉納演奏に始まり、ダンス(加藤範子)の奉納舞に続き、武芸の奉納となりました。
この日登場したのは、
- 抜刀術(試斬り) (修武堂 外崎源人)
- 明府真影流手裏剣術 (修武堂 北向敏幸)
- 居合道 (弘前大学居合道部 齊藤達也、榊駿宏、田澤安倫、吉原渉、島田美実、藤本有紀子)
- 居合 (心形刀流居合風心会 山脇崇)
- 夢想新伝流居合 (居合文化研究会 加藤景輔)
- 関口流抜刀術 (生田紘之、五十嵐 剛)
- 直心影流剣術 (修武堂 森井俊和、菅野亘)
などが日本各地から来た参加者や地元の方々によって奉ぜられました。 なかでも、
- 弘前市無形文化財卜傳流剣術 (卜傳流剣術宗家 小山秀弘・隆秀・秀晃)
- 本覚克己流和(やわら) (研究演武、修武堂 平山真紀・弘前大学古武術研究会 近藤祐樹、蝦名ルカ、小野寺哲朗、磯邊沙奈恵)
- 當田流棒術 (富田流棒術代表 清水宏二・弘前大学古武術研究会 近藤祐樹、蝦名ルカ、小野寺哲朗、磯邊沙奈恵、筑場ひとみ)
- 林崎新夢想流居合 (修武堂 下田雄次、外崎源人、田中智宏、佐々木孝人、弘前大学古武術研究会 近藤祐樹、蝦名ルカ、小野寺哲朗ほか)
は地元にゆかりの流派ということもあり参加者の注目を集めていました。
仰ぎ見る岩木山の麓、青森の先人達の残し伝えた伝統文化を、その土地の空気の中で、その土地に今生きる人々と学び、今後に繋ぐ、まさに「温故知新」のイベントでした。
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