コ2【kotsu】特別インタビュー  ソマフェス&コ2【kotsu】コラボ企画記念 有本匡男氏に訊く 05

| コ2【kotsu】編集部

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いよいよ10月14日(金)に迫ってきた第2回ソマティックフェスタ。 すでにコ2【kotsu】でもお伝えの通り、今回はソマティックフェスタさんからお声掛かりを得て、コ2【kotsu】コラボ講座が行われる。

そこで開催まで残り10日を切った今だからこそ、改めてソマティックフェスタになぜ今回、本WEBマガジンコ2【kotsu】とのコラボ講座“ソマティックアーツ:身体術WITHコ2PRESENTS”を企画されたのか、仕掛け人の有本匡男氏にお話を伺うとともに、それぞれのコラボ講座についての見所・期待のポイントをご紹介頂いた。

コ2【kotsu】特別インタビュー

ソマティックフェスタ&コ2 コラボ企画記念
有本匡男氏に訊く 第五回(最終回)

タッチの力で幸せに♪ 〜やわらかに軽々生きるためのソマティック

語り有本匡男
取材・構成コ2【kotsu】編集部

 

 

ソマティックを語る上で外せない“タッチ”

コ2編集部(以下、コ2) 最後は小松ゆり子さんと小笠原和葉さんによる「タッチの力で幸せに♪ 〜やわらかに軽々生きるためのソマティック」です。
こちらは「二人を組み合わせたら、おもしろいことが起こるから!」ということがベースにあるということですが、それはどんな化学反応を期待されているのでしょう?

有本匡男(以下、有本) 別の機会に三人でお話しすることがあって、それが非常にマニアックで(笑)。

この二人だったらすごく面白いことが起こるだろうな

という確信があったのが一点です。
もう一つは、お二人ともソマティックでとても大事にされているタッチというものを、日常のなかでとても大事にされていることがポイントでしたね。

コ2 小笠原さんはクラニオ(セイクラル・セラピー)で、本当触れるか触れないかくらいのソフトなタッチで、小松さんはヴァイタル・タッチセラピーで、わりとエサレンがベースになっているので、ロングストロークの強いタッチですね。アプローチは違いますけど、そのどちらも効果があるのが不思議ですね。

前から疑問だったのですが、セラピストにとって、どういうタッチを選ぶかというのは個人に起因することなんでしょうか?

有本 個人に起因する部分と状況ですね。また自分の状況によっても、どちらを選択するかというのはあると思うんです。コミュニケーションと一緒で優しく接して欲しいときもあれば、しっかり背中を押して欲しいときもある。そういう感じで受け手がどっちを欲しているのかによって、使い分けてという感じで。
また、小松さんと小笠原さんはどちらも明るいお二人ではありますけれども、どちらかというとクラニオもエサレンも施術自体は陰で、タッチとそこに乗ってるパーソナリティが違うのも面白いところですね。

コ2 施術自体がもつ陰と陽と、施術者個人の資質が掛け合わされて、その人なりの施術ができあがってくるということでしょうか?

有本 まさにそうです。

コ2 有本さんご自身は、ご自分のteateセラピーのタッチはどう分類されていますか?

有本 teateの中で表現しているタッチは、“いかに無為自然なタッチをするか”、“タッチの意味付けをどこまで減らせるか”ということに拘っていく感じで、“どこまで透明なタッチができるか”という部分を大事にしています。そういうタッチへの拘りは、それこそラピストの数だけあると思います。

コ2 結構多くの人は“触る”ということに関して、意識的なようでいて無意識だったりして、タッチの質まで教えてもらうのは少ないかもしれませんね。

有本 そうですね。クラニオにしてもエサレンにしても、本当は触り方の部分を追求することがちゃんと入ってるんですよ。ただワークの中でどういう圧で触って、どういうふうに動かしていくかということについては話が及びにくいところもあって、実際にタッチ自体のやり方をどこかで習って、質を高めることをテーマにおいて勉強してきたという人はあんまりいないかもしれません。

ただ、エサレンもクラニオも先ほど言ったように、タッチの追求は入っていますので、そこを汲み取ってきたお二人なら、そうしたタッチ自体の力を伝えるのにピッタリだと思います。

コ2 ソマティックフェスタの中心的な部分で、「触れるということに関して、いろんな質感や人によって違うんだということを味わっていただく場でもある」とありますが、ここにダイレクトに繫がる講座というわけですね。

有本 まさにそうです。例えば日本ソマティック心理学協会副会長の山口創先生は、まさに手の治癒力という視点で、触る、タッチの力というものを追求されてます。
本当にソマティック全体において“触れる”ということが凄く大事なキーワード、ベースのところにあるんです。“いかに触れるか”、“いかに内観を高めていくとか”ということもそうで、ソマティック全体に流れるベーシックなテーマと言えます。

コ2 ソマティックを語る上で、タッチは外せないわけですね。

有本 はい。また、現在は“触れる”ということ自体が減っていて、それ自体が凄くもったいないと思いますね。触れるシーンは日常に沢山あるし、それ自体が本当に日常を豊かにするのですが、その触れ合い自体が過剰な意味付けによって、ちょっと制限されている現状もあったりすると思います。

またデジタルな感じや環境、例えば隣にいてもパソコンで会話するとか。生のコミュニケーションが減ってるという点もありますし、触れ合いというのはこれからの大事なテーマですね。ですから“身体性の回帰”という点において、タッチは絶対に欠くことのできない要素だと思います。これはセラピストだからということではなく、対象は皆さんだと思います。

コ2 技術としてのタッチということ以上に、人と人がコミュニケーションするための、ということですね。

有本 はい。「幸せに」というのがクラスのテーマですし、「柔らかに軽々生きるためのソマティック」という副題がついているので、とても本質的なところです。講座でもセラピストが触れ方をここで学ぶというより、“触れることが人生の質をいかに高めるのか”ということについてお二人が語ってくれると思います。

コ2 確かにそれを語れるお二人ですね。

有本 実際にお二人ともすごく軽々生きてらっしゃるので。おそらくその“軽々生きる”ということに大きな影響を与えている部分に、タッチというのはかなりあるはずなんです。ですから実際にクラスの中で触れて触れられてというものを体験することで、その大事さみたいなものを体験していただけると思います。
また、それを“日常にどう生かしていくか?”ということの参考になるんじゃないかなと。

コ2 そうですね。普通の人でも尻込みせずできるところでお話ししてくれる感じですね。

 

ソマティックは普通の人のためのもの

有本 あとはお二人ともソマティックというものをサブカル的にではなく、ちゃんとした文化としてマニアックにならず伝えられるので、そこも楽しみですね。

コ2 「わかる人だけわかればいい」みたいなところにならずに、誰にも分かるようにお話し出来るということですか。

有本 ボディワーク全般に“内側に入っていく”という要素があって、そこにマニアックな感じがあるんですけれども、これからは多分、内側に入っていくということ自体がもう少し大衆化していくと思います。

いまマインドフルネスが注目されているのもその現れで、いま起きているカウンターカルチャー的な動きというのは、行き過ぎた男性性へのカウンターとしての女性性回帰の流れが根底にあるのだろうと思います。
これはどのジャンルを問わずどの業種でも起きている流れで、「女性がリーダーに」というようなことは皆共通して言ってますし。この「女性を」というのは、「女性性を」という意味ですから。

コ2 性別ではないということですね。

有本 はい。またソマティック全体ということで言えば、1回目にお話ししたとおり、やっぱり日本は一日の長と言える部分が沢山あると思います。それは海外の方から言われることが多くて、

日本の武道や茶道はまさにマインドフルネスじゃないか

と、海外でマインドフルネスを研究されている方に言われることもあります。
そう考えると確かに日本人はもともと外に価値を求めるよりも、そういった道を通して自分の内側にあるものには価値を見出すことが得意だったと思うんですね。

コ2 そういう意味では、いまは再発見するいい機会なのかもしれませんね。

有本 そう思いますので、是非沢山の人に来て欲しいですね。

 

有本さんからコ2【kotsu】読者へのお薦め講座はこれ!

コ2 最後に今度はコ2の読者に向けて、有本さんから見たコ2コラボ講座以外のお薦め講座、「これは見ておいたほうがいいよ!」というものをご紹介いただけたらと思います。

有本 そうですね、コ2の読者の方に向けて面白いと思うのは、戸田美紀先生のヒーリングタッチです。アメリカでは実際に看護の現場に取り入れられたりしている技法ですが、これの面白いのは触る場所が、肉体だけでなくエネルギー的身体だったりするという発想なんですね。つまり体の外にあるオーラみたいなものも触って癒やしていこうというものです。

こう言ってしまうと凄く不思議な感じがすると思うのですが、武術のなかにも、“気を読む”とか、“先の先”とか“後の先”とか、威圧感で相手が大きく感じるとか、そういう不可視の気を読み合うみたいな部分があると思のですが、そういう感覚を実際、“治療”や“癒やし”の現場で使っているのが面白いですね。
武術をされている人には、“肉体を離れた部分の作用”というものを感じる上での一つのブレークスルーのきっかけにはなるのではないかと思います。

コ2 講座では実際にどんなことを行うのでしょうか?

有本 講座では、自分や相手の体の外にあるエネルギー的な体、サトル(微細な)ボディと言われたりする場にタッチして、それによって心身がどのように変わるのかということを体験したりします。去年のソマフェスでも開催して好評でした。
武術ではある種、掘り下げていくと、そういう不可視の世界も入っていくというのはあると思うので是非体験して欲しいですね。

コ2 確かに見えているだけの世界の話だけではない、ということはありますね。

有本 ええ、そういった見えないことが。実際に現実の介護や癒やしの現場で使われているということで、面白い講座なんじゃないかなと思い。あとは、ソマティック・サイコセラピー、つまり身体心理療法系の講座はお薦めですね。

コ2 それはまたなぜ?

有本 心理、内側の部分に体からアプローチしていくというのは、特に武術をされている方にとって新しいアイデアが生まれるきっかけになるのではと思うからです。ソマティック・サイコセラピー関連の講座は、体を通じて相手の内側に入らせてもらえるような関係性を構築していきますが、武術で相手を攻撃する際の、外から内への一方通行になりがちな感覚が、“相手を知っていこう”、“相手の内側に教えてもらおう”という相手から受け取る方向にも向かうんですね。

ソマティック・サイコセラピーは自分の体でも、対人においても相手の内側を感じ、理解していこうとする要素があるので、そこは新鮮に感じていただける部分ではないかと思います。

コ2 “サイコセラピー”という時点で、結構初めての人にはハードルが高そうに思う人が多いと思うんですけど、そこは大丈夫なんでしょうか?

有本 そうですね、これがやはりソマティックのいいところで、“知識でなく体から入って、結果、サイコセラピーをしていく”というところなので、まったく知識のない人や未経験でも大丈夫です。

コ2 それを聞いて安心しました。

有本 はい。あと僕がお薦めするのは、講座一覧をパッと見たときに、“自分と遠そうだな”と思うものを選んで欲しいですね。今の話もまさにそうなんですけど、ご自分と“遠そうだな”と思うものというのは、ご自分の枠をかなり広げてくれる可能性があるので。

コ2 ああ、それは面白いですね!

有本 突き詰めると、自分の枠をどうしていくか、ですよね。その枠のエッジ、境界ラインを感じて、そこから自分を知る。自分を知った上で、さらにその境界線を広げていく、破ってより大きな自分になっていくために皆さん武術を始め色々なことにチャレンジされているのだと思うんです。つまり、自分の容易にできる範囲の中にいると、枠はいつまでたっても広がらないんですね。
逆に不慣れなことをやることによって、自分のエッジを知って大きくなったりとか、自分の強みが分かったりするのではないでしょうか? “自分を知る”ことというのは、武術とか、コ2さんで連載されていることのなかでは、中心になるような重要なテーマだという風に思っています。

そうした意味で“できることをやる”というより、敢えてやったことのないことを体験するというのはクロストレーニングとしても凄くお薦めですね。

コ2 本当に今回はいい機会ですからね。では、最後にフェスタ全体について改めて簡単なご説明を頂けますか?

有本 はい。最初にお話ししたとおり、ソマティックの意味は日本語で言えば“身心一如の体験”です。これまで数多くの身体技法が生まれ、その技法に触れる機会もありましたが、それぞれ個別に発展してきた側面があったと思うのですね。

ソマフェスはこれを“ソマティック”という言葉を使って一括りにすることによって、皆が一堂に集まれる感じになっています。その中で生まれるだろう相互交流を切っ掛けに、講師同士の面白いコラボレーションや、参加された方どうしの繫がりが生まれたり、何か統合された新しい化学変化が起こり、それが業界全体の発展になっていったりするでしょう。何が起こるかわかりません(笑)。

恐らくこれまで身体の追求をされてきた方でも、まだ体験をしていないようなワークが沢山あると思うので、そういったものを、この一日でギュッと体験して楽しんでいただければと思います。

コ2 今回はお忙しいところありがとうございました。

(第五回・最終回 了)

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–Profile–

有本匡男(Masao Arimoto
teateセラピスト。幼少期に、仏教の考えに触れ、「幸せとは」について考え始める。2002年よりセラピストとして活動を開始、同時にヨガ、哲学を学び始める。2007年より「teate(てあて)セラピー」を始める。現在は講演、ワークショップを通じて、「teateセラピー」やホリスティックヘルスケアの普及につとめている。
Web site​ ホリスティックヘルスケア研究所