ヒモトレ介護術 第八回 「ヒモトレで腰痛が解消!いまではヒモトレ伝道師」

| 浜島 貫

「ヒモ一本でカラダが変わる」と話題のヒモトレ。中でも関心が高まっているのが、介護分野でのヒモトレの可能性だ。

そこでこの連載では、主に在宅医療の現場でヒモトレを活用している浜島治療院院長の浜島貫先生に、実際の使い方や臨床的な意義を紹介してもらおう。

ヒモトレ介護術

第八回 「ヒモトレで腰痛が解消!いまではヒモトレ伝道師」

お話浜島 貫
文・取材・構成北村昌陽
監修小関 勲

 

こんにちは。浜島貫です。

私が住んでいる埼玉県所沢市には、市が運営する老人福祉センターや憩いの家といった高齢者向け施設が12カ所あります。お年寄りの方が集まり、仲間を作りながら、生きがいを持って楽しく過ごしてもらうための施設です。

これらの施設では、様々な企画があるのですが、その中には介護予防や健康のための教室もあります。そこで、ここ1、2年は「ヒモトレ講座」がすっかり定番になっていまして、私はいつも講師として呼ばれています。いまではこれらの施設に行くと、「ヒモトレの先生」と呼ばれたりします。

ヒモトレ介護 第8回
毎回大盛況のヒモトレ講座。

 

どうして所沢市ではこんなにヒモトレ講座が盛んなのか、と思う方も多いでしょう。こうなるに至った経緯には、興味深いエピソードがいろいろとありますので、今回はそんな話を紹介しましょう。ここでご登場いただくのが、公務員のIさん(60歳男性)です。

 

ひどい腰痛と腕のしびれで、夜、眠れないことも

Iさんは、若い頃から土日にボランティアで少年野球の審判を務めてきたそうです。とても活動的な方です。ただ、野球の審判は中腰の姿勢になることが多いためでしょうか、30代半ばあたりから腰痛を抱えていたそうです。

審判ボランティアを辞めた後も慢性の腰痛は残り、特に寒い季節はいつも大変だったと聞きました。何度もぎっくり腰になり、そのつどマッサージや湿布でしのいだり、病院で鎮痛剤をもらったりもするものの、痛みは消えない。調子の悪いときは、上を向いて寝るのもままならないほどだったといいます。

また、肩こりも重症。同時に手のしびれもあり、ひどいときはしびれた左腕が上げられないほどだったといいます。腰が痛くて横向きに寝ようとするときでも、左手が下になると痛みが出て、眠れないこともあったようです。

病院や接骨院などでいろいろな薬や治療を受けたけれど、そのときは少し良くなってもまたすぐに戻ってしまう。通院するのも大変で、結局そのままになってしまったそうです。

Iさんは、業務上、毎日のように各施設を車で回る立場。運転中はいつも、腰が痛くてたまらなかったとおっしゃっていました。また、デスクワークで長時間座りっぱなしになるのも腰に負担が大きいですし、パソコン作業は肩や首へ大きな負担をかけます。いつも体がしんどいのを我慢していたそうです。

ちょうどそんなころに、私と出会ったのです。

 

たまたま雑談で話した「ヒモトレ」。1週間で腰痛が消えた!

その日、私はある患者さんの支援策の打ち合わせで、市役所を訪れていました。訪問先は、Iさんが所属する高齢者支援課。そして、たまたまそこにいたIさんと雑談になったのです。そのときに、Iさんが腰痛で困っているという話が出てきたので、「お腹にひもを巻くと楽になりますよ」とお伝えしました。

あとになって聞いたところでは、そのときの率直な印象は「ひもなんかでよくなるのかな?」と半信半疑だったそうです。それでも、ごく簡単な方法ですし、そもそも症状があまりにきつかったので、“藁にもすがる”ぐらいの気持ちで、やってみたのだとか。

これが、驚くほどよく効いたそうです

腰の痛みが翌日には明らかに軽くなり、1週間後にはすっかり消えていたという。仰向けに寝るのも、問題なくできるようになった。最初は「信じられない」と思ったそうですが、すぐに「これはすごい!」という実感が湧いてきたようです。

それでIさんは次に、タスキを始めました。肩こりと左手のしびれには、たすきが効くのではないか、と考えてのこと。期待通り、タスキをつけて10日ぐらい経った頃にはしびれが消え、横向きに寝ても大丈夫になったそうです。また、寝た姿勢から起き上がるのも、さっと身軽に動けるようになったといいます。

こんなふうにしてヒモトレの効果を確信したIさんは、いまではへそひもとタスキを1日中巻いています。下着の上に巻いて、その上から服を着れば、表からは見えないので、職場でもまったく問題ないそうです。長時間のデスクワークや車の運転をこなしても、腰痛や肩こりに悩まされることがなくなった、と、いつも笑顔で話してくれます。

ヒモトレ介護 第8回
普段でもタスキをしているIさん。

 

ヒモトレの効果を実感した人は、なぜか“伝道師”になる

さて、これは私の主観ですが、ヒモトレにはひとつ、おもしろい特徴があります。効果を感じた人が、なぜか周囲にどんどんヒモトレを広めてくれるのです。講座でも、過去に受講してヒモトレをすでに知っている受講者が、見ず知らずの初参加の人にいろいろと教えている姿をよく見かけます。

そういうのはどんな健康法でも起きることだろう、と思うかもしれませんが、私の印象では、ほかの健康法ではなかなかそこまではいきません。でもヒモトレでは、やり方を知った人がかなりの確率で、自主的に“伝道師”になってくれるので、周囲へ自然に広まっていく。なぜか、そうなることが多いのです。

どうしてでしょうね。もしかしたらヒモトレが体にもたらす影響の中に、「人に対して親切になる」のような働きがあるのかもしれません。まあ、なぜそうなるのかを理論的に説明するのは非常に困難ですが(笑)。

なぜこんな話を持ち出したかと言いますと、Iさんも御多分にもれず、ご自身の周囲にヒモトレを伝え始めたからです。まあ、Iさんはもともとお世話好きで面倒見のいい方ですから、ごく自然なことだったのでしょう。Iさんは高齢者施設で働いていますので、利用者や職員が腰痛などで悩んでいると聞くと、すぐにヒモトレを勧めるようになったそうです。

とはいえ、ヒモトレを全く知らない人にとっては、「ヒモを巻けば腰痛が治る」なんて急に言われても、はいそうですかと受け入れられるものでもない。実際、Iさんは当初、職員たちからいつも「そんなの信じられない」と切り返されていたそうです。

それで、私のところへこんなふうに言ってきたのです。

「職員が信じてくれないから、施設に来て、やってみせてもらえないか」

そんなわけで私は、往診の合間に施設に出向き、職員のみなさんにヒモトレをお伝えすることになりました。

実際に段取りを踏んでやってもらえれば、みなさん、効果を体感していただけるのです。すると今度は、「こんなにいいものなら、利用者の方にもお知らせしよう」という話になってきた。そんなことがきっかけで、施設での講座が始まった、というわけです。

これまでに10回の講座が開かれました。どこも大盛況で、すでに同じ施設で複数回開催しているところもあります。各施設の職員の皆さんも、多くの方がヒモトレファンになってくれまして、講座のたびにいつも、熱心にサポートしていただいています。

そんなふうに盛り上がるようになった最初のきっかけが、Iさんとの雑談だった。彼が自分でヒモトレを試し、効果を実感して、いろいろなところで働きかけてくれたから、ここまで広がってきたわけです。

ヒモトレを世の中に広めていくうえで、Iさんのような影響力のある方に実感を持って進めていただくことがとても大事なのです。Iさんには本当に感謝しています。

 

アスリートから寝たきりまでカバーする間口の広さ

私は普段、在宅診療を中心に診療しています。訪問する患者さんは基本的に要介護状態で、寝たきりの方も多い。一方、施設の講座にやってくるのは、元気に生活しているお年寄りの皆さん。一口に高齢者と言っても、状況はずいぶん違います。

その両方に対して、ヒモトレはとてもいい働きをしてくれます。これも、ヒモトレの面白い特徴といえるでしょう。通常、寝たきりの人に役立つような健康法やエクササイズは、自立して生活している人には作用が弱すぎてあまり効力がないことが多いと思いますが、ヒモトレはどちらにも役に立つのです。

いや、それどころか、ご存知のように、ヒモトレ創案者の小関勲トレーナーは、プロのスポーツ選手やオリンピックアスリートに対して、ヒモトレを生かした指導をしています。まさに「アスリートから寝たきりまで」。こんなに間口の広いメソッドは、なかなかないでしょうね。

普通の体操などで一般向けの講座をすると、必ず講座後に「やりすぎて体のどこかが痛い」という人が出てきます。やればやるほど効くだろうと思って、ついやりすぎてしまうのです。でもヒモトレではこれまで、そういうことば全く起きていません。体を痛める心配がないので、だれにでも安心して勧められます。これもヒモトレのいいところです

Iさんはこの3月いっぱいで定年退職されたそうです。「ヒモがあれば体は動くので、まだ働きますよ」とおっしゃっていました。もしかしたらこの先の職場でも、ヒモトレを広めてくれるかもしれませんね。

(第八回 了)

注意:この連載では実際に浜島先生が現場でヒモトレがどのように使われているかをご紹介しています。ただ、実際の使用にあたっては、必ずご本人を含めた関係各位の同意の上、慎重に行ってください。また高齢者や障がいをお持ちの方が行う際には、必ず付き添い者の同伴が必要です。席を外すときは、必ずヒモを外すように注意してください。

 

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–Profile–

浜島先生

浜島貫(Totu Hamashima
1976年生まれ。浜島治療院院長。浜島整骨院副院長。鍼灸マッサージ師。柔道整復師。 公益社団法人埼玉県鍼灸マッサージ師会理事。井穴刺絡頭部刺絡学会理事。現在、在宅医療にも力を入れており、個人宅などを訪ねて鍼灸治療やマッサージ、リハビリなどを行っている。そうした取り組みの中で、ヒモトレを活用。腰痛予防対策や介護施設の職員、デイケアなどに通う高齢者に向けたヒモトレ講習会も実施。

ご連絡先:hamashima.in@gmail.com

 

小関 勲 (Isao Koseki
ヒモトレ発案者/バランストレーナー 1973年、山形県生まれ。1999年から始めた“ボディバランスボード”の制作・販売を切っかけに多くのオリンピック選手、プロスポーツ選手に接する中で、緊張と弛緩を含む身体全体のバランスの重要さに気づき指導を開始。その身体全体を見つめた独自の指導は、多くのトップアスリートたちから厚い信頼を得て、現在は日本全国で指導、講演、講習会活動を行っている。
著書『[小関式]心とカラダのバランス・メソッド』(Gakken刊) 小関アスリートバランス研究所(Kab Labo.)代表 Marumitsu BodyBalanceBoardデザイナー
平成12〜15年度オリンピック強化委員(スタッフコーチ) 平成22〜25年度オリンピック強化委員(マネジメントスタッフ)日本体育協会認定コーチ、東海大学医学部客員研究員・共同研究者、日本韓氏意拳学会中級教練

MARUMITSU(まるみつ)
Kab Labo.