実践、超護身術 第三十回 直接護身のリスク01

| 葛西真彦
introduction

武術の根幹と言えば身を護ることにある。法治国家である現在の日本においてもそれは同じだ。時として、理不尽な要求や暴力から自分や大事な人の身を護るためには、決然と行動を起こす必要があるだろう。しかし、そうした行為もまた、法で許されている範囲の中で行わなければ、あなた自身が法に裁かれることになる恐れがあるのも事実だ。

では果たしてどのような護身が有効なのか?

本連載では元刑事であり、推手の世界的な選手でもある葛西真彦氏に、現代日本を生きる中で、本当に知っておくべき護身術を紹介して頂く。

元刑事の武術家が教える、本当に役に立つ術

実践、超護身術

第三十回 直接護身のリスク01

葛西真彦

 

においをかぐだけで痴漢行為?

今回は この連載で以前から書いてきたテーマ、いわゆる直接護身のリスクについて細かく触れたいと思います。

特に巷で言われている護身に関連する法律についての情報は、実際の法律実務とはかなりかけ離れているものも少なくありません

例えば少し前に話題になった「においをかぐだけで痴漢行為と見做される」という話です。元鉄道警察隊出身の方が発信元で、最近の痴漢態様として現れた新しいタイプの痴漢ということで紹介され、そこから色々な人の口を経て「においをかぐ=痴漢として法に抵触する!」ということで注目されました。これも現場の人間が発信した話だからと言って、必ずしも正確な答えに導かれているとは限らない良い例だなと思いました。※もっともこういったお話は、人の手を経る間に尾ひれが付くものですので、発信元の方がどのような意図だったのかは正確に分かりません。

実際に、においをかぐという行為が卑猥な言動に当たるかどうかは、ケースバイケースと言えますが、話題になった件はやや先走りすぎた感じがあり、説明不足と誤解から「においをかぐ=痴漢」という流れになってしまったのではないかという気がします。

程度によりますが、やはり現場実務としては、ちょっとにおいをかいだ程度で痴漢として立件するのは、かなり無理があると思います。

もちろん裁判官が見ても納得のできるものできるようなあからさまな行為、例えばさして混んでいない電車内で、男性が女性の髪のそばに必要以上に近寄り、普通に呼吸するとは思えない生理的不快感を感じるような卑猥な表情や方法で露骨ににおいをかぎ、客観的に見ても性的興奮をしているのが明らかに分かる。しかもそれは被害者だけではなく、他の目撃者から見ても同様に見える、というようなケースであれば裁判官も納得して事件として判決を下す流れにつながると思います。

しかし、話題になっていたケースでは、そうしたディテールが示されず、「触らない新しい痴漢がある」「触らなくても痴漢となる場合がある」というセンセーショナルな部分だけを取り上げた印象があり、却って誤解や間違った見解のもととなり、ただでさえストレスの多い日常に、さらに余計なプレッシャーを与えるのではないでしょうか。

また、仮にこの報道を真に受けた女性が「においをかがれたので痴漢だ!」と騒いで警察が呼ばれても、先に挙げたような露骨な言動や周囲の証言もなく、一般的な生理現象の範囲であれば、事情を聞いて終わりでしょう。ただ横に立っていて普通に呼吸をしているだけで事件になるとは思えません。むしろ騒いだ女性の迷惑行為が問題になる可能性もあるでしょう。

前置きが長くなってしまいました。

改めて、直接護身を実際に使うためには、事前に法律と判例を理解することが大事なのですが、これを本格的に始めるとかなり時間が掛かってしまう為、ここでは恐らく皆さんが一番関心のある、正当防衛の現実的な知識に関わることについて触れていきたいと思います

葛西先生連載30イメージ

 

 

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–Profile–

葛西真彦(Masahiko Kasai
1977年10月26日生まれ青森県出身。某県において、知能犯係を中心に約11年勤務。詐欺罪等を中心に取り締まり担当の刑事として勤務し、覚せい剤や暴力団等の組織犯罪対策業務も並行して経験。
危険な現場も多く、培った武術武道の技術がどうすれば現場で通じるか、そのことをひたすらに研究し、現場での実戦と訓練のずれをまとめながら、さまざまなランダム性が生じる中で使える武器術を追求。特に対刃物に特化した警棒と杖の使い方に習熟し、学んだ技術を独自に昇華し、現在中国武術との融合を兼ねながら、さらなる研究を続けている。
昇任し、刑事人生これからというときに大病を患い、意識混濁と発作を起こして倒れるようになり、刑事としての勤務することどころか日常生活すら厳しい状況となり、しかも西洋医学では完治は難しいとさじを投げられたため、早期退職して台湾にて中医の治療を受ける。
約1年間ほど養生した結果、発作を起こして倒れるような症状がなくなったため、リハビリもかねて台湾の武芸に励む。
武術歴は30年近くになり、幼少から様々な武道、武術を学んできたが、現在は台湾で武器を使った競技格闘技を指導しながら、太極拳、詠春拳、八極拳の修行に明け暮れる。
また、日本人では初の中華民国八極拳協会の教練試験に合格し、認定を受ける。現在は競技推手教練であり、最重量級においての競技推手世界一を目指している。
日々休みなく、体が壊れる限界ギリギリまで自分を追い詰め、仕事をしながらも、毎日1日8時間以上の稽古を設定して、修行に臨んでいる。
現在は、世界大会3位、国際大会1位、全国大会1位の実績を持ち、台湾および世界中の人間が集まるハイレベルな競技推手の大会に足跡を残した、唯一の日本人である。
台湾ではこれまでの経験をまとめた、心理学と人相学と筆跡で人を読む本と、護身術の本を出版しており、今後は日本でも同様に護身術や武術、読心術関連の執筆や講演と、競技推手、競技武器術の普及活動に力を注ごうと準備中である。

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