新解・肥田式強健術入門 第二回 「腰まわりの養い方と立ち方」

| 富田高久

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肥田式強健術。日本人の身体感覚の核とも言える、“丹田”を中心としたこの身体開発法の名前は、武道・武術をはじめカラダに興味のある方であれば、一度は耳にしたことがあるだろう。その一方で、玄米菜食を中心とした食養や、腰を反る型の印象が強く、「ストイックで難しい」と言われることも少なくない。そこで本連載では肥田式強健術研究会・富田高久会長にお願いして、そうした肥田式にまつわる誤解を解きつつ、改めて現代人に合った肥田式入門法をご説明する。

新解・肥田式強健術入門

第二回 腰まわりの養い方と立ち方

富田高久(肥田式強健術研究会会長)

 

腰のカーブを失ってしまった現代人

前回に引き続き、腰回りの話を続けます。
では、なぜ肥田式の練修を始めると腰が重くなったり、痛くなったりするのでしょうか?
肥田式強健術の型は上体を垂直に保ったまま正しい姿勢(正中心を据えたまま)で腰を落としていきます。腰を深く落とすほど腰は後ろへ引いていくように使っていきます。
その時、背の一つずつの隙間を維持できる筋力が必要となってくるのですが、前述したように腰回りの筋力が衰えている現代人にとってはなかなかつらいことになってきます。
また肥田先生が述べられているように地球上で一番強い力である、“重力”に逆らわずに加速度的に一気に落としていくのが肥田式です。そこには計り知れない力が腰と腹とに加わえることで、正中心を練っていき、ついでにそれぞれの筋肉を鍛えていくのが肥田式強健術の目的です。

その為、肥田式では力(気力)の配分が正中心10分、部分の筋肉8、9分と決められていて常に部分力よりは中心力の方が勝っていれば怪我の恐れはないといわれます。

第4動斜腹筋練修法

 

ですから、肥田式強健術で「正中心を錬る」という事は、取りも直さず最初に正しい位置に正中心を持ってくるという事で、その要は前回図解したように姿勢にあります。
そうしたことから、肥田式では

「一に姿勢、二に姿勢」

と言って姿勢を重視しています。

ここで思い出して欲しいのが、小、中学校の理科室にあった人間の骨格標本です。人間の背骨は垂直に積みあがっているわけではなく、緩やかなS字カーブを描いて積みあがっています。特に腰椎のところでは臍の方に突き出すように湾曲しているのです。

脊椎

 

腰痛の方やその予備軍が多いというのは、このカーブを正しく保てる筋力が弱っていて骨と骨との隙間を正しく保てないからです。多くの人は日頃から正常な骨の積み方の意識が薄く、このカーブをないがしろにした生活習慣で過ごしていることが原因です。

いわゆる、“姿勢が悪い”というのも、背骨を正しいカーブに保つための脊柱起立筋が弱っているからです。これも昔の人に比べて文明が発達して便利になった現代人の一つの特徴でしょう。

腰痛になった人が病院の整形外科でコルセットを装着させられることがよくあります。痛みが取れるまでの一時的な使用であればよいのですが、それが長期間に渡るとコルセットに頼り切ってしまい、ますます筋肉が弱ってもう手放せなくなります。
コルセットをつけながらでも腰回りの筋肉を意識的に使っていくうちに筋力がつき、そこから抜け出せるようにならなくては、本当の意味で“治る”ことにはならないわけです。こうした考え方は肥田式の基本的な部分と同じです。

肥田式強健術の指針の中に、

「自分の健康は自分の身体で贖え」
という言葉があります。
要するに、「自分の健康は器具などに頼らず自分の身体を使って治せ」との意味です。

では正しい姿勢を作るのにはどうするか?

簡単に言えば、骨自体はただの固い物体ですので、これを正しい位置で積み上げれば良いのです。その積み上げられものを筋力を使って維持することになります。ですからある程度の筋力が必要となってきます。
それではまず、その積み上げ方を説明いたしましょう。

 

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–Profile–

富田高久先生

富田高久(Takahisa Tomita
1949年、鹿児島県出身。30歳の時に肥田式強健術と出会い、取り組むほどにその効果と奥深さに衝撃を受ける。1985年、肥田式強健術研究会を設立。以来、会長として肥田式強健術の研究と普及に努めている。

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Web Site 肥田式強健術研究会