簡単!ニコニコタッチセラピー体験。 第一回 「肩コリ」

| 河野智聖

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武術家であり体の専門家である河野智聖先生に、皮膚を軽く撫でるだけで誰でもすぐに使える身体調整法“ニコニコタッチセラピー”をご紹介頂きます。第一回目の今回は、ニコニコタッチの簡単な説明と、簡単にできる肩コリと首のコリの解消法です。

ある日のニコニコタッチセラピー講座での出来事。

講座を受ける女性たちにまじって70歳代のおばあさんが見学にきていました。
聞けば娘が講座を受ける間待っていたいとのことです。
そのおばあさんは腰痛が大変で、歩くのも不自由で講座がおわったら娘に車で病院に送ってもらうことになっていました。

そこで、「せっかくですから、モデルになって下さい」とお願いして、講座でお尻・肩甲骨・頭にニコニコタッチをおこなうと、曲がった背筋がスッキリし、「痛みが取れた!」と満面の笑顔となり、そのままご自宅へお帰りになりました。

ここで私がやったのはただ触るだけ。頑張って揉んだり、押したりせずに皮膚の流れにそってタッチングするだけで元気になる、そんなニコニコタッチをこの連載では紹介していきます。

簡単!ニコニコタッチセラピー体験。

第一回 「肩コリ」

河野智聖

 

ニコニコタッチセラピーの秘密

改めましてこんにちは、河野智聖と申します。
私は現在、“整体ライフ”と名称で、武術や整体など、私が学んで来た身体技法をもとに、日常生活はもちろん、介護やスポーツなどにも活かすことができる新しい身体技法を開発し普及しています。

この連載で皆さんに 私が開発した技術のひとつである

「ニコニコタッチセラピー 」

をご紹介します。

名前がちょっと可愛らしいですか?(笑)

でも、実際に試してみると本当にみんなニコニコして、
体も自然にリラックスできてほぐれるんです。

現在は、 “チセイメソッド・ニコニコタッチセラピー協会”として東京・大阪を中心に活動をしています。

講座には現役のセラピストからちょっとマッサージに興味のある方、高齢者の介護をしている方、お子さんをお持ちになるママさんなど、様々な人が集まっています。

「そんなにレベルや目的の違う人が集まっても大丈夫なの?」

と思われる方もいらっしゃるでしょうが、大丈夫。
理由はそのシンプルさにあります。

ニコニコタッチセラピーの基本は皮膚をさするだけなので、誰でも手軽に自分にも家族にも友達にも試すことができます。
もちろん、そこにはちゃんと手順や理屈があり、経験を積めば積むほど、より奥深い世界へ入っていくのですが、入り口自体は広く、誰でも気軽に試せるのが魅力になんです。

 

実はワコールから商品化もされている!

ニコニコタッチタッチセラピーの考え方は、イチロー選手や石川寮選手がCMのモデルになったワコールのスポーツウエア「柔流」にも取り入れられています。どちらもかなり売れている商品ですので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

こうした商品を開発するメーカーさんはこれまで医学的な理論や筋肉・骨格の構造などを中心に商品を開発してきました。しかしこうした理論で商品を開発するには既にアイデアが出尽くした状態で息詰っていたそうです。

彼らが、「何か新しい理論で効果が出るものはないか?」と探していた矢先に、私が発案したニコニコタッチの「皮膚理論」にであったのです。

ニコニコタッチセラピーの「皮膚理論」とは

「すべての皮膚にはのびる方向と縮む方向がある」
「すべての皮膚には拡張する部位と収縮する部位がある」

という二つの法則性のことをいいます。

海に海流があるように、実は私たちの皮膚にも流れがあります。
それは実際に自分の腕を触ってみれば分かるはずです。肘から手首の方向へ撫でるのと、逆に手首から肘方向に撫でるのでは手応えや感じ方がぜんぜん違うことに気がつくでしょう。
ニコニコタッチではこの皮膚の流れにそってアプローチすることで体を整えるのです。

ニコニコタッチに興味を持ったワコールさんから連絡を頂き、私は京都研究所に直接に伺い、実際に研究所の所長さんや社員の皆さんの皮膚の流れを調整することで、信頼を得ました。

この時行ったのは、皮膚の流れにそって脚を整えることでした。最初は懐疑的だった皆さんも、私がニコニコタッチを行うと、脚が軽く大股に歩けるようになることにとてもビックリして、一気に興味を持ってくれました。そこで今度は皮膚の流れとは逆方向へ行うと歩幅が狭くなり脚が重くなり、その違いを味わってもらい、私たちの皮膚には流れがあることをまず実感してもらいました。

その変化に一番驚いたのは体験した所長さんでした。後から聞いたのですが、実はこの所長さんはかなり難しい人で有名だったのですが、その所長さんが最初に気に入ってくれて、後から来た他の社員に基本理論や体の変化を私に代わってに解説してくれるほどでした(笑)。

その結果、ニコニコタッチの皮膚の理論を盛り込んだウェアー商品の開発が正式に始まることになりましたなりました。

いざ、商品開発となると、流石はワコール研究所。様々な姿勢で何度も実験を行い、微に入り細に入り関節の可動性や柔軟性の向上を検証します。

そのなかでも上半身裸の状態での肩の可動性の検証の時に、皮膚の流れをサポートする柔流ウェアーを着た時と、着ていない時の肩の可動性を比較すると、ウェアーを着た時の方が飛躍的に肩の可動性はあがりました。また、ゴルフのスイングではウェアーを着用するとスイング速度があがりました。

こうした検証を重ねたすえに、ニコニコタッチの皮膚理論を活かした商品が販売されました。

ワコール
平成25年11月25日 公益社団法人 発明協会においてスポーツウェアー「柔流トップ(ジュウリュウ トップ)」が発明奨励賞を受賞しました。

 

しかし、それでもなお、ニコニコタッチの元となる“皮膚理論”は完全に解明されているわけではありません。

最近では気功で言われる「氣」という概念も社会的に認知されてきてはいますが、完全に解明されているわけではないように、この“皮膚理論”も臨床としては効果は確認されていますがが、「なぜそうなるのか?」という部分の解明はまだまだ時間がかかるのかもしれません。

ではなぜ私がこの新しい理論を見つけることができたのか?
実はヒントは日本の古典的な生活にあったのです。

 

はちまき・たすき・帯、三紐法の効果

皆さん、はちまき・たすき・帯はご存知ですか?

日本人なら、誰でもなじみがあるのではないでしょうか?
今では受験勉強にはちまきもしなくなりましたが、一昔前は皆、ここぞ一番という時ははちまきを締めていました。また、着物の時代には袖が邪魔にならないように、たすきをかけていました。

現在でも武道の袴や着物を着るときには腰帯を巻いています。

こうしたことは以前はごく普通の行為だったのですが、研究を進めるにしたがってしていくと効率的に使い、痛めないという効用が隠されていることがわかってきました。

現在多くの人に使われている腰痛ベルトなどは、腰帯のなごりだといえます。

実際に腰帯をすると、腰痛予防となり、腰痛の際には動く時に痛みを感じなくなります。

また、たすきをかけると肩がこらなくなり、はちまきを締めると頭痛が取れ、頭が冴えます。

私は当初、この日本に伝わる民間的な慣習・風習の効果を「三紐法」と名付け、皆さんに講座や本で伝えていました。
ところが、「紐がないとつかえない」、「たすきの掛け方がわからない」、など不満の声があがりました。
そこで、「紐を使わないで、手で同じ効果を出すためにはどうすればいいだろうか?
と考え始めたのがニコニコタッチセラピーの研究の始まりでした。

以来、試行錯誤を繰り返す中で見えてきたのが、人間の体が「基本三層構造」といいえる骨盤・肩甲骨・頭骨の三つを土台にしていることです。

この三つが安定すると背骨がまっすぐになり姿勢が良くなるほか、無駄な動きがなくなり、体の効率があがります。昔の人たちは経験の中でこうした体のシステムを熟知して、それを補うはちまき・たすき・帯を開発して、生活の中に採り入れていたわけです。

発明した人もすごいですが、テレビや新聞もない時代に日本人全員に普及させていたこともすごいことですね。
この骨盤・肩甲骨・頭骨は締めることが、体を整えて動かすことの基本原理といえます。

 

ニコニコタッチの基本原理

こうした原理を研究していくなかで、締めるだけでなく、上へあげる、下へさげるといった上下運動がはいると、さらに効果があがることがわかりました。

簡単に言えば、

・骨盤は締めて上げる
・肩甲骨は締めて下げる
・後頭骨は締めて上げる

と効果があるわけです

考えてみれば、お尻は垂れているよりは上がった方が良いわけですので、骨盤を締めて上げた方が良いわけですし、肩をリラックスさせるには肩甲骨を寄せて下げます。また、頭が疲れると無意識にこめかみを指先でもみ上げますが、頭骨はくたびれると開いて下がってきます。実は、頭骸骨は22個の骨が組み合わさってできていて、疲れると骨と骨の間が開いてくるのです。だから、はちまきを締めることで頭蓋骨が引き締まり、その結果リフレッシュできて勉強の能率があがるわけです。

そうしたヒモを使うことで起きる体の変化を再検証している中で発見がありました。それが骨格を押し上げるために、骨にアプローチするのではなく、
皮膚にアプローチすることでも効果が上がるということです。

この発見は、私が長年武術を研究、実践してきたことにも関係しています。
武術の世界では一見神秘に見える技が数多く存在まします。

例えば合気道の達人は相手に軽く触れるだけで崩したり、倒れた相手を軽く触れるだけで動けなくさせてしまいます。

では、こうした達人は一体相手の何に働きかけているのか? そうした研究を続ける中で気がついたのが皮膚の作用でした。

一般的には体の神経伝達は脳ー手足の筋肉と思いがちです。
ところが実際は脳ー皮膚ー筋肉という三つの連動で体を動かしているのです。
ほとんどの人が皮膚が連動していて動いているとは感じていませんが、実は筋肉が動く時に皮膚も微細に動いているのです。

触れるだけで倒してしまう武術の達人は、この普通では認識されていない皮膚に働きかけることで、相手に予測できない混乱の状態を生みだしているわけです。そのため頭でで体を動かそうと思っても動かなくなるのです。

これは健康を考える時も同じです。体が正常な時は皮膚の流れも正常なのですが、体が乱れると、皮膚の流れも乱れてしまうのです。
この乱れを皮膚の流れにそって体をさすってあげることで整へ、元気にするのがニコニコタッチなのです。

この時に大事なのが皮膚の流れにそってやさしくタッチすることです。
皮膚の大きな役割の一つに、外部からの刺激を感知して、内部にある骨や筋、内臓、リンパなどを守ろうとすることがあります。

そのため外からの強い刺激に対しては、無意識に体を固くして守ろうとするため、その結果、強いマッサージを受けた後に、“もみ返し”と呼ばれる症状が起きるのです。時々、「強く押されないと効かない」と言われる方がいますが、これは刺激で固くなった体に響かせるようにとさらに強い刺激を求めるようになってしまうからです。これが進むと、どんどん体は固く鈍くなっていってしまいますし、マッサージする方も強い力が必要になり疲れてしまいます。

ところがニコニコタッチは皮膚をさするだけなので、ほとんど力を使わずに行えるため疲れず、受ける方もやさしい刺激なのでリラックスしたまま心地良く体に響かせることができます。

ですから、ニコニコタッチは家庭介護の現場でも、子育てにも役立ちますし、体が弛み開いてくるのでコミュニケーションにおいて有効です。私が“ニコニコタッチセラピー”と名付けたのも、ニコニコとやさしく行うことが技術的なポイントであると同時に、そこから生まれる行う人と受ける人との理想的な関係からきています。

 

簡単!肩・首のコリ解消法

今回はご挨拶代わりに簡単にできる肩コリと首スジを綺麗にするニコニコタッチを紹介しておきますので、是非お試しください。

次回は皮膚の働きと役割を中心にお話しさせていきたいと思います。

●肩コリの解消法

肩凝りの解消法

肩凝りの解消法2

 

1.相手の右横に立ち、肩先から首に向かって両方の親指で右肩を分けていくように開きます。

2.肩のラインにそって、5.6ヶ所を目安ひらきます。
3.首の近くに到達したら、また肩先にもどります。これを1〜2分くり返します。
4.終ったら左肩をおこないます。
凝っているところを集中的に行うと良いでしょう。

 

●肩コリセルフ

肩凝りの解消法

 

一人で行うときは、肩の前面と後面を交互になでおろすとよいでしょう。

ニコニコタッチする前と後で肩の上げ下げの変化を確認すると効果がよく分かります。

●首スジを綺麗にする方法

首筋を綺麗にする

首筋を綺麗にする2

 

首は化粧をしても誤摩化せないといいます。
ところがこのニコニコを行なうと、首スジがスッキリして首のコリが解消されて動かしやすくなります。
1.相手の首を優しく包むように親指で胴体から頭の方向へ向かって開いていきます。
2.左右行いましょう。

●首スジセルフ

首筋を綺麗にする(セルフ)

 

自分で行う場合は親指をのぞいた四指で行なうとやりやすいです。
右側から下から上に向かって開いてください。
歳とともにたるみやすい場所ですので、毎日行うとよいでしょう。

(第一回 了)

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–Profile–

動体学創始者 河野智聖(Chisei Kono
整体・古武術・ヨガの研究から、新しい身体理論「動体学」を編纂。東京に動体学研究所を設置、“智聖整体Life”として東京・大阪・神戸を拠点に、日本全国で講座を開いている。
動体学研究所から開発された技術は、ニコニコタッチ®・快気法・心道(整体武術)・スパイナルトーン(音の整体)・マグネティック タオ(体のNS極を磁石で調整)・チセットヨーガなどは“チセイメソッド”として発表されている。
著作に『健康になる整体武術』(筑摩書房)、『生命力を高める身体操作術』(経済界)、『日本人力』『能に観る日本人力』(ともにBAB出版)、『身心を拓く整体』『緊急時の整体ハンドブック』(ともにちくま文庫)などがある。

ニコニコタッチセラピーの講座などのはこちらからご覧ください。

Web site:Chisei Method チセイメソッド