間接護身アドバンス 第三回 塀の中の師匠

| 葛西真彦
introduction

2019年5月の刊行以来、ご好評いただいている『本当に大事なものを護りたい人が知っておくべきこと 間接護身入門』。元刑事の立場から、自分や家族の身を護るためであっても、「対処を誤れば被害者である自分が罪に問われる」という現実を改めて突きつけた内容は、よりリアルな護身を求める多くの方の注目を集めました。

この連載では、前著『間接護身入門』をさらに進めた内容を目指し、より具体的に危機を回避する方法として、著者・葛西真彦氏が現役刑事時代に実際に使っていた人相術、読心術、筆跡術を中心に、その具体的な使い方を紹介していきます。

元刑事の武術家が教える、本当に役に立つ術

間接護身アドバンス

第三回 塀の中の師匠

葛西真彦

 

人相と筆跡が一致する

私が自分流の人相学、読心術、筆跡心理学が徐々に固まってきた頃、改めて身近な人間に目を向けました。

なかでも人をいじめるのが好きで、職場はもちろん、家庭でも奥さんをいじめて不和になっている人に焦点を絞って観察していきました。するとそこに人相の兆候と筆跡の兆候に同意性があることに気がつきました。

Image: iStock

 

簡単に言えば、「感情と人相の調和性」と言えばいいかもしれません。

人には感情があり、その感情ゆえに表情や態度にサインが現れます。人をいじめる人間には優越感、それも人を下に見下す態度、顎を上げ、相手を見下ろす目つきとしぐさが体に染み付いているのです。言葉も語気が強く、相手を威嚇するようなトーンとなり、感情のコントロールもうまくありません。ちょっとでも自分に反発的な態度を見せるとそれに対して、感情的なリアクションや陰湿な報復を仕掛けてきます。

そしてこうした人間の筆跡を見ていくと、文字と文字の間が狭く、互いの文字がぶつかっていることが多いことに気がつきます。

字も無駄なはねが多く、不要に筆圧が強く、まるでぶつかることを好むかのような筆跡で、「相手に読ませよう」という意図が感じられません。

「ただの悪筆ではないか?」と思われる人もいるでしょう。実は悪筆を含めた筆跡にその人の性格や自分に対する感情が現れているのです

下のサンプルのような文字と文字の間の隙間がほとんどなく、一つの文字の中でも線がぶつかり合っています。これは相手とぶつかり合っても構わないという潜在的な心理が反映されているわけです。

少し考えてみればわかることですが、普段私たちは肉筆で何かを書く時に、相手に対しての態度や感情がそこに現れているはずです。例えば宅急便の受け取りでサインを求められた時と、恩師に年賀状を書く時には自分の名前でも書き方が違うはずです。そう考えれば、肉筆には様々な情報が含まれていることがわかるはずです

ですから「ただの悪筆」だと思わずに、文字を見ることが大事になるのです。もちろん字が汚い人が全て危険だというわけではありません。生活環境や自分でもコントロールができていてある程度緩和されている人もいるからです。ですが相手を知る指標として重要であることはには変わりません。

 

人相、読心術、筆跡。それぞれに有効なのですが、より正確度を求める上で重要なのがこれらの合成による「三点一致の原則」です。

私自身の経験から、この三点一致する場合は、必ずなんらかの犯罪に関わっていました。

ただ、この三つのうち筆跡は必ずしも手に入るものでもありません。特に最近ではメールのやり取りが多いでしょう。

そこで大事になるのが、人相学と読心術です。この二つを合致させる重要なテクニックとして、「相手の感情が出た状態を見る」というものがあります。

詳しくは後で説明しますが、喜怒哀楽とは別に「人には何かを働きかけよう」とする時に現れるサインを読み解くことが重要になります

身内でゆっくり人を見ることができたら、あとは実践です。職務質問や取り調べ、相談に来た人等々で実践を積み重ねるうちに、三本柱以外の兆候というものにも気づくようになりました。それは「匂い」です。

善意の塊のような優しい人には陽だまりのような優しさを連想する特有の匂いがあり、悪意の塊の人にも金属臭のような特有の匂いがあります。

これを察知できる人は多くはありませんが、分かりやすいものだと、生活の荒れていて風呂に入らず体臭が臭い人、不必要に強い香水なども貴重な情報です

 

一番の師匠は詐欺師?

ここまで私が活用している人相学の基本的なことを書いてきましたが、そうしたスキルを一気に底上げした一人の人物について書いておかなければいけません。

彼は伝説的な詐欺師でした。初老で背が低くニコニコと温厚な印象で一見すると優しそうな年配の人に見えるのですが、気をつけて見ると、要所要所で目が瞬時に獲物を見るそれに変わる男でした

前科十何犯の真っ黒な経歴の全ては詐欺であり、騙し取った金額は億単位という凄腕でした

彼は頭が良く、かつ洞察力もあり、口が達者なだけでなく不動産と経済的な専門知識が豊富でした。

Image: iStock

 

その頃私は留置場勤務を経て、既に刑事として活躍していましたが、20代の小僧刑事と60近い歴戦の詐欺師とでは差がありすぎ、取り調べは遅々として進みませんでした。それでも必死に食い下がる私に彼は興味を持った様で、自分自身の取り調べに影響しない範囲で、私に騙しのテクニックや人の見方を教えてくれました。
曰く、

  • 誰よりも勉強して専門用語を交えろ。
  • はったりをかませ。
  • 安く見られない格好をしろ。
  • 相手の反応を見ろ。無知なら困惑する、知ったかぶりするやつは態度にウソがでる。
  • サインは人によって違うが、違っても小さな変化を洞察して見抜け。
  • 勝負は洞察して得た情報から始まる。

と、等々なことを教えてくれました。

もちろん彼の話の全てを鵜呑みにすることはできませんが、そこにはプロならではの目の付け所と間合いがあり、私の人相学、読心術、筆跡をより実践的なものにしてくれましました。

語弊はありますが、まさか詐欺師が自分の師の一人となるとは思いませんでした。もちろん彼のやったことは許されることではなく、本当の師と言べる関係ではありませんが、彼の存在なしに現在のスキルはなかったでしょう。

結局、彼は有罪となり刑務所送りとなりました。その後のことはわかりません。

(第三回 了)

 


『本当に大事なものを護りたい人が知っておくべきこと 間接護身入門』

本連載の基本編にあたる『本当に大事なものを護りたい人が知っておくべきこと 間接護身入門』は現在、全国書店、アマゾンで発売中です。

自分が被害者であっても対処を誤ったばかりに加害者になることがある。コミックやドラマ、映画のようにいかない「護身のリアル」を元刑事である著者がわかりやすく解き明かします。被害者にも加害者にもならないための現代人が知っておくべき知恵がここにあります。

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–Profile–

葛西眞彦(Masahiko Kasai)(写真右)

かさい・まさひこ。1977年10月26日生まれ、青森県出身。間接護身アドバイザー。

日本在住時は意拳、フルコン空手、杖、剣道、逮捕術、合気道等を修行していた武術歴約30数年の元刑事。現職時代に大病を患い、発作で仕事もままならなくなったことから、漢方治療を受けるため早期リタイヤし台湾へ移住。

1年間の漢方治療を経て発作も収まり、体がある程度動くようになったため、台湾での本格的な中国武術修行を開始。

台湾では、中華民国八極拳教練資格を日本人として初取得、また同様に推手教練資格も日本人として初取得。

台湾で実施される競技推手世界大会を運営する団体に所属し、詠春拳と太極拳、八極拳を修業し、シニアの身の上でありながら、競技推手青年部での中量・重量級チャレンジを続け、優勝・入賞経験を積み重ね、その経験と技術を後進に伝えている。

日本の選手を団体流派の制限を一切問わず、最短の時間と努力で台湾大会に入賞・優勝するために必須の技術と哲学を公開指導。

競技推手大会開催地である台湾に居住し、常に参加選手、参加団体との交流があるからこそできる分析、解析を強みに、熱意のある方に情報を還元。

指導者としてのスキル研鑽にも力を入れ、関わった日本人全員が世界で優勝することを目標にして、指導と修業を並行した研鑽を続けている。

現在は競技推手のみならず、自由推手と養生推手および詠春のチーサオを融合させた、総合的な崩しと打撃へ対応できる技術を研鑽し、独自の境地を見出すための努力を続けている。

最終的には日本に帰国して、素手の崩しと武器の崩し、ランダム性の中で戦えるものを、刑事時代の経験等からも総合的な形でまとめた独自の技術として提唱すべく準備中。

執筆活動も精力的に行なっており、台湾では心理学と人相に関する本を1冊、護身術に関する本を1冊出版。

日本ではwebマガジン「コ2」にて、直接的な攻撃や抵抗の段階に入ることなく、事前に危機を察知、回避することを主体とした「間接護身」という独自の概念を紹介・解説するコラムを書籍化し、応用編を現在執筆中

主な入賞経歴
2016年10月、 台湾世界大会「第六屆世界盃太極與推手錦標賽」第七級(76〜83kg)にて三位入賞(台湾推手大会の入賞としては日本人初)。

2016年12月、 台湾全国大会「第十二屆志堅盃全國太極拳錦標賽」社男第五級(80〜90kg)にて優勝(台湾推手大会の優勝としては日本人初)。

2017年5月、台湾全国大会「第10屆道生盃武術錦標賽-定步推手比賽」第七級(82kg以下)にて優勝。

2017年10月、台湾最大の全国大会である「第7届總統盃全國太極拳錦標赛」青年男子第八級(83〜91kg)にて優勝。

2017年12月、台湾全国大会「第十三屆志堅盃全國太極拳錦標賽-定步推手比賽」第七級(91kg以下)にて2位。

2018年10月、台湾世界大会「第七屆世界盃太極與推手錦標賽」青年男子第七級(76〜83kg)にて2位。

2019年12月、台湾全国大会「第十五屆志堅盃全國太極拳錦標賽」小よく大を制すを体現するため、中量級の体重で最重量級に参加し、110キロ、115キロ、140キロの重量級選手を倒し優勝。

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