2019年5月の刊行以来、ご好評いただいている『本当に大事なものを護りたい人が知っておくべきこと 間接護身入門』。元刑事の立場から、自分や家族の身を護るためであっても、「対処を誤れば被害者である自分が罪に問われる」という現実を改めて突きつけた内容は、よりリアルな護身を求める多くの方の注目を集めました。
この連載では、前著『間接護身入門』をさらに進めた内容を目指し、より具体的に危機を回避する方法として、著者・葛西真彦氏が現役刑事時代に実際に使っていた人相術、読心術、筆跡術を中心に、その具体的な使い方を紹介していきます。
元刑事の武術家が教える、本当に役に立つ術
間接護身アドバンス
第五回 人相「目の重要性」
文●葛西真彦
人相で一番重要なのは“目”
人相については深掘りすればそれだけで本が一冊、二冊は書けるほどですので、ここでは専門的なことを省き、間接護身的に必要なポイントを押さえてできるだけわかりやすく書いていこうと思います。
人相で一番重要なのは目です。
目はその時の感情だけではなく、その人の生活環境、性格、人間性などすべてを浮き彫りにします。
もちろん一般の人で相手を見ただけで瞬時にそれがわかることは至難の業でしょう。
ですが希望に満ちた人間、今から大きなことに挑戦する人間、異常犯罪を犯した人間、では目が違います。
また、一般に「人相」と言うと「顔の造作や表情」というイメージを持たれがちですが、実際は言動や体の動きも含まれています。
無論目や眉根、鼻、口、これらのパーツが重要なのは当然です。それはそうしたパーツがその人の言動、表情と切っても切り離せない関係だからそこに色濃くその人の本音が現れるわけです。そう考えれば言動や表情を含めたものが「人相」であることは当然でしょう。
ですから「人相を見る」ということは「個々のパーツ」「言動」「体の動き」の三つを見ることになります。
またポイントになるのはこの三つの一致と不一致です。
ストレートに相手を蔑んでいる本音がそのまま表情や態度に現れる人もいれば、腹の底では馬鹿にしながら笑っていたり、何とも思っていないのに泣ける人もいます。そういった嘘や真実を隠したサインまでも見取っていくことが大事です。
マンション神隠し事件
言動のサインで、わかりやすく内面が現れ、しかもしれがマスコミを通じて多くの人が見られたのが2008年に江東区で発生した「マンション神隠し事件」です。
犯人はマンションに住む男で、被害者は同じマンションに住む女性でした。被害者を自室で殺害し、死体をマンション内で処理した極めて自己中心的で残忍な事件です。(※事件の詳細はこちらから)
「江東区」「マンション神隠し事件」で検索すると、犯人(無期懲役で現在服役中)の写真や動画が登場するので、興味がある人は見てもよいでしょう。(気分は悪くなりますが)
テレビのインタビューに答える犯人はやたらと笑います。それも独特の笑い方です。そこには「笑って誤魔化す」のと「勝ち誇った笑い」が混ざった、何とも違和感のある笑い方が見られます。
この時の犯人の心理を様々な専門家が分析していましたが、当時の犯人の心境を私が見るに、
「完全犯罪だから捕まらないよ。お巡りさん、証拠がなければ無理でしょ? 俺はそれを短時間でやり切ったんだよ、天才でしょ?」
という勝ち誇りの笑いが中心であると感じられます。
なぜ私がそう思ったのか。様々に要素はありますが、分かりやすいポイントとして「意味なく笑う」という点があります。
人が面白くもなんともないところで笑うときには、そこに隠された感情と心理が出てくるものです。例を挙げると、
- 相手と意思疎通ができた喜び。
- 相手と達成したことへの気持ちがつながった喜び。
等々がありますが、それとは別に、
- 自分の失態や悪いことを隠すために笑ってごまかす。
- 相手に対して媚びて好印象を与えるための笑い。
- 自分の緊張を解消するための笑い。
などもありますし、さらに悪い感情等で例を出すと、
- 人を見下せたことによる快楽。
- 自分が成功し相手が失敗した(相手を出し抜けた)ことによる笑い。
等々が挙げられます。
この犯人の笑い方はどうでしょうか?
映像を見ると笑う必要のない場所、そして笑う理由のない質問に対して笑い、また質問に答えながら笑っています。
一言で言うと異様です。酔っぱらってたり薬物でもやってないのであれば、明らかに異常であり「何か知ってる、何か隠してる」そう捉えて十分だと私の視点からは感じます。
気になるのは取材陣が途中で「犯人は男のようだ」という話をした時に、急に態度が固まり声のトーンが落ちた箇所です。これがいわゆる「急所」です。もっともまだ余裕のある犯人はその後でまたすぐにせせら笑いを始めています。
こうした話に「もし」は禁物なのですが、あえて「もし」私が刑事で彼を事情聴取していたら、この態度と声のトーンの変化に間違いなく疑いの目を向けます。こうした事件での警察の仕事は複雑で、捜査本部ができていたら、一刑事の判断ですぐに結論を出したり、勝手な行動はできません。それでもじっくりとそして確実に彼が被疑者である証拠集めを行ったと思います。
なお、単純な人相だけで犯人を見ると、「不器用で無骨だけど真面目でコツコツやる努力型のタイプ」という犯罪とはあまり縁がないような結果になります。これがいわゆる「人相」だけで判断した場合の典型的な落とし穴です。
普通の人でも自分の本音を顔に出さない人はいくらでもいます。また人相は地層に似て、長年の積み重ねから成っていますが、人間は環境や目の前の欲望、負の精神状態等々でその瞬間に大きく行動が変わることがあります。ですので人相だけで「この人は絶対に犯罪を犯さない」「信頼できる」などと思うのは危険です。
信頼できると思って長年付き合っていた人が裏切るケース等々もそういうことです。
(第五回)
【講座情報】
◯間接護身オンラインセミナー 講師・葛西眞彦&天田憲明
7月より定期的にオンラインセミナーを開催している間接護身協会が、初のコラボレーションによる講座を開催決定しました。
第一回目の今回は、「正当防衛は法的にどこまで認められるか?」をテーマに、『間接護身入門』の著者・葛西眞彦氏とシステマ公認インストラクターの天田憲明氏が登場します。
「正義のための行動がは法的にどこまで許されるのか?」
重要なトピックスにも関わらず、グレーゾーンで語られることの多いテーマに、間接護身とシステマ的視点から解説する予定です。
日程:2020年8月29日(土) 19時-21時
参加費:正規価格 5,000円(LINE公式アカウントに申込むと20%OFF)
講師:葛西眞彦(間接護身アドバイザー)、天田憲明(システマボストーク代表・システマインストラクター)
お問い合わせ、お申込みは下記からお願いいたします。
https://peraichi.com/landing_pages/view/kansetsu-goshin
『本当に大事なものを護りたい人が知っておくべきこと 間接護身入門』
本連載の基本編にあたる『本当に大事なものを護りたい人が知っておくべきこと 間接護身入門』は現在、全国書店、アマゾンで発売中です。
自分が被害者であっても対処を誤ったばかりに加害者になることがある。コミックやドラマ、映画のようにいかない「護身のリアル」を元刑事である著者がわかりやすく解き明かします。被害者にも加害者にもならないための現代人が知っておくべき知恵がここにあります。
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