連載 背骨を反らせば体が変わる  超!後屈入門 第9回(最終回)

| 今村泰丈

背中を反らせば体が変わる

超!後屈入門

第9回 現代人の体の悩みを解決!? 後屈の可能性

今村泰丈

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この連載では、過去8回に渡り、正しい後屈の理解とその手順についてまとめていきました。

皆さんは実践していただけたでしょうか?

何度も書いてきたように、正しい手順でひとつひとつ練習していくことが、ケガを防ぎ、本来の背骨のしなやかさと柔軟性を取り戻す上で大切なことです。

連載最後となる今回は、後屈がカラダに対して具体的にどのような効果を示してくれるのかについてシェアさせて頂きます。

背骨を動かさない現代人

第1回目にも書いたように、後屈は日常でほとんど行わない動作の1つです。

私たち現代人の生活は、文明の進歩のおかげで、ツールの利便性が高まったことも相まって、歩く、走る、登るなどのダイナミックな動作をする機会が減った一方で、車の運転やスマホ、パソコン作業など、ほとんど全てのことは、体の前側で操作することで完結しています

このことにより、1日の大半を丸く屈めた姿勢で過ごすため、骨格は徐々に丸まった姿勢に合わせた構造に変形していきます。

日頃背すじを伸ばす習慣がないと、脊柱起立筋をはじめとするを重力に抵抗しカラダを起こしておくための筋肉が徐々に衰えていきます

脊柱起立筋の衰えは、将来的に円背と呼ばれる、高齢者にみられる背中が丸くなる原因でもあります。これがいわゆる「猫背」ですね。

丸くなった姿勢には、数多くのデメリットがあります。

  • 肋骨が潰れ、横隔膜の動きが制限されるため呼吸が浅くなる
  • 肩が内に入ることで肩関節に負担をかけ、五十肩の原因となる
  • 椎間板にかかる圧力が高まり、背骨の変形・トラブルを助長する

などなど身体構造に大きな負担をかけ、こうした構造の崩れは内臓にも影響を与え、体調不良を引き起こす原因となっています。

医学は進歩しているのに、肩こり腰痛で悩む人の数は減らずむしろ増加している背景には、このような問題が隠れているわけです。

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「後屈」は現代病解消の鍵!?

丸まった姿勢のリスクは十分理解していただけたでしょうか?

では、予防のために何が有効なのか、それがこの連載のテーマでもある「後屈」です

1日数回の後屈は背骨の感覚を目覚めさせ、本来あるべき骨格の状態に調整してくれます

運動の機会が少なくなったからこそ、意識的にカラダを動かしていく必要があるのです。

特に近年では、新型コロナ感染症の影響で外出機会が減ったことで運動不足となり、生活習慣病のリスクが急増していることが指摘されています。

また「疲れが取れない、肩や腰が痛い」などカラダの不調がある場合、マッサージを利用する方は少なくないでしょう。

しかし、マッサージでは取ることのできない不調があります。

実は疲労には、大きく分けて2つのパターンがあります。

1つは動的疲労で、運動による疲労です。

この場合はマッサージで血流をよくしたり、寝て安静にする事で症状の改善が見込めます。

もう1つは静的疲労であり、長時間同じ姿勢を取る続ける(不動)ことによる疲労です。

この場合はマッサージや安静では改善しません。運動によって固まった状態をリセットする事ではじめて症状が改善します。

現在、多くの方が訴えている不調は動かないことによる症状、つまり静的疲労です。

であるならば、日頃動かしていない場所を動かしていく必要があるわけです。

そしてこの時に最も動かしたいのが背骨であり、動かす方向としては後ろに反ってしなる「後屈」の動作です。

ぜひこの連載を機会に日常に取り入れてみてください。

毎日コツコツと練習を行うことで姿勢が良くなり、スポーツに取り組んでいる人はパフォーマンスの向上を実感できるはずです。

 

さらに後屈を深めたい人へ!

日頃からヨガやトレーニングでカラダを動かしている方なかにも、改めて連載の手順に沿って後屈を実践することで、いつもよりカラダが動けていることに気づいたのではないでしょうか?

意外なことですが、運動指導者でも後屈を行う際に「どこまで反れるか」に意識が向かうあまり、自分の体の中で何が行われているかについて無頓着な人も少なくありません。

逆にもともと体の柔軟性が高い人ほど、勢いに任せて後屈をしている方も少なくなく、確かに後ろに体は反れたり、難しいアーサナができたりするものの、全身にいくつもの故障を抱えている方も多いようです。

連載中何度も書いてきたことですが、後屈で大事なことは「どのくらい反れたか?」ではなく「つま先から頭まで、どれくらい全身を連動できたか」です。

その結果、上半身と下半身の動きを連動させる背骨が本来の可動性を取り戻し、運動全般の質が向上するわけです。

 

最後に、さらに後屈を深めていきたい方にとって大切な要素である“お腹の中の柔軟性”についてお伝えします。

お腹の中、つまり「内臓」のコンディションが大きく後屈に影響してきます。

ポイントは、

  • 「空腹」であることと
  • 「内臓の柔軟性がある」こと

の2点です。

空腹については簡単に想像がつくと思うのですが、満腹状態で後屈したら苦しくなると思います。これは、胃の中の内容物が多いと内臓がうまく移動することができないために、お腹が圧迫されて起きている症状です。

人間の内臓は運動時に、私たちが想像している以上にお腹の中で動いています。ですから、空腹にしておくこと内臓自体の動きを良くしておくことが、より後屈を深めていく上で有効です。

そして、後屈という動作自体も内臓のストレッチになっているのです。

ここでは、内臓の柔軟性を高めるためのワークをご紹介したいと思います。

内臓の柔軟性をチェックする

①お腹の硬さをチェック!

お腹全体を押して、固さや痛みがある部位を探しましょう。
(指の背を合わせるようにして指を突き立てるとやりやすい)

②寝て行う「内臓のマッサージ」

お腹はデリケートな部位です。勢いよく揉んだり動かさずに、痛い部位に指を沈めたら、そのまま5呼吸繰り返します。痛いポイントを押しながら深い呼吸を行うだけでもコンディションが変化します。

 

③立って行う「内臓の全体のマッサージ」

01 横隔膜の緊張が抜けやすい姿勢を取りたいので、嘔吐しそうな状態を頭でイメージし、具合悪い時の姿勢をとってみましょう。この形が最も緊張が抜けて呼吸しやすい姿勢です。

02 息を完全に吐ききったらそこで息を止めます。同時に、へそを背骨に最大限近づけるようにお腹を凹まします。その状態でカラダを左右に回旋します。はじめは10秒止めるのも辛いかもしれませんが、回数を重ねていくうちに長く行うことが可能となります。くびれを作ったり、強い体幹を得る上で注目される腹横筋を最大限収縮させるエクササイズになります。

 

④再度チェック

ワークを行った上でもう一度お腹の状態を確認し、後屈をしてみましょう。

ワークを行う前よりも柔らかく、後屈もしなやかになっている体感があると思います。

 

いかがだったでしょうか?

普段行わない後屈だからこそ、痛みを抱えていたり怪我を繰り返すカラダを変化させる力があります。

日常を快適に過ごすために必要なカラダのメンテナンスは、「使っていない部分を使うこと」です。

ぜひ日常の中に数分だけでも「後屈」を取り入れることで、痛み知らずのしなやかなカラダを手に入れて下さい。

最後にお読みいただいた皆さんに改めて御礼申し上げます。

最後までご覧いただきありがとうございました。

(第9回(最終回) 了)

お知らせ

本連載「超!後屈入門」は書籍になることが決まりました! 発売時期が決まりましたら、コ2でお知らせいたします。お楽しみに!

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–Profile–

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今村泰丈(Yasutake Imamura

モーションクリエイターとして岩手県盛岡市を中心に活動。
岩手リハビリテーション学院作業療法学科卒業後、7年間回復期病院に勤務。その後合同会社LOCOCLANを設立。Studio -Roots- MORIOKAオーナー。
2014〜2016にかけて47都道府県全県で、延べ10000人に医療従事者、ヨガインストラクター向けの治療セミナーを開催。身体合理性を追求した神経統合メソッド Somatic Flow®︎ を考案。

スタジオルーツ盛岡にて整体師、パーソナルトレーナー、ヨガ指導者として活動している。その他発達支援事業に作業療法士として従事。

合同会社LOCOCLAN 代表(http://lococlan.com/
作業療法士
PFILATES®インストラクター
BESJ認定PILATES&MasterStrech®インストラクター
NESTA認定パーソナルトレーナー(全米ストレングス&スポーツトレーナー)
Somatic Flow™エデュケーター

■資格
全米ヨガアライアンス RYT200
DNS exercise course1修了
Natural movement™ Level1修了