健康とウェルビーイングの一歩先を求めて−−。
今、こころとからだの健やかさの質を高める、
マインドフルネス瞑想やボディワークなどが人気を呼んでいます。
からだの感覚に注目し、
心身が心地よい状態へとフォーカスすることで、
深い気づきや静けさを得たり、
自己肯定力や自己決定力といった心身の豊かさを育んだりしていく。
これらは、
こころとからだのつながりを目指す
「ソマティックワーク」という新しいフレームワークです。
その手法は、タッチやダンス/ムーブメントなど多岐にわたり、
1人で行うワークから、ペアやグループで行うワークもあり、
自分に向くものはそれぞれ異なります。
この連載では、
これからの時代を生きる私たちにとって、知っておくべき「からだのリベラルアーツ(一般教養)」として、各ワークの賢人たちの半生とともに
「ソマティックワーク」が持つ新しい身体知を紹介し、
それらが個々の人生や健康の質をどう変化させたのかを探っていきます。
リベラルアーツ(一般教養)として学ぶ
ソマティックワーク入門
−新しい身体知の世界をめぐる−
第十回 「身体」と「場」に重きを置くことで瞑想は深まる
臨床瞑想法 大下大圓さん(理論編02)
取材・文●半澤絹子
写真協力●飛騨千光寺
取材協力●日本ソマティック心理学協会
ソマティックワークには、アレクサンダー・テクニークといった海外で生まれたボディワークのほか、瞑想などの伝統的な行も多く含まれます。
今回ご紹介する「臨床瞑想法」は、飛騨千光寺の住職・大下大圓さんが開発した、世界のいくつかの瞑想法をプログラム化したメソッドです。
第2回目は、臨床瞑想法を実践するときに重要なポイントを紹介します。
ポイント1・「己事究明」を目指して瞑想する
前回は、臨床瞑想法の4ステップ「ゆるめる瞑想」「みつめる瞑想」「たかめる瞑想」「ゆだねる瞑想」を紹介した。
①ゆるめる瞑想
「臨床瞑想法」のベースとなる瞑想。心身の緩和と集中を目的に行う。以後、②〜④の瞑想前に必ず行うウォーミングアップ的なもの。②みつめる瞑想
自己の観察と洞察を目的とした瞑想。自分の呼吸や身体の感覚、過去の体験などを客観的に観察し、さらに仏教の「四諦八正道」に則って、自分の存在や人生の意味を見出す洞察瞑想を行う。③たかめる瞑想
生命力を高める健康法としての瞑想。心身が活性化する呼吸法や、密教に伝わる5つの音相を発声し、心身のエネルギーを高めていく。④ゆだねる瞑想
大いなるもの(自然、宇宙、先祖、神仏など人によって概念は異なる)とつながって一体になり、悟りに至るための瞑想。瞑想の最終段階。
臨床瞑想法は、大下さんが体験された各種瞑想法をまとめたものだが、大下さんは高野山真言宗の僧侶(大阿闍梨)であるため、仏教の瞑想をベースにしている。
「とはいえ、仏教の瞑想一つとってもさまざまな目的と方法があります。
一般的に有名なのは曹洞宗の『禅』、座禅ですね。座禅は『只管打坐(しかんたざ)』といって、ひたすらに雑念を取りはらって座り続けて、自分の我をなくしていく洞察的な瞑想です。
そのほかに『天台宗の禅』もありまして、天台智顗(てんだいちぎ)が遺した摩訶止観(まかしかん)という仏教書などには、健康法としての瞑想法が多く記されています。
さらに密教は密教で、独自の瞑想法があります。ですから、仏教の瞑想といってもさまざまなわけですね」(大下さん)
ただ、仏教のどの流派であっても、『己事究明(こじきゅうめい)』を目的とすることは共通しているという。
「己事究明とは、己(おのれ)の内面を深く探っていき、最終的には宇宙と一体になるという悟りの状態を目指すこと。
キリスト教は祈りによって神から降りてくるものを受け取るトップダウン方式ですが、瞑想は自分の内側を見つめて大いなるものへと近づいていくボトムアップ方式です。『祈り』と『瞑想』は、方向性が逆になるわけですね。私は瞑想を学ぶ方にいつもお伝えしているのですが、自分を救えるのは、医師でも僧侶でもなく、その人ご自身です。
臨床瞑想法はスピリチュアルケアとして活用していますが、最終的に、人は自分でしか自分自身を救うことはできません。これを胸にとどめて瞑想を実践していただきたいと思います」(大下さん)
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