イールドワークで学ぶ空間身体学 第2回 空間身体学アプローチとは?

| 田畑浩良

「言っていることや方法は正しいのになぜしっくりこない」

普段生活するなかでそんなことを感じたことはありませんか?

それとは逆に、

「理由はないけれどこの人といると安心できる」

ということもあるのではないでしょうか?

その理由は、私たちの身体が無意識のうちに相手や自分がいる環境に対して常にアンテナを張り、そこが自分にとって安全で「身を委ねられるか」を判断しているからです。

この「身を委ねる」という行動は「イールド」と呼ばれ、私たちは生まれた瞬間から身に備わったこの能力を使って積極的に安心できる相手や場所を選んで生き抜いています。

この連載ではこの能力「イールド」を知るとともに、上手にそれを使って自分を安心させたり、他人をリラックスさせたりする方法を、イールドワークの第一人者である田畑浩良さんにご紹介いただきます。アシスタントはイールドの達人(?)である猫を代表してニャンコ先生です。

 

田畑さんとニャンコ先生

連載 安心感と自己調整能力の鍵は「間合い」

イールドワークで学ぶ空間身体学

第2回 「自己調整能力の新しい枠組み」を引き出す空間身体学アプローチとは?

田畑浩良
取材協力半澤絹子

 

連載第1回である前回は、

  • イールドワークとは、施術者とクライアントが「ちょうどよい間合い・距離感」をつくるワークである
  • 人と人の間にちょうどよい距離感が生まれると、身体は警戒モードを解き、身体は接地面に対してしっかりとゆだねられる

ということを紹介しました。
今回はさらに進んで、「身体がゆだねられると何が起こるのか?」について解説していきたいと思います。

「ゆだね」が導く「リセット」と「広がり」

クライアントと施術者の双方が今いる場所に落ち着き、受容するという感覚的な経験が深まると、セッションの場にサポートの基盤が生まれます。すると、クライアントの身体に、より深い静けさと落ち着きを得るために必要な空間が形成されます。

イールドの動きに働きかけることは、自己、他者、そして自分の世界との関係において、クライアントの自己調整能力を深めることにつながります

イールドによって地面にしっかりとゆだねるという「下への方向性」が生まれると、今度は上に浮かび上がるような「上への方向性」も自然に生じるようになります。この二方向性の動きは、ロルフィング®️のセッションでもよく起こる現象です。

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–Profile–

田畑浩良 (Hiroyoshi Tahata

「The Art of Yield (Yielding Embodiment®)」開発者。認定アドバンストロルファー( Certified Advanced Rolfer)、Rolf Institute教員(ムーブメント部門)(Rolf Movement Faculty member)。株式会社林原生物化学研究所(現:(株)林原)勤務を経て、ロルフィングの道へ。1999年、日本人初のRolf Movementプラクティショナーとなる。ロルフィング他、SE™(Somatic Experiencing®)や「身がまま整体」の片山洋次郎氏とのセッションから、施術時における「空間」の重要性に気づき、「イールドワーク(Yielding Embodiment® Orchestration)」を構築。空間と身体との関係性を活かした繊細で安定的なセッションを提供している。イールドワークの施術者(イールダー)の養成も精力的に行う。大の猫好き。写真は愛猫のにゃんこ先生と。https://www.rolfinger.com/

*イールドワーク、The Art of Yieldは一般名で、Yielding Embodiment®は、必要な研修を修了した認定者が提供する商標として登録されています。

*Rolfing®、ロルフィング®、Rolf Movement®、ロルフムーブメント™、Rolfer™、Rolf Institute、The Rolf Institute of Structural Integration、およびLittle Boy Logoは Rolf Institute の商標であり、米国およびその他の国々で登録されています。

半澤絹子(Hanzawa Kinuko
フリーライター、編集者。各種ボディワークやセラピーを取材・体験し、「からだといのちの可能性」、「自然と人間とのつながり」に関心を持つ。「ソマティック・リソース・ラボ(https://www.somaticworld.org/)」運営メンバーの1人として、ソマティックに関する取材や普及活動も行う。