コ2【kotsu】レポート  システマ・富士山合宿セミナー

| 阿久津若菜

去る2017年10月7〜9日におこなわれた、システマの創始者であるミカエル・リャブコ氏、子息のダニール・リャブコ氏によるセミナーの模様をレポートする。
富士山の麓、西湖にて合宿形式でひらかれた今回のセミナーで、100名近い参加者たちとともに何を感じたのかを、紹介していきたい。

コ2【kotsu】レポート

システマ・富士山合宿セミナー

〜“システマ”と“生きる”こと

取材協力システマ東京(北川貴英 代表)
写真・文阿久津若菜

 

ミカエル・リャブコ氏(左)、ダニール・リャブコ氏(右)
ミカエル・リャブコ氏(左)、ダニール・リャブコ氏(右)
 

システマづけの3日間

今回の富士山合宿は、システマの創始者であるミカエル・リャブコ氏、その子息のダニール・リャブコ氏とともに、二泊三日の合宿形式でおこなわれたセミナーでした。これまでにも、お二人が来日されてのセミナーはひらかれていますが、泊まりがけで、まさに“寝ても覚めても”システマ一色で過ごす形式は本邦初

この合宿の始まる前、企画した北川貴英氏(システマ東京代表)が自身のメールマガジン「システマ東京ガジェータ(配信希望の方はこちら)」にて

後世の歴史家が日本システマ史を編纂するとしたら「富士以前」と「富士以後」で分けるくらいのインパクトとなるでしょう。というかそのつもりで準備を進めています(2017年8月13日配信号)

と紹介されていましたが、たしかに。参加してしばらく経った今も、あそこで過ごした時間は何だったのか、まだ言葉できない“何か”を受け取ったように感じています。


動画:西湖で水のワークを満喫中!?
 

今回のセミナーでは、「自分にとっていい位置に居ることが、相手にとって不利になる」というテーマを、徹底して学びました。
それはたとえば、相手にがっちり捕まえられたところから、自分にとっていい位置に少しだけ動くと相手の体勢が勝手に崩れていくワークであったり、つかみかかる相手に対して、同じようにいい位置に動くと相手が指一本触れられなくなるワーク、足が浮くほど抱え上げられた状態から、抱えている相手に緊張や重さを返すことで相手が崩れていくワークなど。
他人とどういう距離感・気持ちで関わるのが、自分にとって一番心地いいのか」を、いろいろなパターンで試し続けました。

「自分にとっていい位置に居ることが、相手にとって不利になる」テーマを徹底的に学ぶ
「自分にとっていい位置に居ることが、相手にとって不利になる」テーマを徹底的に学ぶ

 

さらに、ふだんは想定もしないような極限状態で、自分を試される場面も。
床に大の字で寝転んだ上に、3〜4人が覆いかぶさって身動きがとれない状態(女性同士でも100kg以上の加重はかかっているはず)のなか、なんとかその状況から抜け出すというワーク。以前に何度もやっていたはずなのに、自分の肺がつぶれ、まさに“息もたえだえ”になると、額からじわっとイヤな汗がにじみ出ます。

ムダに動くと息が切れるだけ、かといって黙って乗られているだけでは事態は何も変わらない。そんなギリギリの緊張感を呼吸をすることで逃がしながら、上からの人を全部振り落とせた時には、人生の重荷を少しだけ軽くできた気になりました(笑)

人の下敷きになり、身動きの取れない状態から逃れていくワーク。自分から動き出さないことには何も変わらない
人の下敷きになり、身動きの取れない状態から逃れていくワーク。自分から動き出さないことには何も変わらない

 

つぶされて苦しかった身体が自由になると、目の前がパッと明るくなったり、新鮮な空気が肺によどみなく入ってきたり。「しんどいことはもう終わったんだ」と、ぐったりと重だるかった身体が、次第にリラックスしてくるあの感じ。

これは…仕事でひと山超えたあと、特に原稿を書き上げたあとの開放感とそっくり(それよりもっと気持ち爽やかでしたが…)!ここであらためて、心にストレスをためこむのは、身体に物理的な負荷をかけるのと同じことかもしれない、と実感したのでした。

 

システマ“と”生きる

でも実は。「あの場所で何をしたか」をいくら書き連ねても、合宿で味わったことの千分の一も伝えられないと思っています。

3日間という合宿のなかで、システマは生活の一部でした。
100人近い参加者がずらっと並んでご飯を食べ、お酒を飲み、時にキャンプファイアを囲み、大笑いして今日のできごとを話し合ったり。合宿というよりは、大人数の家族が一緒に暮らしているような時間でした。

ミカエルはいいます。
「実生活に役立たないことを、基礎知識と呼ぶのは意味がない。だから私は役立つことしか教えないのです。
自分の知っていることが何のために必要か、何に活かされるのか、どう役立てるのか。それをいつも考え、行動することがシステマです」と。
そして重ねて「私自身、もっとうまくなりたいと思っている」とも。

正直、この言葉は驚きでした。これまで、教える―教えられるの関係に慣れきっていた私にとって、「師」とは、こちらが関わる隙がないほど完成されている人というイメージ。でも実際にはミカエル自身もまた“今を生きる人”として、もっとうまくなる=日々の生活に役立つシステマを進化させ続けている。
では、私にとって「システマ“と”生きる」とはどういう形なのだろう。その答えは、これからもずっと探していきたいと思っています。

身震いするような秋の西湖に全身でつかり、溺れた人の救助法などを学ぶ場面も。寒いのになぜだかみんなうれしそう
身震いするような秋の西湖に全身でつかり、溺れた人の救助法などを学ぶ場面も。寒いのになぜだかみんなうれしそう

※今回の合宿の参加にあたり、ミカエル・リャブコ氏、ダニール・リャブコ氏、ラリッサ夫人、そしてシステマ東京代表の北川貴英氏をはじめとする関係者の皆さまに、心より感謝致します。ありがとうございました!

(了)

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–Profile–

阿久津若菜(Wakana Akutsu
システマ東京会員、ライター。システマの「愛」の精神を実践すべく、日々(ほそぼそ)活動中。