コ2【kotsu】レポート
ソマティックフェスタ2017 開催!
文・写真●コ2編集部
協力●日本ソマティック心理学協会
去る9月29日、日本ソマティック心理学協会主催によるソマティックフェスタ2017が東京代々木・国立オリンピック記念青少年センターで行われました。
コ2では現在連載中の「タッチの力」にご登場頂いている日本タッチ協会に参加されている講師の方を中心に、その講座の模様を簡単にご紹介したい。
○teateセラピー 〜癒し手になる
有本 匡男|Masao Arimoto
teateセラピー講師/日本ホリスティック医学協会常任理事
2002年よりセラピストとして活動を開始、同時にヨガ、哲学を学び始める。2007年より「teate(てあて)セラピー」を始める。講師として300人以上のタッチセラピストを育成。国民総セラピスト化をミッションに、講演、執筆、ワークショップ等を通じて、優しいタッチケアやセラピストとしての在り方のホリスティックヘルスケアの普及につとめている。
山口創先生とともに日本タッチ協会の共同代表を務める有本匡男さんによるこちらの講座では、まずソマティックが心と体全体を一つのものとして観るという考え方であることを、ロバート・フルフォードの名著『いのちの輝き』を持って説明。その上で二人一組になってteateセラピーの実際について、実際に相手に触るときの手の作り方も含む、実際的な学ぶワークショップとなりました。
印象的だったのは、「頭は論理的に考えるのが得意で、つい体にもそれを当てはめて見落としてしまう」というお話です。例えば普段私たちは特に考えることもなく歩いていますが、その中に含まれている要素は膨大なものです。ところがいざ体の不調を感じると、私たちは「論理的に考えて」色々しがちです。でも、実際のところ頭で把握できていることは実際に体に起きていることの一部でしかありません。
そこで大事なことは「体に任せること」だと言います。そしてteateセラピーは、そうした体がそもそも持っている「整う力」を賦活させるためにあると言います。また、その一方で、「症状ごとに判断して、現代医学の知見を使うことも大事」とも話されており、現実に則ったバランスの良さを感じました。
○自分とつながる、世界とつながる「タッチ」
小松 ゆり子|Yuriko Komatsu
パーソナルセラピスト/Touch for World 代表 音楽業界を経てセラピストに。テーマは現代人の「身体性」を取り戻す、「心と身体、世界をつなぐ」。南青山 のアトリエ「コルポ・エ・アルマ」を中心にセラピーやセミナーを行い、執筆、監修 も多数。タッチと香り、鉱物をフュージョンしたオリジナルメソッド「ヴァイタル・タッチセラピー」を提唱、密度の濃い「パーソナル」なスタンスでセラピーを行う。
パワフルな喋りが魅力的な小松ゆり子さんのこちらの講座では、タッチでできるケアについて、日常でできるワークが紹介されました。「自分が少しでも居心地よい状態でリラックスして触れること、自分の感覚を言葉にしていくことが大切」とのことで、参加者にワーク後の感覚をシェアする時間も折々にとられました。
ワークはパチパチパンチと呼ばれる自分の身体を「パチパチ」と音を立てて軽く叩くことで、自分の境界線を知ったり、二人組になりうつ伏せ状態の人の背中などをユラユラ揺らしたりと様々。
「人をよくしたい!」という気持ちが先走ると、好意の押し売りになる、と小松さん。思いはよいものでも伝わりますから、と触れるときのお作法(相手に許可をとること、触る側の姿勢のとりかた)など、具体的なやり方を丁寧にレクチャーされ、ゆったりした時間が流れるクラスになりました。
○整体と武術のワーク ~皮膚感覚に学ぶ関係の取り方
山上 亮|Ryo Yamakami
整体ボディワーカー/快気法上級指導トレーナー 野口整体、野口体操、快気法、武術などの各種ボディワークの研鑽を積み、それらの身体技法にシュタイナーの考えを取り入れた子育ての方法を提唱している。全国各地で子育て講座(手当て講座)やボディワーク講座を開催、精神障碍者を対象にした作業所でのボディワークなどを行なっている。著書に「整体的子育て」「整体的子育て2」「子どものしぐさはメッセージ」「じぶんの学びの見つけ方」(共著)などがある。
こちらの講座では「人との間合いのとりかたを、整体的観点から見ると……」というワークが沢山紹介されました。
まずは、デンデン太鼓のように腕をブラブラさせたりワカメのようにユラユラさせたりして、からだをゆるめてからスタート、「追手(ついしゅ)」と呼ばれるワークでは、二人組、または三人組になって互いに手を重ね、下側の手の人の動きに相手がついていきます。慣れてきたらこれを展開して、今度は手の代わりに「きずなの棒」と呼ばれる木のstickで相手とつながるワークに。
単純なワークですが、ただ相手についていく人、次第に自分が主導で動きをつくろうとする人など、様々で、そんな組み合わせの妙をお互いに楽しむ時間になりました。
○神経からみるタッチング
〜神経と皮膚感覚の繋がり
岩吉 新|Shin Iwayoshi
操体法の皮膚へのアプローチとDNMの理論を合わせた「ニューロ・リラックス」を開発。代表兼セラピスト。操体法の三浦氏に師事し、皮膚へのアプローチ学ぶ。カナダの女性理学療法士が開発した、デルモニューロモジュレーションの神経科学理論と組み合わせたアプローチ「ニューロ・リラックス」を開発。主に皮膚の伸展による施術を行い、現在に至る。http://neuro-relax.com/
こちらの講座では、まずは入念に作られた資料をもとに、人に触れることがなぜ癒やしになるのかを神経系から解説。皮膚を伸ばすことで体を調節するデルモニューロモジュレーションと呼ばれる理論から、ニューロンと神経の違い、自律神経と皮膚の関係など、生理学的な知見が紹介されました。
なかでもやはり気になったのは、皮膚の表面・表皮のなかにパチニ小体、マイスナー小体、メルケル盤、ルフィニ終末の4つのそれぞれに性質の異なる感覚受容体(感覚を感じる器官)があるというお話。パチニ小体は強く触れることで、メルケル盤は持続的に触れることで活性化するなど、僅か0.1ミリという表皮の中にある複雑で豊かな世界の一端に触れることができました。
後半はこうした知識を元に実際に触れる実習です。こちらには山口先生も参加され、実際に触り方を変えることでどのように相手に伝わるかを体験されていました。
この他にも様々な講師を迎えて行われたソマティックフェスタは、いずれの講座も好評のうちに幕を閉じました。
徐々にではありますが、一般の方にも「健康」が、単に体の状態だけを指すものでなく、体とともに心が密接に関係していることが知られるようになってきました。そういう意味では、「体と心は一つである」というソマティックの考え方や、ボディーワークの存在に、今後注目が集まることは間違ないでしょう。
特にそのなかでも、最も手軽で親しみやすい「タッチ」は要注目です。
「タッチ」「触れること」「触れられること」の魅力と、そこに秘められている力が多くの人に知られ、広まることは、健康はもちろん、子育てや人と人とのコミュニケーション、社会のあり方を変えるもの、真の意味での多様性へ繫がる力が秘められていると思えます。
その一方で、こうした新しいアイデアが広まるには、その魅力とともに、しっかりとした学術的な知見を踏まえた上で伝えることが、安全でより多くの人に親しんでもらうために重要と考えます。その為には、こうした機会で参加者は無論、講師の先生方も互いの独自性を尊重しつつ、情報交換を行い、切磋琢磨することは大変貴重でしょう。
今回で三回目を迎えたソマティックフェスタでは、講師の先生方が、お互いに互いのクラスに参加する姿が多く見られ、自由で健全な広がりを肌で感じ、改めて今後の展開が楽しみな一日となりました。今後、益々重要度が増すソマティックフェスタと日本ソマティック心理学協会活動に注目したいと思います。
なお、コ2で現在「タッチの力」では、こちらの講座でも講師を務めた先生方を中心に設立された日本タッチ協会の活動をレポートしています。こちらもご覧頂ければ幸いです。
「タッチの力」ページへ
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