コ2【kotsu】レポート バイオ・インテグラル・サイコセラピー <いのち>のままに

| 松子

いよいよ本年も開催が迫ってきたソマティックフェスタ2017。直前企画として現在進行中の「タッチの力 対談/山口 創×有本匡男 触れよう、タッチの力」が進行中だが、こちらとは別に、昨年人気講座となった小原仁先生による「バイオ・インテグラル・サイコセラピー」の模様をレポートでお届けします。講座選びの参考にどうぞ!

 

コ2【kotsu】レポート ソマティックフェスタ篇

バイオ・インテグラル・サイコセラピー
「<いのち>のままに」小原仁先生

動き(行動)・気持ち(感情)・言葉(思考)を統合させ
深部からの解放をもたらす

講師小原仁先生
取材協力日本ソマティック心理学協会
松子(ライター)

小原仁先生

人気講座・バイオ・インテグラル・サイコセラピー

講師を務めるのはヨーロッパボディサイコセラピー協会認定トレーナー/セラピストの小原仁先生。バイオ・インテグラル・サイコセラピーのクラスには多くの受講希望者が集まり、満員での開催となりました。

バイオ・インテグラル・サイコセラピーは、ウイルヘルム・ライヒの創始したベジトセラピー(自律神経療法)をベースにした身体心理療法。ライヒのベジトセラピーとは、フロイトの弟子、ウイルヘルム・ライヒが考案したセラピーで、<心理レベル>に連動している<筋肉レベル>、更にその奥にある<自律神経レベル>にまで働きかけるセラピーメソッドのこと。

身体心理療法、心身医学の父と称せられることもあるライヒは、「言葉では嘘をついても身体は嘘をつかない」など、心理と身体の関係に注目しました

「私たちは涙を我慢するとき、筋肉を収縮させます。感情をブロックするときは必ず筋肉の動きが付きまとい、筋緊張させているのです。バイオ・インテグラル・サイコセラピーは心理レベルから筋肉レベルへアプローチし、慢性的な筋緊張の解除を試みます。さらに深いのが、自律神経レベル。赤ちゃんや子どもの横隔膜からしゃくりあげるような泣き方は、<いのち>の自律運動で行われています」

と、小原先生。バイオ・インテグラル・セラピーは、心理レベル→筋肉レベル→そして自律神経レベルにまでアプローチすることで完了すると言われます。

「いのちの統合性、調和が壊れると、dis-ease=不調や生きづらさを感じるようになります。バイオ(生命)・インテグラル(統合)・セラピーはいのちの統合、安楽=easeに向かってワークをしていきます」

小原仁先生
小原仁先生

 

ワークを行う前に、小原先生から参加者へメッセージがありました。

「このワークは自分の深部へ入っていくため、人によっては抵抗が起こります。抵抗が起こりにくい人もいます。どんな体験でも自分を受け止めてください」

いったいどのような変化が起こるのでしょうか。

 

一気に距離が縮まる、背中を使ったコミュニケーション

まずは教室を自由に歩きながら感情や身体感覚への気づきを体験したあと、自分と同じ体格の人とペアを組み、背中合わせになります。

「自分の背中を使って相手の背中をくまなくマッサージしてみましょう。膝や腰を使い、動きの可能性を感じます」

さらに「ヴ~~~」「ア~~~」など、今感じている感覚や感情に音を加えます。

「今度はそのまま背中を通じて相手に感情を伝えましょう。喜び、怒り、悲しみ、恐怖を伝えるように動きます」

参加者は動きや「楽しーい!」など言葉も使いながら、背中を通じて感情を伝え合ったところで、背中の感覚がどう変化したか観察します。初対面のパートナーと心の距離が近づき、信頼感が生まれた様子。外から見ても、わずかな時間で参加者の表情がほぐされてきたのが分かります。

小原仁先生
ペアで背中合わせになり、そのままの状態で動くことで信頼関係を築く。

 

今度は背中合わせのまま一人が背中を反らせて行き、身体を相手に委ねます。委ねられた人は力を抜き、膝や腰を深く曲げたり伸ばしたりしながら相手の身体を支えてあげます。

次に、背中合わせのままで、背中でお互いに支え合いながら膝を曲げ、床へしゃがんでいく動作を行いますが、これはお互いの支えあう力のバランスが取れていないと転んでしまう、難易度の高い動き。ドシンと尻もちを突いてしまうペアもいました。お尻がつくまでしゃがんで座ったら、今度は背中で押し合いながら、支え合いながら立ち上がります。こちらも何度やってもまっすぐ立てないペア、ふらつくペアが相次ぎ、相手を信じて身体を預けることの難しさを感じます

 

実際にやってみるとしゃがむことより立つことの方が難しい。

 

「拒絶」と「助け」

最後はペアを解消し、自律神経運動を感じるワークへ。軽く膝を曲げて前屈し、ゆっくりと屈伸しながら、筋緊張で自然に全身が震え出すのを待ちます。

「筋肉が緩んでリラックスすると全身にバイブレーションが起こります。起き上がって腰に手を当てて反っても同じことが起こります」

深い呼吸でリラックスし、前屈した時のようにバイブレーションが起きるのを待ち、苦しくなったら「あ~~~」と、声を出して緊張を抜きます。やがて全身が痙攣したようにブルブル、ガクガクと震えはじめました。力を抜いて自分の意志とは無関係な動き(自律運動)を確認します。

小原仁先生
自然に起こる動きが、体の声を伝えているようだった。

 

ワークを通じて生体エネルギーの流れが良くなったところで、人と人との関係性の成長についてのお話に。

「人は親に融合・依存(プレパーソナル)していた子ども時代から、第一次反抗期を迎えることで融合・依存段階から分離・独立(パーソナル)の段階に移行します。養育者との関係が良く、拒絶しても愛してもらえるという信頼があると第一次反抗期が成立し、信頼がない場合、第一次反抗期がない人もいます」

そこで今度は、言葉と動きと感情が調和した拒絶の表現、「イヤ!」と言いながら全身全霊で拒絶するワークを行います。

心ではイヤ!と言いたいのに、言葉出ない人もいるそう。ペアになって相手の目を見て、手で押しながら全身全霊で拒絶を表現します。

「身体と心と言葉が一体になり、全身全霊で来られると、感動が生まれます。言われた方は心に響いて感動が起きたらハグをしてあげてください」

と、小原先生。「そうそう、その調子!」と声をかけながら参加者を励ましています。ブロックが外れたのか、涙を流しながら抱き合う参加者もいました。

小原仁先生
日常生活の中ではっきり拒否することは少なく、それ自体が解放のきっかけとなる。

 

依存は「片方が助けている状態」で、独立は「私は私、あなたはあなた」。そして周りの人と協力し合える、助け合いをする相互依存が理想の形です。「他人を信頼しておらず、全部自分でやろうとする人は『助けてほしい』と言えません。独立心が強すぎて<孤立>している人は、相互依存できず、甘えることもできません。最初の委ねるワークでやったように、相互依存は甘えることもできるし、甘えを受け止めることもできる」。誰かに助けを求めることは、パートナーシップにおいても家族集団においても社会生活のおいてもとても重要です。

 

最後に、より深部へと迫る、「あなたの助けが必要です。助けてください」を伝えるワークに挑戦します

手のひらを上に向け、相手の目を見ながらゆっくりゆっくりと腕を上げ、相手の顎元へ手のひらを持って行き、「お願い、助けて」と言います。言葉と動きと感情が統合され、相手が感動するまで、繰り返し伝え、受け取る側は感動したらハグをします。「お願い、助けて」と口に出して言うことが自分にとって何なのかに気付く体験です

絞り出すような声が何度も何度も繰り返され、

「泣けてきたら泣いてもいい、大丈夫」
「思いっきり泣いてもいい、いつもは我慢しているんだから。涙がこみ上げてきてもいい。パートナーに抱き留めてもらってください」

という小原先生のアドバイスに、涙があふれる人が続出。泣いてハグをしたまま離れられない人もいました。

「受け止めてくれる相手がここにいる安心感があった」

という感想の一方で、

「『ありがとう』なら言えるけれど、自分の弱さを認める『助けて』というセリフは言いづらかった」

というように、拒絶のワークのようにスムーズに行かず、最後まで口にできない参加者もいました。

 

小原仁先生

 

分断されて隠された「動きと気持ち、言葉」を「統合」する

出しやすい感情、出しにくい感情があるのは、成育歴上の体験が関係していると考えられます。自分が泣いていると、お母さんが鬱陶しそうに「いつまで泣いているの!?」と不機嫌になるから悲しみを面に出せない。

喜んではしゃいでいたときに怒鳴られたら、それ以降、喜びを思いきり表現できなくなってしまったなど。悲しくてもそう見せない「マスク」をつけることで「シャドウ」に悲しみが溜まっていき、シャドウに閉じ込められ、表現できなかった感情が症状形成をしてしまうのだそうです。

そこで、バイオ・インテグラル・サイコセラピーでは、マスクから少しずつ中に入っていくことでシャドウの中に隠ぺいされていた感情を解放し、溜め込まれた感情から創り出されていた症状が消えていくようにワークを行います

マスクとシャドウを通過した中央(核心)には「コア」=愛があり、コアを中心に生きられるようになると生きることがイージー(楽)になるという考えです。

 

小原仁先生
<人格の三層構造> 
マスク(仮面)/筋肉の層、自我の層:社会・文化的役割、自己防衛(性格の鎧)、身体的防衛(筋肉の鎧)、情動的防衛
シャドウ(影)/感情の層:怒り、パニック、恐怖、絶望、悲しみ、苦痛、セクシュアリティ
コア:ハート=愛、愛する感情・愛される感情、分離・独立性と融合・一体性の統合

 

また、バイオ・インテグラル・サイコセラピーでは、ワークで体験したように、「動き(行動)」と「気持ち(感情)」と「言葉(思考)」が統合していると感動が起こりますが、社会では、気持ちのこもっていない言葉、言葉と合っていない動き、気持ちのこもっていない動きなど、どれかを切って生活していることがほとんど。切断されていると喉に詰まりを感じたり、肩凝りなどの症状が表れます。これらを慢性的な不調として感じる人もいるのではないでしょうか。

グループカウンセリングのようなワークを通じて、参加者自身がブロックに気づき、突破による感動と涙が生まれる貴重な時間になりました。

現代社会では切断されてしまいがちな「動き」と「気持ち」と「言葉」を統合させるバイオ・インテグラル・サイコセラピー。不調改善には、言語的アプローチや筋肉的アプローチだけではなく、心の深部へのアプローチが不可欠だと改めて感じさせられます。

※本レポートにあたって、小原先生をはじめ、日本ソマティック心理学協会の皆さま、参加者の皆さまのご協力に改めて感謝致します。

(了)

–profile–

小原仁先生

小原仁(Jin Kohara
ヨーロッパボディサイコセラピー協会認定トレーナー/セラピスト

1945年8月21日岡山県岡山市生まれ。バイオシンセシス認定ボディサイコセラピスト。EABPヨーロッパボディサイコセラピー協会 認定トレーナー、ボディサイコセラピスト。BIPSバイオインテグラルサイコセラピースクール ディレクター、トレーナー。コハラワークス代表、日本トランスパーソナル学会理事、<身>の医療研究会顧問。日本精神分析学会会員、日本人間性心理学会会員、ホリスティック医学協会会員。元関西大学教員、元立命館大学大学院非常勤講師。

連絡先 info@j-b-i.org

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