「言っていることや方法は正しいのになぜしっくりこない」
普段生活するなかでそんなことを感じたことはありませんか?
それとは逆に、
「理由はないけれどこの人といると安心できる」
ということもあるのではないでしょうか?
その理由は、私たちの身体が無意識のうちに相手や自分がいる環境に対して常にアンテナを張り、そこが自分にとって安全で「身を委ねられるか」を判断しているからです。
この「身を委ねる」という行動は「イールド」と呼ばれ、私たちは生まれた瞬間から身に備わったこの能力を使って積極的に安心できる相手や場所を選んで生き抜いています。
この連載ではこの能力「イールド」を知るとともに、上手にそれを使って自分を安心させたり、他人をリラックスさせたりする方法を、イールドワークの第一人者である田畑浩良さんにご紹介いただきます。アシスタントはイールドの達人(?)である猫を代表してニャンコ先生です。
連載 安心感と自己調整能力の鍵は「間合い」
イールドワークで学ぶ空間身体学
第11回 実践編 触れるという介入について(前編)
文●田畑浩良
取材協力●半澤絹子
ロルファーの田畑浩良先生が開発した、身体への新しいアプローチである「イールドワーク」を紹介するこの連載。
第11回目は、イールドワークにおけるタッチの理論と実践の方法について解説していきます。
触れる前に、むしろ「触れる側の状態」に着目する
イールドワークは、クライアントと適切な間合いをとることで自己調整力を引き出すワークです。セッションの核になるのは、クライアントとプラクティショナー(イールダー)との位置と距離感であり、タッチ(触れること)は主となる技法ではありません。
そもそも、空間身体学的には、触れる前からイールダーによる介入は始まっています。介入という視点からすると、触れるか触れないかはどちらでもいいのです。
自己調整力を引き出すために重要な点は、触れる側の知覚および身体の状態をベースにした張力情報が手のみならず、身体同士の共鳴によって伝達することになります。そのため、オンラインでのセッションやワークショップを行うことが可能なのです。離れた距離であっても、施術側が立ち位置を変えた場合に、感受性の高いクライアントであれば、その違いをはっきり感じることができます。この原理を現代の科学ではうまく説明できませんが、現象として起こることは何度も確認しています。
触れる側の技術をいくら細かく分類したり、使い分けがなされたとしても、それらは重要ではありません。触れる側の状態(state)が最も重要なのです。
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