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コ2【kotsu】の連載「伊東昌美のもっと!保健体育」にも登場した、ボディーワーカーの小笠原和葉さんの著書『理系ボディーワーカーが教える“安心” システム感情片付け術』が、この程、日貿出版社より発刊されることになりました。
そこでコ2【kotsu】では著者の小笠原さんにインタビュー。
制作秘話伺いつつ、誰もが悩む、自分の感情の片付け方を紹介します。
最終回の三回目は、パート4で語られている「自分を満たすこと」の大事さです。
新刊『システム感情片付け術』発刊記念
小笠原和葉さんインタビュー
第三回(最終回)
語り●小笠原和葉(ボディーワーカー・意識・感情システム研究家)
取材・構成●コ2【kotsu】編集部
“正しい間違い”の罠に気をつけよう!
コ2【kotsu】編集部(以下、コ2) “和葉さん節”が爆発した感じでした(笑)。当初はここまでボリュームが出るとは思っていなかったのですが、お陰さまで読み応えがあるものになりました。
小笠原 そうでしたか(笑)。でも何ていうか、「やってて難しいな」と思うことって、結局、“正しい間違い”にハマる人が多いんですね。自分も含めて。
コ2 “正しい間違い”?
小笠原 つい「不快な感情が湧いてこなくなる自分になってこそゴール!」みたいなことを目指しがちですけど、これはすごい勘違いで。
「片付けてすごい楽になったはずなのに、またこんなふうに考えてしまう自分は……」
とか、
「これで合っているんですかね?」
みたいなことをよく講座でも聞かれるんですけど、結局、“精神・感情潔癖性”みたいになったり、“正しい自分になりきろう”という見えないゴールを持ってしまうことが難しくしているんです。それだと、片付けても片付けても問題が出てくる。
そうではなくて、ゴールというか“受け皿”になるところを持つことが長い目で見た時に大事になってくる。そこで安心できないと、いつまで経っても、
「ネガティブな感情をもってしまう自分がやっぱり……」
「これが出てこなくなるまで片付け術を続けたらいいんですかね?」
という感じになるんです、絶対。
コ2 はい。
小笠原 でも、そういう風に色々なものが湧いてくるのが感情のシステムで、そこに巻き込まれるのもあなたのせいじゃなくて、感情というものが、そもそも“巻き込む”ものなんだから、そこで自分を責めたり、反省しすぎたりすることは意味がない。
ただ、そういう感情に巻き込まれることが、“エンターテイメント”として楽しい側面があるのは、私もすごくよくわかっているので。「やりたければやってください」という感じなんです。でも、「苦しいなら片付けてください」と。
片付け方さえ知れば、「どんな感情が湧いてもいいんだ」となれるんですよね。しかも感情って、自分がどういう性質でどういう人なのかを表してくれる“データ”ですから。でも、それには“片付けられる”という安心感がないと、いちいち湧いてくる感情に警戒しなきゃいけないんで大変なんですよね。
コ2 “こんなふうに思っちゃダメだ!”と、一つ一つに過大に扱ってしまうわけですね。
小笠原 そう、「早く片付けなきゃ!」みたいな。“片付けられる”という安心感があれば、あえて放っておいて、静かにしているだけでも片付く話だったりするんです。
コ2 “そのくらいの受け皿でやっていこうよ”という。
小笠原 その方がリバウンドしないですよね。
コ2 ある程度のリバウンドは最初から折り込み済みということですね。
小笠原 そうです。余白なく“きっちりこうしなきゃいけない!”みたいな狭いゴールを想定すると、みんな緊張して“正しい間違い”になる。それが感情に巻き込まれていくスタートなので、まずそれを回避するのがすごい大事。
以前、お片づけのプロにうちの片付けを頼んだことがあるんですよ。それまでは、自分でも断捨離して、タオルとか洋服も全部きっちり分類して、ピシッと並べても、一個取り出して一回グチャグチャになると、そのまま元に戻ってしまうみたいなことを繰り返していたので。結局、あきらめていくみたいな。
でも、お片づけのプロに頼んだら、リバウンドしないんですよ。いつまでもそれなりに綺麗で。「どうしてこうなるの?」と聞いたら、「7割にしておく」と。きっちりハメすぎると、その時はきれいなんだけど、一個取り出して崩れるともう戻せなくなると。それは起業家の人にスケジューリングのコツを聞いた時も同じで、やっぱり「7割程度でスケジューリングする」と言うんですね。
その遊びの部分というか、ゆとりの部分があることが、長期的にきれいな状態、心地のよい状態を保つために大事なんですね。この本のパート4はその3割の大事な余白のためについて書いたパートですね。
コ2 グレーゾーンが大事なわけですね。
小笠原 そうですね。それがあると、いろいろなことが起こっても受け止めてくれる。
コ2 車のショックアブソーバー(進藤を受け止めるシステム)的に、何か予想外のことがあっても、余白の部分でうまく受け流せるという感じですか。
小笠原 そう。「ちょっとくらいグチャグチャなってても大丈夫だ」という感覚があってこそ、安心して次の感情を迎えられるわけです。
コ2 感情は居着くことなく、転がっていくものですからね。
小笠原 そうです。ダライ・ラマ師ですら心が乱れるくらいですから(笑)。解脱していない人たちは絶対に感情を片付け続ける運命なんですよ。
自分を満たすことが、全体のクオリティーを高める
コ2 もうひとつこのパート4ではエネルギーの話と、それに付随して「自分をもうちょっと大事にしていい」という話が登場しますね。これは実際に講座に来ている方が一番ビビットに反応したそうですね。
小笠原 そうですね。特に“子育てのエネルギーをなんとか生み出さなきゃいけない!”という時に、よく自分で頭に思い浮かべていた図が、本に登場させたプールの水位の図(自分のエネルギーを客観的にプールの水位として描いてもらうワーク)なんですよね。そうすると、
「今はこの問題、感情を片付けるのに使うエネルギーないな」
ということが客観的にわかるわけです。
コ2 そういう視点が持てずに、「でも私が頑張らないと!」と身をすり減らすことが多いと思うんですね。本当は何かする前に自分のエネルギーを満たさないといけないのに。ただ、実際に“自分を満たす”って結構、度胸がいる作業ですよね。こっちに子どもを置いておいて、自分を満たすというイメージで、多くの人が罪悪感を持ちやすいところだと思います。
小笠原 そうなんですよね。自分を満たすということになった時に、まさに今、出てきたお話のように、「子どもや問題をこっちを置いておいて自分を優先する」というイメージ・マインドとセットになっているわけです。
でもそれは勘違で、「どっちを取るか」という話ではなく、両立することなんです。
コ2 「自分を満たす」ということが、結果的に「問題を解決する」ということでしょうか?
小笠原 自分が満ちていればすべてのクオリティが高くなるので結果的にすべてが満たされるわけです。ここで言う“自分を満たす”というのは、“泣いている子どもを放っといて旅行に行く”ということではなくて、子どもが寝た隙に好きなアーティストのDVDを見て、ちょっとホッとして、“エネルギーの水位が上がったな”というのを確認するといったことです。
それは何でもいいんですけど、大事なことは“自分を満たす”というアクションを自覚的に自分にしてあげるということなんです。
コ2 ぼんやり何かするんじゃなくて、本に登場するプールみたいな絵がちゃんとあって。“いまは自分を満たしている”と認識した上で行うことがポイントになるわけですね。
小笠原 そうです。ただ、その前段階の“自分がすごく疲れてエネルギーが低くなっている”ということに気づかない方が多いんですね。それって感覚的に少し引いて自分を見ないとわからないので。
「お母さんだし、介護してる……」「こんなふうに感じちゃいけない!」という考えのなかでは、自分がどんなに疲れているかに気がつけない。ほとんどの人はボディーワークのワークショップに行って、最初に先生に、
「まず皆さんが自分がどれくらい疲れているかに気がついてください」
と言われるくらいですから。
コ2 なるほど……。
小笠原 だからまず、自分が全体のスケールの中でどれくらいの所にいるのか、エネルギーがどのくらい残っているのかに気がついて。エネルギーがないなら満たすことを考えて、敢えて大変なことには取り組まないとかするといいわけです。
コ2 大変なことはもっといいコンディションの時に取り組めばいいわけですね。
小笠原 そうです。だから両立するわけです。自分を満たすことはワガママとか自分勝手で独りよがりのことじゃなくて、全体を考えた時に、皆でそうやって満たし合ったり、まず皆が自分のケアをし合うということが、社会としてそもそも必要だと思うんです。
私が主宰しているPBM(PRESENCE BREAKTHROUGH METHOD 小笠原さんが創始したメソッド)でも、自分の今日のムードに気がついて、「それを大事にしてくださいね」と言っています。皆さん、自分が“やること”と“やらなければいけないこと”に一生懸命で、自分についての基本データが抜けている状態なんですね。だから自分に今、何ができて、何ができない状態で、何が必要なのかがわからない。
コ2 “これをやらなきゃいけない”ってことだけを追うのは、不幸探しになりますね。
小笠原 そうですね。それって、いくらでも積み上げられますから。
コ2 永遠に減らないタスクの山ですか……。
小笠原 情報が増えれば触れるほど、“to doリスト”が増えていくという。
コ2 恐らく、大変ではあるけれど、その“to doリスト”がなくなった時が怖いんでしょうね。
小笠原 それが神経系の活性に慣れちゃっている状態で、リラックスしていくって、生き物的に実は危険を伴う感覚なので。
コ2 無防備になるということですからね。だから怖くて手放せず常に過活性でいるというのは、自分自身を振り返って思うところです。
そうした構造を一度理解して、“今はリラックスしていいんだ”と、ある種、意図的に行動することが必要なのかもしれないですね。ぼんやりと「時間が合ったら休もう」とか「休みが取れたらあそこに行きたい」というのではなく、意図的に「ここからここまでは休む」と。国によっては3週間くらい夏休みがありますが、その方がメリハリがあってよいのかもしれませんね。
小笠原 全然違いますからね。時々友達のセラピスト仲間と、「この日本人がうっすら全体で頑張りつつお互いを牽制し合う感じは何なんだろう?」と話すこともありますね。ヨーロッパに行くと、大人がおじさんが昼間からカフェでアイスクリームを食べ、夕方から外でお酒飲んだりして(笑)。
コ2 江戸時代までは日本ものんびりしていたようですから、この勤勉性は意外に新しい習慣のように思います。
小笠原 「そろそろ別のあり方があるんじゃないかな」というのを皆が探求していく時代なのかもしれませんね。
著者から、読者の皆さんへのメッセージ
コ2 そんなことを踏まえてつつ、“こんな人に読んで欲しい”ということを含めて、最後に読者へのメッセージをお願いします。
小笠原 スピリチュアルなこととか、心のこととかをやり過ぎて、かえって自分を追い詰めている方や、「何でこういう感情をもってしまう自分なんだろう」と自分を責めてしまうことが多い方に読んで頂ければ嬉しいですね。
本のお話が全部わからなくても、ワークをやって頂くければ楽になりますので、その“楽になった”という体験を持ってもらうこと、“自分で自分を楽にすることができる”ということが自信と安心感につながりますので。是非そういう方にまずワークを試して頂きたいと思います。
「心と体って、何となくつながっているよね」というところまで感じていらっしゃる方には、それがどういうふうにつながっていて、どこがアクセスしやすい糸口のところなのか。どこから入ると自分の全体のシステムまで扱うのに適した入口なのか、または適していないのかを改めて考える切っ掛けになるかもしれませんね。
自分・人間というシステムの全体像みたいなのを、私はいつもすごく意識して考えているので、そういう人間の仕組みとか、心と体の仕組みを知りたい方にも、読み物として楽しんでいだけるんじゃないかなと思ってます。
あと、リケジョがどういう枠組みでものを考えているかを知りたい人に(笑)。感情を扱う時に、理系の枠組みが出てくるって、なんか不思議に思われるかもしれませんが、結局、自分を扱う時に役立ったのってその理系の枠組みだったので。
コ2 それがあるから感情・心を扱った本なのに曖昧にならずに言えているのでしょうね。
小笠原 そうですね。“楽になれば何でもいい”と思ってるので、後付けといえば後付けなんですけれど(笑)。楽になるには使っていただける考え方だと思います。
コ2 ありがとうございました。
小笠原 ありがとうございました。
(第三回 了)
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