リーキーガット症候群解消法 第九回 乳幼児と「リーキーガット」

| 松原秀樹

“腸漏れ”が病気をつくる

リーキーガット症候群解消法

第9回 乳幼児と「リーキーガット」

体質研究所主宰 松原秀樹
構成近藤友暁

 

 

ゆるんだ腸壁=リーキーガットが様々な身体の不調に関連することを解説する本連載。第9回は、乳幼児は皆「リーキーガット状態」であるということと、子どもをアレルギーにしないための離乳食についてお話ししたいと思います。

加えて、前回で腸内細菌の”エサ”としてお勧めした「シクロデキストリン」が、アレルギー予防と食生活の改善に役立つというお話しをします。

 

アレルギー児が急増している理由は?

近年、アレルギーの児童が急増している理由の一つが「離乳食を始める時期」にあると考えられています。これには、乳幼児特有の胃腸の状態が関わっています。

まず、胃についてです。

胃の機能の1つは、食べたものの貯蔵です。これは、食べたものを一気に消化できないということと、食間時にも少しずつ栄養を身体に補給するためという目的があります。

胃には、もう1つ大切な機能があります。それが、食べたものの殺菌です。胃に貯蔵した食べものが腐敗しないように、強酸性の塩酸とタンパク質分解酵素であるペプシンを分泌して、殺菌しているのです。

ところが、誕生直後の乳児の胃からは、塩酸とペプシンは分泌されません。塩酸とペプシンが分泌されると、母乳に含まれている免疫物質が死滅してしまって、母親からの免疫を得られないからです。

塩酸とペプシンが分泌されるまでの期間は動物によって異なり、豚では4~5時間、牛では10時間ぐらいですが、人間では4ヶ月近くもかかります。

生まれてから塩酸とペプシンが分泌されるまで、胃の中はほぼ中性ですので細菌が繁殖しやすくなっています。ですから、生まれて4ヶ月以内に母乳以外の、免疫物質を含まない人工乳や離乳食を与えると、乳児の胃の中で細菌が繁殖してしまうのです。

生後4ヶ月を過ぎれば塩酸とペプシンが分泌されるようになりますから、胃袋内の細菌はほとんど死滅するでしょう。しかし胃で繁殖した細菌が、小腸で生き続けて増殖してしまう恐れもあります。

次に、腸についてです。

小腸は、食べたものを消化して吸収する箇所です。消化とは、大きな分子量の栄養成分を小さな分子量に分解することです。何のために小さな分子量に分解するのでしょうか? それは、生体異物の侵入を防ぐためです。

食べものはすべて、いわば「生体異物」です。どんなに身体に良い食品であっても、それがいきなり血液中に入ることはありません。小腸で徹底的に分解したものだけが、血液中に吸収されるようになっているのです。つまり小腸は、異物の侵入を防ぐ「関門」の役割があるのです

ところが誕生して間もない乳児の小腸は、この関門が開放されていて、フリーパスの状態になっています。つまり、乳児はみんな「リーキーガット」状態なのです

なぜ開放されているのかというと、母乳に含まれる免疫物質(抗体)を取り込むためです。乳児はまだ自分で抗体を作れないため、母乳に含まれる抗体によって感染症から守られているのです。

先ほど「胃で塩酸とペプシンが分泌されるまでの期間は、動物によって異なっている」とお話ししましたが、小腸の関門が開放されている期間も動物によって異なっていて、その期間を過ぎると小腸の関門は閉鎖されます。小腸の関門が閉鎖されることを、畜産学では「腸管吸収閉鎖」と呼ばれています。

牛では8時間もすれば関門が閉ざされます。腸関門が閉鎖するまでに徹底して初乳を飲んで免疫物質を取り込むことで、健康に育つための準備をするのです。

では、人間の場合はというと、小腸の関門が閉じるまでに少なくとも6ヶ月はかかるとされています。

このことから、生後6ヶ月以内に母乳以外のものを与えると、生体異物が血液に吸収されやすい、つまりアレルギーがおきやすくなる、ということなのです。

この期間に、人工乳をはじめ、果汁や野菜汁や豆乳などを与えることによって、アトピー性皮膚炎や喘息、食物アレルギーになるリスクが高くなると言えます。

胃や小腸で細菌が繁殖してしまうことで、腸管閉鎖が完成しないことも考えられ、すると「リーキーガット」の状態が継続して、10代以降もアレルギー体質で悩まされることもあり得ます。

こうしたことから、生後6ヶ月間はできるだけ母乳だけにして、離乳食は6ヶ月前後から始めるのが望ましいと言えます。そして、その頃から少しずつ色々な食品を与えて、なるべく多くの食品に対するTレグ(前回、参照 https://www.ko2.tokyo/archives/6419)を作っていくことが、子どもをアレルギー体質にさせない秘訣なのです。

胃と腸には、乳児が母乳から免疫を受け取るための期間がある。こうした人体の機能は、離乳食を始める時期の目安となるだろう。

 

極端なベジタリアンの母親の子供はアレルギーになりやすい!?

子どもをアレルギー体質にしないためには、母乳がよいというわけですが、母親が十分に母乳を出せない場合もあるでしょう。母乳が出ない原因は人によって様々ですから一概にはいえませんが、大半は栄養不良によるもので、とりわけ「極端な菜食による貧血」が原因であることも少なくないように思います。

貧血だと、母乳が十分に出ません。すると人工乳に頼らざるを得なくなってしまいます。

極端な菜食主義の弊害については、日本人でチベット医学を習得しダライラマの侍医を務めた大工原彌太郎先生が、多くの菜食チベット人を診た経験から大変興味深い考察をご著書『明るいチベット医学──病気をだまして生きていく』の中で「菜食主義のつくったからだとは?」というテーマで記していますので、以下に引用しておきましょう。

 

『総括的な感想をいえば、みんな、栄養失調で貧血気味です。からだは大きいけれど、やせていて、体力もありません。話をしていても、反応が鈍いというか、手応えが得られないのです。ぼんやりしている人がとても多いのでした。

女性は母体が不完全なので、そういう子供が生まれやすいということもあります。生まれても母乳もあまり出ないし、肉や魚も食べないので、血液や肉をつくるアミノ酸が足りず、正常に発育できないのです。(中略)

歯は犬歯はありましたが、かなり退化して平たく、一般成人にあるべき上下32本が揃っていなかったり、虫歯はありませんが、歯茎が弱くて、40歳を過ぎるとポロポロ抜けてきます。抜けても義歯などありませんから、抜けっぱなしです。そうなると消化力が悪くなりますから、下痢して急速に弱まります。だいたい40歳過ぎると歯が抜け、髪は白髪となり、50歳くらいまでに自然死します。

死因はほとんど老衰でした。(中略)長生きの人もいますが、平均寿命は40歳くらいでしょうか。』(大工原彌太郎著『明るいチベット医学──病気をだまして生きてく』センチュリープレス刊)

 

日本でも、肉や卵をほとんど食べず、魚も十分な量は食べられなかった江戸時代の庶民の平均寿命は、だいたい40歳前後でした。現在、平均寿命がその倍以上に伸びたのは、動物性タンパク質の摂取量が増えたことが大きな要因です。

また、果汁や野菜汁や豆乳なども身体に良いと考えられていますが、「腸壁バリアを破壊する原因」となる果糖やアルカロイド、硝酸態窒素、レクチンなどといった成分も含まれています。(これらは次回で扱う「胃腸の機能」に関する項目で詳しく解説します)

健康のために菜食にしているという人は多いですが、摂りすぎや偏りすぎが逆効果になることがあるのです。子どもを持ちたいと思われるのであれば、産まれてくるお子様の健康のためにも、「菜食が健康に良い」「動物性タンパク質は身体に悪い」という極端な考えは改めるべきだと思います。もちろん、それは母体の健康のためになることでもあるのですから。

 

「シクロデキストリン」で、油脂の弊害を避けられる!

身体に良い食事がしたいと思っても、現実的にはなかなか難しいものです。

とくに、外食をする機会が多い人にとっては、脂肪や糖の摂りすぎを避けるのはなかなか難しいものです。

しかし、そうした生活がアレルギーなどの不調の元になっている人もいますから、体質改善のために食事を見直すことが求められます。

そこで私がお勧めするのが、前回も紹介したシクロデキストリン(環状オリゴ糖)です。

シクロデキストリンを摂ることで、アレルギー(免疫細胞の過剰反応)を抑制する細胞である「Tレグ」を増やすことにつながると、前回お話ししました。

シクロデキストリンという水溶性の食物繊維が、腸内細菌の餌となります。そうして増えた腸内細菌が放出した酪酸などの単鎖脂肪酸を、未熟なT細胞が受け取ることで「Tレグ」になるということでした。

このシクロデキストリンの働きは他にもあり、多くの人の食生活の改善に役立つものと考えています

まず、アレルギー体質でない人が、ある日突然、全身に湿疹が出てなかなか治らなくなったという事例をお話しします。

無肥料・無農薬を実践する農家を、全国飛び回って支援していた45歳の男性が、2014年の春に突然、全身に湿疹が出て、仕事ができないほどになってしまいました。病院で処方されたクスリを飲んだり塗ったりしていましたが、1年たっても一向に良くなりませんでした。

そこでこの男性は、私の著書を読んで「脂が原因ではないか?」と考えました。彼はほとんど毎日外食で、サラダ油やトランス脂肪を摂る機会が多かったのです。

本当に脂が原因なのかどうか確かめるために、彼はこんな実験をしました。

買ってきた餃子を2つに分けて、一方は油で焼いて食べ、もう一方は別の日に水餃子にして食べてみたのです。すると、油で焼いた餃子を食べたら湿疹が悪化し、水餃子では症状が悪化しませんでした。こうして、悪化要因が脂にあることが明らかになりました。

そこで、サラダ油やトランス脂肪が多い油脂を徹底して排除するようにしたところ、みるみる症状が改善していきました。

しかし仕事に復帰すれば、また外食が増えて、脂を避けるのが難しくなります。

そのとき私がオススメしたのが、シクロデキストリンでした。食事の前にサプリメントとして市販されているシクロデキストリンを2グラムほど飲んでおくと、飲食物に含まれる油脂がシクロデキストリンに吸着されて排出されるため、油脂の弊害を避けられるからです

実際、彼は外食する際に、食前にシクロデキストリンを飲むことで、その後再発することなく仕事を続けられています。

左図はシクロデキストリン構造図。シクロとは「輪になった」の意味で、デキストリンは「オリゴ糖」のこと。6つのブドウ糖が環状に結合している。シクロデキストリンは穴の開いたバケツのような形状をしており、この内側に酸化した油脂やトランス脂肪酸などを取り込んで体外に排出される。

 

「シクロデキストリン」のアレルギー改善効果

シクロデキストリンが腸内細菌のエサになることは前回説明しましたが、加えてシクロデキストリンには、身体に有害な油脂を優先的に吸着して排出する働きがあります。さらに、シクロデキストリンには、アレルゲンを吸着して排出することによって、IgE抗体を減らすという作用もあります。

総合健康開発研究所(SOUKEN)が実施した、「アレルギー性鼻炎や気管支喘息へのシクロデキストリンの改善効果」に関する臨床試験を紹介しましょう。

アレルギー性鼻炎の被験者12人に、2ヶ月にわたって毎日睡眠前にシクロデキストリン5グラムを100ミリリットルの水に溶かして摂取してもらい、症状の変化を報告してもらいました。

その結果、被験者12人のうち7人は症状が消失しました。3人は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状が軽減し、あと2人は効果不明との結果でした。

また、スギ花粉症の患者15人に、シクロデキストリンを1回2.5グラム、1日2回、朝夕の食事とともに摂取してもらい、スギ花粉に対するIgE抗体の血液中濃度の推移を調べた結果、15人の平均値が摂取前28UA/mlから、12週間後に21UA/mlに低減しました。つまり、スギ花粉に対するIgE抗体が3ヶ月で25%減少したのです。

気管支喘息の患者16名に、シクロデキストリンを1回当たり2.5g、1日2回、朝夕の食事とともに摂取してもらい、一定期間ごとに医師の問診で喘息の発作回数を調べました。その調査データに基づいて、喘息発作が「まったくない:0」「咳発作:1」「小発作:2」「中発作:3」「大発作:4」として、被験者16人の平均値を算出しました。

その結果、摂取後1~2週で0.4、3~4週で0.2、5~6週で0.16、7~8週で0.16となり、明らかに発作回数の低減が認められました。

同じく総合健康開発研究所が実施した、「アトピー性皮膚炎へのシクロデキストリンの改善効果」に関する臨床試験もあります。

アトピー性皮膚炎の患者15人に、シクロデキストリンを1回当たり2.5g、1日2回、朝夕の食事とともに摂取してもらい、一定期間ごとに各種のアレルゲン(スギ、犬のフケ、ハウスダスト)に対する血液中のIgE抗体量(特異IgE)の推移を調べるとともに、医師による観察部位が診断されました。

観察部位は、シクロデキストリンの摂取前の診断時に医師によって決定され、その後、診断とともにデジタルカメラによる撮影が行なわれました。

その結果、シクロデキストリンの摂取により、スギ、犬のフケ、ハウスダストそれぞれのアレルゲンに対して、特異IgE抗体量の減少が認められました

また、医師の診断によって、アトピー性皮膚炎の症状である痒み、掻き傷、乾燥、紅斑(皮膚が赤みを帯びた状態)、腫脹、鱗屑(りんせつ。皮膚が剥がれ落ちること)、 丘疹(直径1センチ以下の隆起する発疹)のいずれにおいても試験期間の3ヶ月中に改善が見られました。

つまり、シクロデキストリンを毎日の食生活に取り入れることで、炎症をおこしやすい油脂(リノール酸・トランス脂肪酸)を避けられるとともに、アレルギーを引きおこす「IgE抗体」を減らし、さらにアレルギーを抑制する「Tレグ」を増やしていくことができるのです。

 

シクロデキストリンとオリゴ糖、何が違うの?

シクロデキストリンは加熱しても変性せず無味無臭のため、どんな調理にも使うこともできます。たとえば、ご飯を炊くときに混ぜて炊くとか、みそ汁に溶かしておくとか、煮物の煮汁に混ぜておくなどといった摂り方もできます。こうすると知らぬ間に摂取できるので、飲み忘れもしなくなりますし、薬のように飲むのが嫌だという方にもオススメの方法です。また、水やコーヒーや紅茶などに溶かして飲んでも大丈夫です。

ちなみに、こういったシクロデキストリンの効用は、通常のオリゴ糖(難消化性デキストリン)にはありません。参考までに、シクロデキストリンと通常のオリゴ糖との違いをまとめておきましょう。

まず身体に有害な油脂に関しては、シクロデキストリンは吸着(包接)して排出するのに対して、通常のオリゴ糖は単に吸収を阻害するだけです。吸収されなければ同じではないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。吸収されなかった有害な油脂が、そのまま腸内を流れていくので、消化管全体が有害な油脂によって酸化される恐れがあります

IgE抗体に関しても、シクロデキストリンはアレルゲンを吸着(包接)して排出することでIgE抗体が減っていくのに対して、通常のオリゴ糖はアレルゲンを吸着できませんからIgE抗体が減っていく効果は期待できません

また熱に対しても、シクロデキストリンは安定していて変性しませんが、通常のオリゴ糖は加熱するとメイラード反応をおこして、老化物質のAGEに変性してしまいます

効果を期待するなら、通常のオリゴ糖(難消化性デキストリン)ではなく、シクロデキストリンです

ぜひ、参考にしてください。

次回は、リーキーガットに関連して、胃腸の機能が低下する原因と全身への影響について予定しています。

(第9回 了)

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–Profile–

松原秀樹先生

松原秀樹(Hideki Matsubara
アレルギー体質を改善するために、高校時代から様々な療法を試みる。48歳のとき自然免疫学応用食材で、40年間治らなかったアレルギー症状がわずか2ヶ月でほぼ消失した。さらに腸管免疫について調べていき、『リーキーガットが万病の根源』と知るに至る。

 合気術を活用した独自の施術を行なう傍ら、体質改善の食事指導、サプリメントやボディケア用品の開発も行なっている。

 体質研究所主宰。桜ヶ丘整体院院長。整体師。体質改善コンサルタント。米国ISNF認定サプリメントアドバイザー。合気道四段。

 著書に「お腹のぜい肉をなくす食事」(文芸社)「7つの秘訣で膝痛解消!」「肩甲骨をゆるめる!」(BABジャパン)「アレルギーは、皮膚と腸のバリアを強化すれば治る」(あかつき身体文学舎)など。「腰痛解消!神の手を持つ17人」(現代書林)に掲載。

Web site:体質改善コンサルタントの体質研究所

(当院のご案内の他、体質改善や健康情報についてクイズ形式で学べる「体質改善検定Ⓡ」も掲載しております。)