8月25日に初めてのコラボ企画を行う、山上亮さん(整体ボディワーカー。以下、亮さん)と、山本加世さん(NPO法人mama’s hug理事長。以下、もっさん)。
本イベントを記念してのプレ企画として、お二人の往復書簡が始まります。
今回のイベントのテーマになぜ、「“慈しみ”からはじまる保健体育」とつけたのか? なぜこの企画をするの? など、ここでしか聞けないお話が続々と登場します。
イベントの予習にも、お二人の人となりを知るのにも、ぜひどうぞ。
コ2イベントプレ企画連載
亮さんともっさんの往復書簡
05 亮さんから→もっさんへ 「コミュニケーションって“言葉”だけじゃない」
文・イラスト提供●山上 亮
男と女はグラデーション
もっさん、お返事ありがとうございます。
またまたすごいエピソードをありがとうございます。まるでドラマのような出来事ですね。もみ合っている最中にトレーナーが脱げてすっぽんぽんになるというあたりに、もっさんのオリジナリティを感じますが、どうしてもっさんにはそのようなことが起こるのでしょうかね?
これはもう神さま(笑いの?)に、愛されているとしか思えません(笑)。
それでまあ、そのエピソードに現われているのが、妻と夫でコミュニケーションの作法が違ってくるということ。たしかにおっしゃるように、男と女の間には大きなコミュニケーションのちがいがありますよね。
最初にひとつだけ言っておきたいのですが、私が「男」とか「女」と言う場合、必ずしも生物学的な区別とは限りません。
いわゆるLGBT[セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつ。レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字をとっている]というものにも大きく関わってきますが、私の中では男と女というのはきっぱり二分されているものでは無く、グラデーションのような濃淡によって、ぼんやりと混じり合って浮かび上がっているものなんですよね。
LGBTの人たちはもちろんですが、そうでないマジョリティの中にも非常に個性豊かにグラデーションがあると思うんです。
性的なマジョリティの人の場合、LGBTの人たちと違って日常生活の中で具体的な問題としては前景化されないので、おそらくほとんど顧みられることがありませんが、あらゆる人間の中に潜んでいることだと思うんです。
実際、身体的にも両性具有という希有な在り方もあるわけで、男と女ってきっぱり区別できるものだとは思っていないのです。
もちろん妊娠するためには、生理学的な要件として身体的な両性が出会う必要がありますが、そういうことを介さないパートナーシップというものも現代では多く成立していますから、性教育としてそこらへんをどのように扱っていくのかということも、これからの大きな課題かも知れませんね。
ですから私が男とか女とか言う場合、あまり個別的な性別を指しているわけではなく、「男的な何か」と「女的な何か」くらい漠としたニュアンスで受け止めて頂ければと思います。
分かりあえない二人をつなぐ「曇り空」
それで「男が察しない」という件についてですが、それは全世界の男を代表して謝罪いたします。
「ごめんなさい」。
でもね。分かんないんですよ。男は。
男はね。もっとキッパリパッキリしていないと、その違いがよく分かんないんですよ。
口紅が何十色とずらっと並んでいても、その違いがまったく分からないんですよ。
マンモスを追いかけているときだって、もはや食糧とすら思っていなくって、ゲームで敵を追い詰めているくらいの感覚なんですよ。
以前、私が仕事から家に帰ったとき、妻が嬉しそうに「すごい良い歌を見つけたの。聴いてみて」といって歌を聴かせてくれたことがありました。
荒井由実の「曇り空」という歌だったのですが、どんな歌詞かというと
「ある人と会う約束をしていたのだけれど、急に会いたくなくなって約束を破ってしまった。それはきっと曇り空のせい」
みたいな歌詞なんですよ。
しばらくじっくり歌を聴いた後、私の感想をウキウキして待つ妻を見て「……これは男には分からないね~」と言ったらブスッと不機嫌になってしまったんです(笑)。
で、慌ててフォローして、
「いや、今の自分なら分かるよ。こういう気持ちも。整体とかやって、からだのことと常に向き合ってきたから、そういうこともあるなっていうことが今なら分かる。でも普通の男は分からないと思う。この感覚。理解も納得もできない。」
「というよりもね、男は曇り空のせいにはしない。たとえガラッと窓を開けて曇り空を見ているときに何となく会う気がしなくなって、それで今日の約束をすっぽかすことにしたとしても、その原因を曇り空のせいにはしない。何かもっともらしい理由を見つけて、それを理由にする。そういえば今日締め切りの仕事があるんだったとか何とか……。」
それでそれをきっかけに、妻といろいろ男女の感性の違いを話し合ったのですが、そのエピソード以降、私たち夫婦の間ではそのような男女の間における微妙なニュアンスの違いとか微妙なディスコミュニケーションのことを、「それは曇り空だね~」とか「そこら辺は曇り空なんじゃない?」というように、一つのキーワードとして共通認識になったんです。
「通じないね~」のやり取り自体がコミュニケーション
これはね。私はユーミンに感謝しています。私たち夫婦に「曇り空」という共通言語を与えてくれた(笑)。
それ以降、「曇り空」は、私たち夫婦の会話の中にたびたび登場して、そして私たち夫婦に笑いと納得を与えてくれています。
前回の話に戻ってしまいますが、コミュニケーションにおいて大事なことは、きちんとやり取りが巡っているということなんですよね。
だから究極のところ、男と女で話が通じてなくても良いんじゃないかと思うんです。
「通じないね~」ってお互い顔を見合わせて笑えれば良いんですよ。
「通じないね~」っていうその一言が通じ合えているから。
コミュニケーションって「言葉」だけじゃなくって、他にもいろんなレイヤーが存在していて、私たちのライフワークである「タッチ」というのもその一つで、そこでたとえば、「愛」とか「慈しみ」とか、そんなものをやり取りしているんだと思います。
だからたとえボケたり言葉を失ったりして言葉が通じなくなっても、タッチによってコミュニケーションはできるし、またそれはきっと伝わるんじゃないかと思います。
子どもに性教育をするチャンスは…流れにまかせて
それでもっさんの質問なんですけど、じつはウチ、テレビがないんですよね……。
だからテレビでの「ラブシーン」も「ナプキンの広告」も、親子一緒に目にする機会が、我が家には存在していないんですよ。
(ちなみに我が家の子どもは男子2名です)
ただナプキンというか女性の月経については、私の妻はかなりオープンに子どもたちに語っていますね。「女の人は毎月こうなるんだ」って。布ナプキンを使うので普通にお風呂場で洗ったりもしていますしね。子どもはそれを全部見ています。
ただラブシーンというか性行為そのものについては、まだまだ語っていませんし、上の子は小6ですが、まだよく知らないんじゃ無いかと思います。
何ヶ月か前に、たぶん学校の保健の授業で習ってきたんだと思うんですけど、隣の部屋で下の子に一生懸命、受精の仕組みを語っている声が聞こえてきて、その内容がおかしくって妻と二人で笑っていました。それで「ああ、よく分かってないな」ということはよく分かった。
ただいずれ向き合わなくちゃいけないことですよね。父として。
正直、まだよく分からないです。どうなるんでしょうね?
ちなみにもし一緒にラブシーンを観ることになったら、私は息子がどんな顔をして観ているのかこっそり観察しているでしょうね。
それで向こうが振り向いて何か会話になるなら、それはそのときの流れのままにって感じじゃないかと思います。
○もっさんへの、質問です!
それでは最後に、またもっさんに質問を振ります。
今回のコラボ講座のメインテーマになってくるかと思いますが、学校教育における保健体育、とくに性教育の役割って、どんなものだと思いますか?
あるいはどんなものであるべきだと思いますか?
じっくり答えると講座の結論に至ってしまうかと思うので、講座への導入となるような程度で、少しお考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【イベント告知】
2018年08月25日(土) 13:30〜16:30に、
山上亮さんと山本加世さんによるトークイベント「自分も人もすきになるタッチvol.1」が開催されます。詳細やお申し込みはこちらから↓
イベントページ「「自分も人もすきになるタッチvol.1〜 “慈しみ”からはじまる保健体育」開催!」
ふるってご参加ください!
(第5回 了)
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–Profile–
●山本 加世(Kayo Yamamoto)
就職後、食べ物に関わる仕事がしたいと一念発起、フードコーディネーターとなる。結婚、出産を経てタッチの大切さを普及すべく、ベビーマッサージのインストラクターに。2006年にNPO法人mama’s hugを設立し、 「100の言葉よりhug」をモットーに、心と身体の知能、脳科学、皮膚科学心理術に基づく【Touch学】を提唱する。2013年にはボストン校を開校。ベビー・キッズ・ガクセイ・オトナ・マタニティといった世代別の講座を開講し、インストラクターを養成している。月刊クーヨンをはじめ、取材多数。
Web site NPO法人mama’s hug(ママズハグ)