武術の根幹と言えば身を護ることにある。法治国家である現在の日本においてもそれは同じだ。時として、理不尽な要求や暴力から自分や大事な人の身を護るためには、決然と行動を起こす必要があるだろう。しかし、そうした行為もまた、法で許されている範囲の中で行わなければ、あなた自身が法に裁かれることになる恐れがあるのも事実だ。
では果たしてどのような護身が有効なのか?
本連載では元刑事であり、推手の世界的な選手でもある葛西真彦氏に、現代日本を生きる中で、本当に知っておくべき護身術を紹介して頂く。
元刑事の武術家が教える、本当に役に立つ術
実践、超護身術
第三十六回 事例で考える間接護身03
文●葛西真彦
あなたならどうする?
これまでこの連載では私の提唱する間接護身について、かなり多くのことを書き綴ってきました。
前回は連載に一区切りを付けるにあたって、実際に起こった実例を参考に私が作った想定問題を用意しました。
今回は第三弾です。皆さんにはここまでの連載内容を踏まえて、具体的にどうすれば良いのかを考えて頂ければと思います。
もちろん答えは一つではありません。“この方法はマイナスだろう”と思ってようなことでも、当事者の状況によっては、結果的に最善であったりすることもあり、その意味では正解はないとも言えます。
ですので、私もポイントを提示していきますが、これが絶対的な正解ではなく、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。大事なことは、自分で考え、納得のいく答えを出すことです。そうしたマインドを作り上げていくことで、これから先も皆さんのなかで間接護身の思考が発展していけばと考えています。
では事例を挙げていきましょう。
事例3 空き巣を絞め技で殺してしまった
自宅で妻と団らん中に、窓ガラスを壊して突然泥棒が入ってきた。武器は侵入用の工具(ドライバー)のみで、相手側も家人がいることを予想せず、空き巣のつもりで入ってきたようだ。想定外のことに動揺した侵入者はドライバーで突いて攻撃を仕掛けてきた。
“妻に危害を加えられたら”と思い、家人Aは必死になって抵抗したところ、思っていたよりも犯人との体力差があり、犯人を組み伏せて、羽交い絞めにすることができた。
しかし、犯人を離すとまた暴れるのではと思い、その恐怖心から裸絞めにして弱らせようと思い、絞めたまま警察が来るまで待っていたところ、警察が来た時に離したら、すでに死んでいた。
この時の判断対応に間違いはあったかなかったか。また、どうすべきだったか。
著者の考えるポイント
この事例は関節護身だけではなく、直接護身の意味合いを備えた例です。ですからここでは直接護身についても触れていきたいと思います。
締め技の有効性と脅威を理解する
読者の方のなかには締め技で人を“落とした”経験を持つ人はいると思います。柔道・柔術に限らず格闘技をされている人であれば、当然、絞め続ければ人は死ぬということも習うでしょう。
しかし、今回の事例にあるようなケース、「分かっていてもやってしまうケース」は少なからず起きています。
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