連載 扇谷孝太郎 「身体と動きの新法則 筋共鳴ストレッチ」04

| 扇谷孝太郎

身体と動きの新法則

筋共鳴ストレッチ

第4回 「身体運動とチャクラの関係」

扇谷孝太郎

 

前回は柔軟性向上のための基礎知識として、以下のことをご紹介しました。

1)柔軟性エクササイズは鼻呼吸で行うのが基本。
→ 口呼吸は腹筋群や骨盤底を不必要に緊張させてしまう。

2)筋肉には背側系と腹側系があり、同じ系の筋肉同士は連動する。
→ 柔軟性エクササイズではアプローチする筋肉が背側系か腹側系かを意識する

今回から、いよいよ「柔軟性のための身体の法則」について、詳しくご紹介していきます。まずは体幹部の動きの中心になる脊柱のコントロールについて考えてみましょう。

 

柔軟性のための身体の法則

【4】チャクラムーブメントシステム

【1】チャクラとナーディー/安定性と柔軟性

ヨガの身体観のベースには万物の根源はプラーナと呼ばれるエネルギーであるという見方があります。「チャクラ」はこのプラーナが身体に流れ込む場所とされています。全身に存在しますが、中でも頭頂から尾骨までの正中線上にならんでいる7つのチャクラが主要なチャクラとして有名です。

このような背景があるため、チャクラというとエネルギー的なもの、目に見えないものと思われがちですが、「身体運動にとってのチャクラ」という視点で見てみると、筋肉や骨格を動かす上でも非常に実用的なアイディアだということがわかります

なぜなら、以下のように、7つの主要なチャクラはそれぞれ脊柱のS字カーブに対応しているからです。


第7チャクラ=頭頂
第6チャクラ=(前)眉間のやや上の隆起部/(後)後頭骨(後頭隆起)
第5チャクラ=(前)甲状軟骨/(後)第3~5頚椎
第4チャクラ=(前)胸骨(心臓)/(後)第3~5胸椎
第3チャクラ=(前)へそ/(後)第3腰椎
第2チャクラ=(前)下丹田/(後)仙骨(第2仙椎)
第1チャクラ=尾骨


人間の背骨は頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙骨(5つの骨の癒合したもの)、尾骨(3~7個)で構成されています。これら背骨の集合をまとめて脊柱といいます。

この脊柱を横から見ると、頭から尾骨までは縦に引き伸ばされたS字カーブの連続としてとらえられます。柔軟性を向上させる上で、この脊柱のS字カーブのバランスをコントロールすることは非常に重要です。チャクラの位置をS字カーブに対応させて考えると、ストレッチやエクササイズの中で脊柱をどのようにコントロールすればよいのかが理解しやすくなります

チャクラムーブメントシステムでは、脊柱のS字カーブを基準にして全身の運動を協調させるために、このヨガのチャクラの概念を活用します

上述のように脊柱のS字カーブを構成する各カーブの頂点のところがチャクラのある場所にあたります。この頂点の部分は「運動中、頭部や四肢を支える力が集中する場所」になっています。ここを身体の安定性を高めるために意識しますグニャグニャと動かしてはいけません

逆に、チャクラとチャクラをつなぐ部分=カーブとカーブの接続点は、「運動中に、柔軟に動くべきところ」です。各チャクラの間は「ナーディー」と呼ばれるエネルギーの通る脈管があるとされていて、チャクラの機能を開発する上ではこのナーディーの詰まりをとり、エネルギーの通りを良くすることが必要とされています。このナーディーを脊柱のS字カーブに当てはめてみると、以下のようになります。


第7チャクラ~空間 = 大泉門
第7~第6チャクラ間 = 冠状縫合、ラムダ縫合、鱗状縫合など
第6~第5チャクラ間 = 環椎後頭関節、顎関節
第5~第4チャクラ間 = 第7頚椎~第1胸椎、上部肋骨、胸郭上口、胸鎖関節など
第4~第3チャクラ間 = 胸腰移行部、下部肋骨、剣状突起
第3~第2チャクラ間 = 腰仙関節、仙腸関節
第2~第1チャクラ間 = 仙尾関節、恥骨結合
第1チャクラ~下肢 = 骨盤底筋群、内転筋、深層外旋六筋
(第1チャクラ(尾骨)の安定には骨盤底、内転筋、深層外旋六筋の働きが必要です。主要チャクラをつなぐナーディーには相当しませんが、重要なので挙げておきます)


物質的な肉体の動きに即して考えると、あの様々なヨガのポーズはこのナーディーにあたる部位の筋肉の緊張をほどき、チャクラに力を集中させるために開発されたとも言えます。

 

チャクラムーブメントシステムにおいても、チャクラとチャクラをつなぐ接続点の緊張をほどき、呼吸運動の波のような動きが通り抜けられるようにすることが、全身の動きの柔軟性を高める上で重要だと考えています

実際に、脊柱のS字カーブのバランスを保つように動いてみると、動作中も無理なく呼吸ができることがわかります。

つまり上記の構造を動かす筋肉の緊張状態をコントロールすることで、柔軟性をスムーズに向上させることができるのです。とくにモビライザーの過剰な緊張をほどき、スタビライザーの動きを目覚めさせることが重要になります。

チャクラ/ナーディーの関係をとらえて動きに活かすことは、基礎知識編でご説明したとおり、安定性と柔軟性の両立という要求に応える上でも必要なことなのです。

なお、チャクラ/ナーディーと呼吸の関係について見てみると、ナーディーは安静時の自然な吸気/呼気および深い吸気と、チャクラは深い呼気に関係しています

深呼吸をするときは、チャクラのところを意識して深く息を吐き、ナーディーのところを意識して息を吸うと、脊柱の柔軟性/安定性が高まります

 

【2】 チャクラムーブメントシステムと立位前屈の例

運動中に柔軟性が低下する原因は筋肉の過剰な緊張です。頭と脊柱の中には脳と脊髄という中枢神経があるため、無理な力がかかって背骨が危険な状態に陥りそうになると、それ以上背骨が動かされないように全身の筋肉が緊張します。この防御反応が柔軟性の低下を招きます。

エクササイズやストレッチを行う際に、各チャクラ/ナディーの位置を意識してS字カーブのバランスを保ちながら動くことで、そうした防御反応による緊張を解除することができ、効果的に柔軟性を高められるようになります

たとえば、立位前屈をするとき、身体の固い人の多くには共通する「背骨の動き」が観察されます。まず床に向かって顔を突き出すようにして、その後すぐに身体を屈曲させていくのです。しかしこの動きでは、動き出しの最初の段階で頚椎の自然なカーブが失われてしまいます

床に向かって顔を突き出すと、屈曲の動きを引き出すべき第6~5チャクラ間(環椎後頭関節)ではなく、頚椎の中央部、つまり第5チャクラ(第3~5頚椎)のところを大きく屈曲させることになり、頚椎の前彎のカーブが失われます。

そうなると、さらにその下の、本来屈曲させるべき第5~4チャクラ間(第7頚椎~第2胸椎)の動きを引き出せないので、代わりに第4チャクラ(第3~5胸椎)のところが引き伸ばされて伸展してしまい、後彎のカーブが失われます。

このように、チャクラとチャクラの間(ナーディーの通るところ)の屈曲させるべき背骨の動きが失われることで、代償として、チャクラの位置する背骨が本来のカーブとは逆方向に動かされます。そして前彎/後彎のカーブが失われるというパターンが腰椎、仙骨、尾骨へと連鎖していきます。

その結果、背骨全体のS字カーブのバランスを崩してしまい、防御反応を生じさせてしまいます。

まったく無自覚に行っている動きなので、本人はハムストリングが固いとか股間節が固いと思い込んでいることも多いのですが、原因は全然別のところに隠れてます。やみくもに練習するよりも、なぜハムストリングや股間節が固くなるのか?と考えることの大切さがおわかりいただけるかと思います。

 

【3】 第7チャクラ~第5チャクラのバランスを改善する

立位前屈が固くなってしまう原因はもちろん複数の要素が絡み合っているわけですが、まずはこの頭部のコントロールを見直すだけでもかなり柔軟性が向上します

チャクラムーブメントシステムでは、額の動き、目の動き、鼻の動き、舌・下顎の動きと見直して、頚椎のカーブを維持しながら動けるように修正していきます。

一つ実験をしてみましょう

立位前屈のための脊柱の屈曲の動きをスムーズにするには、バレエのロールダウンのエクササイズが適しています。頭頂から背骨を一つ一つ丸めていくようにして前屈していきます。

脊柱を丸めてきて、最後に股間節を屈曲させます。そこまで来たら、そこで丸まっている力をほどき、股間節から上体をぶらさげるようにして立位前屈の形になります。

脊柱の動きから股間節の動きに切り替えるタイミングがわかりにくいときは、以下のようにすると良いでしょう。


1)壁に後頭部~背中~お尻をつけて立つ
2)後頭部で壁をこするように、鼻の頭を下げるもりでうなずく
3)うなずいたまま頭を壁から離す
4)さらに肩、背中、腰を離す(お尻は離さない)
5)前傾姿勢のままで一歩前に進んで、壁から離れる
6)鼠径部(股関節)を引き込むようにして、お尻を後ろに大きく引く
7)立位前屈の姿勢になる


このエクササイズの最初の段階で、以下のように首の動きを意識してみましょう。慎重に少しずつ動かします。

(1)額(第7~6チャクラ)

額をリラックスさせて小さくうなず始めます。額の中央にもう一つ目があって、それを静かに開いていくようにイメージしてみましょう

~修正エクササイズ~

基礎知識編でふれたように、額の筋肉は背側系に属しています。ロールダウンをするには体幹の背側系の筋肉は伸びる必要があります。しかし、パソコンやスマートフォンの画面を長時間見ていると、知らず知らずのうちに額の筋肉が緊張しています。

ここでは額の筋肉をリラックスさせるために、触覚とイメージをつかってみましょう。額の中央に軽く手のひらを当てます。その時点では「手のひらで額に触れている」という感覚でしょう。そこから意識の方向を逆転させて、「額で手のひらに触れている」と感じてみます。額で手のひらに触れている感触を感じながら、ゆったり呼吸をしているうちに触れ合っているところがムズムズしたり、やわらかくなってきたりしたら、終わります。

(2)目と後頭下筋(第6~5チャクラ)

目は鼻の頭を見るようにします。このとき、額はリラックスさせたままにしておきます。また、鼻の頭は中心視野で見ていますが、同時に目の力を抜き、周辺視野にも意識を向けて視界を広くとることも大切です

なぜなら、目を動かす外眼筋の緊張は頭とクビをつなぐ環椎後頭関節の動きと連動しているからです。この関節のスタビライザーである後頭下筋群は、姿勢に合わせて脊柱の上の頭蓋骨の位置を調節しています。ここは第6チャクラと第5チャクラの境目、ナーディーの通り道なので柔軟性が必要なところです。

後頭下筋群は背側系の筋肉なので、前屈においては伸びる必要があります。パソコンなどを見つめる作業を続けていると、力を入れて一点を凝視するような目の使い方がクセになり、眼球を動かす筋肉である外眼筋が緊張します。外眼筋が緊張して固まっていては後頭下筋群は適切に働けません。

~修正エクササイズ~

目の動きをリラックスさせることで、後頭下筋群の柔軟性を引き出します

目が緊張している人は、見ようとする対象物からの光をつかまえようとして目の動きを固くしています。対象物からの光をただ「受け取る」つもりで、対象物への視線をやわらかくしてみましょう。眼球の表面ではなく、眼球の奥の方で光を受け取るようにします。

やわらかな視線で、とてもゆっくりと上下左右に眼球を動かして部屋の中を見てみましょう。呼吸を止めたり、浅くならないように注意します。目を固定したまま首を回す動きがクセになっている人は、まず眼球を視界の縁まで動かしてから首を動かすようにします。

(3)鼻

うなずきが深くなるにしたがって、小鼻が軽く閉じてくるのを感じます

ふつうは鼻の穴は息を吸うときに広がり、吐くときに狭まります。しかし、呼吸パターンに問題を抱えている人は息を吸う時に鼻の穴の奥を緊張させて狭めてしまうことがあります。

~修正エクササイズ~

静かにゆっくり呼吸しながら、鼻の穴の入り口から奥の方まで、力が抜けているか感じてみましょう。意識するところを、入り口からはじめて数呼吸ずつ、だんだん奥の方へ移していきます。

(4)下顎

うなずきを深くしていくに従って、下顎は軽く後ろに引かれます。本来は自然に生じる動きですが、側頭部やこめかみ、顎関節の筋肉が緊張しているとこの動きが起こりません。

下顎が前後する動きには側頭部の筋肉(側頭筋)が大きな役割を果たしています。側頭筋は側頭部からこめかみを通って、頬骨の下をくぐり下顎骨へとつながっています。そのため、目の疲れでこめかみのあたりが固くなっていると、下顎をうまく動かすことができなくなります。

~修正エクササイズ~

側頭部に手を当てて、歯を食いしばってみると、側頭筋が固く盛り上がるのが感じられます。目尻からこめかみ、側頭部にかけてをやさしくマッサージしてみましょう

左右のこめかみから頬、顎の下の柔らかいところ(口腔底)がつながっていて、ハンモックのようにぶら下がっているのをイメージしながら動かします。

そして頭の動きとともに、下顎が後ろに引かれる動きを感じてみます。

(5)舌と甲状軟骨

舌の先端は上の前歯の裏の歯茎の後ろに位置するようにします。舌の付け根が緊張していると下顎の動きを邪魔するので、舌の奥の方の力を抜くようにします

舌の筋肉(舌筋)の状態は筋共鳴によって横隔膜や骨盤底の筋肉にも影響を与えているので、注意が必要です

頭の前傾が大きくなってくるにしたがって、下顎の先端がのどの付け根あたりに向かって引き寄せられているはずです。このとき、舌の付け根が緊張していると、甲状軟骨(のど仏)が締め付けられるようになるので、舌の付け根の力を抜き続けます。それによって、第5チャクラのある第3~5頚椎の前彎のカーブを維持できます。

~修正エクササイズ~

舌の付け根を意識して、舌を口から突き出したり、奥まで引っ込めたりしてみましょう。突き出すと付け根が細くなり、引っ込めると横に広がるのを感じてみましょう。

(5)頚椎から胸椎、腰椎へ

ここまでで頭のうなずきから、頚椎を屈曲させるところまできました。そこから、さらに息を深く吐きながら上体を丸めていくと、各チャクラ間(ナーディーの通る部分)が動いて、背骨全体がやわらかく丸まっていきます

正しく動けていれば、呼吸も無理なく深くできているはずです。呼吸が苦しくなったり、深くできない場合は間違った動きが生じています。基礎知識編でも書いたように、呼吸のスムーズさは柔軟性と安定性を向上させる動きが両立できているかどうかをチェックする指標になります

最後に、ロールダウンで頭と首の動きを引き出す前と後で、立位前屈の柔軟性を比較してみると、ロールダウン後の方がスムーズに行えることがわかるでしょう。

(第4回 了)

※(筋共鳴)は現在、商標登録出願中です。

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–Profile–

扇谷孝太郎(Kotaro Ogiya

大学院在学中に演出家竹内敏晴氏の「からだとことばのレッスン」に出会い、身体と身体表現についての探求を始める。2001年、ロルファー™の資格を取得し公務員からボディワーカーに転身。現在は恵比寿にてロルフィング®を中心に、クラニオセイクラルやソマティック・エクスペリエンス®などの個人セッションを行う。 ヨガやバレエスタジオでの定例セミナーでは、身体のメカニズムのほか、呼吸や感覚、イメージの活用を独自の視点でまとめた「動くための解剖学」を教える。その内容はダンサーやヨギなど、柔軟性と身体バランスを必要とする人々から高い支持を得ている。また「からだと息で読む朗読」講座では、朗読という表現手法をとおして「共鳴を生む身体の育て方」を探求中。

●米国The Rolf Institute認定アドバンストロルファー
●米国The Rolf Institute認定ロルフムーブメントプラクティショナー
●クラニオセイクラルプラクティショナー
●ソマティック・エクスペリエンシング®︎認定プラクティショナー
●JMET認定EFTプラクティショナー

公式Web Site (https://www.rolfing-jp.com)