ソマティックワーク入門 第三回 アレクサンダー・テクニーク 石井ゆりこさん(前編)

| 半澤絹子

筋肉を鍛えたり、ダイエットをするだけではない、
健康とウェルビーイングの一歩先を求めて−−。

今、こころとからだの健やかさの質を高める、
マインドフルネス瞑想やボディワークなどが人気を呼んでいます。

そこには、これまでの、

「筋肉を鍛える」「ダイエットする」

といったものとは異なる、体からだに対する向かい方に関心が向かっていることが背景にあるのでしょう。

からだの感覚に注目し、
心身が心地よい状態へとフォーカスすることで、
深い気づきや静けさを得たり、
自己肯定力や自己決定力といった心身の豊かさを育んでいく。

これらは、
こころとからだのつながりを目指す
「ソマティックワーク」という新しいフレームワークです。

その手法は、タッチやダンス/ムーブメントなど多岐にわたり、
1人で行うワークから、ペアやグループで行うワークもあり、
自分に向くものはそれぞれ異なります。

そこでこの連載では、
これからの時代を生きる私たちにとって、知っておくべき「からだのリベラルアーツ(一般教養)」として、各ワークの賢人たちの半生とともに
「ソマティックワーク」が持つ新しい身体知を紹介し、
それらが個々の人生や健康の質をどう変化させたのかを探っていきます。

あなたのからだは、無限の英知から成り立っています。
賢人とともに、それを読み解いていきませんか?

リベラルアーツ(一般教養)として学ぶ

ソマティックワーク入門

−新しい身体知の世界をめぐる−

第三回 アレクサンダー・テクニーク 石井ゆりこさん
自分自身の使い方を学ぶ (前編)

取材・文半澤絹子
モデル堀田小百合
取材協力日本ソマティック心理学協会

「からだを通して、自分の心のありようや健やかさに気づく」というソマティックワーク

フィットネスや筋トレとは少し異なる、健康への新しいアプローチです。

第1・2回目は、からだの不必要な緊張を取り除くことで心を伸びやかにし、からだの動きや仕事、演奏、スポーツなどのパフォーマンスを高めるアレクサンダー・テクニークを、片桐ユズルさんにご紹介いただきました。

今回からは実践編。

littlesoundsを主宰するアレクサンダー・テクニーク教師の石井ゆりこさんに、

「緊張体質がなおらない」という人のためのワークを教えていただきました

Image: iStock

かつて緊張が抜けずにうまく歌えなかった

前回までの片桐ユズルさんの回ですでにご紹介の通り、アレクサンダー・テクニーク(Alexander Technique)とは、オーストラリアの俳優フレデリック・マサイアス・アレクサンダー(Frederick Matthias Alexander, 1869-1955)が創り出したボディワーク(アレクサンダー・テクニークの場合は、ボディマインドワーク)である。

その特徴は、いろいろな刺激を受けた際の心身の緊張に気づいたときに、身体感覚的な気づきを使って、“自分全体”として、よりしなやかに反応できるように自分自身を再教育していくことである。アレクサンダー・テクニークは、「緊張」をパフォーマンスに有効活用できるようになるため、アーティストなどが主に、このワークを受けている。もちろん心身が緊張しやすい「緊張体質」の方にもおすすめのワークである。

――しかし、「『ムダな緊張を抜いたほうが良い』と頭では理解していても、どうしてもできない」という人は少なくない。神奈川県鵠沼でアレクサンダー・テクニークを教える「littlesounds」の石井ゆりこさんも、かつて同じような悩みを持っていた。

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–Profile–

石井ゆりこ(Yuriko Ishi
東京生まれ。アレクサンダー・テクニーク公認教師。東洋大学文学部教育学科卒。1988年よりATを学び始め、1998年よりAT教師として活動を開始。その後米国Alexander Technique Center of Cambridge他で一流の講師からも教えを受ける。野口整体やプロセス指向心理学、モンテッソーリ教育なども学ぶ。アーティストやセラピストなどの支援職、一般の方まで延べ約15,000人を指導。国立音楽大学非常勤講師も務める。著書に、『無駄な力がぬけてラクになる介護術』(誠文堂新光社)など。

Web Site:アレクサンダー・テクニークのLITTLESOUNDS

 

半澤絹子(Hanzawa Kinuko
フリーライター、編集者。各種ボディワークやセラピーを取材・体験し、「からだといのちの可能性」、「自然と人間とのつながり」に関心を持つ。「ソマティック・リソース・ラボ(https://www.somaticworld.org/)」運営メンバーの1人として、ソマティックに関する取材や普及活動も行う。