連載 背骨を反らせば体が変わる  超!後屈入門 第二回

| 今村泰丈

背中を反らせば体が変わる

超!後屈入門

第2回 後屈は「折る」ではなく「しなる」

今村泰丈

Image: iStock

1日のうち、どれくらい背中を反らす機会がありますか?

人によっては寝起きや、デスクから立ち上がった時に伸び上がるくらいしか機会がないかもしれません。しかしこれはあくまで「伸び」であり、後屈のような背骨を反る動きではありません。となると、実際に背中を大きく反る動きは、やろうと思わないとなかなかやらないのが現状だと思います。つまり、後屈という動作は「非日常的な動作」であると言えます

しかし、後屈動作は背骨の基本運動の1つであり、正しくカラダを動かすために大切な動作の1つです。

背骨の基本動作は主に前屈、後屈、側屈、回旋の左右合わせて6種類の動きで構成されており、動作の多くはこの基本動作の組み合わせです。

これら1つひとつの基本動作が正確に行えることによって、より次元の高い動作が可能となります。

今回は、あまり知られていないけれど重要な、後屈のポイントについてお話しさせて頂きます。

背骨は“丈夫で柔らかい”が理想

まずは、解剖学の視点から背骨の基本構造について説明しましょう。

背骨は、頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個の24個の椎骨が積み重なって構成されています。

そして、背骨の中には脊髄という中枢神経が走っており、脳とカラダをつなぐパイプラインとなっています。

なので、脊髄を損傷した場合は脳の指令がうまく伝わらず、動くことができなかったり、異常感覚をもたらします。

また、背骨が歪んでしまった場合はサブラクセーションといって、神経が圧迫されることで神経伝達を妨害し、身体に悪影響を与えます。

こうしたことからカイロプラクティックでは骨の歪みを解消するための矯正を行います。

背骨には主に、

  1. 神経を守る役目
  2. 自重を支える柱の役目
  3. 下半身と上半身の動きに協調性を持たせる役目

と、大きく3つの役目を持っています。

前述の通り神経は背骨の中、または周囲を走っているため、外的ストレスに強い構造となっています。ですからある程度の強度を備えています

一方、背骨はある程度自由に動く必要もあります

自由に動けない構造は、生物的に弱くなってしまうので、動きの自由度を保障しつつも、ある程度の安定性と強度を両立した構造となっています。

つまり背骨は、自由に動けて、かつ安定している状態が理想的であり、この状態が維持できていることが背骨の動きを最大限引き出すために必要な絶対条件となります。

これからお話しする後屈のステップでは、この背骨の構造と役割を理解した上で「どう動いていけば美しい後屈になるのか」を、ポイントで分けて紹介していきます。

「折れ曲がる」意識よりも「しなる」意識

改めて、あなたは後屈と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

多くの方がイメージする後屈は、おそらく「カラダが後ろに折れ曲がる運動」だと思います。

間違いではないのですが、言葉は厄介なもので、解釈次第で全く違うモノになる危険をはらんでいます。

実際、後屈の「屈」の意味自体が”折れ曲がって伸びない”なので、真っ直ぐなものが「くの字」に曲がるイメージを連想させます。

くの字に折れ曲がるということは、その折れ曲がった部分に局所的なストレスがかかります。これが背骨である場合、背骨を構成する椎体に潰れる力が生じている事となりますので危険です。

しかし、多くの方の後屈は、カラダが折れ曲がらさせ、頭が床に向かう軌道を描こうとしています。この後屈では確実に腰を痛めてしまいます。

では、どのイメージが必要なのか。それは、「しなり」の意識です

稲穂をイメージすると分かりやすいかもしれません。

稲穂は、天に向かって伸びていった結果、先端の重さでしなるように穂を垂れます。あのキレイな曲線が「しなり」です。

逆に踏まれた稲のようにポキッと折れてしまっているのが折れ曲がった状態です。

これをカラダに置き換えて考えてみましょう。

折れ曲がった後屈は、背骨の一部を折り曲げる動作なので、周囲の筋肉はカラダを守るために緊張(防御収縮)を生み、動作を制限します。

一方「しなるような後屈」は、カラダの力が末端まで効率よく伝わっているため、どこか一点に負担をかけることなく力を保ったまま曲がることができます。それどころか、風をうまくいなす木が枝を伸ばすように、より自由なカラダへと進化する事ができるのです。

後屈は「稲穂や木の枝が風にしなった時のような、力強い反発感を伴う反り」が理想的です。

Image: iStock

 

力強くしなる後屈の下準備「エロンゲーション」

それでは早速、後屈に「しなり感」を出すための下準備となるワークをご紹介しましょう。

あなたは「エロンゲーション」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

エロンゲーションは「伸張性」という意味で、上下に引っ張られ、引き伸びているイメージになります。

背伸びをすると体がシャキッとして気持ちいいですよね? あの気持ち良さは、背伸びによってエロンゲーションしたことで生じる感覚です。

この時体の中で起きていることを具体的に言うと、小脳の虫部という部位がカラダの中心線(中心軸)の平衡感覚を司っているのですが、この小脳虫部を刺激する動作こそが「背伸び」にあたります。

小脳というのは運動の協調性を担う部位です。小脳が正常に機能することで、繊細なボディコントロールが可能となります。特に中心軸を知覚している「センタリング」の感覚は、背骨のコントロールにおいて欠かすことのできない要素の1つです。

今回はこの「エロンゲーションによるセンタリング感覚の知覚」をワークで体感してみましょう

やることは2ステップだけです。

写真提供・今村泰丈氏

ステップ① あぐらで座り、親指同士を結んだら上に手を伸ばす
ステップ② 真っ直ぐ天井に向かって1分伸びる

ワークの前後で歩いてみると効果がわかりやすいです。ワーク後のほうが足取り軽く、カラダの中心を感じた状態で歩くことができると思います。

ここで2つ注意点があります。

1つ目は、背骨を反ろうとしないことことです。多くの方は上に手を伸ばす際、より遠くに手を伸ばそうとするあまり背骨を反らしがちです。あくまで背骨は真っ直ぐ立てた状態で行ってみて下さい

2つ目の注意点は、指先を伸ばそうとせず、上腕を伸ばす意識を持つことです。指先を伸ばそうとすると、カラダは腕を引き戻そうという力が働きます。指先はリラックスした状態で、上腕(二の腕のある部分)を上方に引き上げる意識で伸ばしてみましょう。抵抗なく引き伸びすことができると思います。

この意識は、ヨガのアーサナをとる上でも重要な感覚で、指先がピンと伸びた状態は好ましくありません。

上方に体を伸ばしている際は、一度伸びたらすぐに戻らずに、伸び続けることを意識します。しっかりやるとじんわりと汗が出る位、やってみると大変なワークです。

いかがだったでしょうか? 今回ご紹介したワークは、後屈に限らず運動する前に必ずやっておきたいワークで、実際に私がアスリートのトレーニング現場でも指導している内容です。

ぜひ「引き伸ばす」を意識的に行なって下さい。次回は、さらに「後屈」を掘り下げていきます。

(第2回 了)

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–Profile–

image from lococlan.com

今村泰丈(Yasutake Imamura

モーションクリエイターとして岩手県盛岡市を中心に活動。
岩手リハビリテーション学院作業療法学科卒業後、7年間回復期病院に勤務。その後合同会社LOCOCLANを設立。Studio -Roots- MORIOKAオーナー。
2014〜2016にかけて47都道府県全県で、延べ10000人に医療従事者、ヨガインストラクター向けの治療セミナーを開催。身体合理性を追求した神経統合メソッド Somatic Flow®︎ を考案。

スタジオルーツ盛岡にて整体師、パーソナルトレーナー、ヨガ指導者として活動している。その他発達支援事業に作業療法士として従事。

合同会社LOCOCLAN 代表(http://lococlan.com/
作業療法士
PFILATES®インストラクター
BESJ認定PILATES&MasterStrech®インストラクター
NESTA認定パーソナルトレーナー(全米ストレングス&スポーツトレーナー)
Somatic Flow™エデュケーター

■資格
全米ヨガアライアンス RYT200
DNS exercise course1修了
Natural movement™ Level1修了