連載 扇谷孝太郎 「身体と動きの新法則 筋共鳴ストレッチ」14

| 扇谷孝太郎

身体と動きの新法則

筋共鳴ストレッチ

第14回 第7&第6チャクラのバランス ~顎と腕の筋共鳴®その3~

扇谷孝太郎

 

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今回は首の動きの改善がテーマです。

チャクラでいえば、第5チャクラのある場所です。第5チャクラは前から見ると喉仏、後ろから見ると第3~5頚椎のあたりになります。

第5チャクラは他の6つのチャクラのコントロールセンターです。首を本来の位置で支えることで、全身の動きが改善されます。

頚椎の柔軟性と安定性の大切さ

直立二足歩行へと進化した人類にとって、一番上の重量物である「頭」をどうやって支えてバランスをとるかということは、姿勢や動きを考える上で常につきまとう問題と言えるでしょう。

そして頭を支える上で一番負担を強いられるのは「首」です。

首のこりに悩まれている人も多いと思います。

成人の頭は4~6kgもあり、その重さを7個の頚椎で支えなければなりません。そのため首の筋肉は姿勢の変化に応じて素早く反応するような高い安定性が求められます。ちょっと歩いたり走ったりするだけで頭がグラグラしていては、目がまわってしまいます。

また、脳を運動中の衝撃から守るために、頚椎は前彎してクッションの役割も担っています。足から伝わってくる衝撃を柔らかく吸収するためには、柔軟性も必要です。

ここでは、そうした首の安定性や柔軟性に影響を及ぼしやすい筋肉の筋共鳴ストレッチからご紹介します。

まず最初に取り上げるのは、首の慢性的なコリや寝違いなどの原因になりやすい斜角筋群(前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋)です。

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斜角筋の位置と働き

斜角筋群は第1、第2肋骨と頚椎をつなぐ筋肉です。

胸郭側を固定しているときには、頚椎の屈曲・伸展、回旋に働きます。普段はテントのポールを立てるときに地面との間に張るロープのように、頚椎を立たせておく役割があります。

その逆に頚椎側を固定すると、斜角筋の収縮は第1、第2肋骨を引っ張り上げることになり、肺上部への吸気を促します。したがって、斜角筋群は姿勢を安定させるためのスタビライザーであると同時に、呼吸補助筋の一つでもあるということになります。

また、斜角筋が第1、第2肋骨に付いていることを考えると、首の動きは第7頚椎から始まるのではなく、少なくとも第2胸椎からの動きを意識することが大切だとわかります。

斜角筋群のバランスに偏りが生じると、左右に首が傾いたり、回らなくなったりします。首が前に出てしまうストレートネックも斜角筋群の緊張が大きな原因です。パソコンで作業していると、ついつい画面に顔を近づけてしまったり、長時間の座わりぱなしでいることが多くなりますが、そのような姿勢が続くことで斜角筋群のバランスは崩れてしまいます。

首のバランスは足首と共鳴している

では、この斜角筋群のバランスを改善し、柔軟性を高めるにはどうしたら良いでしょうか?

ちょっと意外に思われるかも知れませんが、遠く離れた下半身の筋肉、とくに足首の筋肉に目を向ける必要があります

下腿(脛)から足首を経由して足裏に達する3つの筋肉が、斜角筋群と筋共鳴の関係にあるからです。

ロルフィングのトレーニングでは「首」と呼ばれる部位は互いに影響しあっていると教わります。

以前わたしは、そのことを筋膜のつながりだけで説明するのは難しいと感じていましたが、筋共鳴という視点をもつことで、ようやく腑に落ちるようになりました。

首の動きを改善するためには、首にだけ注目していても駄目で、遠く離れた足首の動きを改善する必要があるのです。

足首を動かす3つの筋肉とは、後脛骨筋、ヒラメ筋、前脛骨筋です。これらの筋肉は足首の動きをコントロールすると同時に、足裏のアーチ(土踏まず)の形成にも深く関わっています。

なぜ首と足首の筋肉が共鳴しているのでしょう?

身体を建物に例えれば、全身の重さを支えている足裏のアーチは基礎の部分にあたります。ですから、そのバランスが崩れると姿勢全体が歪んでしまいます。なんとか立っていようとすれば、バランスをとるための代償として頭を本来の位置からずらさなければなりません。それには首の筋肉が連動して働く必要があります。そう考えると、これらの筋肉同士が筋共鳴の形になっているのは当然とも言えるでしょう。

 

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3つの斜角筋群と足首の3つの筋肉との間のそれぞれの共鳴関係をまとめると、下表のようになっています。

首の筋肉 足首の筋肉への共鳴 備考
手首の筋肉 腹部の筋肉
前斜角筋 後脛骨筋 撓側手根屈筋 大腰筋(上部)
中斜角筋 ヒラメ筋 尺側手根屈筋 大腰筋(下部)
後斜角筋 前脛骨筋 長橈側手根伸筋 腰方形筋(前葉)

備考として、これら3つの足首の筋肉と筋共鳴の関係にある、手首の筋肉、さらにその手首の筋肉と筋共鳴の関係にある体幹の筋肉についても記載してあります。これらは第3チャクラのバランスのところでご紹介する予定です。

先にここでご紹介した理由は、首~足首~手首~腹/腰とループする形で筋共鳴の連鎖があることを示すためです。

このループの構成要素の中のどこかに働きかけると、筋共鳴によってその他の部位へと波及していきます。この関係を理解しておくことで、筋力トレーニングやストレッチによるコンディショニングの効率や効果が変わってくるでしょう。

 

足首とストレートネックの関係

この共鳴関係を前提にして、胸が落ちて首が前に出てしまうタイプのストレートネックについて考えてみましょう。

一般的に、このタイプのストレートネックの場合、背骨の前側に位置する前斜角筋の活動が低下し、後ろ側の後斜角筋は短縮しがちです。

この状態は、足首においては、後脛骨筋の活動低下による引き伸ばし、前脛骨筋の短縮という形で表れます。その結果、床に足をつけて立ったときには足首がねじれ、足の内側のアーチ(土踏まず)がつぶれてしまいます。このように、扁平足はストレートネックとも密接に関係していることになります。

一番下がいわゆる「扁平足」 Image: iStock

また、このような足首の状態は、手首にも共鳴し、長橈側手根伸筋が短縮し、撓側手根屈筋が引き伸ばされるので、手首が内側にねじれた状態になります。さらに、手首から腰部の大腰筋への共鳴により、大腰筋が正しく収縮できなくなると、腰椎が丸まり前屈みの姿勢にならざるをえません。

これは背中を丸めて画面を見ながら、キーボードを打つ姿勢と一致します。

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このように、筋共鳴の視点から考えると、姿勢や動きにかかわる問題がそれぞれ単独で発生しているのではなく、すべて関連しあって生じていることがわかります。

 

斜角筋群の筋共鳴ストレッチ

それでは、それぞれの斜角筋の筋共鳴ストレッチをご紹介します。

このストレッチは寝違いなどで首を動かすのが辛いときにも、足の方から操作できるので安全に可動域の改善を図れます。

【 後脛骨筋 → 前斜角筋 の筋共鳴ストレッチ 】

(準備)首を左右に回したり、倒したりして、可動範囲をチェックしておく。

1)床または椅子に座り、右足のくるぶしのやや前方(土踏まず)にタオル(または伸縮しないバンドやベルト)をかけて軽く引っ張ります。

2)大きく息を吸って腹腔内圧を高め(努力吸気モード)、息を吸いきったら、腹腔内圧を維持しながら呼吸のゼロポジションを超えて深くゆっくり息を吐ききっていきます(努力呼気モード)。それと同時に、タオルを手前に引っ張って足首を背屈させます。

3)内くるぶしの後ろからふくらはぎの奥にかけて、後脛骨筋がストレッチされる感覚を味わいます。3〜5呼吸、繰り返します。

4)終了後、首の動きをストレッチ前と比較します。

6)左右を入れ替えて、繰り返します。

 

【 ヒラメ筋 → 中斜角筋の筋共鳴ストレッチ 】 

(準備)首を左右に回したり、倒したりして、可動範囲をチェックしておく。

1)床または椅子に座り、右足の指の付け根(母趾丘〜小指丘)にタオル(または伸縮しないバンドやベルト)をかけて軽く引っ張ります。

2)大きく息を吸って腹腔内圧を高め(努力吸気モード)、息を吸いきったら、腹腔内圧を維持しながら呼吸のゼロポジションを超えて深くゆっくり息を吐ききっていきます(努力呼気モード)。それと同時に、タオルを手前に引っ張って足首を背屈させます。

3)ふくらはぎの奥でアキレス腱とヒラメ筋がストレッチされる感覚を味わいます。3〜5呼吸、繰り返します。

4)終了後、首の動きをストレッチ前と比較します。

6)左右を入れ替えて、繰り返します。

 

【 前脛骨筋 → 後斜角筋の筋共鳴ストレッチ 】

(準備)首を左右に回したり、倒したりして、可動範囲をチェックしておく。

1)床または椅子に座り、左の太ももに、右足首を乗せます。左手で親指の中足骨をもち、右手で足首を固定します。左手で親指を底屈させるように軽く力をかけます。

2)大きく息を吸って腹腔内圧を高め(努力吸気モード)、息を吸いきったら、腹腔内圧を維持しながら呼吸のゼロポジションを超えて深くゆっくり息を吐ききっていきます(努力呼気モード)。それと同時に、左手で親指の中足骨を押すとともに、足首を底屈させます。

3)スネの前側の前脛骨筋がストレッチされる感覚を味わいます。3〜5呼吸、繰り返します。

4)終了後、首の動きをストレッチ前と比較します。

6)左右を入れ替えて、繰り返します。

 

以上のように、足首のバランスと首のバランスは筋共鳴によって、連動しています。首のバランスを改善するためには、足首の柔軟性を回復する必要があるように、逆に足首のバランスを回復するめには、ストレートネックなどの首の状態を改善することが必要になります。

両方を一緒にケアすることで、効率よく柔軟性や安定性を向上させていくことができます。

(第14回 了)

※(筋共鳴)は登録商標®️です。

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–Profile–

扇谷孝太郎(Kotaro Ogiya

大学院在学中に演出家竹内敏晴氏の「からだとことばのレッスン」に出会い、身体と身体表現についての探求を始める。2001年、ロルファー™の資格を取得し公務員からボディワーカーに転身。現在は恵比寿にてロルフィング®を中心に、クラニオセイクラルやソマティック・エクスペリエンス®などの個人セッションを行う。 ヨガやバレエスタジオでの定例セミナーでは、身体のメカニズムのほか、呼吸や感覚、イメージの活用を独自の視点でまとめた「動くための解剖学」を教える。その内容はダンサーやヨギなど、柔軟性と身体バランスを必要とする人々から高い支持を得ている。また「からだと息で読む朗読」講座では、朗読という表現手法をとおして「共鳴を生む身体の育て方」を探求中。

●米国The Rolf Institute認定アドバンストロルファー
●米国The Rolf Institute認定ロルフムーブメントプラクティショナー
●クラニオセイクラルプラクティショナー
●ソマティック・エクスペリエンシング®︎認定プラクティショナー
●JMET認定EFTプラクティショナー

公式Web Site (https://www.rolfing-jp.com)