ソマティックワーク入門 第八回 ロルフィング®️ 田畑浩良さん(実践編02)

| 半澤絹子

健康とウェルビーイングの一歩先を求めて−−。
今、こころとからだの健やかさの質を高める、
マインドフルネス瞑想やボディワークなどが人気を呼んでいます。
からだの感覚に注目し、
心身が心地よい状態へとフォーカスすることで、
深い気づきや静けさを得たり、
自己肯定力や自己決定力といった心身の豊かさを育んだりしていく。
これらは、
こころとからだのつながりを目指す

「ソマティックワーク」という新しいフレームワークです。

その手法は、タッチやダンス/ムーブメントなど多岐にわたり、
1人で行うワークから、ペアやグループで行うワークもあり、
自分に向くものはそれぞれ異なります。
この連載では、
これからの時代を生きる私たちにとって、知っておくべき「からだのリベラルアーツ(一般教養)」として、各ワークの賢人たちの半生とともに
「ソマティックワーク」が持つ新しい身体知を紹介し、
それらが個々の人生や健康の質をどう変化させたのかを探っていきます。

Image: iStock

リベラルアーツ(一般教養)として学ぶ

ソマティックワーク入門

−新しい身体知の世界をめぐる−

第八回 ロルフィング 田畑浩良さん
ロルフィング®︎とはなにか? (実践編02)

取材・文半澤絹子
モデル●吉田裕子
取材協力日本ソマティック心理学協会

ソマティックワークには、身体の動きによって気づきを得る「ダンス/ムーブメント」、「瞑想」や「座禅」などのスタティックなもの、または施術を受けて、身体の気づきや変化を体験する「ボディワーク」など、さまざまな種類があります。

実践編2回目の今回は、実際にライターがロルファーの田畑浩良さんからロルフィングの10シリーズを受けた体験談を順を追ってご紹介します。それぞれの段階での施術や感想なども書いていますので、より実際のロルフィングの施術や目的が伝わればと思います。

*感想についてはライター個人のものです。
*下記のセッションは「ベーシック10シリーズ」に田畑さんのオリジナルアレンジを加えたものになります。また、ロルフィングのセッション内容はロルファーやクライアントの個性により、多少異なります。

*Rolfing®、ロルフィング®、Rolf Movement®、ロルフムーブメント™、Rolfer™、Rolf Institute、The Rolf Institute of Structural Integration、およびLittle Boy Logoは Rolf Institute の商標であり、米国およびその他の国々で登録されています。

 

田畑浩良さん

 

セッション編 ベーシック10シリーズ

ロルフィングの施術は、「ベーシック10シリーズ」という全10回のセッションで構成されている。セッション1回目は「呼吸」、2回目は「足」など、各回で扱うテーマやパーツ(部位)があるのが特徴である。

一般的なマッサージなどでは筋肉をほぐして痛みの解消や血流の改善などを図るが、ロルフィングでは、結合組織や関節のつながりを統合し、最後にからだ全体を統合する。(メカニズムは理論編02を参照)。

以後、実際のセッションをもとに10シリーズを解説するが、「からだは自分(からだ)の判断で変化していく」ということを念頭に読み進めてみていただきたい。

ロルファーの手技が直接的に見えても、からだが統合に向けて変化するかどうかは、クライアント(からだ)に委ねられているようだ。

なお、各セッションは、約2週間に1回のペースで行われた。

◯セッション1〜3 表層部を解放する

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セッション1  「呼吸」のポテンシャルを引き出す

第1回目のセッションは、「深い呼吸ができること」を目指す。呼吸はからだにとって最も重要なリソース(資源)である。ゆったりとした呼吸ができると深くリラックスし、血液循環が高まり、心身が安定する。

呼吸というリソースの確保は、その後のセッションの助けにもなる。住宅の建築工事で例えるならば、セッション1は、工事の前に助っ人(呼吸)を呼ぶようなワークだ。

[からだが“じわ〜っ”と伸びていく ]

セッションルームに行くと、田畑さんが出迎えてくれた。あっさりさっぱりした雰囲気の人。しかし、ベテランロルファーにセッションを受けるということで若干緊張する。

通された部屋に入り、予約時にメールで送られてきた問診票を提出。既往歴などを質問されて、交通事故で足を打撲したことがあると答えた。呼吸がとても浅いので、ロルフィングで呼吸が深くなればうれしい。

続いて着替え。からだの動きや変化がわかりやすいように、クライアント(ライター半澤:私)は、タンクトップとスパッツ姿に。

着替えが終わると、写真撮影。セッション前に全身写真(前、後ろ、左、右)を撮影し、現在のからだの状態を確認する(以後、セッション10まで同じ)。

セッション開始。

まず、マッサージベッドに仰向けで寝て、空間との親和性を回復させるためのワーク「イールドワーク」を行う。からだが安全を感じられると、からだはメンテナンスモードに入り、変化が起こりやすくなるメリットもあるようだ。いわば、料理の「下ごしらえ」のようなもの。

具体的には、クライアントとロルファーがお互いに心地よい立ち位置を探り、身体的な信頼関係を築いていく。田畑さんがご自分の立ち位置をときどき変えて、「いまのからだの感じはどうですか?」と聞いてくるので、自分のからだの感覚を探ってみる。1回目のイールドワークでは、ロルファー(田畑さん)がクライアント(私)の右足下にいることで、からだの心地よさが感じられた。

今回のイールドワークは15分ほど行った。2回目以降は、田畑さんと私との信頼関係ができてきたからか、イールドの時間は短くなっていった。

イールドワークが終わると、腕や足などに軽く触れていただき、からだを調整してもらった。とてもソフトなタッチ。ロルフィングのマニュアルによると、骨盤から胸郭までのスペースを引き出して横隔膜に広がりを持たせるための働きかけを行うらしいが、実際は、クライアントごとにタッチの圧や働きかけ方は異なるようだ。今回は「呼吸」に働きかけるセッションだったが、私の場合、横隔膜のあるみぞおちへの直接的なタッチはなかった気がする。

セッション終了。床に立つと、足がしっかりと着地していた! 軽く触れていただけなのに、からだがしっかり変化していて驚く。味わったことのない足の着地感にひたすら感動。逆にいうと、以前は足が浮いてからだが不安定だったことになる。

動きの確認をするために、セッションルームをぐるぐる歩くと、からだがさらに調整されていく感覚があった。呼吸もしやすくなった気がする。
セッションが終わった日の夜、就寝中に、さらにからだがじわ〜っと伸びている感覚がした。

ひたすら感動した1回目だった。

セッション2 「足」という土台を整える

セッション1で呼吸というリソースを確保したら、今度は「からだの支え」を充実させる。

セッション2は、足下のバランスを整えて、骨盤の水平性を確保する導入のセッションとなる。

住宅建築で例えるなら、基礎工事に当たるワークだ。

[土台の足が安定する]

セッション2回目。今回も「イールドワーク」を行う。お互いがどの立ち位置にいるとからだが心地よいかを確認。“足の近く”に田畑さんが立っていると、からだが重くなり、“頭の上側”にいると、からだが軽くなり、手足が勝手に動いた。不思議すぎる。

足などに触れてもらうと、どこかのタイミングで鼻の詰まりがとれ、一気に鼻呼吸がしやすくなった。

セッション後、足の指が地面に吸い付くように! まるで、手の指で地面をつかんでいるような感覚だ。前回よりもさらに足が着地している。セッション2では、足部のアーチの機能を引き出すらしいが、まさに狙い通り。姿勢や動作を支える抗重力筋にも働きかけていたようだ。

セッション2を受けた1週間後に友人に会うと、「前と何か違うね。からだがシュっとしてる」と言われた。ロルフィングには美容効果もあるのかも……。

セッション3 身体の「外側の支え」を充実させる

さらに呼吸がしやすくなるように、「からだに側方へのスペース」をつくる。からだの中に立体的な広がりがあると、収納された臓器が働きやすくなり、血液循環も高まる。セッション3では、骨盤帯と肩甲骨にアプローチしながら外側の側面の支えを確立する。表層部の組織を調整していくと、その影響が深層部にも届き、表層と深層が相互に影響しあう。また、横方面への広がりも引き出される。

3回目のセッションは、住宅の外側の壁を補強するようなイメージ。また、セッション1〜3は、セッション4以降の準備にもなる。

[身長が伸びた!]

セッション開始後、すぐに熟睡。リラックスして、最後までほとんど眠っていた。

眠かったので、セッション中はからだの感覚に積極的に意識を向けなかったが、田畑さんは「それで良い。自然にしていて良いですよ」と言ってくださった。1〜2回目のセッションは緊張していたが、3回目くらいから田畑さんの存在に慣れ、安心感を感じるようになってきた。

田畑さんが、私が自分のからだに集中できるように余計な言動をせずに寄り添ってくれていることを感じる。さりげない優しさに感動。

セッションが終わって起き上がった瞬間、身長が伸びている!と驚いた。なぜなら、セッションルームを見渡す目の高さが高くなっていたからだ。セッション後に全身写真を撮ると、自分のからだのライン(とくに背中あたり)が広がっていた。セッション3のワークは、結果的に、骨盤の水平性を保つ腰方形筋のバランスが改善されたり、肩甲骨が外側に広がったりすることが多いようだ。

 

◯セッション4〜7 からだの深層部に広がりをもたらす

セッション4  「骨盤」という土台を整える

セッション4〜7は、からだの深層部の結合組織に働きかける。

セッション4は、内臓などを支える「骨盤底」のバランスと、骨盤底と坐骨から大腿骨に伸びる「内転筋群」のバランスに働きかける。前回のセッションでは、「足」という土台を作ったが、今度はからだの上部にある「骨盤」という土台を安定させる。セッション4は、住宅の柱を太くするようなイメージだ。

骨盤が傾いたり、骨盤底が縮んだりするといった問題があると、歩きにくくなる他、月経痛などの婦人科系のトラブルを起こしやすくなる。

[体幹部に「柱」ができる!]

セッションの途中、足や手にそっと触れられていると、こめかみがジンジンしてきた。

何をされているかよく分からないが、とにかく眠くなる。以後のセッションもよく寝た。

セッションの途中、お腹付近の臓器が上方に上がった感じがして、骨盤の中のスペースがふわ〜っと広がっていった。骨盤底の緊張や周辺筋肉の緊張が解かれて、骨盤の左右差が解消されたみたいだ。

また、呼吸が深くなり、体幹部に「高さ40センチ、幅20センチくらいの太い柱」ができた感じ。からだに「Palintonicity(2方向の広がり)」ができたのかもしれない。

セッションが終わり、帰り道に駅に向かって歩いていると、頭がクリアになってきて、全身が爽快感に包まれた。働きかけられた箇所以外もからだが良いほうに変化している。これが「Wholisum(全体性)」か! からだが連動して「全体」が変わってきている! 翌日になると、目線がさらに高くなった感じがした。また身長が伸びたかもしれない。

足がまっすぐ伸びていて、「セッション前は膝が曲がりがちだったんだな」と自覚した。

セッション5 身体の「内側(骨盤内)」のスペースを広げる

前回は骨盤の土台を安定させた。セッション5では、骨盤内のスペースを広げていく。骨盤内のスペースを広げることで、骨盤内の内臓の位置が正しい位置におさまり、内臓の上にある横隔膜なども伸びて、さらに呼吸しやすくなる。住宅の空間を広げていくようなイメージ。

[ロルフィングに主体的に取り組み始める]

セッションの内容をすっかり忘れてしまった(笑)。ロルフィングのマニュアルによると、5回目のセッションでは、内臓を支える大腰筋の緊張が解かれると、骨盤内から胸郭へとスペースを広がるようだ。骨盤内のスペースが前回の段階ですでに広がっていたため、セッションの印象が薄かったのかもと推測。

ただ、4回目まではセッションに対して受け身だったけれど、今回くらいから「ロルフィングというワークに主体的に参加しよう」と思うようになってきた(マッサージベッドに寝続けるのは変わらないが)。田畑さんの存在にからだの底から安心し、さまざまな変化を実感して、「私のからだはもっと良くなることができるんだ!」という気持ちが芽生えはじめた。ロルフィングが10回という長い期間を1シリーズとして設定しているのは、クライアントのからだだけでなく、意識の変化も根本的な健康に必要だからなのかな、といろいろ考える。

さらにこの頃から、歩くだけで楽しくなってきた。1歩1歩地面を踏みしめるだけで、充実感を感じる。自分のからだを感じることがとても心地よい。急がなくなり、のんびり行動するようになった。

セッション6  背中のしなやかな動きを取り戻す

現代人は、しなやかな背中を失っていることがある。スマホの使いすぎなどで姿勢が悪くなり背中に適切なカーブがなくなると、からだは緊張して肩凝りや腰痛を引き起こす。セッション6では、仙腸関節から脊柱への働きかけや、背面の筋膜の緊張がときほぐされるようにワークする。背中に適度なカーブがもたらされると、ほっとした感覚を味わえるだろう。

[胸がなだらかになってやすらぐ]

セッション前に姿勢をチェックすると、右足がぐらついていた。左側に重心を移動しづらい。からだが変化している途中だから、左右差が生じているのかな?

セッション開始。イールドワークを行う。田畑さんがマッサージベッドの左側に立つと、私はからだに重い圧を感じた。「お互いの心地よい立ち位置」が、その時々で変わるのが興味深い。

続いて左半身の足や手のあたりを調整してもらう。ロルフィングのマニュアルでは、脚や腕の筋膜に働きかけて、からだの枝葉から脊柱までのつながりを引き出すらしい。おかげでセッション後半に入ると、呼吸が深く入るようになった。

セッションが終わると、鎖骨の下あたりがなだらかになり、心が穏やかになっていた。私の場合は、「背中の緊張」の解放よりも、「胸部の緊張」が解かれた安心感を感じた。

また、これまでのセッションと同様に、背が上にスーッと伸びた。ロルフィングを始めてから身長がぐんぐん伸びている(体感)。そして、両足の後ろ側の安定感が増しているのも、強く感じた。からだの土台が安定してきたら、いよいよからだに芽が出て、枝葉が伸びてきたようだ。樹木みたいに。

セッション7 首の緊張を解き、頭が負荷なくからだに乗るのを助ける

セッション1〜6で、脚部・体幹部の構造を整えたら、頭をからだにのせていく。ストレートネックによって頭の位置がずれている人は少なくない。首と頭との適切なつながりを取り戻すことで、首の緊張を解き、頭をからだに軽く預けられるように働きかける。

[首のぐらつきが改善し、1本の軸が通る]

セッション7で「頭と首を扱う」と知らなかったのに、なぜか約1週間前から、首のグラグラが気になり始めた。「首から下の部位が安定してきたから、首にも意識を向けられるようになったんだ!」と原稿を書きながら気づいた。「Support(土台)」が充実するとからだは変化しやすくなるということを、身をもって知る。

セッション開始。左腕に触れられると、左半身がフラットに広がった。続いて、頭部の蝶形骨あたりに触れてもらうと、頭が左右に広がった感じがした。

それから、口と鼻に働きかけるワークを行う。頸部の慢性的な緊張を軽減する目的のようだ。右の下顎、左の上顎、右の上顎、左の下顎に優しく触れられ、その部分を意識すると顎がゆるんで、横隔膜のあたりにスペースができた。

また、「鼻とのど、肺までのつながりを意識してください」と田畑さんに言われてつながりを意識すると、鼻がスーッと通っていった。「声かけによってからだを意識できると、からだの反応が進む」と田畑さんの取材でお聞きしたが、実際にそうなった。

続いて、肘が温かくなり、次第に手先までその温かさが伝わってきた。血流が良くなった感じ。

呼吸をすると、後頭部から下半身に向かって「軸」が通ってきたのを感じる。足の裏の感覚が強くなり、グラウンディング力もさらに出てきた。頭もスッキリして、首が良い感じに固定されている。「統合」まではいかないかもしれないが、からだに「1つのつながり」ができた感覚がした。

セッションの後には、「Hさんは小学校の頃に椅子から落ちて顎を5針縫ったときのケガが、身体の構造に悪影響を及ぼしていた可能性がありますね」と、田畑さんが指摘してくれた。新たな気づき。

 

◯セッション8〜10 統合する

Image: iStock

セッション8・9 上半身あるいは下半身のつながりと統合

セッション1〜7では、足〜頭までからだをひと通り扱ってきた。

セッション8と9は、改めてからだの土台を見直し、さらに「支えの充実がはかれそうな部位(人により異なる)」に働きかけながら、全体との連携を引き出す。7回までで扱いきれなかった部位を取り上げて、からだが全体として機能するようにワークする。

[からだの中がクリアになる]

イールドワーク。今回は、マッサージベッドの右後ろに立ってもらうと「涼しく心地よい感じ」がした。

うつぶせになり、左足をワーク。左足にそっと触れられていると、なぜか右の目玉をくすぐられているような刺激を感じた。「からだの変化は人ぞれぞれ」と、取材で聞いたとおりのことがまたしても起こった。

足を触れられ続けていると、背骨の感覚が強くなり、背中がアメーバのようにじわじわ〜っと横に広がっていった。筋膜や組織がしかるべきところに移動していった感じ。

続いて、骨盤底からまっすぐ「軸」ができて、上に上がってくるような感覚が出てきた。

セッション後、何かが変わった(言語化できない)。よく分からないが、無意識的な変化のように感じる。セッションルームで歩行チェックをしているうちに、全身のきしみが消えていった。錆びついた車がオイルを塗られて潤いを取り戻し、しなやかに走り出したような感じがする。また、まぶたが2倍くらい大きく開いている。プールで泳いで、からだの濁りが抜けたような心地よさだ。セッションが進むにつれて、からだの中の粒子のようなもの(?)が繊細になり、からだの中がクリアになっていく感覚が強まるようになってきた。

[感情の揺れが起こる]

セッション9。手や足を調整してもらっているうちに、からだの内側が動く感覚がした。田畑さんに「今、肋骨の感じはどうですか?」と聞かれて、自分のからだを感じてみると、脇腹のあたりが伸びてきて、目がぱっちり開いていった。続いて頭に触れられると、8回目のセッションと同じく、背中や腕の表面がアメーバのようにじわじわ伸びていった。面白い。

また、「頭の中心にある骨を、頭頂に向かって背伸びしてください」と田畑さんに言われて、その動きを何回かくり返した。

セッションが終わると胸が大きく広がり、縮こまったからだがゆるんでラクになっていた。足のアーチがしっかりして、身長がまた伸びたような感覚も。

この頃、セッション9からセッション10の間に、感情が強く揺れるような出来事があった。「ロルフィングで都合のよい変化ばかり起こるわけではない。新しい自分を手に入れるには、今までのパターン(癖)を手放す覚悟が必要」とおっしゃっていた田畑さんの言葉を思い出す。

セッション10 全身の統合

全身を統合していく。クライアントに合わせてアプローチする箇所は変わる。ベーシック10シリーズ終了後もからだが変化していくように、必要なことを行う。(* 人によっては、ロルフムーブメントやアドバンストシリーズに移行する場合もある)

[からだの声が聴こえる]

最後のセッション。田畑さんに声かけをしていただきながら、足の五指を曲げる・伸ばす動きを行う。そういえば、足指が「浮き指」だったのに、10シリーズが終わる今、指の形がすっかり変わって指が床につくようになっていた。

セッション開始から30分くらい経った頃、右の足指を動かすうちに、ふと「自分のからだに責任をもてる自分になりたい」という気持ちが勝手に「浮かんで」きた。出来過ぎだけど、なぜだか自然とわいてきた。からだの声をずいぶん無視して生きてきたけれど、自分のからだがやっと声をあげてくれたんだな、と涙がこぼれた。

さらにしばらくすると、足先から頭までスーッと「1本の軸」が通った。頭の中がクリアになり、息が深くなる。「これが統合なのかな?」。分からないけれど、足の屈伸運動が終わると、両足がとても軽くなっていた。

続いて、頭に触れてもらうと背中がぞわぞわし始め、その感覚が全身に広がっていった。「何かとても大切なことが起こっている」という感覚がある。全身に「何か」が広がっていき、からだが均質化していく感覚。「ぞわぞわ感」はしばらく続いていたが、やがて鎮まり、眠りに落ちそうになったところで田畑さんが小さく声をかけてくれて、全てのセッションが終わったことを理解した。ゆっくりと起き上がり、「ああ、全て終わったんだ」と感じた。舞台の幕が静かに閉じたような、そんなセッションの「終結(Closure)」だった。

セッションが終わると、目線が自然に下方に落ち、とても静かな気持ちになっていた。今までは、目線が上に上がっていたけれど、からだの感覚を無視して、ムリに「良い姿勢」をとろうとしていたんだなあ……と気づいた。

後日、時折からだが伸びるような感覚がしたが、約半年経った現在は落ち着いている。

 

◯まとめ 心をオープンにして新しい変化を招き入れる

ライターがロルフィングの「ベーシック10シリーズ」を体験したことによる変化は、次のものである。

  1. 浮き指がなくなった。 
  2. 格段に呼吸しやすくなった。
  3. 歩いているだけで「楽しい」と感じられるようになった。 
  4. 身長が伸びて、「シュッとした」と何人かから言われた。
  5. 生理周期が安定した。 
  6. 肩凝りや腰痛があっても、ひと晩寝れば回復するようになった。 
  7. 気持ちが安定しやすくなった。
  8. 腰と足に負担をかけないように、机と椅子を買い直した。 
  9. からだの感覚に敏感になった。
  10. 自分の肉体にとどまり、「いまここにいる」という感覚を自覚できるようになった。

 

ベーシック10シリーズを受けて、「からだの土台」が大事であることを身をもって知った。

気持ちが落ち込むことがあっても、「自分のからだの中に自分がちゃんと存在している」という感覚を思い出すと、グラウンディングして心身が自然と落ち着いていく。からだのAdaptability(適応性)が上がったのかもしれないとも思う。

「自分」が「ピラミッド」であると例えたら、ピラミッドのいちばん下の土台が広くなり、層が厚くなったようである

また、「ロルフィングは1回受けるだけでは分かりません」と、セッションを受ける前に田畑さんから言われていたが、全くもってそのとおりだった。10回継続したからこその気づきや変化が数えきれないほどある。

「からだが安定すると、心も安定する」「からだのパーツは互いに影響しあって全身を構成している」「クライアントと施術者の信頼関係ができると変化が大きくなる」等々……。

さまざまな書籍で語られる話だが、自分自身のからだで体験できたのは非常に大きな実りだった。ロルフィングの「10シリーズ」に限らず、「ソマティックワーク」はゆっくりと自分を変化させていくワークがとても多い。これからロルフィングやソマティックワークを体験される方は、自分を長い目で育てるつもりでワークを楽しんでほしい。

そして今回、私が得たいちばんの成果は、「生きているだけで幸せ」という安心感を感じられるようになったことだ。頭で思うのではなく、からだでしっかりと。この安心感は10セッションの後半くらいから安定的に湧いてくるようになった。「理由なく、生きている自分が心地よい」。もちろん毎日心地よくいられているわけではないが、これが現在の私のいちばんのリソース(資源)になっている。

このような変化がもたらされたのは、自分では触れられない「からだの無意識の領域」に、ロルファー(田畑さん)が触れてくれたからではないか?と、原稿を書いていて思う。記憶を掘り起こすと、セッション中、筋肉や筋膜だけではない「何か」が変わっていく瞬間が何回かあった。それは、“人間とは、筋膜も組織もこころも、すべてを含んだ存在である”という「Wholisum(全体性)」のもとに、田畑さんが私を扱ってくれたおかげではないか。相手に対してアプローチできる部分が、治療などとは異なる気もする。

ロルフィングによって起こる変化は千差万別なので、私と同じ変化が起こるわけではないけれど、肩凝りや腰痛、歩きづらさなどに悩む方だけでなく、「自分を変えたい」という方にも試す価値のあるワークだとアナウンスしたい。

以上は、非常に主観的な文章であるが、連載テーマの「ソマティックワーク」は、客観性だけでなく、主観も大事にすることを目的としている。この記事は、1つの参考として捉えていただければうれしく思う。

最後に、田畑さんからのメッセージをお伝えしてこの記事を終えたい。

「ロルフィングを生み出したアイダ・ロルフ博士は、次の言葉を遺しています。
“「身体の構造」で「機能」が決まる。構造は人生の中でいつでも変えることができる”
実際に、私のクライアントさんには、90歳近くになってからロルフィングを受けて、今も登山を楽しんでいる方がいらっしゃいます。
心身に起こりうる変化にオープンになれば、何歳になっても、自分の可能性を広げることができます。これまでの自分の枠組みやパターンを手放して、新しい自分になる意思をもてれば、ロルフィングの恩恵は十分に享受できるでしょう」

誰のからだも、多様で大きな可能性を持っている。

ロルフィングはきっと、進化した自分に変わるための扉となるはずだ。

(第八回 了)


ロルフィングおすすめ書籍

『Moving into Alignment』Jennifer Hayes(翻訳書はなし)
★ロルフィング10シリーズの流れに沿ったエクササイズが豊富な写真と共に紹介されています。各セッションごとのゴールや狙いがうまくまとめられていて、10シリーズの体験を見直したり、理解を深める助けになるでしょう。

感じる力でからだが変わる: 新しい姿勢のルールメアリー・ボンド著、 椎名 亜希子訳 春秋社 刊
★長年Rolf InstituteのRolf Movement®部門の教員を務めてきたメアリーボンド女史が、身体にどういう意識や感覚を持ったらよいのか、について身体への新しい捉え方を紹介しています。Rolfingを受けた方や身体を資本としているパフォーマーなどには、身体探究の手助けになるはずです。

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–Profile–

田畑浩良 (Hiroyoshi Tahata

認定アドバンストロルファー( Certified Advanced Rolfer)、Rolf Institute教員(ムーブメント部門)(Rolf Movement Faculty member)。株式会社林原生物化学研究所(現:(株)林原)に研究員として勤務期間中にロルフィングのセッションを受け、交通事故による後遺症が軽減し、ロルフィングの道へ。1999年、日本人初のRolf Movementプラクティショナーとなる。ロルフィングに組み込むことができる新しい技法「 Yielding EMbodiment®」を開発する他、「身がまま整体」の片山洋次郎氏と共同で、空間身体学も研究。空間と身体との関係性を活かした繊細で安定的なセッションを提供する。大の猫好き。https://www.rolfinger.com/

*Rolfing®、ロルフィング®、Rolf Movement®、ロルフムーブメント™、Rolfer™、Rolf Institute、The Rolf Institute of Structural Integration、およびLittle Boy Logoは Rolf Institute の商標であり、米国およびその他の国々で登録されています。

半澤絹子(Hanzawa Kinuko
フリーライター、編集者。各種ボディワークやセラピーを取材・体験し、「からだといのちの可能性」、「自然と人間とのつながり」に関心を持つ。「ソマティック・リソース・ラボ(https://www.somaticworld.org/)」運営メンバーの1人として、ソマティックに関する取材や普及活動も行う。