背中を反らせば体が変わる
超!後屈入門
第7回 頸椎を下から伸展させる
文●今村泰丈

背骨の最上部、頸椎の使い方が背骨コントロールの要!
前回は、胸椎の動きを引き出すためのポイント「腕の使い方」について、具体的な練習方法をシェアさせて頂きました。
今回は、その胸椎の上に位置する「頸椎」についてまとめてみました。
頸椎はご存知の通り、頭という大切なパーツを載せています。
頭部は成人で体重の約10%ほどあり、私たちが普段体感している以上に重量があります。
そんな重量を取り扱う場所ですので、頸椎には常に体や動き全体とのバランスを調整するために、多くのセンサーが搭載されています。
頸椎の動きが悪いと頭蓋骨との繋ぎ目である後頭部の筋肉が緊張し、頭痛や肩こり、首こりの原因となります。
頸椎にも前回の腰椎と同じように、やはり正しい動きの順序があり、その仕組みに沿った動作を練習することで、首回りの不調は改善し、後屈動作がより深まっていきます。
後屈を正しく行えるということは、身体全体を適切に動かせているという指標になりますので、後屈が深まるごとに身体の不調が取り除かれていくのが実感できると思います。
前置きが長くなりましたが、さっそく頸椎について深掘りしていきましょう!
頸椎も動く順序が決まっている!
前回の連載で、背骨は下から上に波及していくように動かすのが合理的な動きであるというお話をしました。
頸椎も背骨という括りのなかの一つですので、やはり上に向かって動かしていくのが正解となります。
頸椎は全部で7個の骨で形成され、一番上の第一頸椎はアトラス(Atlas)と呼ばれています。

これはギリシャ神話に登場する神・アトラスに由来していると言われています。アトラスは大きな体で天空を担いでいると言われており、そのイメージと重い頭蓋骨を支える骨と重ねて名付けられたわけです。

「支えている骨」と聞くと「どっしり構えて動かない」イメージが湧くかもしれません。ですが実際はかなり可動性が高く、寝ている状態で触ってみると容易に動くことが確認できます。
意識できていない関節を動かすとバランスは整う
実はヒトは、動かしやすい関節を動かしすぎてしまう一方で、相対的に普段意識して動かせていない関節は動かすことが苦手です。
例えば「関節」と聞くと、肩や首、膝、肘を思い浮かべる方が多いでしょう。ですが人体は、約260個の骨によって形成されていて、それにともない関節の数も無数に存在しています。そうした関節の中でも自由度が高く使いやすいのが、先ほど挙げた肩関節や膝関節、首や腰を構成する関節になります。
これらの関節は、意識しやすく使いやすい反面、過剰なストレスのかかる動作や姿勢が負担になっているケースが多く、痛みの症状を訴えることの多い部位でもあります。
これを解消するためには、こうした働きすぎの関節の仕事を減らす必要があるわけです。
そのためには「普段意識できていない関節を動かす」ことが有効です。
これが頸椎の場合は下位頸椎にあたります。
実は首の骨は頭の付け根が一番可動性が高く、下にいくほど可動性が低い構造となっています。
ですから一番下の第7頸椎は胸椎との移行部でもあり、ほぼ動かすことのできない方が多く見受けられます。
特に頭が前方に突出してしまう猫背のような姿勢の方に顕著で、頭部を支えるために第7頸椎周囲を固めてロックする代わりに、第一頸椎を過伸展して前を向く姿勢をとります。
この姿勢では、背骨のエロンゲーション(伸展)が生じないため 〔前回参照〕 骨に負担をかけてしまい、関節の痛みや変形を引き起こす原因となります。 下から上へ、骨を正しく動かせることが、正しい姿勢と健康に繋がるのです。
それでは実際に首を動かしてみましょう!
頸椎は下から上へ動かす
すでに紹介した通り、頸椎の動きも下から上に波及する動きが合理的に動く順序になります。
ところが多くの場合、頸椎1番(一番上の首の骨)から動かす習慣がついているため、結果として首を圧迫しています。
図1は第一頸椎から先に伸展してしまった場合です。これでは上から頸椎全体を圧迫した状態で動くこととなります。
ブリッジや後屈動作で頭が重くなる、クラクラするといった症状を訴える方がいらっしゃいますが、その原因は第一頸椎から動かしている場合があります。
一方、図2は下から順々に動かした状態です。首の長さを保ち、頭部の重さを利用したまま後ろに垂れていくような反りが可能となります。
目指すのはこの図2のような反りです。
首をしっかり下から動かすワーク
それでは、首の動きを改善するワークをご紹介しましょう。
①自然体で立つ(座っていてもOK)。図1
②アゴを引いたまま、天井を見ることで頸椎を伸展する(アゴと首の間にピンポン球を挟んだ状態をキープするイメージ)。そのまま30秒キープ。図2
③十分に伸展したら、最後にアゴを上げて天井〜後方を見る。呼吸を止めないように注意しましょう。60秒キープ。図3
【NG】順序を間違えると、見た目としても首が詰まっている。NG写真
④最後に首の可動域、肩の動きを確認してみましょう。
いずれも目線で伸展をリードするのがポイントです。そうすることで無駄な緊張をかけずに首を反らすことができます。
ワーク後は、
- 動きやすくなる
- 視界が明るくなる
- 肩周りが軽くなる
などの変化が出ていると思います。
パソコンなどの画面を長時間見続けた後に行うとスッキリするので、ぜひちょっとしたタイミングで試してみてください。
首は非常にデリケート!丁寧にケアをしましょう
いかがだったでしょうか? カラダは意識がほんの少しの変えるだけで、動きは大きく変化します。そして動きの変化が辛い痛みや長年のコリを解消してくれることがあります。
特に首は頭部を支えてくれているのはもちろん、脳に血流を送る上で大切な血管が走っている非常に重要なパーツです。
首のコンディションは体調に大きく左右しますので、定期的にワークを行う事で正しい動きを習慣づけましょう。
(第7回 了)
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