漢方で免疫力アップ! コロナ・感染症対策 第五回

| 平地治美

2020年初頭から現在(2020年12月)に到るまで、世界的災厄としてその名を聞かない日はないコロナウイルス(COVID-19)。

ようやく待望のワクチンが登場する一方で、そもそも論としてコロナが発症するかしないかに大きく関わる免疫力に注目が集まっています。

そこで本連載では、コ2で「やさしい漢方入門・腹診」を連載された平地治美先生に、漢方からできるコロナ・感染症対策をご紹介いただきます。

やさしい漢方入門 

漢方で免疫力アップ! コロナ・感染症対策

第五回 「漢方版・引き寄せの法則「同気相求(どうきそうきゅう)」

平地治美

 

Image: iStock

 

新型コロナウィルスは、変異型も登場し、ますます混迷を極めているようです。

このところの報道を見ておいると、

敵の正体を探るのに躍起になり 守りがおろそかになっているのではないか?

という印象です。

何型のウィルスがやってこようとも、それを受け入れない体作りをしておくというのが漢方の考え方の基本です

今回は、外からやってくるウィルスという「邪」を引き寄せて受け入れやすくしてしまう体内の状態について解説させていただきます

 

病気の原因はこの3つ

第一回の連載で、病気になるのは、外因、内因、不内外因があるということを解説しました。

復習のためにもう一度振り返ってみましょう。

●外因(気候、温湿度の変動)

六気……風 熱 暑 湿 燥 寒
癘気(れいき:ウィルスや細菌など)

●内因(感情)

怒 喜 憂 思 悲 驚 恐

●不内外因(外因、内因以外の原因)

外因、内因以外の原因:飲食不節、房事不節、寝不足、虫刺され、など

何らかの原因(内因・外因・不内外因)により体の表面をまもる「衛気(えき)」の働きが弱くなった時に、その綻びから「邪」が侵入して感染するわけです。

 

「同気」とは体のなかに生じた「気」

六気は、気候や温度など外界環境ですが、何らかの原因により、体内に六気を生じることがあります。

この、体内に生じた六気を自然界の六気に対して「同気」といいます

同気には、

  • 内風
  • 内熱
  • 内湿
  • 内寒
  • 内燥

などがあります。

一例として、体の中に風を生じる「内風」について説明しましょう。

怒るのは「内風」の原因?

内風が生じる原因はいろいろありますが、その一つに怒りやストレスによるものがあります。

「 怒りに震える」と言う言葉がありますが、怒って本当にブルブルと震えている人がいますね。

これを漢方的に説明すると、五行の表の「木」の列を縦に見ながら考えると理解しやすいです。

五季 土用
五気 湿
五臓
五腑 小腸 大腸 膀胱
五官
五志 悲(憂)
五色
五味

 

五行説は自然界の 木火土金水に分類する考え方です。私たち人間も 自然界の一部ですから、当然この五行の法則に則って生きています。

表を見ると「木」は季節では春、突発的な「風」が生じやすく、人体においては肝や胆(肝臓や胆嚢そのものだけではありません)です。

怒りやストレスは木に属し、度が過ぎると 同じ木の臓腑 である肝や胆を高ぶらせ、その機能を異常に亢進させます

そして結果として体内に風を生じさせます。この体内に 発生した風を「内風」といいます

「内風」は自然界の春の竜巻 突風のように体の上部に勢い良く舞い上がります。

その結果、 震えや痙攣などを引き起こします。

「怒りにより震える」という言葉は文字通りそのような状態を 表しています。

もっと大きな風邪だと、脳血管障害や麻痺等の深刻な症状を引き起こすこともあります。

これをまとめると、

  1. 怒りやストレス(木に属する五志)
  2. 木の臓である「肝」を攻撃
  3. 「肝」が失調
  4. 内風を生じる
  5. 生じた内風が体内で舞い上がる
  6. 震え、痙攣など様々な風による症状を発症

となります。

そして、ここからが今回のコロナをはじめとする感染病に関係するのですが、 体内に風を生じると、外からやってきた風とも反応しやすくなります

同様に、内熱、内湿、内寒などが体内に生じていると、外界からやって来た同じ性質を持つ病原因子と親和性を持ち反応し病証を形成することになります。

このような状態を、同気相求(どうきそうきゅう)、あるいは和合、引動といいます。

体内にあるものを引き寄せてしまうわけです。

お金や良縁を引き寄せるのであれば嬉しいですが、 病気の原因を引き寄せてしまうのでは困りますよね。

ちなみに、新型コロナウィルスの別称は「寒湿疫」ですので内寒や内湿を体内に持っていると反応しやすくなると考えられます

また、途中から温病のような経過を辿り熱中症のような症状が出ることも多いことから、内熱も要注意と言えます。

Image: iStock

 

原因が同じでも症状が違うわけ

「内湿」は不内外因の飲食不節や水分のとり過ぎから生じることも多いです。

コロナ禍でテレワークになり通勤がなくなったり外出を自粛して家にいる時間が増えると、ついいつもよりお茶やお菓子に手が伸びる機会が増えてしまうようです。

通勤がなくなるという運動不足の状態なのに食べる量が同じ、または増加し、さらにストレス解消で甘い物を食べ過ぎている人は多いように感じます。

食べ過ぎや運動不足は「土」の働きを阻害します。「土」の臓腑である脾胃が失調し胃腸の働きが悪くなった 結果として「内湿」を生じます

また、 報道などを見て恐れるあまり腎が弱れば生命力が低下します。 結果として「内寒」を生じます

このように体内に自分で引き寄せてしまっているものも多いのではないでしょうか

同じウィルスに罹患しても、 傷寒の経過をたどる人と温病の経過をたどるケースがあります。これも同気相求の考え方で説明ができます

普段から内寒があれば傷寒、内熱があれば温病の経過を たどりやすいと考えられます。

舌の状態で言うと、 白っぽい舌は内寒があり傷寒の経過を、赤い舌やひび割れがある舌は内熱があり温病の経過をたどりやすいと言えます。

例えば風邪 でも、まず寒気がしてゾクゾクし熱が出る人と、元から高熱が出て 喉が痛くなり晴れる人がいます。

内寒があれば前者のような 傷寒の経緯を辿りやすく、内熱があれば温病 の経緯をたどりやすくなります。

かつてスペイン風が流行(1918~1919)した時、森道伯先生は患者さんを3パターンに分け 処方をしました

  • 胃腸型には香蘇散加茯苓白朮半夏
  • 肺炎型には小青竜湯加杏仁石膏
  • 脳症型には升麻葛根湯加白芷川芎細辛

同じスペイン風でも、患者さんによって出る症状や、病気の経過が異なることを、 漢方の天才であった森先生は見抜いておられたのでしょう。

胃腸型に用いた香蘇散の加減法は感冒の代表処方です。

肺炎型には傷寒論に記載されている小青竜湯の加減方を使っています。

脳症型の升麻葛根湯は 葛根湯とは全く異なる処方で、冷やして熱平 病邪を発散させる温病に用いることができる処方です。

(第五回 了)


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–Profile–

平池治美先生

平地治美(Harumi Hiraji

1970年生まれ。明治薬科大学卒業後、漢方薬局での勤務を経て東洋鍼灸専門学校へ入学し鍼灸を学ぶ。漢方薬を寺師睦宗氏、岡山誠一氏、大友一夫氏、鍼灸を石原克己氏に師事。約20年漢方臨床に携わる。和光治療院・漢方薬局代表。千葉大学医学部医学院非常勤講師、日本伝統鍼灸学会学術理事。漢方三考塾、朝日カルチャーセンター新宿、津田沼カルチャーセンターなどで講師として漢方講座を担当。2015年1月『やさしい漢方の本・舌診入門 舌を見る、動かす、食べるで健康になる! 』(日貿出版社)出版。 

著書

『やさしい漢方の本・舌診入門 舌を見る、動かす、食べるで 健康になる(日貿出版社)』
、『げきポカ』(ダイヤモンド社)

個人ブログ「平地治美の漢方ブログ
Web Site:和光漢方薬局