連載 セルフタッチング入門 第8回 基本のセルフケアその①〜グラウンディング&センタリング

| 中川れい子

 第8回からは、いよいよセルフタッチングの実践編。セルフタッチングの実際を動画付きでお伝えしていきます。
まずは「自分の内側のリソースとつながる」ために、グラウンディング&センタリングを感じていきます。

 中川さんがリードする、ワーク動画もあわせて視聴ください。

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わたしに触れる、コロナ時代のタッチケア

セルフタッチング入門

 

第8回 基本のセルフケアその①〜グラウンディング&センタリング

中川れい子

 

触れる/触れられている「わたし」に気づく

これまでの連載で、セルフタッチングについてさまざまな角度からお話を紡いできました。
「自分で自分のからだに触れるだけで、こんなに語ることがあるの?」と、驚かれたかもしれません。でも、からだもわたし自身そのものも、この世のあらゆるものとつながり合う深淵で広大な存在ですから、セルフタッチングをめぐる旅がどこまでも広がりを見せるのはごく自然な流れなのだと、わたしは思います。

いよいよ、セルフタッチングの実践編です(やっと辿り着きました・笑)。
まず手で全身に触れる前に「自分の内側のリソース(源泉)とつながる」ことをしていきます。

わたしたちは日頃、“手で触れる/触れられる”だけでなく、常にあらゆるものと触れ合っています。それは、以下のようなことです。

  • 空間(空気)に触れる/触れられる →第8回で解説
  • 大地(地面)に触れる/触れられる →第8回で解説
  • 呼吸に触れる/触れられる →第9回で解説

気づいていましたか? このように私たちのからだは、いつも何かに触れ/触れられています。セルフタッチングでは、ふだんは忘れがちなこの感覚に、あらためて気づくことから始めるのです。

この「当たり前に気づく」ことによる、癒やしの力ははかりしれません。自分自身の内側のリソースに気づき、つながることで、「やすらぎ」や「幸福感(well-being)」が育まれていくのです。

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これから、タッチケアの講座などでいつもお伝えしている「セルフタッチングの手順(ガイド)」を紹介します。ワーク動画も最後に入れましたので、参考になさってください。

 

「空間(空気)に触れる/触れられる」とは?

では「空気(空間)に触れる/触れられる」とは、どういうことなのでしょう。

これはセルフタッチングを行うにあたって、安全・安心な空間を皮膚感覚やからだ全体で感じることを意味します。感じやすくするためのポイントも紹介していきましょう。

感じるpoint①安全・安心な空間を確保する

自分の家のリビングや自室など、なるべく寛ぐことができる空間(場)を選んでみてください。そこに居ると、自分は安全だと感じられるでしょうか? 心地よく居られる場所でしょうか? 自分自身のからだと対話してみてください。

その空間は「パーソナル・スペース」とも呼ばれ、誰にもじゃまされずに「あなたがあなたでいられる空間」です。
そして両腕を、前後左右、上下と動かしてみて、自分の動きを遮るものがなく、自由に動けるかを確認してみましょう。部屋全体が散らかっていてもかまいません。あなたを中心にして半径1メートル弱、腕が伸ばせるぐらいの範囲のスペースがあれば十分。あなたが「安全」で「自由」であることを確かめてみましょう。

感じるpoint②心地よい空間を用意する

心地よく座れる椅子を用意します。または地べたに直接座るなら、座り心地のいいクッションや座布団などを用意しましょう。服も締めつけるものではなく、感触の良いものがおすすめです。
空間を調えるために、音楽や香りのサポートを受けるのもよいでしょう。心が落ち着くようなゆったりとした音楽や、あなたの好きな香り、そして部屋に満ちる光と、神経が安らぐ空間であるのがベターです。

視覚・聴覚・嗅覚・触覚を通じて、なるべく穏やかで優しい空間を自分自身に用意してあげましょう。あなたの五感と神経系を通して、あなたの無意識は周囲が安全であるかどうかを感知しているのです。

感じるpoint③からだの周りにある空気の層に気づく

あなたのからだの周りにある空気の層が、あなたのからだの表面に触れていることを感じてみましょう(着衣の状態でかまいません)。繊細な感覚なので、何も感じられなくても大丈夫。からだの前側は? 後ろ側、右側、左側、頭の上は? …とただ、感じようとするだけでも十分です。
からだ周辺の空気の層(空間)とは、あなたを柔らかに包みこむ、安全な容器のようなもの。その中でゆっくりと“今・ここ”にいる自分自身を感じていきましょう。
この安全な空間で、あなたをより“今・ここ”につなげるために、次は足の裏の感覚、そして呼吸に意識を向けていきます。

 

「大地(地面)に触れる/触れられる」とは?

わたしがセルフタッチングをガイドするとき、一番はじめに意識を向けてもらう部位は、手の平ではなくて足の裏です。私たちのからだの中で、もっとも頻繁にどこかと触れているのは、足の裏だからです。

感覚器官の多くは頭部に集まっているので、通常、意識のほとんどは、上半身、特に頭部に集中しやすいもの。特にオンラインでのやりとりが増えた今、画面に映し出される上半身だけのコミュニケーションに偏ってしまい、私たちは頭部から一番離れた脚(足)の存在を忘れがちです。足の裏の感覚を意識してもしていなくても、大地(地面)はいつも私たちのからだを支えてくれているのですが、時々、そのことに意識的になってみることをおすすめします。

そして、「大地(地面)に触れる/触れられる」ことに気づいてみましょう。
大地は、あなたが生まれる以前のずっと太古の昔からそこにあり、あなたのからだの重みは常に地球の中心とつながり、確実にずっとあなたを支えてくれています。生きるすべての存在は、地球の中心という共通のふるさと(源泉)のサポートを受け、つながり合っているといえるのです。

これは大地を、そして地球を信頼するということです。地球からのサポートは、誰にでもどんな時も、平等に与えられているもの。それをしっかりと受け取ることができるでしょう。

意識を下半身や足の裏に向けることで、頭部に集中していたエネルギーはごく自然と、下半身や全身に流れ落ちていきます。
仕事が忙しくて、頭の中であれこれ考えてばかりだったり、心配事が多く不安だったりするとき、まず足の裏が地面に触れている感覚を味わうことを、おすすめします。それだけで“今・ここ”にあるからだの感覚が戻ってきて、頭がスッキリするのを感じられるかもしれませんよ。

このあと「グラウンディング(Grounding)」「センタリング(Centering)」を通じて、大地に触れる/触れられる方法をお伝えします。

 

「グラウンディング(Grounding)」の実際

いつでも大地(地面)に支えられていることを思い出す。これを「グラウンディング(Grounding)」といいます。
Groundとは、大地や地面のことですから、グラウンディングとは「大地とつながること」を意味します。でもしっかり立つことに一生懸命になりすぎると、足首や膝を固めてしまいがちです。すると膝がピンと伸び、背中も固くなってしまいまいます。これは重力に逆らい、大地とのつながりが失われてしまった状態といえるでしょう。グラウンディングをするには、必要以上の力は手放し、がんばりすぎず、ただ大地に支えてもらいます。

感じるpoint④グラウンディング〜足の裏の感覚に気づく

立った状態で、足の裏が大地に触れている感覚をじっくりと味わっていきます。3回ほど大きく深呼吸をし、吐く息とともに上半身の力を地面に落とすように手放していきます。
全身の重みが足の裏にゆだねられ、同時にからだの重みもまた、重力のままに地球の中心へとゆだねられていくのを感じます。
地面に、そして地球にからだが支えられているのを味わってみましょう。

感じるpoint⑤グラウンディング〜楽なポジションを探す

もしかすると、からだがゆらゆらと揺れてくるかもしれません。これは生命としての自然な揺れなので、止める必要はありません。揺れることに不安を感じる場合は、全身で大きく伸びをすることで、揺れの程度を自分の意志で調整することができます。
ゆらゆらと揺れながら、自分が楽に立っていられるポジションを探します。すぐに見つからなくてもかまいません。探そうとするときに、自分のからだや地球の重力と「対話する」ことが大切なのです。

「これが正しい姿勢だ」という思い込みを一度、手放してみましょう。自分にとって楽なポジションとは、自分のからだの重みを大地にゆだね、最小限の力で立てるポジションを見つけることです。楽な姿勢とは不動の1点ではなく、「ゆらぎ(第7回でとりあげました)」ある状態が生命にとって自然なのです。私たちのからだは、母体の中にいたときからずっと、重力とゆらぎによって生命としての形態や機能を発達させてきたのですから。

 

「センタリング(Centering)」の実際

ある程度グラウンディングを感じられたら、地球の中心とつながっている、私たちの「からだの中心(Center)」も感じてみましょう。これを「センタリング(Centering)」といいます。からだの中心とは、自分が自分であることの軸というか、核のようなものです。軸や核というとしっかりと固定されたイメージをもつかもしれませんが、実際には常に動いてゆるやかに変動しています。

感じるpoint⑥センタリング〜からだの軸を感じる

地球とつながり重力とつながるのに大切な「センター」は、骨盤の中心、女性ならば子宮のあたりの「丹田」とよばれる場所です。背骨の一番基底部である、尾骨から仙骨周辺をイメージしてもよいでしょう。
私はここを「存在(Being)のセンター」とも呼んでいます。からだの動的なエネルギーの中心で、生命エネルギーともかかわるからです。

吐く息とともに上半身の力を手放し、それが重力とともに、地球の中心に向けて落ちていくのを感じます。さらに、丹田あたり(存在(Being)のセンター)と、地球の中心とがつながり合っているのをイメージしてみましょう。

セルフタッチング WORK06:座位でのグラウンディング&センタリング

  1. 足の裏が大地に触れている感覚を意識します。楽な姿勢で椅子に座り、足の裏と座骨を感じながら、軽く背骨を立て、目は軽く閉じて、内側を感じます(半眼でもいいでしょう)。吐く息を長くしながら、呼吸を感じましょう。
  2. 股関節の力を緩めて、パタパタと数回左右に動かしてみましょう。力を入れなくてもいいポジションで軽く止めます。膝や足首の力もゆるめましょう。そして、座面に骨盤が支えられている感覚を味わうために、座骨(骨盤の座面に接している骨の部分)〜上半身を前後や左右にゆっくりと揺らしてみましょう。そして、なんとなく中心のように感じられるところに戻ります。
  3. 足の裏と、座骨で全身が支えられているのを感じられたら、顎をゆるめ、吐く息とともにさらにからだの力を手放していきます。重力のままに、全身の重みが地球の中心に向かい、つながっているのをイメージしてみましょう。
  4. 腰の周りをゆるめるために、座骨が座面に触れているのを感じながら、円を描くように座骨から上半身を回旋させ、からだをゆっくりストレッチします。そのとき呼吸はゆったりとしてみてください。
  5. ゆっくりとした呼吸、吐く息とともに、重力に身を任せ、地球にささえられていることを感じます。そして、地球に身をゆだねていきましょう。
  6. 全身が地球に支えられていることと、自分自身の中心と、地球の中心がつながりあっているのを味わいながら、ゆっくりと呼吸を感じていきましょう。十分に吐ききっていくと自然と空気は入ってくるので、あまりコントロールしようとせず、呼吸をしていきましょう。
  7. 顎をゆるめ、吐く息とともに少しずつからだの緊張を手放しながら、重力に身をゆだねていきます。少しずつ力を手放し、緊張をゆるめ、地球を信頼し、地球とのつながりが深まることを、受け取っていきましょう。そして、ただ、呼吸を続けていきます。

このワークが何よりも素敵なことは、地球の上の世界中どこにいても、すべての人が平等に地球の力を享受できることです。それはただ、吐く息とともに力を手放し、信頼し、ゆだねるだけで受け取れることができるですから。地球のことを「Mother Earth(母なる地球)」と呼ぶのも当然だと思います。地球は、私たちの存在(Being)の源泉であり、その力に気づくことができるのが、このワークなのです。

地球を信頼し、Beingのセンターから自分自身のからだの「重み」を地球にあけわたし、ゆだねることで、かえってからだの中で「軽さ」を感じるようになるかもしれません。それは「重力=地球の力」と親しむことでもたらされる感覚です。その感覚をもつことは、この地上で生きやすくなることにつながるのです。

余談ですが…これはセルフタッチングだけでなく、二者間(施術者と受け手など)のタッチケアでも同様に行うことができます。
触れる側の「施術者」は、吐く息とともにからだの緊張を手放し、自分自身のからだの重みを感じ、重力を通じて地球の中心とつながっているのを感じます。そして触れられる側の「受け手」も同様の存在であり、二人は地球の中心でつながり合っていることを感じてから、施術をするのです。
この共通点が感じられることで、二者間で“癒しの場”が生成されるのですが、これはまた別の機会でお話ししましょう。

次の第9回では、呼吸に意識を向け、気づきを深めることをお伝えします。

 

(第8回 了)

 

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–Profile–

中川 れい子(Reiko Nakagawa

NPO法人タッチケア支援センター 代表理事、<身(み)>の医療研究会理事、こころとからだのセラピールーム amana space 代表。エサレン®ボディワーク認定施術者。

兵庫県生まれ。関西学院大学文学部卒業後、塾・予備校等の教育産業に従事(主に大学受験の日本史を担当)。1995年の阪神淡路大震災で被災後、現地ボランティアとして被災の現場にあたる中、からだを通してのこころのケアと癒しの必要性を痛感し、1998年よりボディワーク、ボディサイコセラピー、ソマティクス、カウンセリング、カラーセラピー、各種ヒーリング等を学び始める。1999年に、日本で最初に開催されたエサレン®ボディワーク認定コースに参加。その後、認定プラクティショナーとして関西の自宅で開業。ひたすらにセッションを積み重ねる中、非侵襲的な、ソマティクス・ベースの“タッチ”の癒しの可能性を痛感し、2011年に、NPO法人タッチケア支援センターを設立。「やさしくふれると世界はかわる」をテーマに、タッチケアの普及・教育・研究・ボランティア活動を開始し、家族間ケアや、看護・介護等の対人援助に活用できる「こころにやさしいタッチケア」を講座を開講。並行して、エサレン®ボディワークや、ローゼン・メソッド、米国ホスピタル・ベイスド・マッサージの公認講師を日本に招き、講座のオーガナイズもおこなう。

現在は、修了生と共に高齢者施設・がん患者会・緩和ケア病棟・産科病棟等での施術活動や、うつ病の回復期の方の就労支援センターや発達障害の方の地域支援センター等で、セルフタッチングのワークショップを開催。また、各種教育機関や福祉施設での出張講座も請け負う。エサレン®ボディワークを中心とする個人セッションも継続中。

website:NPO法人タッチケア支援センター(http://touchcaresupport.com)
website:こころとからだのセラピールーム amana space(http://www.amanaspace.com/about_amanaspace.html)