連載 扇谷孝太郎 「身体と動きの新法則 筋共鳴ストレッチ」18

| 扇谷孝太郎

身体と動きの新法則

筋共鳴ストレッチ

第18回 第5〜第4チャクラのバランス 〜ローテーターカフと手の指の共鳴〜

扇谷孝太郎

 

Image: iStock

これまで書いてきたとおり、「肩の動き」は主に肩甲骨、鎖骨、上腕骨の3つの骨によって作られています。そして、それらをつなぎ合わせている関節は以下の4つです。

  • 肩関節(上腕骨/肩甲骨)
  • 肩鎖関節(鎖骨/肩甲骨)
  • 胸鎖関節(鎖骨/胸骨)
  • 肩甲胸郭関節(胸郭/肩甲骨)
肩の骨(Image: iStock)

前回までで、胸鎖関節(第15回)肩鎖関節(第16回)肩甲胸郭関節(第17回)の柔軟性&安定性向上についてご紹介してきましたので、今回は残る肩関節についてお話したいと思います。

肩関節を動かすための筋肉は、以下のとおりです。

筋肉 肩関節における動作 筋共鳴 備考
三角筋 外転、屈曲、伸展
外旋・内旋の補助
大腿筋膜張筋
中殿筋
大殿筋
棘上筋 外旋、外転の補助 手の背側骨間筋
股関節の深層外旋筋
ローテーターカフ
棘下筋 外旋 手の背側骨間筋
股関節の深層外旋筋
ローテーターカフ
小円筋 外旋 手の背側骨間筋
股関節の深層外旋筋
ローテーターカフ
肩甲下筋 内旋 手の掌側骨間筋
腸骨筋
ローテーターカフ
大円筋 内旋 (母指内転筋)
鳥口上腕筋 水平内転、屈曲の補助 股関節の内転筋群
上腕二頭筋 屈曲 浅指屈筋
上腕三頭筋 伸展 総指伸筋
(大胸筋) 屈曲、内旋、内転 大腰筋
足の短指屈筋
肩関節と肩甲胸郭関節に作用
(広背筋) 伸展、内旋、内転 足の長母趾伸筋 肩関節と肩甲胸郭関節に作用

手の指とローテーターカフの共鳴

今回は上記の筋肉のうち、肩関節の安定性にもっとも影響を与える「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」と呼ばれる筋肉のグループ(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)について見ていきましょう。

ローテーターカフの筋肉は、指の付け根の骨(基節骨)を動かす背側骨間筋、掌側骨間筋と筋共鳴の関係にあります

背側骨間筋は親指を除く4本の指を、付け根(MP関節※)から開きながら伸展させます。掌側骨間筋は逆に、閉じながら屈曲させます。そして、両方の筋肉が協力して働くことで指に回旋の動きが生じると、手のひらの中央が浅くくぼむんだ形のドーム状になります。

足裏のアーチと同様に、床に手をついて体重を支えるときなどに重要になります。また、筋共鳴の視点から言えば、扁平足や開張足などの足裏のアーチのトラブルは、足の筋肉や骨の問題というだけではなく、手のひらのドームの異常とも連動しています。

※指の関節の名称
・親指を除く4本の指の関節は指先から順に、DIP関節(末節骨/中節骨)、PIP関節(中節骨/基節骨)、MP関節(基節骨/中手骨)と呼びます。
・親指は、指先からIP関節(末節骨/基節骨)、MP関節(基節骨/中手骨)と呼びます。
・五本とも、中手骨と手根部の間の関節はCM関節と呼びます。

指をうごかす背側骨間筋や掌側骨間筋が肩の最深部の筋肉と共鳴しているということは、指をどのように動かすかということが、そのまま肩関節の柔軟性や安定性に反映されるということを意味しています

これは、握力が肩関節の安定性と相関関係にあると言われていることとも合致します

また、指ごとにローテーターカフのどの筋肉に強く共鳴するかが違うので、野球などのピッチングにおける変化球の多用が肩の故障につながるメカニズムにも関係していると思われます。どのようにボールを握るかによって肩の安定性が変化するので、特殊な握り方はローテーターカフの筋肉同士のバランスを悪化させる可能性があるからです

さらに、以前ご紹介したとおり、背側骨間筋は背骨を支える主要なスタビライザーである多裂筋とも筋共鳴の関係にあり、掌側骨間筋は腹横筋と筋共鳴の関係にあります。多裂筋も腹横筋も体幹の安定の要(かなめ)となるインナーユニットを構成する筋肉です。

つまり、プッシュアップやプランクなどの四つ這いになって行う運動では、床に対する手のつき方によって肩関節の安定性や、体幹の安定性が変わってくるということです。

これらの運動をする際には、指の付け根をしっかり働かせて、手のひらのドームを保って動くことが重要になります

背側骨間筋や掌側骨間筋は小さな筋肉で、手の形状を保つためのスタビライザーです。スタビライザーを刺激するには、早く力強い動きより、ゆっくり小さな動きが有効です。海藻が波に揺られてゆらゆらしているようなイメージで、指をゆっくりやわらかく動かしてみると、これらの筋肉が活性化できるでしょう。

また、これらの筋肉には固有感覚受容器が豊富に存在するという特徴があります。そのため、床の表面の「質感」を感じるつもりで、やさしく触れるようにすることによっても、活性化させることができます。

ふわっと柔らかく手をついているのだけれども、グニャグニャにはならずにしっかり形状を保って力を床に伝えられている状態と言えます。

手の指と下肢の共鳴

手から肩関節への筋共鳴に加えて、もう一つ、肩関節と股関節の間での筋共鳴にも目を向ければ、下記のような対応関係が見えてきます。

上肢 下肢
肩関節 肩関節のローテーターカフ 股関節の深層外旋筋群/腸骨筋 股関節
手の背側骨間筋
/掌側骨間筋
足の背側骨間筋
/底側骨間筋

ここに載せている筋肉はどれもスタビライザーなので、運動中はパワーやスピードを生み出すというより、関節の安定性を高めるとともに、関節の動きの情報を脳に伝達して姿勢を制御する役割が大きい筋肉です

そして、これらの筋肉は筋共鳴によって体幹のインナーユニットとも協調しながら姿勢を制御しています

したがって、手の骨格のバランスや動きを見れば、服の下の体幹の状態や、靴の中の足の動きがどうなっているのか、推測が可能になります。これはボディバランスを評価する際に役立ちます。

また、この表からは、足の指のコントロールが股関節の動きを決定づけることと、その足の指をうまくコントロールして動くには、手の指の感覚が重要だということがわかります。

足のアーチを効果的に使ってしなやか動くには、手の指をふわっと柔らかくさせることが効果的です。これは力が抜けてぶらぶらしているのでも、力んで固めているのでもない感覚で、素早く次の動作に移るための「正しく脱力した状態」です。

もしランニングが趣味の方であれば、手の使い方を見直すと走りやすさが変わるのを実感できるでしょう

肩の柔軟性チェック

それでは、手の指からの筋共鳴をつかって、肩の柔軟性を高めていきます。まずは肩の柔軟性をチェックしてみましょう。

1)両足を肩幅に開いて立ちます。片方の手を下から背中に回して、指先で肩甲骨と肩甲骨の間に触れます。1度目は手の甲が前を向くようにして行い、2度めは手のひらが前を向くようにしてチェックします。左右、両方ともチェックします。

以下の場合、肩の柔軟性が低下しています。

  • 体幹が側屈してしまう。
  • 手が腰の高さで止まってしまう。
  • 手のひら/手の甲の切り替えができない。

2)両足を肩幅に開いて立ちます。首をまっすぐ立てたまま、片方の手を上から背中に回して指先で肩甲骨と肩甲骨の間に触れます。手のひらは前方を向きます。左右、両方ともチェックします。

以下の場合、肩の柔軟性が低下しています。

  • 体幹が側屈してしまう。
  • 指先が肩甲骨の間に届かない。
  • 首が前に曲がってしまう。

3)両足を肩幅に開いて立ちます。ヨガの鷲のポーズのように、両腕の肘を重ねるように胸の前でクロスさせてから、肘を曲げて前腕を絡めて両方の手のひらを合わせます。そこから鼻の高さまで肘を持ち上げます。腕の上下を入れ替えて、どちらもチェックします。

以下の場合、肩の柔軟性が低下しています。

  • 肘と肘を重ねられない。
  • 前腕を絡められない。
  • 肘を鼻まで持ち上げられない。
  • 背中を反らしてしまう。

どの動作も、肩関節の柔軟性だけではなく、前回までにご紹介した、肩甲胸郭関節や肩鎖関節、胸鎖関節の柔軟性も必要になりますので、これらの動きの修正については、連載のバックナンバーをご覧ください。

背側/掌側骨間筋→ローテーターカフの筋共鳴ストレッチ

それでは、背側/掌側骨間筋のストレッチから、筋共鳴をつかってローテーターカフのコンディショニングをしていきましょう。

(before)

  • コンディショニング前に、上でご紹介した肩の動作チェックをしてみましょう。
  • 屈曲/伸展、外転/内転、外旋/内旋をそれぞれ意識しながら肩を大きく動かして、動かせる範囲をチェックしてみましょう。このとき、肘や手首は伸ばしたままで行います。曲げてしまうと、肩の柔軟性の低下がごまかされてしまいます。

(背側骨間筋→ 棘上筋、棘下筋、小円筋)

1)右手の人差し指の付け根の骨(基節骨)を左手でつかんで、まっすぐひっぱります。

2)ひっぱりながら付け根(MP関節)から深く「屈曲」させます。

3)お腹と胸をしっかりふくらませるように、息を吸を大きく吸います(努力吸気モード)、腹腔内圧を維持しながら呼吸のゼロポジションを超えて深くゆっくり息を吐きっていきます(努力呼気モード)。

4)ストレッチされる感覚を味わいながら3〜5呼吸、繰り返します。ストレッチ中に、基節骨を軽く内旋させたり、外旋させたりして、気持ちよく伸びる角度を探ってみましょう。

5)同様に、中指、薬指、小指もストレッチします。

6)左右を入れ替えます。

 

(掌側骨間筋 → 肩甲下筋)

1)右手の人差し指の付け根の骨(基節骨)を、左手でつかんで、まっすぐひっぱります。

2)ひっぱりながら付け根(MP関節)から深く「伸展」させます。

3)お腹と胸をしっかりふくらませるように、息を吸を大きく吸います(努力吸気モード)、腹腔内圧を維持しながら呼吸のゼロポジションを超えて深くゆっくり息を吐きっていきます(努力呼気モード)。

4)ストレッチされる感覚を味わいながら3〜5呼吸、繰り返します。ストレッチ中に、基節骨を軽く内旋させたり、外旋させたりして、気持ちよく伸びる角度を探ってみましょう。

5)同様に、中指、薬指、小指もストレッチします。

6)左右を入れ替えます。

終了後、beforeで行った動きで再び動作チェックをしてみましょう。肩関節の柔軟性の向上を感じられるでしょう。

肩の動きを制限している筋肉の緊張がほどけてくると、自然に胸郭上部の空間がひろがり、背骨の柔軟性が回復していきます。それによって、背骨のS字カーブのバランスも向上します。

指輪と骨格の歪みの関係

今回、手の指の状態が肩だけでなく、下肢のバランスやインナーユニットにまで影響を与えていることをご説明してきました。

その重要性がわかったところで一つ触れておきたい問題があります。それは「指輪」などのアクセサリーが、身体の動きに及ぼす影響についてです。

とくに指輪による指の皮膚への刺激や締付けは、筋共鳴を介して全身の姿勢バランスに影響を与えます。片方の手の指にだけはめる場合は、身体の左右バランスを崩す原因になります。

中には、運動中も就寝中もつけっぱなしという人や、長年そのままで抜けなくなってしまったという人もいるでしょう。

そういう人は、はめている指に応じて、背骨の一部に歪みが生じますし、肩や腰の可動域にも不自然な左右差が生じます。たとえば、結婚指輪は左手の薬指にはめるため、左肩の小円筋や仙腸関節の左側が固くなります。

これは、指輪をはめる位置がちょうど背側骨間筋と掌側骨間筋の付着部になっていることと関係があります。

その部分が常に圧迫を受けたり刺激を受けたりしていることで、その指の背側骨間筋や掌側骨間筋に共鳴している多裂筋や、ローテーターカフ、深層外旋筋の一部が緊張し続けることによる影響です。

  1. 椅子に座って、腕を水平外転して側方スライド
  2. 椅子に座って、腕を水平外転してツイスト
  3. 椅子に座って、前屈/後屈

ビデオのように、指輪をつけている状態での動きと、はずしている状態での動きを比較してみると、左右の動きやすさの違いがわかるでしょう。

この傾向は、もともと筋力不足の人や、ヨガやバレエなど平均以上の柔軟性や安定性、姿勢のバランスを求められる人ほど、顕著に表れるようです。

実際、肩や腰の不調や、股関節の柔軟性の左右差などを相談される方が日常的に指輪をはめていた場合、それを外すだけで症状が改善したり、ときにはそれだけで解消してしまうことも珍しくありません。

これは決してアクセサリーを楽しんではいけないということではありません。ただ、身体への影響をしっかり認識していただき、運動中や就寝中は外すことをおすすめしたいと思います。もしも長時間にわたって身につけていた場合には、後でストレッチやマッサージなどのセルフケアをするようにすると良いでしょう。

(第18回 了)

※(筋共鳴)は登録商標®️です。


筋共鳴オンライン講座情報!

来たる12月23日に「ヨガでに役立つ筋共鳴(R)講座「手」編」と題したオンライン講座が行われます。
講師はもちろん本連載の筆者・扇谷孝太郎さん!

「この講座では、「筋共鳴(R)」という姿勢や動きの新しい考え方に基づき、ヨガのポーズやコンディショニング技術への理解を深めていきます。

筋共鳴(R)とは、遠く離れた位置にある筋肉同士が、互いに共鳴するように、同時に緊張や弛緩をする現象です。

その法則を理解することで、ストレッチや筋力トレーニングを効果的に行うことができます。また、ヨガや武術、バレエなどの「型」の意味を理解する上でも役立ちます。

今回はまず「手」の重要性についてみんなで一緒に学んでいきましょう。」(扇谷孝太郎)

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場所:オンライン(ZOOM使用)
講師:扇谷孝太郎
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–Profile–

坂本博美(Hiromi Sakamoto

パーソナルトレーニングルームh.lab主催。
ダンサーとして活動する中、自分自身の怪我の悩みから脳や視覚から受け取るイメージと、実際に身体に起こっていることとのギャップに気がつき、ボディワークや生理学などについて学び始める。

現在は関東関西の各小学校「姿勢教室」開催、企業や小学生から高齢者まで幅広い年齢層へエクササイズを提供している。

胎生学(キャロル.A)、センサリーアウェアネス(ジュディスウエーバー)、フォーカシングベーシック(日本精神技術研究所)、オステオパスバイオダイナミクス(トムシェーバーD.O.)、DVRT(ダイナミックバリアブルレジスタンストレーニング)、オリジナルストレングス、TRXサスペンショントレーニング、グレイインスティテュート3Dmaps受講。
機能解剖学を扇谷孝太郎(ROLFING®️™️)に師事。

■資格
GYROKINESIS®Level1、GYROKINESIS®Level2、Beginner GYROKINESIS®HappyMoves認定トレーナー

そのほかのメディア活動
日本テレビ「News Zero」、テレビ朝日「たけしの家庭の医学」、ベネッセ、小学館冊子記事掲載、東京新聞掲載、SONPOひまわり生命保険株式会社(トレーニングエクササイズ提供)、テルモ株式会社(トレーニングエクササイズ提供)

扇谷孝太郎(Kotaro Ogiya

大学院在学中に演出家竹内敏晴氏の「からだとことばのレッスン」に出会い、身体と身体表現についての探求を始める。2001年、ロルファー™の資格を取得し公務員からボディワーカーに転身。現在は恵比寿にてロルフィング®を中心に、クラニオセイクラルやソマティック・エクスペリエンス®などの個人セッションを行う。 ヨガやバレエスタジオでの定例セミナーでは、身体のメカニズムのほか、呼吸や感覚、イメージの活用を独自の視点でまとめた「動くための解剖学」を教える。その内容はダンサーやヨギなど、柔軟性と身体バランスを必要とする人々から高い支持を得ている。また「からだと息で読む朗読」講座では、朗読という表現手法をとおして「共鳴を生む身体の育て方」を探求中。

●米国The Rolf Institute認定アドバンストロルファー
●米国The Rolf Institute認定ロルフムーブメントプラクティショナー
●クラニオセイクラルプラクティショナー
●ソマティック・エクスペリエンシング®︎認定プラクティショナー
●JMET認定EFTプラクティショナー

公式Web Site (https://www.rolfing-jp.com)