小笠原和葉×藤田一照「宇宙と感情と身体」 第一回 考えること、感じること

| 小笠原和葉 藤田一照

 

藤田 そうそう。照準が合ったところで「ああ本当だ、わかる」と思いましたね。それがまず最初。

小笠原 それは一照さんが瞑想などをなさっている方だから、意識のピントがそこに合ったことに、一瞬で気づかれるのではないかと思います。私も最初、クラニオのタイドがわかるのに、すごく時間がかかりました。

藤田 「こういう感じだろう」と、勝手に予想しているとダメなんですよ。悟りと同じ。悟る前に「悟りってこんなもんだろう」という思いをアテにして、それをよすがにしてやるのは、「芳(かんば)しからざることなり」と道元さんは言っているので。

実は全然違うんだということは、今の僕らの展望の中に入っていないことなのに、どうしてもこんなもんだろうと予想してしまいがちなんですよ。だからこちらから自分の予想する動きを捕まえにいこうとして、ムダな時間を過ごしてしまう。

小笠原 そうですね。探している所が全然見当違いだから、ムダでもったいない時間になってしまうんですよね。

一照さんと山下良道さんとの対談『アップデートする仏教』(幻冬舎新書)に何度も登場する「シンキング・マインド」のように、考えて、精査して、検証するような探し方を、大体、行動の枠組みとして皆もっていると思うので。

藤田 時にはそれも、必要なのかもしれないですけどね。

小笠原 「正しいものを見つけないといけない」と言われると、むやみに緊張してしまいますし。そもそも“感じる”ことの体感がよくわかってないので、頭で探しにいってしまう。だから私は、ワークショップではタイドの話はあんまりせず、うやむやにしておきます(笑)。

その代わり、身体の自己調整の話をとにかくしています。 「身体にはいろんなことがたくさん起きているので、手で感じるものは何でも楽しんで感じてください」とお伝えしていると、「おもしろい」「意外に何か動いている」と、気がついた中でタイドを見つけられる人もいるし、そうでない人もいるし。

最初から“正しいものをとらえる”という緊張を与えてしまうのではなくて、何かをやめていくと見つかるのですが。“やめていく感覚”を感じるのは皆、難しいので。

藤田 まさにそうですね。昔は「わかる奴だけわかればいい」という感じだったけど。今は最初からそれを言っとけばいいんじゃないかな、と僕は思うんですけどね。

禅でいうと、アメリカでも最初、「悟ったらこうなるよ」という結果を示した本が、やたら出たんですよ。「悟った人の言動はこんなふうになる」とか「悟った世界は哲学的にいうとこんなふうになる」とか。その結果、皆「そうなりたい」と思って、そこを目指してしまったんです。アメリカの人たちはまず、そういうことを考える。要するにプログラムを作ろうとするわけです。

だけど「悟りとは、そういうことではない」と言うと今度は、何が違うのかについてまた考えてしまって、堂々巡りをしてしまう。それに対する突破口はやはり、“感じる”ことです。まさにブルース・リーの「Don’t think, feel!(考えるな、感じろ)」ですよ。

「悟りはどんな状態なんだろう」とまず考えてしまうのは、考えることで感じることの代行をしてしまおうとする。 大体、禅に来る人たちって考えるのが得意で、そのやり方で社会的に高い地位を築いてきた人たちです。同じ路線で「禅も自分のモノにしてやろう」と思っている人たちが、特に集まっているので。

小笠原 それは意外。考えるのと感じるのとでは、生理学的な状態も全然違うし、モードが違うものですよね。

藤田 そう、全然違うんです。考えるモードと、感じるモードは。でもほとんどの人が、のぼせてるといったらおかしいけど、上のほうにエネルギーが上がってる人が多いんですよね。思考が過剰な状態。

小笠原 「考えるよりまず、身体からいく」方が、到達できるまでの時間がずっと早い。脱力、委ねていく、サポートを感じる、といった身体の感覚があると、こういう生理学的な状態を体験できる。その体感からもう一回、経験をたどりなおして考えた方が、リラックするまでの時間が速いんじゃないかなと思います。

そのことをお伝えしたくて、今回の本では「感情を片付けるには身体から」というテーマで書いたんです。

(第一回 了)

 

理系ボディーワーカーが教える”安心”
システム感情片付け術

小笠原和葉 著

システム感情片付け術

 

どんな人でも一番扱いづらいのは「自分の感情」。

些細なことが気になって腹が立ったり、イライラしたり、落ち込んだり。

だからこそ近年注目を集めた「アドラー心理学」をはじめとする心理学やセラピーなどに注目が集まっているわけです。

でも、そうした本を読んで“頭で分かった”からといって、即解決とはならないのが難しいところ。

実は感情の問題を解決するのに大事なのは、頭ではなく「カラダで解決すること」なのです。

本書ではカリスマボディーワーカーである著者がボディーワークと生理学をベースにした、カラダから感情にアプローチする方法を紹介!

見えない感情を上手に「片付け」て、自分の感情を楽しめる方法がここにあります。

 

単行本: 223ページ
定価:1,400円(税別)
出版社: 株式会社 日貿出版社
言語: 日本語
ISBN-13: 978-4817070371

全国書店、アマゾンで発売中

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–Profile–

藤田一照(Issho Fujita写真右
曹洞宗国際センター2代目所長。東京大学大学院教育心理学専攻博士課程を中退し、曹洞宗僧侶となる。33歳で渡米し、以来17年半にわたってアメリカのパイオニア・ヴァレー禅堂で禅の指導を行う。現在、葉山を中心に坐禅の研究・指導にあたっている。著作に『現代坐禅講義 – 只管打坐への道』(佼成出版社)、『アップデートする仏教』(幻冬舎新書、山下良道氏との共著)、『禅の教室』(中公新書、伊藤比呂美氏との共著)、訳書に『禅マインド・ビギナーズ マインド2』(サンガ新書)など多数。

Web site: 藤田一照公式サイト

小笠原和葉(Kazuha Ogasawara写真左
ボディーワーカー、意識・感情システム研究家。学生時代から悩まされていたアトピーをヨガで克服したことをきっかけに、 ココロとカラダの研究をはじめ、エンジニアからボディーワーカーに転身。 施術と並行して意識やカラダを含んだその人の全体性を、一つのシステムとして捉え解決するメソッド 「PBM(プレゼンス・ブレイクスルー・メソッド®)」を構築。海外からも受講者が訪れる人気講座となっている。
クラニオセイクラル・ヒーリングアートチューターカリフォルニア州認定マッサージプラクティショナー東海大学大学院理学研究科宇宙物理学専攻修士課程修了。

Web site: 小笠原和葉|PBMオフィシャルサイト